ラノベ研シェアードワールド企画2

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Re: キャラ三人/三人称/約4千字  – ジジ

おつかれさまです。

ゲルトさんと言うと、1日めの夜に死んでしまいそうな風情がありますね。

会話のリズムがよく、すかっと読み終えられる一作でした。
また、、「下ネタでテンション上げる」というギミックもおもしろそうだなと思ってしまいました。ディアーヌさんで試してみるやもしれません。

登場人物をまとめてくださっているのもシェアしやすくてよいですね。
書いていただいたシチュエーションは、次に私が投下する小話に、たなかさんの作品設定ともども吸収させていただきます。

[No.46149] 2014/10/04(Sat) 11:03:10

タイトルについて – ジジ

私のサンプルのタイトルがあれなので、書いて下さる方がその形式を守ってくださっているのですが、普通のタイトルで大丈夫です。
あれはあくまでもサンプルとしてデータを提示しているだけなので。

[No.46150] 2014/10/04(Sat) 11:05:01

石の塔の魔法使い/キャラふたり/三人称/約4000字 – 雷

石の塔の魔法使い

「イクぜー。気合ぶっ込んでくぜー、シクヨロっ!」
開け放しにしていた窓から奇声が聞こえて、キイスは目を覚ました。
どうやら、すぐ近くの部屋に住んでいる上下派の研究員が出かけたらしい。
上下派の人間は変わり者ばかりで、正直あまり関わり合いになりたくないが、時計よりも正確な彼らの生活リズムには、いつも感心させられる。上下派の声や足音は、朝の目覚ましや、時間を知らせる鐘の代わりになるからだ。
(メシにしようかな)
キイスはベッドから起き上がって、きのうの夕食の残り物の、すっかり固くなった白パンと、オリーブオイルにひたしたハムと、キュウリのピクルスをかじった。最後に水を飲んで、口の中の塩気と酸味を洗い流す。
腹ごしらえが終わったら、自室にある梯子をつたって、下の階にある研究室へ向かった。
ここ魔法研究所は、その名のとおり、魔法の調査と研究、実験、開発を行なう施設だ。世界中から集まった研究員が働き、生活している巨大施設である。その歴史は古く、建物は増改築が繰り返されたおかげで複雑極まりない構造になっている。住み慣れた人間でも、ちょっと油断すると迷ってしまうほどだ。
キイスがいるのは、そんな研究所の中でも、もっとも古い区画にある小さな塔だった。昔ながらの石造りの建物で、個人の研究室と住宅を兼ねている。もともとこの塔は、研究所に保管されている知識と技術を盗み出そうとする侵入者を防ぐための見張り塔の一つだった。しかし今は、見張り塔としては機能していない。周囲に、塔よりも高い建物が増えて、研究所を囲む外壁も離れてしまったからだ。
一階の研究室に下りてきたキイスは、机に置かれていた石を取り上げた。アメジストの原石だ。窓から射し込む光を透かしてみると、青紫や赤紫そして金と銀と、様々な色の光が目に飛び込んできた。
(今週中に論文を仕上げておこうか)
キイスは、机に山積みにされている紙の束を手に取った。魔法の研究と実験の記録を書きつけたものだ。
研究所内では“石の魔法使い”で通っているキイスは、宝石と金属が発揮する呪術的効能を専門に研究していて、純研究派に籍を置いている。今季のキイスの研究テーマは、紫水晶アメジストが持つ、癒しの効能についてだった。
「おじゃまします」
耳に心地良い明るい声が聞こえて、論文の執筆のために紙と羽ペンとインクを用意していたキイスは、手を止めた。
出入り口の扉が勢いよく開いて、分厚いマントに身を包んだ女の子が入ってきた。
「ひさしぶり」
「どうやって扉を開けたんだい」
「結界と封印術と防御魔法の重ねがけなんて、あたしにとっては紙同然だよ」
「魔法だけじゃなく、物理的に鍵もかけておいたはずだけど」
「針金一本あれば、あたしに開けられない鍵は無いよ」
やれやれとキイスは首を振る。
「お土産を持ってきたよ」
言いながら、女の子――ミラは肩に担いでいた荷物袋から中身を出して、机の上にごろごろと並べていった。バハムート魚の大鱗、ファラク蛇の抜け替わりの牙、ルフ鳥の羽根、クジャタ牡牛のたてがみ……。
「どれも、南の砂漠の国の魔法生物の体の一部だね。今回は、そっち方面に?」
「うん。キャラバンと一緒にオアシス都市を巡ったんだけど、おもしろい旅だったよ。研究所のみんなに、こうして、いいお土産も手に入ったし」
「また貴重な魔法生物を狩ってきたわけだ」
「あたしは無闇に生き物の命をとったりはしないよ」
「ドラゴンの群れを全滅させたことがあるくせに」
「それ、大昔の話でしょ」
ミラは苦笑いした。
彼女は“さすらいの魔女”と呼ばれており、研究員の中では非常な変わり者として知られている。
もともとは人里を襲うドラゴンを退治するための方法を研究していたのだが、いつのまにか、ドラゴンを含むあらゆる魔法生物の生態まで研究するようになった。いまでは、世界中に生息する魔法生物の研究をするために、しょっちゅう研究所を離れて旅をして回っている。
キイスとは対照的な、生粋のアウトドア派だ。
「今回はとっておきを用意してきたよ」
ミラは荷物袋の底から、小さなガラス瓶を取り出した。
その途端、キイスの目が爛々と輝きだした。
ミラが取り出した瓶の中には、ゴマ粒ほどの大きさの真っ赤な石が詰まっていた。
「キイスへのプレゼント」
「もしかして、この粒はルビーかい?」
「ジャマル山で産出されたルビーだよ」
「とんでもない高級品じゃないか!」
にかり、とミラは笑う。
「この粒々は、原石を削り出す時に出た、宝飾品とかには使えないクズ石だから、安値で取り引きされてるの。小瓶いっぱいのルビーと、キイスがくれた浄水石10個を交換して、おつりが来たくらいだからね。遠慮しないで受け取ってちょうだい」
浄水石は、石英の一種をキイスが魔力で精製して作った魔法石だ。浄水石を水にひたしておけば、水がめいっぱいの泥水を、一晩で、きれいな飲み水に変えることができる。繰り返し使うことのできない消耗品だが、飲み水の確保が重要な砂漠の国々では、宝石以上の価値があるのだろう。
「前に、もっとルビーの研究をしたいけど、サンプルになる石が足りないから困ってる、って言ってたじゃない? だから、ちょうどいいと思って、多めにもらってきたんだ」
「助かるよ。とくにルビーの放熱現象を分析するのに、まとまった数の石が必要だからね。これだけあれば十分だ。次季の論文テーマは決まりだな。ほんとうにありがとう、ミラ」
「どういたしまして」とミラは満面の笑みを浮かべた。
キイスに喜んでもらったことが、ほんとうに嬉しいようだった。
(これはまた、いい資金源を見つけたな)
キイスは、ルビーの入った小瓶をしげしげと眺める。
魔法の研究には金がかかる。
もちろん研究所に資金を出すスポンサーもいるが、その資金を、研究所に所属するすべての研究員の個人研究に万遍なく行き渡せるのは難しい。だから、自分の研究成果を商品として“外”に売り出し、そうして得た利益を研究費の足しにする研究員もいる。
キイスも、宝石などの呪的効能を研究しながら、様々な効果を持つ魔法石を作り出して、それを売って得た利益を研究費に充てている。
世界中を旅するミラは、キイスにとっては、自分が作り出した魔法石の販路を広げてくれる、最良のパートナーだった。
「こっちは、変わりは無い?」
ルビー入りの瓶に見入っているキイスに、ミラが尋ねた。
「ああ、変わりは無いよ。平和そのものさ。そういえば、管理官の髪がまた薄くなったとか、誰かが言ってたな」
「べつに驚くようなニュースじゃないね」
「そう言ってやるなよ。あの人のおかげで資金が入って、この研究所はうまく回ってるんだから」
「研究資金を自力で稼いじゃうような人が言ってもな~」
ふたりが話していると、ずうん、と地響きが聞こえた。
部屋にある机や棚が、かたかたと震えた。
「何の騒ぎかな」
「どこかの血の気の多いバカが、ケンカでもしてるんだろ」
「キイスには、縁の無さそうな話だね。あいかわらず部屋にこもって研究三昧?」
「外には滅多に出歩かないね」
「ついこのあいだ、純研究派の集会があったって聞いたけど、キイスは出席しなかったんだってね。キイスは、ただでさえインドア派なんだから、そういう場に出て、人と交流するようにしないとダメだよ」
「人と話したり、愛想をふりまいたり、気を遣うのが煩わしいんだ。僕が石の研究に打ち込んでいるのも、石は何も言わないし、動物や植物と違って気を遣うことがないからだよ」
「あたしとは、こうして話をするのにね」
「たしかに」
なぜだろう、とキイスは腕組みをする。
「そうだな。ミラとなら気兼ねせずに何でも楽しく話し合えるし、ミラの声を聞いてると、こっちまで元気をもらってるような気になるんだ」
「あ、そう……」
急にミラは顔を赤らめて、目を伏せてしまった。
「……それが、今度の論文のテーマ?」
ミラが、机の端に置かれているアメジストを指差した。
ずいぶんと話を変えてくるな。
「そうだよ。今季のテーマは、アメジストが人体にもたらす影響についてだ」
「アメジストの魔法が二日酔い防止に使えるっていう話?」
「それだけじゃないぞ」
無意識のうちに、キイスの声に力がこもる。
「アメジストが放つ魔力の波長を詳細に分析することで、アメジストが、人の体に入ったアルコール成分の分解を早めることを裏付けたんだ。他にも、血液内の老廃物や病原菌を減少させたり、筋肉の疲労を抑える効果を持つことも分かった。まだ実証段階ではないけど、たぶん、心理的な面にも、アメジストの魔力は影響すると思う」
「アメジストを触媒にした魔法を使えば、いろんな病気を治せるってこと?」
「そう言いたいところなんだけどね」
キイスは渋い顔をする。
「マウスを使って何度も実験したけど、アメジストの魔力の効果って、極端に薄いんだ。エメラルドの傷病回復や、サファイアの精神安定に比べたら、ほんとうに微々たるものでさ。今の段階で実用化が期待できるのは、二日酔い防止までだな」
「それは残念。旅のお供にと思ったんだけどな」
「安全に旅ができるように、何か、魔法石を使ったアクセサリでも作ろうか」
「いいの?」
「ルビーのお礼だよ。いつも世話になってるしね」
「あ、じゃあ……指輪が、いいかな」
おそるおそる、という感じでミラが言った。
「指輪か。それなら、サイズを調べておいたほうがいいね。どの指にはめる?」
「え~と、く、薬指……左の」
「見せて」
キイスは無造作にミラの手を取った。
砂漠や山野を歩き回っているわりに、きれいで、ほっそりとした指だった。
「しばらく研究所にいるんだろ? いつものように、うちに泊まってくか」
キイスが尋ねると、ミラはうなづいた。なぜか耳まで真っ赤になっている。
「じゃあ、次の旅に出るまでに、ミラに指輪をプレゼントするね」
「……うん」
ミラは、もういちどうなづく。なぜか首筋から指先まで真っ赤になっていた

———-(終)———-

ギリギリ4000字(汗)
初めまして、雷です。ジジさんの下読みスレは、いつも興味深く拝読しています。

> 「シェアードワールド的なお題・魔法研究所編」を置かせていただきます。
> このシェアードワールドの目的は、「ひとつのシチュエーションを完結させる練習」です。
> ルールは、
> ●物語は4000字(原稿用紙換算で10枚)以内で完結
> ●明示されている設定以外、どんな設定やキャラを出しても自由
> この2点のみです。

こういう企画モノに参加するのは滅多にないんですが、せっかく思いついたので。
尻切れトンボ上等(笑)

> どこかの世界のどこかの場所にある『魔法研究所』。
> 魔法を使う者の寄り合い所として作られたこの施設には、いろいろな場所から魔法を研究するため、さまざまな者が集まっています。その研究と人員の生活空間確保のため、施設の外周では常に改築と新築が行われています。
> 純研究派=普通に魔法実験や呪文開発、魔法発動の段取り研究などしている派閥です。見た目も行動もごく普通。常識的な者が多いです。ゆえに外の世界との橋渡しの役職に就き、苦労する者も。

ジジさんの提示された設定を、精一杯活用させていただきました。
頭の体操になって、楽しかったです。

[No.46152] 2014/10/04(Sat) 17:02:53

Re: 石の塔の魔法使い/キャラふたり/三人称/約4000字 – ジジ

おつかれさまです。

世界設定に縁をつけるお話もいいですね。
世界観の輪郭がはっきりすることで、文化やまわりの国、生き物など、いろいろなものが見えてきて。

しかも甘酸っぱい!
現在投稿いただいている3作にかならずモヒカンの人が出てくるので、そういうのが旬なのかと錯乱しかけていたところ、意表を突かれてのけぞりましたよ……。
リア充は私の見えないところで幸せになればいいのに。

> 頭の体操になって、楽しかったです。

楽しんでいただけたなら幸いです。
シェアードワールドは一種のお題ですが、キーワードなどでくくる普通のお題よりも実は制約をゆるくできるので、さまざまなタイプのお話と出逢えて私も楽しいです。

[No.46153] 2014/10/04(Sat) 18:01:39

頭も痛い、/キャラふたり/三人称/約2千字 – zse

あくまで純研究派に属する研究員のひとり、『頭も痛い』の通称で呼ばれるクロは、自分の研究とはまったく関係もないのだが、研究所のお金について考えていた。
研究所のそれなりの予算は、はたしてなにに使われているものか。
たとえば代償派だが、精神年齢が下がったりしたからといって、お金がかかるとは思えない。上下派……テンションの上げ下げにお金は必要か? それは分からなかったが。
そして、純研究派。残念なことではあるが、使っていないとは言えない。実験の材料を用意するにも、実験の対象を用意するにも、お金はかかる。とはいえ、自分で研究費を賄える人間が比較的多いというのも、純研究派の特徴のようにも思えた。噂で聞いただけではあるが、たとえば『石の魔法使い』は魔法の効果を持った宝石を売って、研究費に充てているらしい。クロとしては尊敬することしきりである。
人が生活をするだけでもお金はかかる。度重なる増改築に費やされるお金も、暴走した研究員の壊した物品の補てんにかかるお金も、それなりなのだろう。なぜだか魔法研究所の職員は暴走する傾向が強く、建物を壊したり、人目をはばからず追いかけっこしたりは日常茶飯事のようだったが。
クロはお金について考えていた。実際には違ったかもしれないが、お金についても考えてはいた。
床に座り込んだまま、絶望の眼差しで見上げる。
山にしか見えないほどに積み上げられ、天井にも届く、料理の数。
さまざまなことにお金というものはかかるものだが、この料理の山が毎日作られていれば、だいぶお金はかかるに違いない。そんなことを考えながら、奇声が耳を右から左へと通り過ぎていく。
「にょほほ、にょほほほほほほほっ」
――食堂派。
『自分専属天才料理人』の通称を持つ女の子、パッフェ・ランタン。
短い髪の、絶世の美少女だった。
彼女のための調理台などが置かれたふたりきりのその部屋で、パッフェは料理の山のふもとに立っている。奇跡的な美しさで作られた細い腕が料理を作り、小柄な身体がリズムよく左右に揺れている。繊細なきらめきを放つ金色の髪がそれに合わせて踊っている。白と赤のエプロン姿には、なぜかひとつも汚れがない。
料理が会心の出来だったのだろう。彼女は山をさらに大きくすると、こちらを振り向いて笑みをこぼした。
世界そのものを魅了する愛らしさと美しさを両立するような、そんな表情だった。たとえ丹……魔法の料理によって強化された美貌であったとしても、彼女の魅力が損なわれることはない。
クロは、その魅力に引き込まれ、なにもかもを忘れて虜になってしまいそうな自分を自覚して、手のひらに爪を立てた。痛覚がかろうじて理性を思い出させてくれる。
パッフェの、天使のような声音が耳を打つ。
「クロ。お料理できたから、たくさん食べてね。あなたのために作ったんだから、ね?」
クロの身体は動かなかった。が、口元は緩んだ。
自分のためだけに、作ってくれた。愛らしいこの少女が。苦労してたくさん。毎日たくさん。
毎日。
「い、や、だっ。食べたくない!」
「えー!? せっかく作ったのにー」
パッフェが不満の声をあげるが、クロは気にしてはいられない。
「こんなにたくさん食べられると思ってるのか!? 十人いても食べきれない量だぞ」
「いっつも食べてるじゃない。だーいじょうぶっ。魔法で、食べてもお腹いっぱいにならないし、体重も増えないように作ってあるからっ」
パッフェの言っていることは、正しい。おそらくそのように作られてはあるのだろう。
……その魔法が、彼女自身にしか効果がないという欠点を除いては、だが。
「ぜ、絶対に食べるもんか、自分にだけ天才料理人め! な、泣いたって無駄だぞ!」
「今度こそはクロにも効果あるはずだから! きっと、たぶん」
「人を実験台にするなっ」
「落ち着いて落ち着いて。ね?」
嫌になるくらい素敵な仕草で両方の指先をからめ、パッフェが告げてくる。
頬を赤くするクロに、彼女は続けた。
「それに、ほら、他の人からダイエット丹をもらってるみたいだし。大丈夫でしょう?」
「それは大丈夫とは言わないんだよっ!」
叫び返してから、床に手をついてクロはうめいた。
「ううう、最近じゃ人から、腹痛さんなんて呼ばれるようになって……」
「頭も痛いお腹も痛い、だっけ。面白い呼び名だよね」
「面白くなーいっ!?」
「まあまあ、いいから食べてって食べてって。ね。こんなに素敵な幼馴染みを持って、わたし幸せだなー。にょほほほほほっ」
パッフェがお皿とスプーンを持って、軽やかな足取りで近寄ってくる。その周囲にだけ光の粒が舞っているかのようだ。
逃げられないのは、すでにその少女の持つ雰囲気に魅了されてしまっているからか、あるいは幼馴染みだからか、それとも慣れてしまったからか。
『自分専属天才料理人』のパッフェ・ランタン。
あるいは、パッフェ自身にだけ天才料理人。
どうすれば彼女の呪縛から逃れることができるのか、いくら考えても答えは出ない。クロにとっての、頭も痛いお腹も痛い日々は、まだまだ続きそうだった。

―――終わり―――

面白そうな企画でしたので参加させていただきました。
面白いのは企画だけではなく他のかたの投稿作品もなのですが、そのぶん自分の話を投稿する恐怖が……なにも見なかったことにしたいです。
執筆して楽しかったです。ありがとうございました。

[No.46155] 2014/10/04(Sat) 18:16:23

『求愛の管理官』の小話/一旦回収します – ジジ

後日また投下します。

[No.46156] 2014/10/04(Sat) 19:39:12

Re: 頭も痛い、/キャラふたり/三人称/約2千字 (No.46155への返信 / 3階層) – ジジ

おつかれさまです。

実にひねりの効いたいいオチでした。
「自分専属」というネタもいいオチになっていて感じ入りましたが、それ以上に「頭も痛い」が効いていて驚きました。
短いお話の中で、伏線をオチと連動させているのはすばらしいです。

まあ、個人的には食堂派なら普通に料理がうまい人でいてほしかったですが……現実(じゃないですが)とはままならないものですね。

ちなみにひとり1作などの制限もありませんので、なにか思いついたらまた落としていただければと思います。

[No.46157] 2014/10/04(Sat) 19:45:41

ルール補足 (No.46143への返信) – ジジ

ルールの補足がある場合、こちらにコメントしていきます。

今回の補足ルールはこれです。

●ひとり何作でも投下可

そういえば述べていなかったことを思い出しましたので、必要あるかどうか不明ですがあらためて述べさせていただきます。

[No.46158] 2014/10/04(Sat) 19:47:38

魔王になりたかった少年/キャラ二人/三人称/約4000字 (No.46134への返信) – あまくさ

ジジ様。何とか書いてみました。宜しくお願いいたします。
――本編――

「あ~あ、魔王になりてぇなあ」
大それたことをうそぶいたのは、カマキリのような顔つきのモヒカン小僧だった。
年は十六歳。名前をジェシクと言う。
浮遊庭園の陽だまりにしゃがみこみ、乾いた土の上に列を作るアリの行列を所在なげに眺めながらの呟きだった。
「おまえら、クソの役にも立たねえ生き物だな」
魔法で作られたこの人口庭園に、なぜこんな虫なんか必要なのか理解できない。そんな面持ちだった。
ジェシクがパチンと指をならすと、整然とエサを運んでいたアリたちが右往左往しはじめた。帰る方向を見失いパニックに陥っている。
もう一度指をならす。アリの巣をとりまく土の表面に小さな亀裂が走り、紫がかった煙が立ち上る。
ジェシクはニヤニヤしながら、一つの小さな世界が滅亡するさまを見つめる。が、その笑いはなしくずしに消えて、どうしようもなく倦んだような表情にもどる。ため息をついて雲ひとつない蒼天を見上げた。
「情けねえなあ。俺の力を見せつけてやる相手が、こんな虫ケラだけだなんてな」
ジェシクは、生来持って生まれた魔力の素質に自信がある。少なくとも生まれ故郷ですごした十五の歳までは、彼は無敵だった。
近所の子供たちは、みんなジェシクを怖れていた。子供だけではなく、大人だってそうだ。彼に逆らえる者など一人もいなかったのだ。
でも、それは昔の話で。今では、形無しだった。
(リナのやつ……どうしてるかなあ)
幼馴染の少女の面影が、最近、やけに浮かぶ。
あまり思い出したくない顔なのに、脳裏にからみついてきてしかたないのだ。
小さいころは、リナのことを子分くらいにしか思っていなかった。彼女はジェシクの言うことなら何でも従ったし、どこにでもついてきた。
(なのに、いつのまにか俺が誘っても妙にツンツンして、断ることが多くなったんだ)
それはジェシクが力に自信を持ち、近所の子供たちにそれを見せつける快感を覚えはじめたころのことだった。

――力を見せびらかすなんて、ジェシクらしくないよ。私、そんなジェシク、何だかいやだな。

ある時、そんなことを言われた。意味がわからなかった。自らの優秀さを示すことの、何がいけないんだろう?
リナの態度がしだいに冷たくなり、気がついたらジェシクの方が彼女の機嫌をとるようになっていた。
(それでも、あいつが邪険にするから……あいつが悪かったんだぜ)
ジェシクは、どうしても従わないリナにむかっ腹をたてた。
魔法を使って、みんなの前で裸にしてしまったのだ。
リナは泣きながら家に逃げ帰ったが、彼女の家族から抗議されることはなかった。彼の力を怖れていたからだ。ほどなくリナとその家族は、どこかへ引っ越してしまった。
それっきり、リナがどこでどうすごしているのか、彼は知らない。
*   *   *

ジェシクがこの魔法研究所に所属するようになったのは、去年からだ。
試験はかるくパスした。自分の実力なら当然だと思った。
このぶんなら研究所のトップクラスに仲間入りするのも、一年かそこらで十分だろうと思ったのだが。そうはいかなかった。

《無垢の聖女》

《冥府の料理人》

《ファイラスの死亡名簿》

そんな二つ名で呼ばれるようにならなければ、ここでは一人前とはみなされない。ジェシクはいまだに、ただのジェシクでしかなかった。
入所したてのころ、四大派閥のいずれかに参加するように何度か勧められたが、首を横にふってきた。一匹狼で渡っていける自信があったからだ。しかし、今はそんな自惚れも萎えてしまった。
(いくらなんでも、突っ張りすぎたか)
ほんの少しだが、そう思うようになってきたのだ。
研究所に所属するものたちは、いずれも故郷では「千年に一人の天才」などと誉めそやされてきた過去を持っている。ここでは、それが普通なのだ。
(やはり最初は大人しく流れに従いながら、力を蓄えるしかないか)
やっとそう思うようになったジェシクが選んだのは、四大派閥の一つ《上下派》だった。
別に、この派閥に取り立てて魅力を感じたわけではない。ただ、他の三派閥が気に入らなかっただけだ。
(純研究派の連中は、理論ばかり口にする頭でっかちのクソ野郎共だ。舌先三寸でみんなを敬服させているが、魔法の実力は大したことはねぇ。代償派のやつらは確かにすごいが。魔法を使う代償に何かを失わなくちゃならないなんて、本末転倒じゃねぇのか? あんなやつらの気が知れねぇよ。食堂派? へっ、笑わせるな。料理なんてな、女のやることだ)
そんな調子で、上下派が多少ましだと思ったのだ。
しかし入ってみると。
(なんだよ、こいつらは。朝から晩までキーキー騒ぎやがって、猿山か? 話なんて通じやしねぇ)
何もかもいやになって、近頃のジェシクは人目の少ない場所を見つけては、ごろごろしていることが多くなった。
そして、リナの面影がしきりに思い出されるようになったのだ。

――力を見せびらかすなんて、ジェシクらしくないよ。私、そんなジェシク、何だかいやだな。

(わからねぇよ。俺らしさって、いったい何なんだ?)
両手を腕枕にして、ごろっと空をあおいで横になる。
いつの間にか、浅い眠りにしずんでいたらしい。
「アリさんをいじめちゃ、かわいそうですよ、ジェシク」
ふいに声をかけられて、はっとした。
微睡みとも現(うつつ)ともつかない意識の中にボンヤリと浮かんでいたリナに、話しかけられたような気がした。ジェシクは上体を起こし、キョロキョロあたりを見まわした。
「よだれ」
「えっ?」
「まず、よだれをふくといいです。イケメンさんが台無しだもん」
見ると。
ほっそりとした少女が、少し首をかしげて彼を見つめている。
「あ、あんた……いえ、失礼しましたっ」
大慌てで立ち上がり、居住まいをただす。年のころは同じくらいに見える美少女。リナの成長した姿はこんな感じかもしれないと思わなくもなかった。しかし、今、彼の前に立っている少女は、とても対等の口がきける相手ではない。
彼のあたふたした様子が可笑しかったのか、《無垢の聖女》がくすっと無邪気そうな笑みをこぼした。
*   *   *

浮遊庭園を吹きぬける涼しい風が、少女の黄金色の髪をゆらす。
色とりどりの花が咲き乱れる花壇を背景に、少女の姿もその花々の一つであるかのように艶(あで)やかだった。
「ジェシク、少しお話していい?」
何と答えてよいかわからなかった。言葉をさがしたが、口にできたのは、
「どうして、俺なんかの名前を?」
そんな平凡な質問だけだった。
「おとうさまが、あなたのことを話していたから。おとうさまってあなたの所の《ましら元帥》と仲がいいの」
《ましら元帥》は上下派の重鎮だ。やばいと思った。目をつけられているのだろうか?
「俺のことをなんと?」
「教えてあげない。言うと傷つくから」
「き、気になりますっ」
少女はだまって人差し指をのばした。ジェシクの唇をそっとおさえる。
「だまって。質問するのは私です」
風が、高名な魔法少女の髪をざわっとなびかせる。
「ジェシク。あなたは、いつ変わってしまったの? リナもそれを悲しんでいたんでしょ?」
「リナを知っているんですか?!」
「質問するのは私っ」
少女はぴしりと言ってから、少し声をやわらげた。
「……でも、特別に答えてあげる。私ね、夢を通じて人の心を覗きこめるのよ。さっき、あなたはウトウトしてたから、心の中を見ちゃった。リナって子、かわいい女の子ね。それに、ジェシクのこと大好きなのがわかった。あと、もっと昔のことも見えたよ。五歳のころ、泥んこ遊びをしていてアリの巣を壊しちゃった男の子。男の子は自分のやったことに気がついて、泣いてた。覚えてない?」
ジェシクには、少女の言葉が遠い空言のように思えた。理解もできなかったし、五歳のころのことなんか思い出せもしなかった。
「……ふうん。やっぱり、心の底から変わってしまったみたいねぇ」
「だって……そんなこと言われたって、何がいけないんだか。アリなんて、どうだっていいじゃないですか?」
小さな命も尊いもの、などというお説教をする大人がいるものだ。ジェシクは、そういう偽善には虫唾がはしる。だから、つい言い返してしまった。口走ってから、怒らせたかなと思って怯えた視線を少女に向けた。
が、少女はニコッと微笑んだ。それから歩み寄ってきた。互いの呼吸が聞こえるほどの距離まで近づき、彼の頭にそっと片手をさしのべてきた。
「へ~んな髪形っ。あなたには似合わないと思うなぁ」
トサカのような。天をつく不遜な炎のような彼の髪を、少女はそっとつかんだ。上の方に持ち上げた。

ジェシクの頭が、すぽんと肩から抜けた。

「ああ、ごっめ~ん! 髪の毛だけじゃなくて、頭まで抜けちゃったねえ」
少女の声は、楽しげだった。
なぜか痛みはなかった。
ゆっくりと意識がうすれてゆく。体から離れた頭が、優しく抱かれるのをぼんやりと感じた。
胸のふくらみの柔らかさが、心地よかった。

《無垢の聖女》

その名は研究所の者たちに、ひとかたならぬ敬意と畏怖をおびて語られる。
誰もがこの少女の清廉をうやまい、美しさに憧れ、無邪気な心を愛し。そして秩序を守るための峻厳な裁きを、身を震わすほどに怖れた。

[No.46166] 2014/10/05(Sun) 12:18:34
Re: 魔王になりたかった少年/キャラ二人/三人称/約4000字 (No.46166への返信 / 3階層) – ジジ

おつかれさまです。

いいですね、キャラが織りなす、センチメンタルな分かり合えない感。
ただ、この研究所で通り名がつく人は基本的に不幸な気がするので、目指さないほうがよい気はします。
あと、文章や物語の雰囲気からして、やっぱり成人女性向けをお勧めしたいところですね。

しかし、みなさんが綺麗な短編を書いてきてくださるので、非常に後悔しています。
ネタ元になりやすそうな1シーン劇を投下するのではなく、ちゃんと物語を書くべきでした。
「おまえ、ここがどこだか言ってみな?」と突きつけられた気分です。

[No.46177] 2014/10/05(Sun) 21:03:48

キャラ3名/三人称/約2千字 (No.46133への返信 / 1階層) – サイラス

どうも、サイラスです。何とか書いてみました。よろしくお願いします。それと、自分の技量だと、聖女と管理官に名前を付けないと、話が回りそうにないので、勝手に名前を付けさせていただきました。
(要請があれば、このスレを除外して、名前を消して、何と書きなおします。)

ー本編開始ー

片桐広人(カタギリヒロト)は、純研究派に属する青年だ。彼の研究は、魔法体系や魔力源の解析、附随として、異世界の技術を実用化することである。そのため、彼の部屋には、様々な国や次元の物品があるのだが、それが、時々、厄介な事柄を、彼に舞いこませる。
「まったく……これで、何度目ですか……」
「ごめんなさい……」
壁に大きな穴が開き、嵐がとったかのように物が散乱していた部屋で広人は、ため息をつきながら、目の前の金髪の少女に目を向けた。綺麗な顔立ちに、ピンクを基調としたフリルの多い衣服に身を包んだ少女が、怯える小動物のように正座をしていた。
「片桐君の部屋に行ったとき、可愛い指輪があったの、それを、はめたことを忘れて、部屋に戻って、魔法少女ごっこやったら……」
少女、無垢の聖女の言い訳を、聞いた途端、広人を頭を抱えた。またか……
無垢の聖女と呼ばれ、魔力も、容姿も一目におかれる、彼女にも唯一の欠点があった。それは、可愛いものに目がなく、ついつい手に取って、身に着けたりする癖があるのである。しかも、彼女は、魔法を使用する度に、精神年齢が低下する関係上、記憶力が弱く、衝動的な行動を取ってしまうため、時々、自分が、身に着けていた物のことをド忘れしてしまうことが多く、よく彼の部屋から物を持ち出しては、今回のように、トラブルになることが多くなってしまう。今回も、身に着けるだけで、小規模の竜巻や衝撃波等、簡単な魔法を放てるようになるエメラルドの指輪を持ち出して、大好きな魔法少女の真似をして、こうなったようだ。
「ごめんなさい……」
聖女の目は、潤み、ヒクヒクと嗚咽が聞こえてくる。
「ああ、泣かない。泣かないでください。」
広人は、聖女をなだめるように言うが、広人の声を聞いた途端、聖女の嗚咽が鳴き声に変わり、部屋一杯に響き渡った。泣かれたって困るよ。と広人は、思いつつ、聖女の頭を撫でていると、
「なんだね、いったい……って、これは!」
と一人の中年男性が、部屋に入ってそうそう、目を丸くした後、部屋を見渡していた。
「アーサーさん、実は……」
と広人が、これまでの経緯を。アーサーと呼ばれた中年男性に説明した。最初聞いていて呆れたものの、しょうがないなと言わんばかりに、泣き続ける聖女に屈むと、
「泣くんじゃない!!」
一喝するように、アーサーが凄みを効かせ、聖女に怒鳴った。すると、聖女が、ぴくっと震えた後、顔を挙げる。それを確認すると、アーサーは、少し微笑んでから、
「泣く前に、広人君に、指輪を返しなさい。そして、謝るんだ。」
アーサーの言葉に、聖女は、一瞬戸惑うが、
「その指輪は君のじゃないよね?なら、きちんと返して、謝りなさい!そしたら、広人君も許してくれるから……」
とその言葉に、安心したのだろう。聖女は、自分の左指にはめた指輪を外し、広人の前に歩み寄った。
「ごめんなさい……」
といって、広人に指輪を差し出した。
「もう二度と、可愛いものがあっても、持っていきませんか?」
「はい。広人君を困らせないよう気を付けます。」
その言葉を聞いて、指輪を受け取り、聖女は、曇りが晴れたかような笑顔になる。
その表情を見て、広人も、少し困りながらも笑みを返した。
「はいはい、ちゃんと謝ったことだし、フィアーセ君、部屋が直るまで、食堂に行っておいてね。直したら、呼ぶから……」
とアーサーが、手を叩きながら、純潔の聖女フィアーセに部屋を出るように促し、フィアーセも部屋を後にした。
「すいません。アーサーさん……」
広人は、すまなさそうにアーサーに礼を言った。本当だったら、自分ひとりで、処理をしないといけないところを、求愛の管理官こと、アーサー・イングランドの手を煩わせてしまったのだから。
「なに、たいしたことないさ。このくらいの損傷なら、私の力なんか使わず、上下派の左官どもにやらせればいい、すぐに治るさ……」
その言葉を聞き、光景が想像できてしまい、広人は、吹き出しそうになり、それにつられて、アーサーも笑う。
「それに、君は、私にとっては、助けた命でもあり、恩人だ。その存在がいなくなると、私も困るのだよ……」
アーサーの言葉に、広人は、表情を引き締めた。
アーサーの代償魔法「ベレルの舌」は、愛する女性の愛情と引き換えに、様々な魔法を仕えるとされていた。しかし、実態は、「愛する女性の愛情と知人の頭の中にある契約者の名前」。つまり、愛する女性からの愛情を削ぎ、知人の記憶から、契約者の名前を消していくことで、様々な魔法を行使できるものだった。そのため、アーサーは、この研究所では、求愛の管理官、管理官等の通り名や通称でしか呼ばれない、何故なら、魔法を使った際に、記憶が消されているうえ、求愛の管理官という二つ名のほうが、その人をよく表していたからだ。しかし、広人は、彼の名前を覚えている。それは、彼は、アーサーの代償魔法で蘇生した人間で、ベレルの代償魔法で蘇生した人間からは、アーサーの名前を消すことはできない例外的な存在だからだ。その彼が、アーサーの妻の部下であることで、アーサーの妻は、アーサーの名前を認識し、彼の存在を、彼女の中に、繋ぎ止めてもいた。
「それは、俺もです……」
と広人も真顔でアーサーに受け答えにした
片桐広人、彼は、この研究所では、新人の部類でもある。ただ、彼に目標があった。それは、命の恩人、アーサー・イングランドの名前を、この研究所の皆が忘れないようにすることだ。

ー本編終了ー

本当は、もっとキャラや設定を増やして、コメディー的なものを書きたかったのですが、技量不足のため。今の形にしました。ご意見、お願い致します。

[No.46180] 2014/10/05(Sun) 23:38:36

Re: キャラ3名/三人称/約2千字 (No.46180への返信) – ジジ

おつかれさまです。
王道のリリカルを読ませていただきました。

同じキャラでも、人によって見方が大きく異なるものですね。感慨深いです。
名前等は、それぞれでつけてしまってまったく問題ありません(人によってちがう名前になっても大丈夫です)。個人的には「アーサー」って名前負けしすぎ! と思わなくもありませんが。なんだか、モーナーとかムーネーとか、な行とま行のイメージがあります。

[No.46182] 2014/10/06(Mon) 11:31:05

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