ラノベ研シェアワールド企画7

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Re: 代償派になりたい! (No.46436への返信 / 2階層) – ジジ

おつかれさまです。

キャラふたりとは思えないにぎにぎしさで、楽しく読ませていただきました。このスタイルの作品は、説明しすぎてくどくなりすぎたり、逆にすかすかになりやすいので、それを引き起こさずに密度を上げられるのは武器になると思います。

ネタ的には、丹の効能がちょっと複雑なので、わかりやすい設定にできるとキャッチーですね。たとえば「量」が重要(たくさん食べると効果大、少量しか食べないから効果小)だと、女子ふたりが無意味に丹を食わせ合ったり、または食い合う展開にできたりします。

また、聖女はこの作品内容だとあまり生きないので思いきってカットするか、使うなら、自分が捧げる(フランシスカにとってもっとも恐ろしい)代償としての丹を開発するお話にして、そこにジェシカの豊胸丹をからめる……という展開はひとつアリかなと思います。

[No.46440] 2014/10/12(Sun) 06:55:37
会議はまわる、金がふる・ちょい修正 (No.46421への返信 / 2階層) – まーぶる

定員十人程度の小さな会議室。そこにある円卓では、四人が話し合っていた。
「我々純研究派はこれだけの予算を要求する」
髭をたくわえた大柄な男ラジャが言った。
「ちょっと、それじゃ、予算の七割が純研究派に行くって事じゃない」
髪をボリューミーなネジネジカールにした女、ネーアが立ち上がる。
「ふん。研究には金が掛かるんだ。奇声をあげるだけの上下派に金なんて必要無いだろ」
ラジャはそう言って、自分の顎髭を撫でる。
すると、今度は犬が吠える。
「私達食堂派も、調理器具や食材などに結構お金が掛かるんですがね」
「ふん。犬っころの分際で。どうせ豊胸丹とか下らないもん作るだけだろ、お前らは」
ラジャが犬を睨み付けた。
「へえ、食堂派には喋る犬がいる聞いてたけど、思ってたよりずっと凄いや。君も自分で料理とかするの?」
白のフードを被った男の子ロンが、犬に顔を近づける。
「代償派の小僧。貴様の所も予算はいらないよな。金を代償にするなんて話は聞いた事がない。大方、力ずくで解決出来ないように派遣されたんだろ。貴様は攻撃を無効化するらしいからな」
「『大髭の業突張り』の名前に偽りなしね。ここ辞めて高利貸しにでも転職したら」
ネーアが座ってタバコに火を付けた。その様子を見た髭が舌打ちする。
「ちっ、研究には資金がいるんだよ『上下派の掃除機者』様。ふん。ダサい名前だ」
「はあ?」
ネーアの声に怒気が混じる。二人が睨み合う。
「予算回さないなら食堂を有料にします。あと、カフェイン丹とかグッスリン丹。値上げするしかないかな。売れ筋だけに材料費が、ねえ」
「ちょっと待ってよ。それなら、純研究派だけ有料にしなさいよ」
「おい犬。食堂派は畑や家畜の飼育もやってるだろ」
ネーアとラジャが口々に不満を訴える。ロンだけはニコニコと笑顔を浮かべていた。
「色々と特殊で高価な食材もあるんですよ」
「むむむ。では、譲歩して純研究派は六割五分にしてやろう。その分を食堂派にくれてやる」
「結局、上下派には予算付かないじゃないのよ!」
女の髪が浮き、ゆらゆらと揺れる。すると、天井からヒラヒラと何かが降ってきた。
「お金だ」
ロンが言う。
四人が拾ったお金を全て合わせると、年間予算と同じくらいの金額になった。
「貴様らには、それをやる。予算は純研究派が貰うからな」
「あはははは。それアンタが貯めてたお金よ。じゃね」
そしてラジャだけが残った。

[No.46442] 2014/10/12(Sun) 12:26:22
求愛の管理官の愛人 (No.46404への返信 / 1階層) – ねね

求愛の管理官の円形脱毛はじりじりと広がりつつある。
これは由々しき事態であり、とてもデリケートな問題だ。
なにせ、ほかならぬ妻の愛が急降下しつづけていることの証だから。
このまま愛が消え去ってしまえば、魔法研究所はスポンサーを失ってしまう。
そうはさせまいと派閥を超えて『求愛の管理官、妻の愛を再び☆委員会』が発足されたのは、つい最近のことである。
主な任務は脱毛具合をミリ単位で監視すること。そして、広がり具合を阻止すべく対策を練ること、だ。
練り練りされた対策は、委員長から管理官に伝えられる。そして、その結果効果はどうだったのかの検証をする。――つまり円形が縮まったか否か。
そして、いよいよもって危ういのでは?と危機が報告されたのは、つい先刻だ。
円形が驚きの広がり……を見せたわけでなく、委員会は思わぬ事態に直面していた。
委員会メンバーのうち2人が当直と称してその日集まっていたのは、管理官の仕事部屋にほど近い会議室だ。
コウは、頭を抱えて呻く。
「ああああ、まずいよ。俺貯金ないし。魔研がなくなったらどーしたらいいと思う? しかも昨日出来上がったばかりの『願い丹』もなくなるし。あれ売ったらかなりの金になったのに!」
「何言ってるんですか、あなたは。諦める前に、やることがあるでしょう」
委員長でもある純研究派のジュリアは、ややレンズ大きめの眼鏡をずいっと押し上げながら、キリリとした顔で諌める。
「だってさあ。求愛の管理官が浮気とか、もう魔研は終わったも同然だろ」
「まだ終わってはいません! 奥様には知られていないはずですから」
「なんでわかんの?」
「円形は今日も安定してます」
「なるほどね。でも時間の問題だろうなあ。どこから耳に入るかわからない」
「緘口令は敷いたので、まだ時間はあります。次は……事情聴取、ですね。例の、管理官の愛人とやら、それに管理官をここに呼びましょう」
「マジで! こりゃ修羅場かな」
コウの目には好奇心がありありと浮かんでいる。
「もうっ! そんな場合じゃないでしょうっ! もっと危機感を持ってくれないと困りますっ!」
「いーんちょうさあ……、そーんな堅苦しいことばっか言ってたら、管理官みたいになるよ。魔法とか関係なく、恋人の愛情なくすよ?」
「そ、そんな人いませんっ! それに……管理官は責任感のある立派な方です。わたしは、そう信じていますから。あなたは、愛人とやらを迎えに行ってきてください。うちの書記が、身柄を確保しています。わたしは管理官のところでまず事情を聴いてみようと思います。では、よろしくお願いしますね?」
念を押すようにジュリアはそう言うと、管理官の元へと向かった。

委員会の書記係から引き渡された容疑者をコウは会議室に連行した。
「すごいね、その服。赤に緑に、黄色。もこもこしたデザインといいずいぶん斬新だな。でもなーんか、どっかでみたことあるような……なんだっけ? んー……ダメだ。思い出せない」
コウは軽口を叩いた。事情聴取のまえに少しでも打ち解けときたいと思ったのだったが。愛人は冷ややかな顔で一瞥する。
件の愛人は思いの外若く、コウは面食らっていた。自分とそう変わらない。14とか、15とか、たぶんそのくらいだ。
気まずい雰囲気が漂う中、容疑者である愛人はあっさりと口を開いた。そして、淡々と語り始めた。
あたし、別に悪くない。
あの人があたしに好きだっていうから、そうなったの。
毎日毎日しつこくて最初はとても嫌だった。
「わたしは、君のことを心から愛している」とか、「君だけが、わたしを癒してくれる」とも言ってた。
もう止めて。そう思っても、あたしは逃げられなかった。
でも、いつも閉じこめられて生活してるあたしを、外に出してくれたのもあの人だった。
嬉しかった。
そんなことされたら、気持ちが揺れる。あの人には、アンがいるのに……。わかってたのに。
今思えば、そのときにはもうどうしようもなかったの。
あの人があたしに愛をささやいて、あたしはそれに頷いた。
研究所なら二人きりになれる。あたしは、それで十分幸せ。それだけでいいの
もうアンの愛がほとんど残ってないのは、あたしにもわかる。あの人は、いつもため息ばかりついてる。
あたしは、あの人のことが好きなの。愛しているの。辛そうなあの人を放おってはおけない。

はーっとコウは深く息を吐き出して、くしゃくしゃと髪の毛を乱暴に手で掻きむしった。
「かんっぜんに、クロ、だな。……委員長、がっかりするだろうなあ。俺も、再就職先、考えないと……あ、待てよ。なあ、確かに奥さんの方の愛は風前の灯火だけど、管理官はさ、違うんじゃないの? 奥さんのことが好きだけど、魔法でどんどん愛情はなくなっちゃうし、以前のような愛を取り戻せないことが辛くて、ため息をついちゃうんじゃないかな」
それなら、まだ望みはある。
「……あの人、アンにはもう何年も愛しているなんて言ってないの。本気でアンの愛を取り戻すつもりがない証拠。あの人が苦悩するのは、あなたたちが強制しようとするから。もう開放して。もうあの人はこれまで十分に頑張ったわ。これ以上苦しめないで。辛そうなあの人を見るのはわたしも辛い」
「や、それは……俺が決めることじゃ……まいったなあ。そこらへんは管理官に訊くしかない、か。たぶん、そろそろ来る頃じゃないかな」
しばらく待っていると、会議室の扉が開いた。
「あれ、管理官は?」
ジュリアは一人だった。
「……その、困ったことになりました。管理官の部屋には、奥様がいらしてるようです……。どうも、口論になっているみたいなんです……。それで一旦戻ってきちゃったんですけど……。奥様は、噂を聞いてしまったのかもしれません」
「アンが来ているの?」
「え。この子が……?」
今気づいたのかジュリアが驚いたように愛人を見た。
「あの人が苦しむのは、ダメ!」
扉を閉めようとしたそのとき、二人の間を縫うようにして、愛人は、突如扉の外へと駈け出した。
「あ! 待って」
「そっちはダメ! やめて……行かないで!」
委員長は叫びながら走り出した。コウは慌ててその後を追った。
廊下の向こうの方に、3人が対峙するところが見えた。何やら話し声が聞こえてくる。
最悪の状況だ。委員会メンバーはアンの前に姿を見せるわけにもいかない。
もうこうなったら腹をくくるしかない。
少し離れたところで、ふたりは戦況を見守ることにした。
「あら、あなた、お知り合い?」
「……いや……どこかでお会いしましたか?」
管理官がそう尋ねると、愛人はあからさまに表情を変えた。
「あたしが、わからない? あなたのために、ここに戻って来たのに……」
「どういうこと、あなた?」
みるみるうちにアンの表情が曇っていく。
「いや、わたしにもまったく訳がわからないんだが……わたしのために……って、あ。もしかして、うちの家出ペットの情報提供ですか? もう心配でたまらず、妻がわたしを詰りに……じゃなくてペットを探しに来てくれましてね」
管理官とアンは、ぱっと顔を輝かせた。
「昨日は一人ここに泊まるのも寂しくて、ペットを連れてきていたんですが、ちょっと目を離した隙にいなくなってしまいましてね。先ほどそこの掲示板にチラシを貼ったばかりだったんですよ」
あれを見たんでしょう?と指し示された方には、カラフルな鳥の絵が描かれたチラシが貼り付けられている。
「……それは、大丈夫、だから」
「どこにいるんです? 教えてください。あの子は、わたしたちの家族です」
愛人は、はらはらと泣き出した。
「本当にわからない? あたしはあたしなのに。あなたの姿を探していたときに、不思議な形の食べ物を口に入れて、この姿を手に入れたの。これで、やっと、願いが叶うと思った。やっとあなたに言葉を伝えられる。……アーサー、あたしもあなたを愛しているの」
アンは氷ついたような表情で管理官を見つめた。
「な、なにを言っているのかよくわからないんだが……」
「あなたはあたしに言った。愛しているって。 あ。なに、体が熱いっ……ワタシハ、キミノコトヲココロカラアイシテイル、キミダケガワタシヲイヤシテクレル。ソウイッテクレタノニドウシテ」
愛人の言葉は次第に人のそれではなくなっていく。
しゅるしゅると音を立てて、みるみるうちに愛人の姿は鳥へと変わっていった。
「「オウちゃん!」」「お、おまえかー! 俺の“願い丹”返せ―!もごっ」
二人は驚きの声をあげた。ちょっと離れたところから、思わずコウは叫んだが、すぐさまジュリアに口を塞がれた。
二人の家族でありペットである、オウムのオウちゃんは「ピー」と鳴いて答える。
「で、あなた、いったいどういうこと?」
意を決して、管理官はアンをまっすぐ見つめた。
「……君のことを心から愛している」
「それ、オウちゃんに言った言葉なんでしょう?! わたしをバカにしているの?」
「違う! 君に言うために、ずっと練習をしていたんだ。でも君を前にすると照れくさくてどうしても言えなかった」
離れたところから今にも飛び出して行きそうなジュリアを今度はコウが抑える。――委員会が練り練りした提案は照れくさいという理由でおそらくほとんど実行されていなかったのだ。
アンはオウちゃんを胸に抱き、管理官の腕を掴むと、歩き出した。
「え、ちょっと。奥さん、どこへ行く?」
「うちの寝室」
「え! なにしに?」
「あなたって……さっきの言葉が本物か確かめるためよ。オウちゃんとわたし、どっちが好きか、はっきりしてもらおうじゃないの」
アンはオウムに嫉妬の炎をメラメラと燃やしていた。
それが、妻の意地だろうと女のプライドだろうと、愛の復活の兆しには違いない。――無骨で情緒に欠ける管理官はそういう妻の機微にはまったく気づかない。それこそが愛を取り戻せずにいる元凶なのに。
委員会は『求愛の管理官は、妻とはなにかを理解すべし!委員会』と名を改め存続することがその後の会議で決定された。

[No.46444] 2014/10/12(Sun) 14:48:21
Re: ★コメントです (No.46425への返信 / 3階層) – 雷

> 真っ向からシェアードストーリーと向き合った良作ですね。
ありがとうございます。
「他作品から女性ゲストを2人借りる」という謎の縛りをかけてつくりました(笑)

> > ……詰め込みすぎたな。
> この部分はそうですね。セリフが完全に説明になってしまっている部分がちょっと目立ちます。
> セリフの説明化により、ミラとリナの区別がつきにくくなっている感がありますので、意図的にわかりやすくするエピソードを挟んでしまいたいところですね。
> この場合、ディアーヌの役割をリナに渡し、オチの伏線を張ってしまうなどが考えられます。
いろいろ考えどころですね。

コメントありがとうございました。

[No.46445] 2014/10/12(Sun) 18:17:13
Re: さすらい。あきない。はじらい。 (No.46431への返信 / 3階層) – 雷

わをんさん、こんにちは。

> うちのディアーヌを使って頂いてありがとうございます
勝手に使っちゃって、すみません。
ディアーヌちゃんにゲスト出演してもらおうと決めたら、オチも決まりました(笑)
とにかく、あの台詞を言わせたかった(爆)

> 読んでいて、すごく自然な形で動いているのでびっくりしちゃいました
> というか、ディアーヌもそうですがキャラクターがみんな活き活きとして感心してしまいます
> 恥ずかしがるミラの仕草なんか可愛くて目に浮かぶようです
そう言ってもらえると嬉しいです。

登場人物は、なるべく自然に、表情や仕草も織り交ぜながら書こうとがんばっています。
実践するのは難しいですけどね。

ご感想ありがとうございました。

[No.46446] 2014/10/12(Sun) 18:28:31
感想の返信 (No.46404への返信 / 1階層) – サイラス

こんばんは、サイラスです。ご意見ありがとうございます。
そのまま、返事と行きたかったのですが、新スレになっていたので、ここに書きます。

>意見というほどのものではありませんが、コスプレ衣装(そのキャラになりきる夢のアイテム)にハサミを入れるというのは、幼女ならぬ(幼女はときどきわけのわからない思考でやらかしてしまうことがありますので)読者には納得しづらいのではないかと思います。ですのでハサミを入れるなら、それをすることでパワーアップ衣装である○○フォームになる……というギミックをひとつ入れるほうがよいかと思います。

そうですね……聖女の子供っぽさの表現と、その後のラッキースケベにつなげる為にやらせたのですが、好きなキャラの衣装に、鋏を入れるを、少しためらうということもあり得ますね。それに今回の露出の多い衣装をパワーアップ時の衣装という設定のほうが、聖女にためらいなく鋏を入れてもらえるし、部屋の惨状の説得も増します。
「しかも、○○フォーム、可愛いでしょ☆」と言せ、それに、広人やカーネルが突っ込むなど、表現の幅も増えるので、いいですね。

>あと、これはスタイルに関わることですので、あくまでも私の感想ということになりますが。
>一文が長い傾向がありますので、二文か三文に分けるほうがよいかと思います。その際は読点と三点リーダーも整理して、減らす方向で。かぎかっこの段落下げも、特別な理由がないなら詰めるほうがいいですね。

個人的には、地の文が長くないし、セリフもほど良く(?)入っているので、これは悪くないと思っていたのですが、気を付けていきたいです。

[No.46449] 2014/10/12(Sun) 19:42:07
Re: 求愛の管理官の愛人 (No.46444への返信 / 2階層) – ジジ

おつかれさまです。

意外なほどネタになってますね、管理官。
研究所の未来もありますし、取り戻してほしいですね。夫婦の愛。

個人的には、愛を叫ぶオウムが艱難辛苦を乗り越え、奥方へ管理官の愛を伝えに行く。奥方の反応やいかに? という流れもよいかなと思いました。
というように、想像力くすぐられる短編でした。

[No.46450] 2014/10/12(Sun) 20:21:22
Re: 会議はまわる、金がふる・ちょい修正 (No.46442への返信 / 3階層) – ジジ

この展開だと、予算額が気になりますね。なにせヒゲの人のポッケマネーでまかなえる予算ですからね。
各派自給自足が進みすぎているせいで、すごく小さな額を取り合うのもおもしろげです。「ヤツらに1円でもやるもんか」の精神で。

こういうふうに、想像のタネになる話はいいですね。ついシェア欲が沸いてきます。

[No.46451] 2014/10/12(Sun) 20:26:11
Re: 感想の返信 (No.46449への返信 / 2階層) – ジジ

> 「しかも、○○フォーム、可愛いでしょ☆」と言せ、それに、広人やカーネルが突っ込むなど、表現の幅も増えるので、いいですね。
実によいと思います。
まあ、私はすぐ案を出したがるのですが、それもこれも元になるネタあってこそです。このネタは案を出したくなるネタでした。

[No.46452] 2014/10/12(Sun) 20:34:30
Re: 求愛の管理官の愛人 (No.46450への返信 / 3階層) – サイラス

> おつかれさまです。

少し横やり失礼します。

>
> 意外なほどネタになってますね、管理官。
> 研究所の未来もありますし、取り戻してほしいですね。夫婦の愛。

逆に、聖女をネタとしてを扱った人間(?)としては、管理官って、ギャップが聖女よりも大きいから、やりやすいだろうなというのがあります。能力は、拡張性が高く、それでいて、奥さんの愛だけはどうにもならない。というギャップは、色々、想像を擽ることがあります。
また、男性のため、扱いやすいのではないでしょうか?

> 個人的には、愛を叫ぶオウムが艱難辛苦を乗り越え、奥方へ管理官の愛を伝えに行く。奥方の反応やいかに? という流れもよいかなと思いました。
> というように、想像力くすぐられる短編でした。

そうですね。あと、個人的には、委員会に、管理官がいつの間にか入っていて、それがのちのち、戦隊を結成に……というのも、考えてしまいました。

[No.46453] 2014/10/12(Sun) 20:50:28
二度もありがとうございます (No.46451への返信 / 4階層) – まーぶる

> この展開だと、予算額が気になりますね。なにせヒゲの人のポッケマネーでまかなえる予算ですからね。
> 各派自給自足が進みすぎているせいで、すごく小さな額を取り合うのもおもしろげです。「ヤツらに1円でもやるもんか」の精神で。
>
> こういうふうに、想像のタネになる話はいいですね。ついシェア欲が沸いてきます。

誉めていただけて恐縮です。
元々のスタートが、他の方とは違う側面から世界を切り取る事でした。
今回は、ある程度は上手くいったのかな、と。
今後は、作中の彼らを皆さんに使って貰う事で、上手く世界を繋げてもらえたら、と思ってます。

[No.46454] 2014/10/12(Sun) 22:39:13
お二人へ返信です。 (No.46444への返信 / 2階層) – ねね

ジジさん

管理官はネタにしやすい反面、中年男性なので、ラノベと思うと、妻共々、真正面には据えられないので、キャラの立ち位置とか、話の構成とか、なかなか悩ましかったです。
タイトルありきで話をつくってしまったために・・・。

あと字数4000字はいろいろと勉強させられます。
遊びがなく、ピシっと枠を埋めていった感じになってしまいました。
> 個人的には、愛を叫ぶオウムが艱難辛苦を乗り越え、奥方へ管理官の愛を伝えに行く。奥方の反応やいかに? という流れもよいかなと思いました。

これも面白そうですね!

引き出しが少なすぎるので、もっといろんな話のパターンを考えられるようにならなくちゃいけないなと思いました。

サイラスさん

聖女も今考え中ですけども、やっぱり難しいですね~。ネタが全然固まりません。
管理官の方が、使い勝手が良いです。不憫な感じとか、哀愁漂ってそうとか、身近にいろいろ参考にできそうな人も多そうなタイプなので、想像しやすいです。笑
聖女はわかりやすい萌えキャラにしたいんですけど、力不足で上手く描けません。。。

戦隊、いいですね!
早速ちょこっと書き進めてみました。
書ききれるかわからないですが、上手くいったら、また晒してみますね。
お二方、コメントをありがとうございました!

[No.46456] 2014/10/12(Sun) 23:34:12
石の塔の魔法使い(改稿版) (No.46404への返信 / 1階層) – 雷

石の塔の魔法使い

(今週中に論文を仕上げておこうかな)
塔の最上階にある自室から、はしごをつたって一階の研究室に下りてきたキイスは、机に置かれていた石を取り上げた。アメジストの原石だ。窓から射し込む朝日を透かしてみると、青紫や赤紫そして金と銀と、様々な色の光が見えた。
机には、紙の束が山積みにされている。魔法の実験の記録を書きつけたものだ。
ここ魔法研究所内では“石の魔法使い”で通っているキイスは、宝石と金属が発揮する呪術的効能を専門に研究していて、純研究派に籍を置いている。今季のキイスの研究テーマは、紫水晶アメジストが持つ、癒しの効能についてだった。
「おじゃましま~す」
明るい声が聞こえて、論文を書く道具を用意していたキイスは、手を止めた。
部屋の扉が勢い良く開いて、分厚いぼろぼろのマントを羽織った女の子が入ってきた。
「ひさしぶり、キイス」
「やあ、ミラ。どうやって扉を開けたんだい」
「結界と封印術と防御魔法の重ねがけなんて、あたしにとっては紙同然だよ」
「魔法だけじゃなく、物理的に鍵もかけておいたはずだけど」
「針金一本あれば、あたしに開けられない鍵は無いよ」
胸を張ったミラに、やれやれとキイスは首を振る。
「お土産を持ってきたよ」
ミラは肩に担いでいた荷物袋を机に置いて、取り出した中身をごろごろと並べていった。バハムート魚の大鱗、ファラク蛇の抜け替わりの牙、ルフ鳥の羽根、クジャタ牡牛のたてがみ……。
「どれも、南の砂漠に住む魔法生物の体の一部だね」
他にも、植物の皮や葉、色々な書物がある。
「今回は、南の砂漠の国を旅したのかい」
「うん。キャラバンと一緒にオアシス都市を巡ったんだけど、おもしろい旅だったよ。研究所のみんなに、いいお土産も手に入ったし」
「また貴重な魔法生物を狩ってきたわけだ」
「あたしは無闇に生き物の命をとったりしないよ」
「ドラゴンの群れを全滅させたことがあるくせに」
「それ、大昔の話でしょ」
ミラは苦笑いした。
彼女は“さすらいの魔女”と呼ばれていて、研究員の中では非常な変わり者として知られている。
もともとは人里を襲うドラゴンを退治するための方法を研究していたのだが、いつのまにか、ドラゴンを含むあらゆる魔法生物の生態まで研究するようになった。いまでは、世界中に生息する魔法生物の研究をするために、しょっちゅう研究所を離れて旅をして回っている。
キイスとは対照的な、生粋のアウトドア派だ。
「今回はとっておきを用意してきたんだ」
ミラは荷物袋の底から、ほら、と小さなガラス瓶を取り出した。
その途端、キイスの目が輝いた。
ミラが取り出した瓶の中には、ゴマ粒ほどの大きさの真っ赤な石が詰まっていた。
「キイスへのプレゼント」
「もしかして、この粒はルビーかい?」
「ジャマル山で産出されたルビーだよ」
「とんでもない高級品じゃないか!」
にかり、とミラは笑う。
「この粒々は、原石を削り出す時に出た、宝飾品とかには使えないクズ石だから、安値で取り引きされてるんだ。小瓶いっぱいのルビーと、キイスがくれた浄水石10個を交換して、おつりが来たくらいだからね。遠慮しないで受け取ってよ」
浄水石は、石英の一種をキイスが魔力で精製して作った魔法石だ。浄水石を水にひたしておけば、水がめいっぱいの泥水を、一晩で、きれいな飲み水に変えることができる。繰り返し使うことのできない消耗品だが、飲み水の確保が重要な砂漠の国々では、宝石以上の価値があるのだろう。
「前に、もっとルビーの研究をしたいけど、サンプルになる石が足りないから困ってる、って言ってたじゃない? だから、ちょうどいいと思って、多めにもらってきたんだ」
「助かるよ。とくにルビーの放熱現象を分析するのに、まとまった数の石が必要だからね。これだけあれば十分だよ。次季の論文テーマは決まりだ。ほんとうにありがとう、ミラ」
「どういたしまして」とミラは満面の笑みを浮かべた。
キイスに喜んでもらったことが、ほんとうに嬉しいようだった。
(これはまた、いい資金源を見つけたな)
キイスは、ルビーの入った小瓶をしげしげと眺める。
魔法の研究には金がかかる。
もちろん研究所に資金を出すスポンサーもいるが、その資金を、研究所に所属するすべての研究員の個人研究に万遍なく行き渡せるのは難しい。だから、自分の研究成果を商品として“外”に売り出し、そうして得た利益を研究費の足しにする研究員もいる。
キイスも、宝石などの呪術的効能を研究しながら、様々な効果を持つ魔法石を作り出して、それを売って得た利益を研究費に充てている。
世界中を旅するミラは、キイスにとっては、自分が作り出した魔法石の販路を広げてくれる、最良のパートナーだった。
「こっちは、変わりは無い?」
ルビー入りの瓶に見入っているキイスに、マントを脱いだミラが尋ねた。
「たまにイザコザがあるけど、平穏なものだよ。そういえば、管理官の髪がまた薄くなったとか、誰かが言ってたな」
「べつに驚くようなニュースじゃないね」
「そう言ってやるなよ。あの人のおかげで資金が入って、この研究所はうまく回ってるんだから」
「研究資金を自力で稼いじゃうような人が言ってもな~」
ミラは机の端に置かれているアメジストに気づいた。
「これが、今度の論文のテーマ?」
「そうだよ。今季のテーマは、アメジストが人体にもたらす影響についてだ」
「アメジストの魔法が二日酔い防止に使えるっていう話?」
「それだけじゃないよ」
無意識のうちに、キイスの声に力がこもる。
「アメジストが放つ魔力を分析して、アメジストが、人体に入ったアルコール成分の分解を早めることを裏付けたんだ。他にも、血液内の老廃物や病原菌を減少させたり、筋肉の疲労を抑える効果を持つことも分かった。まだ実証段階ではないけど、たぶん、心理的な面にも、アメジストの魔力は影響すると思う」
「アメジストを触媒にした魔法を使えば、いろんな病気を治せるってこと?」
「そう言いたいところなんだけどね」
キイスは渋い顔をする。
「マウスを使って何度も実験したけど、アメジストの魔力の効果って、極端に薄いんだ。エメラルドの傷病回復や、サファイアの精神安定に比べたら、ほんとうに微々たるものでさ。今の段階で実用化が期待できるのは、二日酔い防止までだね」
「それは残念。旅のお供にと思ったんだけどな」
「旅のお守りになるような、なにか魔法石を使ったアクセサリをプレゼントしようか」
「えっ、いいの?」
ミラの顔がぱっと明るくなった。
「ルビーのお礼だよ。いつも世話になってるしね」
キイスは宝石や金属の呪術的効能を専門に研究する他に、宝石や貴金属を使った装飾品を作ることもある。これが、ちょうどいい小遣い稼ぎになるのだ。
「うれしい! 楽しみにしてるね」
ミラが、うきうきと笑顔を浮かべた。
そういえば、キイスとミラは、仕事のために商品や金銭のやりとりをするばかりで、お互いに個人的に何かを贈り合うということをしたことがなかった。
どんなアクセサリーを作ってあげれば、ミラは喜んでくれるだろうか。
「キイスは、あいかわらず部屋にこもって研究三昧?」
ミラが、紙の束や木の箱、様々な書物や実験道具が山積みにされている部屋を見回しながら言った。
「まあね、外には滅多に出歩かないよ」
「ついこのあいだ、純研究派の集会があったって聞いたけど、キイスは出席しなかったんだってね。キイスは、ただでさえインドア派なんだから、そういう場所に出て、人と交流するようにしないとダメだよ」
「それはミラの得意分野だろ。僕は、人と話したり、愛想をふりまいたり、気を遣うのが煩わしいんだ」
「塔に引きこもってないで、いろんな人と会って話してみたらいいのに」
「僕が石の研究に打ち込んでるのは、石は何も言わないし、動物や植物と違って気を遣うことがないからだよ」
「人が嫌いなわけじゃないでしょ。あたしとは、こうして話ができるんだから」
「ミラが、僕にとって特別なだけだよ。君となら何でも楽しく話し合えるし、君がそばにいると、それだけで元気をもらえるから」
「そ、そうなんだ……」
キイスのまっすぐな言葉に、ミラは顔を真っ赤にする。
ミラは大急ぎで話題を変えた。
「ええと、アメジストの論文って、いつから書くの?」
「今日から書きはじめようと思う」
「じゃあ、あたしが料理をつくってあげようか。キイスって、研究とか論文を書くのに夢中になると、ごはんも食べなくなるから、飢え死にしないか心配だもん」
「大袈裟だな。でも、ミラの手料理なら大歓迎だ」
「しばらく、ここに泊まってもいい?」
「もちろん。いつものように、最上階の部屋のひとつを空けてあるよ」
「ありがとう」
世界中を旅して回っているミラは、ふらっと魔法研究所に帰って来たときには、かならずキイスが住む塔で寝泊まりしている。キイスが住む塔は研究所の中心にあるので、所内を移動するのに、とても便利なのだ。
「ところで、さっきのアクセサリのことだけど……」
ミラが、指をもじもじさせながら言った。
「その、デザインのリクエストとか、してもいいかな?」
「もちろんだよ。ミラは、どんなアクセサリが欲しいのかな」
「あの……指輪が、欲しい、かな」
おそるおそる、という感じでミラが言った。
「指輪か。それなら、サイズを調べておいたほうがいいね。どの指にはめる?」
「ええと、く、薬指……左の」
「見せて」
キイスは無造作にミラの手を取った。
砂漠や山野を歩き回っているわりに、ほっそりとした、美しい指だった。
「細くて、きれいな指だね」
キイスがつぶやくと、ミラは耳や首筋まで真っ赤になってしまった。
ふたりの付き合いは長いが、こうして手を触れるのは、初めてのことだった。
「しばらくしたら、また旅に出るんだろ」
ささやくようにキイスが言った。
「……うん」
「じゃあ、それまでに、ミラに指輪をプレゼントするよ」
「……うん」
ミラは微笑みながら頷いた。

———-(終)———-

> You、改稿したやつ、次スレに新規投稿しちゃいなよ。
せっかくなので、お言葉に甘えて、手直ししたやつを投稿します。

いくつかのネタをカット、シーンの順番を入れ替えて、
もうすこし、キイスとミラのやりとりに字数を割きました。

ふたりの性格は、もっと対照的にしたかったんですけど、いまはここまでかな。
キイスを、もっとヒッキーっぽくしたいんですけどね~。

[No.46457] 2014/10/13(Mon) 00:16:06
Re: 石の塔の魔法使い(改稿版) (No.46457への返信 / 2階層) – ジジ

おつかれさまです。

焦点が定まって、前作よりさらに「ふたりの物語」になっているのが好印象でした。

ここまで来ると有川浩氏ばりのロマンスべた甘が見たい欲が出てきますね。
冒頭でもう、論文書く手をふと止めたキイスが「ミラに似合うかな」みたいなことを言う。そこにミラが現われるので、「すごいな――魔法みたいだ」。で、ミラが「魔法なんて使ってないけど?」、「それが魔法みたいだ」みたいな。

あと、指輪オチの伏線は、冒頭から中盤にかけていくつか太いやつを張ったほうが映えるかと思います。

[No.46458] 2014/10/13(Mon) 05:27:21
冥府の料理人ノエルのひそかな愉しみ―または、管理官の秘密 (No.46404への返信 / 1階層) – あまくさ

「まったく、近頃は魔蟲共が次から次へとわいてくるな」
《冥府の料理人》ノエルが、うんざりしたような表情で吐きすてる。が、あまり興味はない様子だ。彼女の聖域《ヘスティアの大厨房》からつづくカマド部屋の奥で、何やらイボイボのある緑色の物体を切り刻む作業に余念がない。
「つい先週、この十年で最大級とかいうファンフォンが発生したと思ったら、今度は《猛烈なブラジキニン級》ヴォンフォンですからね……で、オバサン、何、こさえてるんです?」
オバサンと呼ばれた一瞬、純白のコックコートをまとったノエルのすらりとした背中が、ぴくっとふるえたように見えた。そのまましばらく固まっていたが、ややあって。
「……ゴーヤチャンプルだ」
背を向けたまま奇妙な名称を口にした。
「はい?」
ロッシュは眉をひそめた。純研究派の彼でさえ、まったく聞いたことがない響き。おそらく食堂派内部でもごく限られた者だけに伝えられる秘中の秘。怖ろしい霊力を秘めた仙薬か何かなのだろう。
「ゴー……ええと、ゴー」
「何を言ってる?」
ノエルは薄気味悪い物体を刻みおえた刃物を置いて、やっと向き直った。
「ゴーヤチャンプルだ。ふふん、知らないのか?」
「し、知ってるさ!」
ロッシュはムキになった。
「知ってるけど……オレらはまっとうな研究しかしないからなっ。そういういかがわしい脱法丹みたいなものには詳しくないんだ!」
「脱法丹? どうも、ほざいてることがわからんな」
「それで、そのオッパイプルプルってのは」
「……っ! バカ、プルしか合ってないじゃないか、それ!」
ノエルが少し顔を赤らめ、片手で胸もとをかばう。ロッシュの視線がどこに注がれているのか気づいたらしい。
「なんでもいいや。それよりオバサンがきざんでるそれ、何に効くんです? たとえば増毛効果とかないのかな?」
「ないない、これはただの料理だから。あと、何で増毛なんだ? あと、私は二十三だ!」
「へっへ~。大年増じゃん。オレらのあいだじゃ、《蟲の七日間》より前に生まれた人は老人ってことで通ってますぜ。だいたいですね……おっと、ホールドアップ!」
ロッシュはかるく両手をあげて、口をとざした。鼻先寸前に、プルプルをきざんでいた刃物(古い異国に伝わる包丁というものだと後で聞かされた)がつきつけられている。
「ちょうど新しい食材を探していたんだ」
ノエルは目を細め、妙に静かに言った。ロッシュは知っている。この女性は激怒すると、逆に表情やふるまいが静かになるのだ。
「《人脳百珍》という古文書があってな。それによると人の脳は美味い。ゲルダン人の脳はコクがあり、ラ・セ・ヴェルゼンの幼子の脳の味は芳醇にして霊妙と言う。だが、それよりも美味なのは、ツラだけは可愛いがお勉強のしすぎでネジがはずれ、魂の腐りかけた十七歳の若僧の脳だそうだ」
「へへへ。お見事な描写力で」
ロッシュは苦笑して、右手の人差し指を包丁の切っ先にあてて、そっと横にずらした。
「ったく、クソガキが。さっさと用件を言え。増毛ということは、管理官の件だな?」
「さすが、察しがいいですね。あの方のオツムの問題を、どうにかしようと思ってるんです。なんか、超強力な毛生え薬でもありませんかねえ?」
「そんなもの、貴様たちなら片手間に作れるだろうが?」
「それが、薬剤関係はいろいろ規制がうるさくってね。ここにはかなりやべえご法度品が色々あるから」
実際、食材には規制がかなりゆるいのだ。ナントカ丹とか呼ばれているものの多くが、別名を聞いたら腰を抜かすようなシロモノだった。
「じゃ、《ファイラスの死亡名簿》で何とかならんのか?」
「あれの威力は強力すぎて、管理官なんかに使ったら、あの人、即死します」
「まあ、そうだろうな」
ノエルはひょいと首をすくめた。そして、つかのま思案の様子。
「強力な増毛ねえ。まあ、なくもない」
「ありますか?!」
「アンポン丹なんて、どうだ?」
「はあ?」
ノエルの意外な言葉に、ロッシュは思わず間のびした声をあげてしまった。
「あれって、心臓の薬でしょう?」
「そのつもりで開発されたものだが、そっちはあまり効能がなかった。ただ、思いがけない副作用があってな、男性ホルモンを多大に刺激するんだ」
「ボッキ不全が直ったりするんですか?」
「いや、男のアソコの毛が止めどなく伸びるんだ」
「それ、役に立たねぇし!!」
天をあおいだロッシュだったが、ノエルはにっこりと微笑した。
「そこは、私の腕の見せどころだ。調合を少し変えてやれば、頭髪にだって効果が期待できる。ロッシュくん、よいアイデアをありがとう。求愛のハゲオヤジ、じゃなくて管理官殿には、モルモット、じゃなくて治験のモニターになってもらおう。アンポン丹はかなり毒性も高い危険な薬物だが、なに、大丈夫だろう。たぶん。今度こそ金に、じゃなくて研究所を食育からささえるという我らの崇高な仕事を大いに前進させることができるだろう。くくく」
「……かねがね思ってたんだ。この研究所で一番マッド率が高いのは、実は食堂派なんじゃないかってさ」

「ま、そういうわけで超強力増毛丹の調合は引き受けよう。しかしな、管理官の異常な脱毛現象は、妻の愛が冷えていくことへの心労からだろうとはたしかに皆思っているが。でも愛の喪失は、魔法の代償だろう? 髪のケアなんかして意味があるのか?」
そう聞かれて、今度はロッシュがニヤッと笑った。
「そこですよ。皆、管理官に騙されていたんです。オレはついに彼の欺瞞をつきとめましたよ」
「なんだって?!」
「邪神《ベレルの舌》との契約によって妻の愛が失われていくというのは、彼が自分で言いふらしているだけでしょう? でも、ヘンだと思ったことはありませんか? 彼の魔法って、けっこうショボイじゃないですか。皆が彼を大事にしているのは、奥さんの方を研究所に繋ぎとめておきたいからにすぎない。これ、公然の秘密でしょ?」
「それはそうだが……しかし、だから何だと言うんだ?」
「管理官は、ウソをついていた。彼が邪神と契約してるのは本当なんだけどね。でも、代償に失っているのは、妻の愛なんかじゃない」
「じゃあ、何を失っているって言うんだ?!」
「簡単なことじゃないですか。彼が魔法を使うたびに失っているもの。あるじゃないですか? 皆、見てるじゃないですか? 気がつきませんか?」
「ま、まさか?! 髪の毛か?!」
ノエルが驚愕の声をあげる。
「そうです。そうなんですよ! 求愛の管理官が魔法を行使する代償に失っていたもの。それはズバリ、髪の毛だったんです」
「そ、そんなマヌケな代償魔法なんて!」
「そう、マヌケですよね。それが、あのオッサンが皆にウソをついていた理由なんです。髪が抜ける代償魔法なんてあまりにみっともないから、対面を取り繕おうとして、妻の愛なんてもっともらしいことを言っていたんですよ」
「しかし、実際に奥さんとの仲は冷えきっているらしいじゃないか?」
「管理官は結婚したころは、すらっとしたイケメンさんだったそうですね? それがどんどん異常なスピードでハゲつづけ、そのせいか性格まで卑屈になっていった。そんなダンナに普通にゲンメツしただけでしょうね」
「なんてこった! 原因と結果があべこべだったのか」
ノエルはすっかり萎えてしまった様子で、ふらふらとかたわらの椅子に座りこんだ。
その前で、小柄で童顔のロッシュが得意そうに胸をそらす。
「真実なんて、そんなものです。そして皆、こんな簡単なことに気がつかない。答えは目の前にあるのに、誰も見ようとはしない。正しい答えにたどりついたのは、オレだけです。たった、一つの真実見抜く。見た目は子供、頭脳は」
「待て、それはやめておけ!!!」
ノエルの絶叫が、大厨房に響きわたった。
*   *   *

「アンポン丹の効果で管理官の頭髪は復活したが、冷えきった妻の愛がもどることはなく、研究所はフロンコンシュタイン財団から予算打ち切りを通告される!」

ノエルが急にひょいと立ち上がり、誰もいない方向に向かって早口にしゃべりはじめた。

「おりしも西の城壁のほど近く、突如、超巨大魔蟲が出現! 研究所はじまっていらいの危機を打開すべく、ノエルとロッシュは二十一年間封印されてきたラーマ神殿の地下に足を踏み入れる。そこで二人を待ち受けていた《黄金の胎児》とは?
そして、第七のヴァルキリー、ジェシクがとった驚くべき行動! 研究所防衛の最後の切り札《鋼のレンコンサラダ》とは?!

『ジェシク! たとえ今のアンタの姿が胸クソ悪いモヒカン少女だろうと、アタシは死ぬまでつきまとってやるんだからね! けっ、ぺっ』

次回、《超巨大魔蟲あらわる!》。さぁて、この次も、サービス、サービス~ゥ!」

人差し指を立ててウィンクしているノエルに、ロッシュの呆れ声がとぶ。
「……あんたも、やめとけ」
お後がよろしいようで。

(10.15)
セリフと地の文の流れがぎこちないと思われる部分を、若干、修正しました。

[No.46461] 2014/10/13(Mon) 09:47:38
永久凍庫の秘密 (No.46404への返信 / 1階層) – へろりん

柔らかな朝の日差しの中、僕は昨日手に入れたばかりの魔道書の頁をめくった。頁をめくる度に古書特有のカビ臭い匂いがぷんと鼻を突く。普通の人ならば、眉をしかめるその匂いにも僕はとうに慣れっこになってしまった。今は寧ろその匂いに心が踊る。頁をめくる度に鼻を突くカビ臭さは、それと一緒に僕に新たな魔法の知識を与えてくれるのだから。
「また魔道書を読んでいるの? ハンス」
だから、こうして声を掛けられてはじめて目の前にお客様が居るのに気づくのもままあることだった。
「シャルロッテさん、来てたんですか」
「今夜《食堂派》の有志が集まって研究会があるのよ。それで預けておいた研究材料を引き取りに来たんだけど」
研究会と言えば聞こえがいいが、《食堂派》のそれがしばしばただの宴会であることを僕は知っていた。そして、研究材料は食材と言い換えられるわけだが、そんなことをお得意様に言えるはずもない。
「勉強熱心なのもいいけれど、店番としては失格ね」
おっしゃる通り商いを営む身としては、全く返す言葉もない。
それで僕は仕方なくいつものように困って曖昧に笑うと、彼女もまたひとつ甘い吐息を漏らした。いつものように。
「全く、男の子のくせに可愛いんだから。食べちゃいたいくらい。困ったときのあなたのその笑顔、反則よ、ハンス」
「ありがとうございます、シャルロッテさん」
「そこは、お礼を言うところじゃなくってよ」
それから、細っそりとした指で僕の顎を持ってクイッと自分の方へと向けさせると、シャルロッテさんは、その素晴らしく整った美しい顔をもう少しで鼻と鼻が触れ合うぐらいに近づけた。
「ハンス。あなたのこと、食べちゃっていい?」
まるで一匹の魚も泳いでいない程の深海の水を、そのまま汲み上げて閉じ込めたように深い青色の瞳が、僕を見つめる。
「からかわないでください」
「あら、お姉さん本気よ」
お姉さんなのは間違いないだろう。それがいったいどれくらかは計り知れないが。確かに見た目は僕よりもふたつみっつばかり年上の二十歳そこそこに見える。が、しかし、彼女たちを見た目で判断してはいけない。彼女の若さも美貌もおそらくは《丹》の恩恵によるものに違いないのだから。
「シャルロッテさん――」
意外に思われるかも知れないが、僕の経験からすると《食堂派》の方が《上下派》よりも欲望に忠実な人が多い。それはきっと人間の三大欲求のひとつ、食を研究の対象とすることと関係している。《ダイエット丹》によりいくら食べても健康を損なう心配がなくなり食に対する欲求が満たされると、こんどはあっちの欲求を満たそうとするわけだ。こうやってシャルロッテさんのような《食堂派》の美女に言い寄られる度に僕はそれを確信する。
「勘弁してください」
だからと言って、じゃけんには出来ない。《食堂派》の人たちは『永久凍庫』のお得意様なのだから。
この『永久凍庫』は、お客様から預かった品物を冷凍保存するサービスを安価で提供している。預かる品物は魔法の触媒がほとんどであるが、頼まれれば買い過ぎたキャベツのひと玉から、その死を諦めきれない恋人の亡骸までなんでも保管する。料金さえ貰えば永久に冷凍保存するのだ。
そして、研究のため大量かつ多様な食材を新鮮な状態で保存する必要がある《食堂派》が当『永久凍庫』の一番のお得意様であるのは自明の理だろう。
そんなわけで僕が困り果てた顔でお願いすると、
「わかったわ。あなたを食べちゃうのは今度にしてあげる」
「ありがとうございます」
今度もなにも、この先ずっと勘弁して欲しいのだが、この場はようやく解放してくれたことに礼を述べておく。客商売の辛いところだ。
「でもね、ハンス」
そう続けて、シャルロッテさんはもう一度僕の顔を覗き込んだ。
「あんまり店番がお留守になってると、オーナーにバイト代減らされちゃうわよ」
「それなら大丈夫です。僕がここのオーナーですから」
「あなたが?」
「ええ」
よほど僕の答えが意外だったのだろう。からかって微笑んだ形のよい唇が、少しの間だけポカンと開いた。
「じゃあ、あなたがこの強力な冷気を作っているの?」
「いえ、違います。術者は僕じゃありません」
「なのに、あなたがオーナーなの?」
「ええ」
「ますますわけがわからないわ」
彼女が混乱するのも無理はない。術者が自分以外の者の商売のために、強力な魔法を行使するなど考えられなかった。
だから。
「シャルロッテさん」
「なあに? ハンス」
「知りたいですか?」
「何を?」
「この『永久凍庫』の秘密を――です」
僕はシャルロッテさんに聞いてみた。彼女の探究心をあおるように。
「知りたいわ。是非」
予想通りの彼女の答えに、僕はちょっとだけ口の端を緩めた。
「では、こちらへ」
それから僕はシャルロッテさんを地下の冷凍保管庫に転移するための魔法陣へと案内した。
僕が思わず笑ったのを気どられぬように。

「どうぞ、こちらへ」
お客様の品物を保管する最下層の地下十二階まで降りると、それから僕は整然と置かれた荷物の影に隠れた、もうひとつ下の階へと降りる階段へと彼女を案内した。
「保管庫は十二階までだったわね。まだ下があったの?」
「ええ」
そう返してひとつ微笑むと、僕は先に立って階段を降りた。一歩、また一歩ステップを降りる度、凍てついた靴音が冷たい空気に響く。
やがて完全に下まで降り切ると、景色から色彩が消えた。
公式には知られていない地下十三階のフロアを、熱を発しない魔法のかがり火が照らす。色彩を失ったモノトーンの中に、ひとりの女の子がいた。
見た目は僕と同じぐらい、十七、八歳に見えるだろう。フリルのついた純白のドレスに身を包み、女の子はアンティークな椅子に腰掛けてうなだれていた。色の無い景色の中で彼女の銀色の髪がかがり火を反射してキラキラと光る。うつむいた顔を長く伸ばした髪が隠し、ともすると眠っているようにも見えるがそんなことはあり得ない。彼女は不安で眠れるわけがないのだから。
「なんなの? この子」
僕の背中でシャルロッテさんが疑問を口にする。それを黙殺して僕は女の子に声をかけた。
「こんにちは、ミーナ」
僕の声に反応して、女の子がゆっくりと顔を上げる。銀色の髪の中から、白い顔がのぞく。まるで作り物のように均整のとれた美しい顔が。
「ハンス――」
女の子の灰色の瞳がこちらを向き、気だるそうに僕の名を口にする。完全に均整のとれたシンメトリックな顔に、しかし、頬に書かれた刺青の文字だけがアシンメトリックだった。
「この子が術者なの? ハンス」
「ええ。術者のミーナです」
聞かれて僕が頷くと、ミーナの色彩の無い瞳が虚ろにシャルロッテさんのことを見た。
「その人、誰?」
「シャルロッテさんだよ。店のお得意さん」
「お得意さん?」
「そうだよ、ミーナ」
僕はなるだけ優しく答えた。小さな子どもに教えるように、出来るだけ優しく。
しかし。
「ウソ」
「嘘なんかじゃないよ。シャルロッテさんは店の――」
「ウソよ! ウソに決まってる!」
「落ち着いて、ミーナ。僕は嘘なんか――」
「ウソ、ウソ、ウソッ! ハンスのウソつきッ!」
「ミーナ――」
必死になってなだめようとするが、僕の弁解はミーナの耳には届かなかった。
「その人がハンスの新しい恋人なんでしょ?」
「いや、だからシャルロッテさんはただのお客さんで――」
「綺麗な人ね。大人っぽくて素敵な人。私なんかよりずっとハンスにお似合いだわ」
「ちょっと待って。ミーナちゃんって言ったかしら。貴女少しはこっちの言うことも聞きな――」
「声も私なんかよりずっと色っぽい」
見かねたシャルロッテさんが割って入ったが、それでもミーナの誤解は解けなかった。
「とんでもないお子ちゃまね。これがあなたが言ってた『永久凍庫』の秘密?」
「ええ、まあ」
「相手にしてられないわ。戻るわよ」
呆れて踵を返そうとするが、しかし、シャルロッテさんの足は凍りついてピクリとも動かなかった。
「なんなの!?」
焦るシャルロッテさんを尻目に、僕はミーナに話しかけた。
「これ以上僕が何を言っても無駄なようだね、ミーナ。僕は上に戻るから二人でよく話し合うといい」
「ちょっと、ハンス! あなた何を言って――」
「うん。そうする」
シャルロッテさんの言葉を遮って、ミーナは素直に頷いた。
「悲しいけど、辛いけど、ハンスがそう言うなら、私この人のお話聞くわ。今までの人みたく、この人が何もしゃべらなくなるまで」
「あなたいったい何を――」
そこまで言ったところで、シャルロッテさんは言葉を飲み込んだ。ミーナの頬に刻まれた刺青の文字から魔道の輝きが発していたから。
『私に愛を。さもなくば死を』
白い頬に輝く文字はそう読めた。
「あなた、まさか《上下派》?」
ミーナは鬱なエネルギーを魔力へと変換し、冷気を創り出す。それは全ての物を凍てつかせた。僕以外の全ての物を。
この冷気が『永久凍庫』の源なわけだが、しかし、ひとつ欠点があった。
冷気を発し続けるためには、ミーナをローテンションに保つ必要があるのだ。だから、僕は定期的にこの地下十三階に女の人を連れてくる必要があった。
僕に言い寄る美人のお客様を。
それはまた、僕が契約した《不実なエイダム》が求める代償でもあった。《不実なエイダム》は僕が不誠実でいる代わりとして膨大な魔力を供給してくれる。それで僕はこうやって愛するミーナを惑わせるのだ。
僕は供給されたその魔力を一度も使ったことがない。
だから、貯め込んだ魔力の使い道を魔道書を読んで探しているのだ。『永久凍庫』の店番をしながら、毎日、毎日。
さて、上に戻って魔道書の続きを読まなければ。
「ハンス、待って! 置いていかないで!」
シャルロッテさんの叫び声を背中で聞き、僕は凍てついた靴音を響かせて階段を上った。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ジジ様、お久しぶりです。
以前お世話になりました、へろりんと申します。
遅ればせながら参加させていただきます。
他の方の作品を楽しく拝見させていただいていますが、遅筆ゆえからみはありません。^^;
有名人も登場しません。^^;
割と明るい作品が多いようですが、本作は暗めのお話となっています。
《食堂派》と《代償派》、それと他の方があまり書かれていない《上下派》の少数派であるローテンションの方を扱ってみました。
久しぶりに掌編のサイズにまとめましたが、四千字に収めるのがめっちゃ難しかったです。
出来れば、いろいろとアドバイス&コメントをいただければ有難いです。
ではでは。

[No.46464] 2014/10/13(Mon) 11:55:52

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