電撃四次選考の実績を元に出版社に持ち込みデビュー! 書籍化されるための企画書のポイント10項目

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ライトノベル作法研究所にご来訪の皆様、はじめまして。
界達(かいたつ)かたると申します。

私事ではございますが、今年(2018年)の1月29日に、日本橋出版よりライト文芸小説、「Jに羽根はいらない -Nobody knows the genealogy of their “J”-」を刊行させていただくことになりました。

本作は電撃大賞で四次選考まで残ったものに加筆・改題を行ったものです(かなり昔ですが、当サイトの投稿室でも公開しておりました)。
しかし本作は新人賞受賞ではなく、いわゆる「企画出版」として出版社に売り込み、実際に出版までこぎ付けたものです。

その旨を当サイトの管理人であるうっぴー様にお知らせしたところ、「ぜひ企画出版に関する紹介記事を!」と頼まれましたので、僭越ながらこの場をお借りして記させていただきます(あくまで一個人の経験を踏まえた内容ですので、全ての出版社に当てはまる事例ではないことをご理解の上、お読みいただければと思います)。

そもそも「企画出版」とは「出版社が費用を全額負担して書籍を出版すること」ですが、文芸においては既にプロとしてある程度の実績を持つ方々が行う、一種の営業活動です。

ビジネス書のような分野であれば、本を書いた経験がなくともその分野の専門家であれば話が通りやすいですが、小説は普通、なんの実績もない新人の企画は採用されません。というかまず読まれもせずに門前払いが基本です。
大手出版社であれば、小説は新人賞を行っている場合がほとんどですので、編集部に電話しても「新人賞に出してください」と言われます。

私も普段は新人賞受賞を目指し励んでいる身です(いくつか受賞経験もありますが、流通する本に繋がる賞はありませんでした)。
ですが今回の本は「新人賞は獲れないかもしれないけどどうしても出版したい!」と思っていたので、なんとか賞以外で出版できる道を模索しておりました。

そこでたどり着いたのが、「企画出版」という道です。

しかし前述の通り、大手出版社に持ち込むことはできません。
そこで私は、ど新人の企画でも「とりあえず」読んでくれる中小の出版社に狙いを定めました。

私は普段、大学で出版業についても学んでいます。
そこで中小の出版社は(募集を公開しているか否かに限らず)面白そうな企画がないか探していると聞き、「企画出版」の可能性を考えました。ホームページなどで企画を募集している出版社の方が可能性が高いだろうと思い、今回の企画をいくつかの出版社に送りました。

小説の企画書とはなにを書けばいいのかピンとこない方もいらっしゃると思いますので、以下に項目例をまとめておきます。

①タイトル
②キャッチコピー
③概要(あらすじ)
④著者プロフィール
⑤企画の狙い
⑥類書
⑦類書との差別化
⑧読者ターゲット
⑨目次サンプル
⑩キャラ紹介

ざっとこんな感じです。一つずつポイントを書いていきます。

①……「タイトル」は題名のことですが、この段階では仮題でも構いません。コンセプトを端的に伝える為にあえて「~という話」という書き方でもいいと思います。ただし個人的には、タイトルは読み手の興味をひくかなり重要なファクターですので、企画書の段階でも「おっ」と思わせるようなものをいくつか考えておいて、自信のあるものを載せておくのがいいかなと思います。

②……「キャッチコピー」とは帯に載るような煽り文っぽいやつです。例えば、映画ではありますが、「君の名は。」のキャッチコピーは「まだ会ったことのない君を、探している」でしたね。この場合だと「なぜ会ったことのない人を探しているんだろう?」ということで、気になる感じが出ています。この「私、気になります」をいかに出せるかがポイントです(みんながみんな千反田さんなら苦労しないですけど……)。サラッと期待感を持たせるキャッチコピーが作れる小説は編集者にとっては「売りやすい」わけです。

③……「概要(あらすじ)」は、どういう本なのか大まかに書きます。新人賞と同じで最後まで書いてもいいですが、それだと長くなるので、文庫本の裏にあるようなあらすじでも大丈夫です。そのあらすじが面白そうであれば出版社側から「詳しく聞きたい」と言ってくると思いますので、その際に全体的な構想を話せばいいです。あるいは、企画書に書いた概要とは別に、全体のシノプシスを書いたものを添付してもいいと思います。

④……「著者プロフィール」は略歴の他、出版経験のある方は、書いておくと出版社側が判断する目安になります。「そんなものないのだが……」という方は、企画書の題材と関係のある実績や経験を書いておくといいかもしれません。例えば電気工事士が探偵役をするミステリを企画しようとしている方であれば、なにも書かれていない人より、実際に電気工事士として働いていたり資格を持っている人の方が信憑性がありそうですし、内容も充実しそうですよね。新人賞のプロフィールと違い、更に自分の強みを出せるのが企画書のプロフィール欄です。

⑤……「企画の狙い」は、特に「なぜ今、この小説を出版するべきなのか」に重点を置いて書いていきます。例えば私の場合、企画しようとしたのはバスケの小説で、企画当時は「Bリーグ」というプロバスケットボールが日本で開幕しようかという話題で盛り上がっていました。今後より注目されていくであろうバスケという競技を、ジャンルとして確立されつつあったライト文芸に仕立てて爽やかな内容に……ということを書いていました。自分が書きたいものばかり書いていると、この「なぜ今?」という問いに答えられなくなると思うので、企画背景をしっかり見出しながら狙いを明らかにしていくのが重要です。

⑥……「類書」は、同ジャンルでなるべく売れている作品を列挙しましょう。出版社は紀伊国屋のパブラインデータなどを使い、類書の消化率を鑑みながら企画を決めたりします。いわばそういう系統の話が流行っているかを計ります。当然、類書の消化率が高いほど期待が持てる企画となります。

⑦……「類書の差別化」は、世に出ている同ジャンルとの差異はなにかです。いくら流行りに乗っかろうとあまりに似通った話ではダメですので、違いを明確にする必要があります。小説であれば「異世界転生」は同じだけど「スマホで無双」するか「ありふれた職業で無双」するかの違いで考えると簡単かもしれません。「お仕事系ミステリ」であれば、「ビブリア」と「タレーラン」は「古書店」と「珈琲店」という違いがありますよね。こういった相違点を明確化していきます。

⑧……「読者ターゲット」は、自分が想定している読者層――だけでなく、「どういう人が手に取るのか」をより明確に考えていきます(ライトノベルなど、レーベルで読者ターゲットが確立されている場合は省略されることもあります)。例えば前述した「タレーラン」であれば、単に本好き、ミステリ好きの他にも、普段は本をあまり読まないコーヒー好きの人を取り込める可能性も出てきます。私は特に、この「普段は本を読まない層」にも手に取ってもらえるかが重要だと考えていますし、小説を書く上で大変意義のあることだと思っています。

⑨……「目次サンプル」は、なぜ記述しなければいけないかピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。ビジネス書をよく読まれる方は、意外とこの「目次」を見て購入される方がいらっしゃいます。いわば一覧性が生まれ、端的に内容を知る目安になるのです。小説では少し難しいかもしれませんが、これも短いキャッチコピーと思って、真剣に書いてみることをおすすめします。試しに、人気作の目次を見返してみてください。良い作品は、目次までもが、物語の雰囲気作りに役立っているかと思います。

⑩……「キャラ紹介」は長々と書かず、主要人物のみ、しかも名前などの基本情報以外は「その人物を一言で表現すると」くらいのコンパクトさで書いてください。インパクトのあるキャラであればたった一文でも目を引く紹介文になります。逆にそうならない場合は、キャラが弱い可能性が高いです。キャラクター一人一人にもキャッチコピーをつけるイメージで書いていきましょう。アニメのホームページなどのキャラ紹介を参考にするのも手です(大体、手短でキャッチーな紹介文と、そのキャラ特有の台詞が抜粋されていることが多いですよね)。

以上の企画書をA4用紙二枚くらいにまとめます。
企画書作りはワードでもエクセルでもストーリーエディタでも構いませんが、最終的には出版社側が読めるデータ形式が望ましいです。

この他には、私は⑧で想定した読者層から割り出した初版部数などを「出版にあたっての要望」としてまとめ、記載しました。また、既に完成していた分の原稿も一緒に送りました。全てでなくてもいいので、雰囲気を掴んでもらう為にサンプル原稿を送付するのも一つの手です。

長々と書いてきましたが、これで企画が通れば、あとは出版社側と契約の話になり、より綿密に企画について話し合うこととなります。
私は部数や印税にはあまりこだわらなかったのですが、装画を担当されるイラストレーターの方については言及しました。
内容を充実させることも重要ですが、ライト文芸はパッケージも重視されます。
一つの「物」として持ち続けてもらうことを考えれば、より「大切にしたい!」と思ってもらえるような、そんな素敵な表紙にしたいと思ったのです。

もちろん好きなイラストレーターの方にご担当いただきたいという私情も根底にありましたが、そういう部分もプレゼン次第で実現できる可能性があります(実際、私は大好きだった秋月アキラ様に装画をご担当いただけました)。

企画もそうですが、ただ「好きだから」という感情だけでは中々難しいです。企画出版はすなわち「出資してください」と頼み込む行為です。「好きだから」「本にしたいから」と思うことは構いませんが、その熱意を納得してもらえるだけの材料を揃えられるかが企画出版の鍵になってくるかと思います。

新人賞で苦戦されている方で、どうしても「本を出版したい」とお考えでしたら、「企画出版」の道にもトライされるのもいいかもしれません。
小説を完成させるのには時間がかかります。
しかし企画書であれば、比較的短時間に作れます。

仮に「企画出版」が成功しなかったとしても、企画書制作はプロになればおのずと行うようになることです。
その練習と思って、企画書を作ってから執筆してみてもいいかもしれません。

新人の分際でありながら、長々と駄文失礼いたしました。
少しでも多くの方のお役に立てる文章となることを願いまして、ここに擱筆いたします。

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