女性向け小説で恋愛抜きの男のロマンを書くためには?/新人賞下読みが回答

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2015/10/04(日曜日)ゆいさんの質問

『少女向けで戦記物を書くとき気をつけることとは?』のお返事ありがとうございます。

ラノベですと『織田信奈の野望』や『ユリシーズ』を発表している春日みかげ氏が思い浮かびますね。
これらの作品は読者対象層は男子ですが……。

ラノベはほぼ読まないので、知らなかったです。アニメにもなっている作品のようですので、抵抗感は強いですがチェックしてみます。
ありがとうございます。

ただ、女子向けなのであれば必須なのは「恋愛」と「心情」です。女性が刃を振るう理由は、男性とはちがうベクトルに存在するはずです。そのあたりを膨らませ、さらにはその刃の先なり後ろなりに敵や友将、守るべき王子等の恋愛対象を置く。おそらくここまでは必須の設定になるでしょう。

やはり男性の行動理由とはベクトルが違いますよね。。。
どうも自分の書きたい、書いてみたいと思うものはこの今まで少女向けを目指してやってきた方向とは違うベクトルに憧れるという感じなのかなと思います。

恋や愛ではなく、志、理想を追い求める、いわゆる男のロマンっていうものなんでしょうか。それを自分でも書いてみたい。ただ、それだけならいいんですが、できればそれを同じ女子と共有したいという欲求が厄介というか、それを考えると途方にくれてしまいます。

今回質問したことに対するジジ様の回答も、ごもっとも、というものばかりで、本当に申し訳なくなりました。
自分の欲求を満たすことを目的に創作するには、自分の書きたいものを書いて読者対象を変えるか、読者対象にあった作風に変えるか、どちらかを選ぶべきなんだろうなという結論を突きつけられたような気分でした。

承認欲求と所属欲求が食い違ってるんですね。
そういう自分に凄く嫌になります。

ともかく今一度考えてみようと思います。ありがとうございました。

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●下読みジジさんの回答

ここの部分は非常に重要かと思いますので、しつこくて申し訳ないのですがレスを。

恋や愛ではなく、志、理想を追い求める、いわゆる男のロマンっていうものなんでしょうか。それを自分でも書いてみたい。ただ、それだけならいいんですが、できればそれを同じ女子と共有したいという欲求が厄介というか、それを考えると途方にくれてしまいます。

少女向けでこれを実現しているジャンルは、最近見なくなってしまいましたが「宝塚音楽学校もの」。恋愛を考えなくとも成立するのは「部活もの」ですね。男性向きではありますが、日本橋ヨヲコ氏のコミック作品『少女ファイト(講談社KCデラックス)』(2006/7/21刊行)は参考になるものと思われます。

また、恋愛抜きで女子向きの武侠系浪漫を書くならば、

1.男性と女性では思考の構造がちがうことを作中で明示していく(個人的には、女性の「感情で動く」部分はクローズアップするべきかと考えます。また、比較対象となる男性キャラを置くのが無難ですね)

2.その上で、女性読者の好みに対応したキャラ設定と関係性をつくる(「男性」を担う女性キャラは必要かと思われます)

3.ラノベのようにひとりの主人公を際立たせず、かならず思考や思想を共にする「女性的な横の繋がり」を意識する

……というような、男性的浪漫を楽しんでもらうための環境づくりをひとまずはしてみるとよいかと。

そして、

自分の欲求を満たすことを目的に創作するには、自分の書きたいものを書いて読者対象を変えるか、読者対象にあった作風に変えるか、どちらかを選ぶべきなんだろうなという結論を突きつけられたような気分でした。

この部分ですが、プロは自分ではなく、他人を主体に考えることが求められるものです。これは創作も制作も同じことですね。
ですので、プロを目ざすのであれば、ここは迷うべきところではありません。

ただ、これは読者のことだけを考えて自分を殺せと言うのではなく、書きたいものがあるなら、読者が理解し、受け入れられる形にするにはどうすればよいのかを考えなければならない。というようなことが言いたいわけです。

承認欲求と所属欲求が食い違ってるんですね。
そういう自分に凄く嫌になります。

アブラハム・マズロー氏曰く、欲求の最上位には「自己実現」があります。すべての欲求とそれを求める苦しみは自己実現達成のため。そう考えていきましょう。

追記:有川浩氏の『図書館戦争(角川文庫)』(2006/2刊行)はもうお読みでしょうか? 未読でしたら、ぜひ読んでみてください。

恋愛込みですが、世界観や物語舞台の構築、主人公の心情は参考になるはずですので。

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