第4研究室 創作に関するQ&A 208P | トップへ戻る |
OYUさんからの質問
 一人称の難しさとは?
 
 ずーと疑問だったのですが、一人称は具体的にどんなふうに難しいのでしょうか?
 どなたか教えてください。お願いします(_ _)


● 答え ●

レディマンさんの意見
 どうもこんにちは、レディマンです。

 自分は一人称が苦手です。なぜなら、視点移動が困難だからです。

 三人称ならば視点移動しても、あくまで外側から別のキャラを見ているのですが、
 一人称ではこうはいきません。
 もちろん一人称でも視点移動することがあります。この場合、2パターンあって、

1,Aというキャラ視点から三人称視点になる
2,Aというキャラ視点からBというキャラ視点になる

 1はやめておいたほうが無難です。十中八九、違和感が生まれます。
 もちろん、人によっては平気だと思う人もいますし、うまくやれる人もいます。
 しかし、リスクが高いのも事実でしょう。
 
 2は一般的にやられています。1よりはリスクが少ないでしょう。
 ですが、自分はあまりやりません。

 自分が読者のときにそういう作品に出会うと、視点移動のときに詰まるからです。
 Aに10感情移入していたのに、B視点になるとまた0から感情移入することになり、
 いつまでたっても100感情移入できないからです。


 一人称が難しいというのは、ここにあります。
 視点移動ができなくなると、Aのいる場面しか描けなくなります。
 Bがどこで何をしていようが、読者は知ることができないということです。
 真実が異なっていようが、Aが知っていること、見たこと、
 体験したことが読者にとっての真実になってしまいます。
 隠された真実を追うミステリーなんかは、一人称が書きやすいそうですが、
 自分は書いたことがないのでわかりません。

 自分が一人称は難しいと思う理由はこんなところです。
 ところで、三人称のほうがどう書いていいかわからんという人のほうが多いような気がするのは、
 私だけでしょうか。……私の周りに多いのかな? では、レディマンでした。


jogtyさんの意見
 私の場合ですが、キャラクターの独白である地の文に作者の地が混じったり、
 作品の最初と最後のほうで登場人物の口調や性格に若干ブレが生じるところが、難しいですね。



優奈さんの意見
 得意不得意の問題かと思います。
 一人称の難しいところは、主人公視点でしか書けないところと、
 主人公の頭が悪かったり、幼かったりすると、
 難しい語彙を使ったときに疑問符がでてくるところですね。

 ですが、最近では一人称でも途中三人称に切り替えて書かれている小説もありますね。
 あと、ほぼ三人称の一人称とか。


草葉光輝さんの意見
 三人称主体なので些か答え難いのですが……

 一人称と三人称の間に難度の違いは無いのではないかと思います。
 それぞれにメリットやデメリットがあり、
 求められるのは得手不得手の違いだけなのではないでしょうか?


 将棋の名人がチェスでも強いわけではないって事ですね。
 要はルールががらりと変わるから、片方に偏っている人は難しいと感じてしまうのでしょうね。


みつきさんの意見
 OYUさま、こんにちは。

 一人称というのは、とにかく、視点者の見ているもの、聞いているもの、感じていること、
 知っていること、そういうものでしか文章を構成できないというお約束になっているんですよね。
 その点がやっぱり難しいなと思います。

 
 厚めの文庫本一冊分くらいの作品を一人称で書き始めてしまって、
 はたと気付いた時には、そのあまりの自由度のなさに泣きたくなってきてしまいました。
 片足でケンケンしながら、学校に通学しているような気分に近いでしょうか。
 本当に不自由です……。

 その代わり、四百字詰め原稿用紙で80〜120枚くらいの短編を書く時には、
 凄く使いやすいものだと思いました。


 それでは、これにて。失礼させていただきますね。


兼子さんの意見
 こんにちは。
 一人称の難しさについて。これは私も質問したかったくらいでした。
 便乗して私なりに思いつくままに考えてみたいです。ちなみに私は基本的に三人称派です。

●主人公以外の人物の心理描写がほとんどできない。
 これが最も致命的欠点でしょう。
 マンガや映画ではなく小説の醍醐味は心理描写にあると思うのですが、
 一人称だと主人公だけしか基本的にできません。

●主人公の居ない場面は描けない。
 悪の幹部同士の確執とか描けないですね。

●作者の主観や地が混入する。
 三人称であっても混入すると思いますが、やはり一人称の方が入りやすいです。

●作者と主人公の知能レベルの差が出る。
 主人公が子供だったりすると難しい語彙などは使えないし、
 逆に主人公が超切れ者だと、凡人の作者では切れ者として描けない。

●情景描写をしにくい。
 主人公の目に映る、五感に感じるものしか描けない。
 だから、たとえば悩んでいる最中とか戦闘中などは、ちょっとした情景描写すらも入れにくい。
 そうでない普通の場面でも、三人称と比較するとどうしても情景描写を入れにくいです。

●作者と違う思想を書きにくい。
 たとえば作者は、好きな食べ物は真っ先に食べる派で、
 主人公は好きな食べ物は最後まで取っておく派だったりすると、
 この部分だけ心理描写がぎこちなくなり取って付けたようになるかもしれません。

●主人公の主観が入るため、客観的事実を描きにくい
 主人公の女の子は、何の取り柄も無い冴えない少年を好きだとします。
 少年のライバルとして、超美形イケメンが登場します。
 客観的事実としては、少年<イケメン、なのですが、主人公の女の子の目には、
 少年>イケメン、に映ってしまいます。
 このギャップをきちんと描けないと、イケメン男のイケメンぶりが読者に伝わらず、
 美形という設定の意味自体なくなっちゃいます。

●主人公の容姿描写がしにくい。
 鏡を見る場面を用意するなどしないと、容姿描写シーンを入れにくいです。
 また、主人公の主観による容姿描写になるので、客観的事実は描きにくいです。
 主人公は身長180センチで、バスケ部の中では背が低く悩んでいたとします。
 客観的には充分長身の部類ですが、背が低い、背が低いと悩んでいるので、
 チビという印象を読者に与えかねないです。

 他にもまだまだあるかもしれませんが、ざっと思いついたのはこんなところ。
 逆に、一人称の長所は、と考えてみると。

●主人公の心理描写を濃くできる。
 これに尽きると思います。
 というか、これをやらないなら、一人称にする意味が無いのかもしれません。

●主人公の語り口調なので、読者は読みやすいし、主人公に感情移入しやすい。
 比較的単純なストーリーの時は、ですね。
 複雑に絡み合うストーリーだと、やはり一人称の欠点の方が浮き彫りになってきそうです。

課題は色々出したつもりだけど、解決策は?
●一人称をやめて三人称にする。:三人称には三人称の長所と短所があるでしょうけど。
●上で述べたような欠点、特徴があるということを念頭に置いて、注意しながら丁寧に描いて行く。
 
 ということしか無いのでは?
 上手い人は一人称でもきちんと描けていますから。
 上記は「下手な人が陥りやすい一人称の失敗例」みたいなものでしょうか。

 長々書きましたが。
 人から言われるよりも、自分で実際に書いて一人称の難しさを感じるのがいいという気もします。


ぺーさんの意見
 自分も三人称しか書けません。

 まず、自分語りという形式の違和感。
 例えば戦闘シーン
 一人称は、戦いながら自分で解説しているような状態です。

 俺の必殺の右拳が唸る

 下手くそな自分が書くと↑のような、お前はナルのお馬鹿さんか?
 という文章になるわけです。
 この不自然さを解消するには、やはり文章力が要求されます。
 これに対して、三人称は戦闘そのものを描写していますので、違和感が出づらいわけです。
 他にも、主人公の外観描写のしづらさ。これは言わずもがなでしょう。

 俺の髪は美しい黒髪で……

 とか書いたら、この主人公、ナル? ってなもんです。一人語りの形式に慣れる必要があります。

 次に、最大の欠点。(自分にとってですが)
 主人公以外の心理描写が出来ない。

 
 これにつきます。小説の醍醐味はなんと言っても心理描写ですから。


EXEさんの意見
 実際に一人称で小説を書けば、書きにくい部分に気づきます。
 やってみて自分で感じた方がいいんじゃないかと。


 俺なんて一人称現代ファンタジー小説を書いてる時、
 敵だけのシーンとかを三人称で書いて「ああっ、三人称はなんて書きやすいんだ」と思いました。
 で、次の作品は三人称で書いてみたら、あれほど書きやすかった三人称が書きにくい!
 
 つまりはどっちもどっち。実際にやってみるのが早道です。
 人の意見や経験を聞くのはもちろん重要なことだけれど、
 実際に自分で触れた方が理解しやすいと思いますよ。


Acceさんの意見
 どうも。一人称派のAcceです。
 私の場合、作品への感情の入れこみがないためその点は省きますが、

 問題点は、視点の移動がしにくい事、
 その視点の人物の知らないことは表現できない事、くらいでしょう。


 視点の移動は、長編の作品でも数回、短編ならまずありません。
 同じ時間、違う場所で起きたことを表すなら、別のキャラから聞くしかありません。
 この場合、三人称にしたほうがいいのは明らかです。
 
 作品にも、一人称の向き、不向きがあります。

 一人称でそのキャラが知らないことは、読者にも伝えられません。
 これも、別のキャラから聞くか、視点を変えるかしかありません。
 全体の全てを書きたいなら、これも三人称にした方がいいと思います。
 
 ただ、読者に伝えたくない事実を隠すにはもってこいです。
 
 「ひぐらしのなく頃に」などは、事実を隠さなければ物語が成立しません。
 作者、作品によって、難しさはいくらでも変わります。
 無理をせず、やりやすい方を使えばいいでしょう。
 迷ったら、とりあえず冒頭だけでも変えて書いてみたらいかがでしょうか。


尭幡睦さんの意見
 難しい点については
1.主人公が居ない場所について書けない
2.主人公の性格を意識しなければならない

 事ですね。

 1の場合、台詞や効果音以外の文全てが主人公の視点で進んでいる場合、
 主人公が居ない場面の描写が不可能に近くなってしまいます。
 2は、主人公の性格が“おバカ”な場合、難しい言葉や表現を使うと文章に馴染まず、
 使いたい単語や比喩を捨てなくてはならなくなります。

 視点移動に関しては、私の場合、
 ナレーターとなるキャラクターが変わると同時にチャプターを分けています。
 分けないより少しは読みやすく出来てるかと・・・


リングさんの意見
 上でいろいろな人が仰っているように、
 一人称の弱点は視点となる人物の知っていることしか書けません。


 一人称で戦闘などを行う場合、さらにその特徴が顕著になります。
 無我夢中という言葉がありますが、
 要は自分の身にすら何が起こったのか分からないということもあるわけですね。

 例として提示できる文章がポケモン小説で非常に申し訳ありんせんが、
 一つちょっとした例として同じ戦闘を違う人称で描写してみます。

三人称の場合は

【ドラピオンに脅しをかけられたが、ピカチュウは恐れてばかりはいられないと自信を奮い立たせ、電撃波を放つ。チコリータも自身の頭の葉から葉っぱカッターを放ち、応戦する。
 回避不能と称されるピカチュウの技は狙いを誤ることなく正確にドラピオンを貫く……が、

「へっ」
 腕で止められた揚句に鼻で笑われる程度の威力しかない。どうやら効いていないようだ。
 チコの葉っぱカッターも、アーボックの尻尾で簡単に弾き返されてしまう。

「フッ、なんだあ? 只の静電気撃ってどうすんだ? ハハハハ」
 二匹に声をあげて笑われる。……だが、返せる言葉もなく、二人は口を噤む。

「ビビった顔して可哀相になぁ、おらぁっ!」
 言葉を発した刹那、ドラピオンが一気に距離を詰めてクロスポイズンをピカチュウとチコリータに仕掛け、二人は為す術もなく攻撃を直撃された。
 ドスっと鈍い音とともに攻撃が入り、二人は衝撃で木に叩きつけられるまで飛ばされた。木に叩きつけられ、バッグから木の実が飛び散った。
 気にぶつかった瞬間頭を打ち付けたピカチュウは意識が飛びかけていた。】


一人称の場合(※ピカチュウ視点です)
【奴らは強い……だが、構うものか!!
俺が電撃波を放った横で、チコリータも葉っぱカッターを放つ。よし、当たった……よな?

「フッ、なんだあ? 只の静電気撃ってどうすんだ? ハハハハ」
 マジかよ……片腕で受け止められて効いてない? チコリータの攻撃もそうだ……

「ビビった顔して可哀相になぁ、おらぁっ!」
 くそ野郎……って速……
 俺の耳に鈍い音が届く。ドラピオンの技がクロスポイズンのようなものだとわかったころには、俺は衝撃で木に叩きつけられるまで飛ばされていた。気がつけばバッグから実が飛び散っていて、体中が痛いし頭が……重い。】


 と、こういった違いが出ます。違いがお分かりでしょうか?
 戦闘など、めまぐるしく時間が進む場合は"事が起こった後になって状況を理解"したり、
 考える前に反射的に体が動いてしまい、"膠着状態になって初めて自身の状況が理解できる"
 ……といった現象が起こります。
 
 三人称では事が起こると同時に何が起こったかを理解させてくれますので、
 時間が前後しません(クロスポイズンを放った後に、ピカチュウとチコリータに攻撃が当たる)。
 一人称の例では順番が前後しています。
(殴られてから敵の技がクロスポイズンのようなものだと気がついている)

 それを意識した描写をするには実際に脳内でアニメーションを再生してみたり、
 棒人間でもいいので戦闘の内容をマンガで描いてみる。フィギュアなどを使ってイメージする。
 実際に演技してみるなど、様々な方法を使って想像力を膨らませてみてください。
 
 三人称を書く場合はそこまで想像出来れば描写に入れますが、
 一人称を書く場合はさらにそのアニメーション内で視点となる人物になり切ってから、
 “一瞬一瞬で考えられること”や“思えること”をよくシュミレーションして、ようやく描写に入れます。
 こうなると正直面倒ですが、うまく使えば一瞬の動作を2〜3行で表わされる三人称よりも
 臨場感や緊迫した雰囲気が伝わる可能性があるかもしれません。

 また、一人称の例を見ていただければ分かるかもしれませんが、
 後半になるとピカチュウは自分のことで精いっぱいになって、
 チコリータのことをかまってあげられていません。
 構ってやるかやらないかはキャラの実力や性格から考えた作者の裁量で決めることではありますが、
 こういうのもまた表現技法のひとつとして取り入れてみるのも良いでしょう。

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