硫流さんの質問 2013年04月03日
こんにちは硫流です。さっそく質問させていただきます。
現在私が書いているラノベの内容が主人公が異世界に行ってしまうSF歴史モノです。
内容がこんな感じなので世界観、SFの設定、歴史の知識、ヒロインの身の上等々説明が多くなってしまいます。
そんなわけで会話のほとんどが説明になりかねません。
どうすればその説明を飽きずに読者に読ませることができるでしょうか?
アドバイスをいただきたいです。
●答え●
こんにちは、あざらしと申します。
ただの読者ですが、わたしが読んでいて面白いと感じる本の特徴を元にして所感を書かせて頂きます。
>どうすればその説明を飽きずに読者に読ませることができるでしょうか?
言葉の粗を探すような話になってしまいますが、率直な感想から失礼致します。
まずは一度、『説明を読ませる』ことを諦めてください。
発想を変えて欲しく感じました。
例えば、硫流さんが書店に行って、ふと足を停め、本を手に取ったとします。
その本がタイトルから基本設定を読み取れるものでなく、また一般書籍で多くある抽象的なイメージ画っぽい装丁だったとします。
もっと言えば、アマチュア作品ならば装丁は関係ありませんので、タイトルから基本設定が読み取れなければ、全てこの状態です。
このような小説の場合、読み始めるまで、その物語の舞台が現代なのかSFなのか時代物か、こういった根本的な部分すら解りませんよね。
特殊な世界感に限らず、どんな物語でも基本となる全体像は存在しますし、それを何らかの方法で著者さんは伝えています。
たとえライトノベルでよくある『現代物であり高校生の物語』だとしても、それを何らかの形で読者に伝えて頂いて初めて読者は「この物語は現代物なんだろう」という事を掴みます。
(ある程度の、提示が無ければ現代物だろう、という点も含めて)
では、これは何かと申しますと、著者さんによって手法が色々と見受けられますが、ひとつ単語の一般化されたイメージがあります。もうちょっと突っ込むと俳諧にある季語のようなモノで、「この単語が出てきたら○○だろう」というキーワードに使える単語です。
例えば(体育館)(制服)(桜)この三つの単語が冒頭部分で存在すれば、イメージが浮かび上がりますよね。
(軍服)(鬼教官)(部隊)の単語があれば、おおよそ「軍隊ものだろう」というイメージが出来上がるはずです。
おそらく小説家志望の方々が『語彙力』を気にされるのは、一頭最初の冒頭から既に相応しい単語を選択する能力が要求されるからだと思うのです。
プロでも上手な著者さんはこれが非常に達者で、決して装丁や挿絵に頼っていません。
そして何より重要なのは、
>世界観、SFの設定、歴史の知識、ヒロインの身の上
これら全て、物語を通じて読者に”伝えている”だけで、説明はされていません。
ぶっちゃけ、説明を読みたくて小説を買っているのでは無く、物語を読みたくて小説を買いますよね。
物語を楽しむために必要な部分は、全て物語を通じて”のみ”伝えて欲しく思います。
冒頭のとっかかりだけを書かせて頂きましたが、全てについて書かせて頂くのは、文字数も時間も絶対に足りません。ですので部分的なもので割愛させて頂き、私の所感とさせて頂きます。
●世界観
上記で書かせて頂いた事の積み重ねだと思います。
これは基本設定が特殊であればあるほど、小説だけで無く映像作品も参考になるはずです。
オープニングシーンしかり、シーンの切り替えしかり、これらを観れば何らかの象徴的なキーワードとなる映像が用意されています。
著者さんは創造力ですが、読者にも想像力があります。
ある程度、読者を信用することも必要では無いでしょうか。
●SFの設定
前述の世界観と切り分けるならば、これこそ物語そのものです。
一度に出す必要は無く、むしろ先を読ませる牽引役にもなるはずです。
硫流さんと、わたしで、共通体験となる小説なり映像作品があれば説明しやすいのですが、それが不明ですので通じの良い有名作品を例にしておきます。
とにかく売れたラノベでSF設定がある作品ですと『涼宮ハルヒの憂鬱』 になるかと思いますので。(もし未読でも、書店なりAmazonで間違いなく入手できるはずです)
主人公のキョン以外、メインキャスト全員が古典的かつ丸出しのSF設定を持っていて、ハルヒ以外の各員が自ら素性を明かしますが、物語の自然な流れです。(上で書かせて頂いた件と重複しますが、宇宙人・未来人・超能力者、これらのキーワードによって、あとは「どのような」という点に集約しますよね)
物語そのものですから、少なくとも読み進めている人は飽きません。この部分を意識して読まれれば、ひとつの答えになり得ると思います。
●歴史の知識
少々ピンポイントで何を指すかがボヤけてますが、『物語世界の歴史』でよろしいでしょうか。
だとすると、
●ヒロインの身の上
いずれも物語に絡めて欲しいというのは当然ながら、こちらと感想が似通ってきます。
私は執筆しませんので、おそらくですが、よほど勘所に冴えがないと入念に練られたプロットが必要になるように思います。
まず第一にあるのは、本当にそれがないと読者は楽しめませんでしょうか。
”過去”というのは、物語にしろ人物にしろ必要でしょうし、決して否定はしません。
ただ、硫流さんがストーリーテラーとして『どの時点から物語をスタートさせるか』『何を伝えるか』『何を切り捨てるか』という部分にも関わってくるように感じます。
個別の例として「どのように」というのは、物語によりますし、既存作のパターンは多すぎて書けませんが、
1)時間軸は、それそのものが演出だったり構成だったりしない限り、停止したり遡ったりせず、前(未来)を向いていた方が好ましい場合が多い。
2)読者が「こうじゃないか?」という想像の余地で済む場合もあるし、想像の余地こそが楽しみになる場合もある。
ここらについては、とびっきりの参考作品『スターウォーズシリーズ』があります。
個人的にはちょっと受け入れ難かったバタ臭いアニメも入れると、スピンオフも含め多くの作品群がありますが、ともかく基本になっている映画の6部作をどうぞ。
この映画の特徴として、ヒットした映画の(パート2)という扱いでは無く、また当初は構想こそあったそうですが、某映画のように予め(原作が大作だから三本作る)といったような予定もなかった事です。
謂わば、ヒットしたから続きが作れたという状態なのですが、六作でひとつの物語として成立しています。
歴史もヒロインの身の上も欠かせないストーリーですし、それを活かすだけの脚本があってこその映画です。
そうでなければ、六部作で一つの物語となる映画が、30年間も支持され続けません。
(しかも更に3部作るという話しです)
ご注目頂きたい部分は、公開順の第一作と第三作。
いずれも、『続編無しでここで物語が終わっても大丈夫』という区切りが存在する脚本になっています。
スタート地点と、物語の足し算と引き算の妙です。
公開順の第二作、四,五作については次作に続く牽引力が素晴らしいです。
結末の第六作は、物語の結末として最上です。
キリがありませんので、ここまでで失礼させて頂きます。
非常にザックリとした感想になりました事をお詫びいたします。
ではでは、面白いSFお待ちしております。
執筆ガンバって下さい。
大変ご丁寧なアドバイスをありがとうございます。
> 著者さんは創造力ですが、読者にも想像力があります。
> ある程度、読者を信用することも必要では無いでしょうか。
確かに読者に一から十まで書く必要ないですね。
ハルヒは人生読みました。しかし申し訳ないのですがハルヒの説明と私の説明とは少し違います。
ハルヒの内容で各キャラクターの自白シーンというのは『キャラクターの正体』と『ハルヒは異質』の二つを述べれば済みます。情報統合思念体などは物語の根幹には関係ありません。
私が言う説明のイメージは物語においてのルール設定みたいなものです。
例えば『彼の能力は炎を生み出す』という説明をしないと『水を使って倒す』というストーリーに続きません。その水を使うにも水が使える環境であるという描写が必要です。そうじゃないとご都合主義になってしまいます。
『炎を生み出す』程度なら敵が戦った姿を描写すれば住みますが、日本書紀に書いてあるエピソードとか、タイムトラベルとバタフライ効果の関係性ならいちいちストーリーで紹介できません。
大雑把な説明で良いのなら適当に済ませますが、日本書紀では何年の何処で誰がこうしたんだからこうすれば問題は解決するといった重箱の隅を突くような解決策のストーリーに続けることはできません。
有名な作品を挙げると『ドラえもん』のような説明です。チョークで線で範囲を囲むことで領域を作る道具だと説明することでチョークの線が切れると領域がなくなるというオチにつながります。
> ただ、硫流さんがストーリーテラーとして『どの時点から物語をスタートさせるか』『何を伝えるか』『何を切り捨てるか』という部分にも関わってくるように感じます。
そうですね、なんとなく匂わせておくぐらいがキャラの魅力になりますよね。
> ここらについては、とびっきりの参考作品『スターウォーズシリーズ』があります。
恥ずかしながらまだ見たことがありません。今度見て勉強します。
> ではでは、面白いSFお待ちしております。
> 執筆ガンバって下さい。
教えを乞う立場でありながら自分の意見を述べてしまい申し訳ありません。私の文章力の無さが誤解を産んでしまいました。
頑張ります。
こんばんは、レスポンスありがとうございました。
>教えを乞う立場でありながら自分の意見を述べてしまい申し訳ありません。私の文章力の無さが誤解を産んでしまいました。
意見を頂いたことも、意思疎通の齟齬も何ら問題ありませんから、どうか気にしないでください。
書かせて頂いた事も感想に過ぎませんし、単に『面白い作品を読ませて欲しい』という、この一つの願いだけで書き込みをしているだけです。
あと念のため書かせて頂きますが、以下も頂いた書き込みで感じたことです。絶対解というのが存在しないでしょうし、あくまでわたしの読書経験を元にして、「多くの作品で見かけた」という例に過ぎません。無論、反論や論争の類は意図しておりません。
>日本書紀に書いてあるエピソードとか、タイムトラベルとバタフライ効果の関係性ならいちいちストーリーで紹介できません。
本題は日本書紀の方だろうとは思うのですが、ネタを盛り込む分量として良い例かと思いますので、バタフライ効果とタイムトラベルについて少々。
タイムトラベルとバタフライ効果ですと、既存作ならば超有名映画で『バタフライエフェクト』があります。
映画一本ですから、物語に盛り込むべき分量としては、おおよそ文庫本一冊と同じ構成になるはずです。
同じタイムトラベルとバタフライ効果でも、『シュタインズゲート』になると、これは出自が結構な時間を必要とするゲームですので、物語の組み方がちょっと異なりますよね。
こっちを文庫分量でやると(HPの連載方式なら全く変わってきますが)、これは説明のやり方が、ある程度読者が知っているだろうという前提で書き切ってしまう、ガチガチのハードSFに近づいて行くように感じます。前回書かせて頂いた(『どの時点から物語をスタートさせるか』『何を伝えるか』『何を切り捨てるか』)という部分に関わってくるように思います。
いずれにせよ、シュタインズゲートのシナリオ担当である下倉バイオ氏は、間違いなく『バタフライエフェクト』を観ていますので、参考になるはずです。(余談ですが、下倉バイオ氏ならば、年齢制限がありますが燃える展開の『スマガ』もお勧めです。プレイ条件を満たさないならば、ガガガ文庫からノベライズ版が出ています)
こういった込み入ったルールをラノベとして、物語を通して読者に伝えようとされるならば、『うえお久光著:紫色のクオリア』 が参考になるのでは無いでしょうか。
普通はハードSFで扱うことを、見事に一冊のライトノベルで書き切っています。
『ドラえもん』については、前回書かせて頂いた感想をほぼ同じになりますが、道具の説明そのものが読者にとって「欲しくなってしまう魅力的なモノが出てくるだろう」という物語の仕掛けに乗っ取っているように感じます。
併せて、指輪物語のリングや、水戸黄門の印籠のような、所謂デウス・エクス・マキナの魅力も持っていますよね。
確かにドラえもんは、のび太を通して道具の説明をしていますが、それそのものが物語で、単なる説明ではない所が参考になるかと思います。
硫流さんのレスポンスを拝読して、あくまで私なりにですが、読み取らせて頂いた御作について感じたところを書かせて頂きました。
全体的にですが、一冊の文庫本量を想定されているならば、切り捨てる部分が結構必要なように感じました。
>日本書紀では何年の何処で誰がこうしたんだからこうすれば問題は解決するといった重箱の隅を突くような解決策のストーリーに続けることはできません。
あくまで言葉通りに受け取らせて頂くならばですが、日本書紀という物語のエキスを抽出することで、回避できるようにも感じてしまったからです。
この点については、最近作ですと『三上延著:ビブリア古書堂の事件手帖』 が物語のエキスを抽出して、その内容を興味深く読者に伝えています。
直接的では無いにしろ、その手法は参考のひとつになるのではないでしょうか。
最後になりますが、前回(まずは一度、『説明を読ませる』ことを諦めてください。)と書きましたが、これは含むところ無くそのままです。
一度、説明を読ませる、という方法を捨てて別の方法を模索して頂きたく書いたまでで、それを全否定している訳ではありません。
(これを全否定すると、私の大好きなハードSFが^^;)
長くなりましたが、これにて失礼いたします。
もしも御作を投稿室にて公開されるならば、感想を書かせて頂こうと思いますので、その際はよろしくお願いいたします。
執筆ガンバって下さい。
応援しております。
まずは説明の前に、これから説明する事柄について興味や疑問を与えてやることです。
例えば主人公を襲ってきた刺客がヒロインを見つけるなり退散する。
例えば逆に主人公のほうが優勢なのに、ヒロインが邪魔をして刺客を逃がす。
何故ヒロインはそんなことをしたのか、と読者に疑問や興味を持たせれば、「私の事情は少し複雑で」と説明文があっても苦なく読めます。
説明を会話文に織り交ぜる、地の文だけで説明する、と簡単に二通りの方法があると思いますが、会話にするメリットは主に説明相手の反応を書けることです。
上の例の場合では主人公の反応を書けますね。「そんな事情があるなら○○と戦うのは間違ってる」みたいな。ここで物語が動いたりする。
でも、会話文で説明というのは長くなりがちですから、物語が動かないようなら地の文でサックリ短く済ませたほうがわかりやすいと思います。
方法のチョイスは臨機応変に。
また、一度に多くの情報が出てくると読者は混乱してしまいます。
国名人名、その他専門用語は多用せず、説明したいことを明確にしましょう。物語の展開上、説明するには良いタイミングだとアレもコレも同時に詰め込むのは至難の業です。
状況によっては説明を切り捨てることも必要です。
どうしても一気に説明したい場合は、説明の中にストーリーを盛り込むことで、読者の理解を助けることができます。
あまり大規模だと余命なエピソードを追加することにもなるので量が増えちゃいますが。
まあ、「説明」って「あらすじ」みたいなモンですからね。
「ヒロインの身の上話」ってそれ「話(物語)」じゃん? みたいな。
言ってしまえば「歴史」も「SF設定」も説明にかかることは全部「物語」に置換可能なので、程度によりますね。
>どうすればその説明を飽きずに読者に読ませることができるでしょうか?
読者が「飽きる」というのは、これは単純に話が進まないから「飽きる」のだと私は思います。
もうちょい言えば「面白い方向に進まないから」ですが、まあこれは読者の感性によるところだし、「面白い方向に」は今は関係ないでしょう。
説明で読者が飽きると硫流さんは思っておられる。これは、説明で話がまったく進んでないし変化がないためです。
説明文が一切ない物語でも話が一向に進まず日常会話だらけな小説だったりすると、そりゃ当然飽きますよね。
ですので、説明でも物語を止めず動かすことが大事だと思います。
くどくど説明しなくても、なんとなく雰囲気がわかれば良い場合もあります。
たとえばフランク・ハーバートのDUNEは特殊な社会でのお話しなのですが、巻末の解説(それはそれで面白い)を読まなくとも楽しめます。
もちろん世界観や用語など基本設定がしっかりしていて初めて可能なのでしょうが。
自分の場合は、なるべく会話でざっくり説明して、地の文で捕捉する感じです。
一度、説明の場面を書いてみて、推敲するのが確実かな。クールダウンしないと冷静な取捨選択ができませんし。
自分は徐々に間隔を少し開けて出しています。
その時の最小限を出すというかんじです。
説明として文章化しないことです。
それはあなたに限らず、多くの小説家の方々が抱える悩みですね。
読者を引き込んで飽きさせず、なおかつ説明はきっちりとこなしていくという難しい舵取りが必要です。
そのために知識を集め、できるだけ無駄な説明を省いて表現できるように、工夫を重ねるのです。
私のやり方ですが、最初に一度くどくどしくても構わずに最後まで小説を書き切ってしまいます。
そうすると、本当に必要な部分と無駄な部分が見えてきますから、それを参考にプロットを作って書き直します。
これで大体、読める小説の形にはなるはずです。
とはいえ、この方法は非常に時間がかかってしまうのが玉に瑕なんですよね。
それではこの辺で。
何かの参考になれば幸いです。