第4研究室 創作に関するQ&A 86P | トップへ戻る |
猫の盛りさんのコラム  
 格闘に関する無駄知識・勁・急所・経絡秘孔

 
 通りすがりの野良猫です。
 今回もまた、質問ではありません。ごめんなさい。

 創作お役立ち資料のコーナーを眺めていて、「格闘技奥義の科学」の所長さんのコメントを読んで、
 猫の知ってる範囲を書いておこうかと思いました。


●”勁”ってなに?
 トータルトルクの事です。握力、手首の力、肘の力、肩の力等の個々の筋力ではなく、
 それらを統合して発揮する力を”勁”と言います(”勁”として力を放つ事を”発勁”と言うのです)。


 ボクシングでも肩を入れて打てと言いますし、空手も腰を入れて打てと言います。
 剣術でも、居合い等では「腕で切るな肩で斬れ。肩で切るな、腰で斬れ。腰で切るな、脚で斬れ」
 と全身の筋力を効率よく繋いで動作するよう言います。
 こうした全身の筋力を併せる力の出し方を”勁”と言う用語にしたのです。
 別名、四両千斤の力とか言われます。
 両とは小判の単位で知られていると思いますが、重さの事です。
 この四両千斤は中国の言葉なので、1両は10匁で38グラム相当で。1斥は600グラムくらいです。
 わずかな力でも統合して放てば千斤を動かす程となると言う事ですね。

 ”勁”を反らし、避ける用法を”化勁”と言います。
 また、”勁”の流れを察知し、どのような発力がなされるか、どう重心が動くのかを立ち姿を見たり、
 接した皮膚感覚等を通して事前に察する事を”聴勁”と言います。
 また、武術の練習動作のための大きく解りやすい動作を”明勁”と呼び、
 予備動作を廃し、実戦的な最小限の動作を”暗勁”と言います。

 ”透勁”と言う物もあります。空手で言う「裏当て」、骨法で言う「透し」「透かし」と言うものです。
 具体的にどういうものかというと、身体表面をすり抜け、
 打撃の威力を直接内部に伝えると言うものです(空手は背面まで威力が届きます)。
 これは決してオカルトではなく、訓練でできる物なのです。

 ”気”とかは関係ありません。極めて物理的な話です。

 打撃を受ける場合の一番単純な防御方法は筋肉を固く緊張させる事です。
 筋肉による弾力が生じ、また身体内部の水分が効率よく打撃の威力を分散させます。
 逆を言えば、筋肉による弾性を封じれば、相手はやわな水袋も同然となります。
 このズルを必死に考えてたどり着いた結論が”透勁”です。
 ”透勁”は、俗に2打打ちとか言われます。
 まずは手打ちで筋肉を押さえるように拳を出し、そのまま突き入れると言うものです。
 一挙動で行うので、2発打っているようには見えません。実際に2発打つのではないです。
 この打撃のキモは筋肉を押さえてから、真に力を放つ事にあります。
 要は筋肉による弾力を封じるのです。

 お暇な人で、かつ更にお暇な友人をお持ちの方は、二人で試してみてください。
 まず友人に頼んで腹筋に力を入れ、締めてもらいます。
 そして10センチほどのところから軽く「トン」という程度に平手で腹筋を突きます。
 当然たいしたことはありません。
 次は突く以外の手を相手の腹筋に添えて軽く押しておき、
 その手ごと押し込むように片方の手で「トン」と軽く突きます。
 腹筋分の弾力が無効化され、相手は軽く「うえっ」となります。
 強く突いては行けません!
 交代して、互いに検証してみましょう。なお、これは掌底重ね当てという古流の技でもあります。
 まあ、実際の撃ち方は別ですけどね。
 心臓マッサージは手を胸に押しつけて強く圧迫を繰り返し、
 心臓を刺激する事を目的としていますが、これは心臓や内臓を打撃することを目的としています。


【急所】きゅうしょ
 体の中で、打たれたり傷つけられたりすると命にかかわるような重要な所。
 「―をはずれる」
 と辞書には載っています。おおざっぱにその辺を紹介します。

<顎先>
 打撃で狙う部位の1つです。
 首の付け根は、だいたい鼻の真裏ぐらいにあります。
 つまり、顔の真ん中辺りにあるので、頭を揺らすのに便利なのです。
 で、打撃によって外的に頭を揺らしたい場合は、
 一番の突端である顎先を横から撃ち抜くようにするのが一般的です。

 何のためかと言えば、頭を大きく揺らす事で脳震盪を起こさせるためです。

 また、顎その物は人体内では比較的骨も薄く、稼働域の大きな部位のために固定能力も低く、
 横方向からの耐久性はあまり無いため、骨格へのダメージとしても有効です。


<こめかみ>
 テンプルとか呼ばれる部位です。
 額は頭蓋骨の中ではもっとも骨が厚く頑丈ですが、
 その両脇のこめかみは逆に骨がもっとも薄くなっており、
 打撃や居合いでの剣撃でも狙われる部位です。
 骨折等による脳へのダメージを目的として狙われます。


<喉笛>
 喉笛自体を狙うのではありません。その両側には動脈があるので狙われるのです。
 喉笛を裂くとは即ち、動脈を切断し、ショック死や失血死を狙う事です。


<鎖骨>
 脊椎動物の肩は、肩甲骨と鎖骨によって支えられています。
 皆さんご存じとは思いますが肩胛骨は大きく平べったい形状で頑丈そうです。
 一方鎖骨は、胸骨と肩甲骨を連絡する左右一対の長骨で、それなりに太いのですが、
 腕や脚の骨に比べると太さを感じません。また、強度もそれなりです。

 これを骨折すると、腕が垂れ下がり異様な撫で肩になります。肺も圧迫されて呼吸も辛くなります。
 何より肩が上がらなくなります。腕一本使えないどころか制御も出来ず、呼吸も苦しくなります。

 
 これ自体は致命的な損傷ではないかも知れませんが、戦闘中のハンディとしては致命的です。
 多くの武術で、これを折る技が存在します。


<脇の下>
 ここには腕へ繋がる動脈が走っています。

 熱射病で、ここに氷嚢等をはさませると、
 動脈の血流を直接冷やし体温を急激に下げる事が出来ます。
 当然ここを裂ければ、一気に失血死に持ち込めるので居合いやサーベルを使う剣術では、
 ここもよく狙われます。


<鳩尾(みぞおち)>
 胸の中心から少し下、あばら骨と腹筋の境目の事です。
 上記の通り防御能力の低そうなこの部位の内側には、胃があります。
 俗に”胸焼け”で苦しくなる場所です。

 鳩尾を狙うとは、胃にダメージを与える事なのです。

 ここを殴られると、食べたものを戻してしまうのもそのせいです。


<両あばら>
 鍛えにくく筋肉が薄いため、ここに打撃を入れれば、比較的簡単に骨折を狙えます。 
 すると、肺にもダメージが行くため相手の呼吸に影響を与えやすいです。
 各あばらの接合は軟骨があり、もともと柔軟ではあります。
 また、激しい咳等でも骨折するほど柔な部位でもあります。


<手首の内側>
 動脈が走っていますが、剣や刀で狙うのはともかく、一般的な打撃では狙われません。
 動脈を裂くには、手の動きを支える丈夫な腱も切断せねばならず、かなり力が必要です
 ここを切って自殺するには手を半分くらい切り込む覚悟と力がいります。
 疲れるし、痛いのでやめましょう。


<金的>
 実際に陰嚢を狙うのではなく、その後ろ、肛門の少し手前にある「会隠」を狙います。
 そこは両足に繋がる大きな動脈の分岐点で、そこを破裂できれば致命傷です。
 故に男性だけでなく、女性にも効きますw


<ひざ>
 体重のかかる部位であり、構造的に横からの圧力にも弱く、
 ここをし止めれば動きを封じる事ができるため、よく狙われます。


<足の甲>
 筋肉が薄く、鍛えにくく、歩行を司る重要な部分ではあるため、
 致命点ではないですが、地味に狙われます。


●経絡秘孔の一つを突いた!
 といっても「あべし!」と奇声を上げて爆発したりはしませんw
 いわゆる「ツボ」と呼ばれる場所ですが、武術用と医療用は微妙に異なります。

 武術で用いるものは急所とは言わないまでも相手の動きを封じるための物で、
 首の付け根の気道を突けば相手は咽せかえり、呼吸が大きく乱れるとか、そういうものです。


 静脈や動脈が身体表面近くに出ている場所はみなこの「ツボ」です。
 そこを鍛え抜いた指先や、瞬間的に強力握力を出せるように鍛錬した手で握りつぶすのです。

 無論その程度で、血管が切れたりする事はほぼ無いです。
 でも、血流が滞るほどに圧力を受けると、その先はしびれて短時間力が入らなくなります。


 これがいわゆる擒拿術です。
 お暇な方で、更にお暇な友人をお持ちの方は、相手に軽く手を握ってもらい、
 その状態で肘の静脈を探して両手の親指で強く圧迫してみてください。
 なお、事前に親指の爪は十分に切って置いておください。爪が刺さっていたいです。
 静脈には逆流を防ぐための弁があるので、ぷっくり膨らんだりします。
 相手の握った手がしびれて力が入らなくなったらすぐにやめてください。
 一部の門派の武術家はそれを一瞬で行うための鍛錬をします。


 長々と大変申し訳ありませんでした。
 これらの知識は、あえて一つに偏らないよう広く浅めに書きました。
 ゆえに全て中途半端で、知っておられる方も多いと思います。

 また、実戦で使用されるレベルの武術等は、剣術、徒手格闘にかかわらず、
 動きが小さく、地味で面白くありません。


 しかし、それをエンターテイメントにそのまま持ってきても、
 観衆や読者には動きの意味が伝わりにくいですし、迫力もおもしろさもありません。
 そこでエンターテイメントの武術は派手に大きく動きます。
 これは少しも悪いことではありません、むしろエンタメならそうあるべきなのです!
 ジェッキー・チェンやジェット・リー等のアクションは華拳といい、公演用の大きな動作です。
 マニアばかり頷く作品も良いかも知れませんが、
 それよりも多くの人がおもしろいと感じる作品の方がよいのと思うのです。

 故にこうした武術の専門的な知識を知らなくても作品は描けます。
 でも、知ってると作品をしめる程良いスパイスになるのではないかと思います。
 ではでは。

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