ラノベ研シェアワールド企画11

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「シェアードワールド的なもの」3 (親記事) – ジジ

そろそろ落ち着いてきたかなと思いますが、とりあえず3本めのツリーを植えさせていただきます。

【世界設定】
どこかの世界のどこかの場所にある『魔法研究所』。
魔法を使う者の寄り合い所として作られたこの施設には、いろいろな場所から魔法を研究するため、さまざまな者が集まっています。その研究と人員の生活空間確保のため、施設の外周では常に改築と新築が行われています。

【研究所の派閥】
この世界において、魔法はけっこう普通に使える代わり、理論体系は確立できていません。魔法を使うための条件が、人によってちがうからです。
その中で、研究所の者たちは研究を進めるため、条件が近い者同士で派閥を作っています。まあ、派閥と言っても政治やら権謀術数やらが飛び交うような生臭いことは一切なく、派閥同士で協力しあう、互助会のような感じです。

派閥は大きく分けて4つあります。
●純研究派=普通に魔法実験や呪文開発、魔法発動の段取り研究などしている派閥です。見た目も行動もごく普通。常識的な者が多いです。ゆえに外の世界との橋渡しの役職に就き、苦労する者も。
●食堂派=魔法と融和性の高い食材の調理法を研究している派閥です。そこで開発された食べ物や飲み物はすべて「丹」と呼ばれます(相撲のちゃんこと同じ感じです)。副産物であるダイエット丹で超モデル体系を手にする者、味見の日々によってむっちり化する者の2タイプに分かれます。
●上下派=テンションを極端に上げることでエッジの立ったキレる魔法を使う派閥です。派生系に、テンションを極端に下げることで圧縮率が高く重い魔法を使う者もいます。その派閥傾向からマッド率が高く、また公式髪型としてモヒカン刈りが推奨されています。
●代償派=超越的存在に代償を差し出すことで、世界救済規模の大魔法を使う派閥です。非常に強力ですが、失うものがあまりに大きいため、派閥としては最小になります。

【研究所の有名人】
今のところ決まっているのは、代償派のふたりだけです。
・無垢の聖女=「壁なるツイナ」という古い存在と契約しており、最大で世界の1/4の範囲を守護できる防壁を生み出すことができます。
ただ、その代償として「心の年輪」を1枚ずつ剥がされてしまうため、18歳でありながら10歳程度にまで知性を落とされています。
彼女には師を同じくする仲の良い弟弟子がいますが、彼のことを、弟様をさらに縮めた「おとうさま」と呼び、慕っています。
・求愛の管理官=「ベレルの舌」という邪神と契約している中年男性。攻撃魔法から治癒魔法まで、必要に応じてなんでも使うことができますが、その代償は「愛する妻の、彼への愛情」。ちなみに彼の妻は研究所の大スポンサーの娘なので、妻の愛がゼロになって離婚されると研究所は解散の危機に陥ってしまいます。
研究所は便利な彼をできるかぎり温存しようと気づかい、彼は彼で冷めていく妻の愛をわずかでも取り戻すため、妻に尽くす毎日を送っています。
【物語のルール】
このシェアードワールドの目的は、「ひとつのシチュエーションを完結させる練習」です。小説はこのシチュエーションをより合わせてひとつの物語を作っていくものなので、そのいちばん小さな単位を作る練習をしましょうというわけです。

ですのでルールは、
●物語は4000字(原稿用紙換算で10枚)以内で完結
●明示されている設定は固定ですが、それ以外にどんな設定やキャラを出しても自由
●誰が作った設定でもキャラでも著作権フリー(応募作や商用への転用は禁止)

他の方の作品を読んで、感じ入ったキャラや設定を持ってくるも自由ですし、それはそれとしてパラレルなものを書いても自由、別設定をかぶせて潰しに行くも自由です。
この研究所で言う掌編の練習用お題なので、練習のためなら手段は選ばない方向で。

創作の合間の息抜きに、または作品づくりのための練習に、よろしければご参加ください。

[No.46572] 2014/10/16(Thu) 22:49:16
ご投稿はこの上にお願いします (No.46572への返信 / 1階層) – ジジ

ご投稿くださる方は、こちらのレスではなく、上の【「シェアードワールド的なもの」3】へ直接レスしてくださいますようお願いいたします。

[No.46573] 2014/10/16(Thu) 22:50:46
へろりんさん作『永久凍庫の秘密』への感想です (No.46572への返信 / 1階層) – あまくさ

へろりんさんの『永久凍庫の秘密』への感想です。
が、「シェアードワールド的なもの」2 のツリーがだいぶ育っているので、お目にとまるかどうか少し不安なものの、こちらに書き込んでみることにしました。

まず。
面白かったです。毒を含んだ独特の余韻を楽しむことができました。
このミニ企画の投稿作は、長い物語の最少単位としての断片から一作として読めるものまで様々ですが、纏まった掌編としては本作が群を抜いていると思いました。文章もストーリー運びも巧み、仄暗い雰囲気、そして他の方の作品にまったく絡まないところも「一人孤高に立つ」という感じで、へろりんさんらしいです。

ただ本作、この一作だけ読ませていただいたとしたら文句のつけようがない出来栄えかと思うのですが、一つだけ気になった点があります。
それは、『二人目のヘレネ』『偽りの玲子』と本作、すべて同工異曲と感じてしまったことです。(『勇者様のお仕事』だけ、ちょっと異質でした。個人的にはあれが一番好きなのですが)
一見、純朴そうに見えて、うちに狂気を秘めた主人公。彼らには顕著な共通点が一つあります。「勝気な女性に侮られる」という設定です。
女性たちは主人公に好意を抱いているように見えるのですが、実は「この子はどう見ても人畜無害。危険はなさそう。ちょっと、からかってやろうかしら?」という感じの本音が透けて見えるんですね。そうして面白半分に近づいて、大変な目にあうという。三作とも、そういう話でした。

似ているからいけないというものでもないのかもしれませんが、趣きの違うストーリーを手がけた時にはどういう作品を書かれる方なのかな? と気になるところではあります。
≪補足≫
『偽りの玲子』の女性キャラ(あえてヒロインとは言いません)は、ストーリー上「主人公に好意を寄せているように見える」「侮っている」ということに当てはまらないのですが、三作並べて読むと何となく似ていることに気づくという感じです。
そういう点で、『偽りの玲子』は、作品としての加工が洗練された秀作なのかもしれません。

[No.46581] 2014/10/17(Fri) 20:46:13
どあのぶさん、感想の返信です。 (No.46572への返信 / 1階層) – サイラス

>こんばんは!どあのぶです。

>前スレを上げるわけにもいかなかったので、こちらで失礼します。

こんばんは、サイラスです。どあのぶさん、感想有難うございます。

>片桐さんの苦労人オーラが、いい味出してますね!
>これからも聖女様に振り回されるんだなーと微笑ましくなりました。

今、作っている作品も苦労しています。ただ、聖女には、振り回されていません。
また、このまま振り回されるのも、考えもの……一歩間違えば、カ……してしましそうで……

>所々次話に繋がりそうな伏線が出てきただけに、続きが気になります。

本当は、続きはあるのですが、広人もカーネルも、そのネタはしたくないと、拒否したため、断念しています。

>あと、キマイラ弁当の味が全く想像もつかなくて、地味に興味が……。
>キマイラ、……入ってるんでしょうか(汗)
世界観をもっと見たいと思える作風も魅力的でした。

これ、適当につけたんですけどね……(汗)
ただ、中身は、キマイラの肉で作った、肉巻きおにぎりと、山菜のおかずが入ったものです。
味は、キマイラだけに、どれとして同じ味はないものの、スタミナはかなりつきます(上下派が、ショ糖以外に食べる数少ない食品のひとつだとか)。
また、これは、今、思いついたのですが、ハーブやマンドレイクと一緒に一晩つけて焼いたものは、接種者に、一時的ですが、毒や呪詛に対する耐性がつく『丹』ともなり、遠征隊のマストおかずにもなっています。

>はさみ描写はお色気に必須ですし、難しいところですね……。
>私がもっと可愛くする!といったデザイナーごっこや、切った布地で聖女様がリボンティアラを作る描写とかあれば、違和感少ないかもと思います。
>更にそれを、聖女様がドヤ顔で片桐さんに見せに来るシーンがあったら、萌えとエロスで二度おいしいと思います。微笑ましいシーンのはずが、格好はアブナイわけで……。

>にぎやかな、いい作品でした。ありがとうございました。

今作っている作品完成したら、改稿しようかな……と思っています。ちゃんとあの話で、終わるように……

では。

[No.46582] 2014/10/17(Fri) 21:54:18
【改稿】秘密の魔研戦隊ゴースト・ファイターズの感想です。 (No.46572への返信 / 1階層) – サイラス

こんばんは、サイラスです。ねねさん、改稿版も読ませてもらいました。

話自体は、展開がはっきりしていてよかったのですが、後半の成仏のシーンで、悪霊(?)が抵抗していないところが、気になります。そう簡単に成仏しないから退治を行う必要を出させるようにしないと、「人畜無害ならほっときゃいいじゃん」と読者は突っ込みます。
また、上とも関連するのですが、悪霊との抵抗の際、ジュリアとコウの衣服、特にスカートや胸部あたりを破壊しておくと、こういう展開もできます。
ジュリアや性転換中の自分の体(正確には、破けたところから見える下着や膨らみ)を見て、コウが鼻血を出す。→なんとか、悪霊を成仏させる。→性が浄化される。→自分が見て、興奮していたものが、実は、キャン○入りのハイグレや、熱い胸板だったショックを覚える(しかも、コサブロウが、それを、勘違い)。そのほうが、シュールに笑える気がします(書いていている、俺って、変態?)。

では。

[No.46583] 2014/10/17(Fri) 22:07:21
石の巨人と風の魔王 (No.46572への返信 / 1階層) – 雷

石の巨人と風の魔王

「お姉ちゃん」と呼ばれても、はじめはワケが分からなかった。
ミラは、目の前に立つモヒカン女性をしげしげと見つめる。
7番目の末娘『魔王』ジェシク。
彼女はそう名乗った。
そういえば、自分にも「姉」と呼ぶ人がいる。
血よりも固い絆で結ばれた、同じ使命を背負った5人の「姉」が。
「もしかして、あなたは7人目の戦乙女?」
「そのとおり! 俺はジェシク。“無垢の聖女”と契約し、シールド石の守護者として心も体も生まれ変わったのさ!」
テンションの高い受け応えと、頭のモヒカンからして、間違いなく上下派だろう。
ジェシクは、こちらの様子をうかがっているテストステロン級の魔蟲の群れを一瞥してから、ミラや火炎放射器先輩と彼の部下を見回した。
「情けねえなあ。これから俺の力を見せつけてやる味方が、たった十人ちょっとかよ。観客が少ねえと、張り合いがねえじゃねえか」
「まさか一人で、あの魔蟲の大群とやりあうつもりじゃないだろうな」
火炎放射器先輩は驚きを隠さなかった。
「だとすれば、おまえは相当にキレてるぜ」
「だろう? 性別の壁すら軽く飛び越えちまったこの俺に、不可能はねえのさ」
ジェシクが自信たっぷりに言ったとき、何の前触れも無く、大地が震えた。
魔法阻害粒子に覆われて砂漠のようになった地面を割って、巨大な魔蟲が姿を現した。さきほどジェシクが倒したブラジキニン級の2倍、いや3倍の大きさだ。
あまりの巨体に、ミラも火炎放射器先輩も、開いた口がふさがらない。
ジェシクが歯を見せて笑った。
「最高にイカシてるぜ。いきなり、こんなでっかいヤツが相手とは、俺のデビュー戦にぴったりの晴れ舞台じゃねえか!」
ジェシクの足元から、再び風が巻き起こる。
「イクぜえ、気合ぶっこんでくぜえ! シク、ヨ、ロ……?」
唐突に、ジェシクはがくりと膝をついた。
肩が振るえ、呼吸が乱れている。
(リバウンドだ!)
ミラはあわててジェシクに駆け寄った。
“無垢の聖女”と契約して戦乙女になった人間は、強大な力を持つ“不可視の獣”を魂に寄生させ、その力を操ることができるようになる。だが、戦乙女になったばかりのときに力を乱用すれば、その反動で、心身に異常を来すことがある。
魂に寄生した獣が、宿主である戦乙女の魂を喰らうのだ。
ミラにも同じような経験があった。
「ミラ、ジェシク、逃げろ!」
火炎放射器先輩が叫んだ。
テストステロン級の魔蟲の一匹が、体が動かなくなったジェシクに飛びかかってきた。
ミラはとっさにジェシクに覆いかぶさって、背中でかばった。
魔蟲のハサミが、ふたりに向かって振り下ろされる。
瞬間、ミラたちと魔蟲のあいだに、巨大な岩が立ちはだかった。
強固な岩のカタマリが、飛びかかってきた魔蟲をはじき返した。
「まったく、上下派のバカどもは後先を考えんから、いつも苦労させられるのじゃ」
幼い声に、ミラは顔を上げる。
見た目は10歳ほどの女の子が、尊大な面構えでこちらを見下ろしていた。
「のじゃババ様……」
ミラは呆然とする。
食堂派の筆頭である重鎮が、どうしてここにいるのか。
「あたしたちを助けてくれたんですか?」
「わしは、まだ何もしとらんよ。その岩は、石っ小僧の仕業だ」
のじゃババが指差した方から、青年がひとり駆けてきた。
「キイス!」
「ミラ、無事かい!?」
「無事かどうかは分からないけど……」
ミラは傷だらけになった自分の手足を見る。
「いちおう生きてはいるよ」
「良かった。遅れてしまって、ごめん」
キイスは安堵の表情を浮かべながら、ミラを抱きしめた。
突然のことに、ミラは体が固まってしまう。
「ほんとうに良かった」
「……ええと、その、どうしてキイスと、のじゃババ様がここに?」
「わしは、その小娘に、この丹を飲ませに来たのじゃ」
言いながら、のじゃババは懐から取り出した錠剤を、意識が朦朧としているジェシクの口にむりやり突っ込んだ。
「わしが特別に作った回復丹じゃ。じきに体の痙攣はおさまり、呼吸も落ち着く」
ミラは内心で首を傾げた。あまりに用意がいい。まるでジェシクがこうなることを分かっていて、丹を作って持ってきたようじゃないか。
「さすらいの魔女、おまえさんの考えは正しいよ」
のじゃババが、まるでミラの心を読んだように言った。
「“無垢の聖女”が、わしに言ったのさ。新しい戦乙女のために、丹を作ってほしいとね。なんでも6人目の戦乙女が、はじめて力を使ったときに体を壊して、再起不能になりかけたそうじゃないか」
のじゃババはミラの頬を優しく撫でた。
「聖女は、おまえさんと同じ苦しみを、この小娘に味わせたくなかったのさ。さて――」
のじゃババは、キイスの背中を思い切り叩いた。
「抱き心地がいいからって、いつまでそうしてるつもりだい、石っ小僧!」
「いてて。のじゃババ様、すこしは手加減してくださいよ」
「ふん。好き合ってる者同士、あとで思う存分ちちくりあえばいいさ。じゃが今は、目の前の敵を排除することに専念しろ」
のじゃババの苦言に、キイスはミラを抱きしめていた腕をほどいて、立ち上がった。
よろしい、と頷いて、のじゃババは超巨大魔蟲を見上げた。
「それにしても、ここまで大きいのを見るのは、『蟲の七日間』以来かの」
「まさか、ふたりでヤツらを相手にするんですか」
火炎放射器先輩が、表情を堅くする。
「このあたり一帯は大量の魔法阻害粒子が散布されていて、あらゆる魔法が完全に無効化されます。俺たち火炎放射器部隊や戦乙女ならともかく、のじゃババ様や、石の魔法使いでは……」
「わしらをナメるんじゃないよ、火の小僧」
のじゃババがすごみをきかせる。
「気合頼みの魔法とは違う、理論と理屈に裏付けされた戦い方を見せてやる」
のじゃババは、また懐から錠剤を取り出した。
「何にします?」とキイスが尋ねた。
のじゃババは、もういちど超巨大魔蟲を見上げた。
「これだけ体格差があるから、成長丹は無意味じゃ。『力丹』と『すばやさ丹』にするとしよう。錠剤の魔法成分を体内に取り込んでしまえば、魔法阻害粒子の影響を受けずにすむ」
のじゃババは選んだ錠剤をごくりと飲み込む。
「では、メインディッシュは、のじゃババ様に譲ります」
「うむ。ザコは石っ小僧に頼んだぞ」
「任せてください」
突然、さきほどミラとジェシクを敵の攻撃からかばった岩のカタマリが、ぐらぐらと動き出した。
岩は、一体の石の巨人に姿を変えた。
同時に、何十体もの石の巨人が、砂に覆われた地面を割って姿を現した。石の巨人は目の前の魔蟲に襲いかかり、殴り蹴り、外殻を砕き、鳴き叫ぶ魔蟲の体を引き裂いていく。
「あれは、キイスのゴーレム?」
ミラは怪訝な表情を浮かべる
ゴーレムは、魔法石を核にして、土砂と岩石から作り出される巨人だ。だが、このあたり一帯では魔法を使えないはず。なぜ魔法で作られた石の巨人が動くのか。
「そうか、ゴーレムの表皮は分厚い岩盤そのものだ」
火炎放射器先輩が手を叩いた。
「だからゴーレムの体内にある魔法石が、魔法阻害粒子の影響を受けずに、ゴーレムをコントロールできるんだな」
「そのとおりです。ちょうどタイミング良く、ゴーレムの核にするのに打ってつけの宝石もありましたしね」
キイスは小さな空っぽのガラス瓶を懐から取り出して、ミラに見せた。
もしかして、とミラはキイスを見返す。
「せっかくミラがくれたルビーを、全部、ゴーレムを作るのに使ってしまったんだ」
ゴーレムの核となる魔法石は、生命の活力を引き出すルビーが最適だ。
だからキイスは、ありったけのルビーを魔法で精製して、ゴーレムの核にした。作り出したゴーレムのほとんどは、ここに連れてきた。残る数体は、研究所の外壁にあるシールド石の守りにつけてある。
「……ごめん」
「ううん、謝らなくていいんだよ」
ミラは微笑んで、キイスの腕に抱きついた。
「あたし、キイスの役に立てたなら、それでいいから」
「こらっ」
のじゃババが、また二人を叱った。
「イチャイチャしておらんで、石っ小僧は、早く通り道を作らんか!」
のじゃババが怒鳴ると、超巨大魔蟲の前に何体かのゴーレムが集まった。
あたりの魔蟲を蹴散らしながら、ゴーレムたちはスクラムを組む。
のじゃババが駆け出した。
ゴーレムたちの背中を蹴って、のじゃババは空高く跳躍する。
そのまま一閃。固く握りしめた拳を、超巨大魔蟲の脳天に叩きつけた。
ぼこり、と魔蟲の外殻のあちらこちらが膨らみ、炸裂した。
のじゃババの拳が与えた衝撃が、魔蟲の全身に伝わり、体内で暴発したのだ。
超巨大魔蟲は地響きをたてながら倒れた。
「ふむ、こんなところじゃな」
のじゃババは地面に下り立つと、ふあぁ、とあくびをして、目元をこすった。
「ねみゅい……」
いくら外見年齢は10歳でも、実際は齢数百年とも噂される老婆なのだ。
体を動かせば、疲れて眠くなる。
「まだです、のじゃババ様!」
キイスが叫んだ。
脳天を割られ全身を粉砕されてなお、超巨大魔蟲は生きていた。
魔蟲は、かろうじて形が残っている前足を振り上げて、のじゃババめがけて巨大なハサミを振り下ろす。
のじゃババは、もういちど大あくびをした。
眠気が強すぎて、魔蟲の攻撃に気づいていないのだ。
「のじゃババ様――!」
「かの敵一切合切討ち滅ぼせ!!」
砂漠に響きわたった呪文が、風を呼んだ。
風は渦巻き、刃となって、のじゃババの頭上に振り下ろされようとしていた魔蟲のハサミを両断した。
風の刃は、そのまま魔蟲の全身を切り刻み、粉砕した。
「ヒャッハ――! あのクソでっかいヤツに、とどめを刺してやったぜ!」
その場にいた全員が、声がした方を振り返った。
ジェシクが、誇らしげにモヒカンを風になびかせていた。
どうやら、のじゃババの特製回復丹が効いて復活したらしい。
「おまえら、この7人目の戦乙女『魔王』ジェシクを誉め称えるがいい!」
「マム、ヒャッハ――!!」
火炎放射器部隊の面々が、勝利の雄たけびを上げた。
砂塵は風に吹き飛ばされ、青空が頭上に広がっていた。

———-(終)———-

これで、ひとくぎりですかね。

勝手に、東湖さんの『ヴァルキリーレディと火炎放射器先輩』の続きを書きました。
だって、ブン投げられたら、ブン投げ返すしかないでしょ!

今回も、聖女様に引き続き、ジジさんの火炎放射器先輩をお借りしました。
東湖さんの味付けを踏まえつつ。

たなかさんの、のじゃババ様は、わをんさんの『瓦礫の隣で』の要素も織り交ぜながら。
ロリばばあって、いいもんだな。

あまくささんのジェシク君(ちゃん?)も、東湖さんの味付けを踏まえつつ。
性転換させたままです。すみません。

[No.46592] 2014/10/18(Sat) 00:44:47

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