ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. ライトノベルの書き方
  3. ラノベ新人賞攻略Q&A
  4. ストーリー公開日:2013/08/09

下読みによるラノベ新人賞攻略Q&Aまとめ

●ストーリーについて

■質問2015/01/25
 展開の密度について質問させてください。今書いているもの、というか現在の執筆スタイルが、毎シーンで「キャラの内面が新たにわかるやりとり」「状況が動く事件」「根幹に関わる設定の提示」など……個人的に面白いと思うものを1つずつ、こなすようにしています。
 しかし、なんだか慌ただしく出来事が進んで、読者が物語に馴染む前に飛ばして行ってしまっているような感じがして悩んでいます。
●ジジさんの回答
 今のやり方を利用しましょう。
 各シーンに込めたその「おもしろいもの」を書き出してみてください。そして、山と谷に分けてみてください。
 山は物語を構成するのに不可欠なエピソード。
 谷はキャラや世界の魅力を伝えたり、山エピソードを効果的に見せるためのエピソード。
 仕分けができたら、まず山エピソードを並べてください。次に、その間に谷エピソードを置いてみます。
 こうしてみて、山エピソードと山エピソードの距離を見てみます。
 間に谷エピソードが少ないと、山は険しく高くなりますね。逆の場合は妙になだらかで間延びしているはずです。
 この山の高さと谷の深さを調べ、どのくらいの比率がよいかを考えてみてください。

■質問2015/01/25
 山エピソードと谷エピーソードが判別できないのですが、どうのように判断したら、良いでしょうか?
●ジジさんの回答
 迷ったときは、「あらすじで書かなければならないもの」を山エピソード、「あらすじに書かなくても成立するもの」を谷エピソードとして考えるとよいですね。
 また、山と谷の比率ですが、前半は少し傾斜ゆるめ、後半から傾斜を少しきつめに取り、さらにクライマックスである最高峰まで、どのようなラインを引くのか考えるのもよいかと思います。

■質問2015/01/24
 今書いてる作品について、男性向けで突っ切るか、女性受けも考えるか、ってところで悩み抜いています。本当は不安ありつつも男性向けで突っ切りたいのですが、女性受けも考えた方が市場が大きくなるなとは思います。前に女性向けで活動してた時に、結構な数の女性読者と接しましたが、かなり苦手意識があります。ものすごいトラブルがあったわけではなく、女なのに女性読者が苦手というのも変な話なのですが。
●ジジさんの回答
 これはレスを拝見したうえでの私見なのですが、現状を考えると、女性読者は切り捨てるべきでしょうね。
 文面からして男子向けの小説を書かれているものと思いますが、だとすれば女性向け視点はマイナスに働くことが多いですし(女子の好物は大半の男子にとって興味がないどころか気持ちの悪いものとして認識されがちです。これは女子の好みは幅が狭いということにも関係します)、なにより苦手意識のある相手に適切なサービスが(プロレベルで)できるかどうかという問題もあります。

■質問2015/01/24
 一般文芸においてのヤマの作り方、盛り上げ方で好ましいものなど教えてくださると嬉しいです。
●ジジさんの回答
 物語にふさわしいドラマチックな山場を用意し、それが起爆できるだけの伏線を必要数張ってください。そして物語の始まりと終わりをつなぐ中盤を盛り上げるエピソードを、プロット段階で猛烈に練り込んでください。
 おもしろくない作品は総じて伏線が細く、中盤が冗長です。
 一般はとにかく応募時点で要求される完成度が、伸びしろを重視するラノベとは段違いに高いです。

■質問2015/01/20
 プロットって、どこから作っていけば物語が、破たんせずに作れるのでしょうか? 私は、よく自分の書きたいものから肉付けという形をやっているのですが、最近、あまりいいやり口ではないのかなと迷っています。
●ジジさんの回答
 私の場合は、
1.閃いたすばらしい(と自分では思う)シーンをとにかく書く
2.そのシーンを生かすための世界設定や状況設定を考え、ストーリーラインを敷き、必要数の伏線を植える
 というふうに逆算していきます。
 この方式のメリットは、自身にとって最高のシーンが先に存在し、それを盛り上げるために準備していくことになるのでモチベーションがしぼみにくいことです。

■質問2015/01/21
 プロットの作成をしくじった途端、恐ろしくモチベーションが落ちたことがあり、プロットの作成に恐怖がぬぐえない部分があります。
●ジジさんの回答
 そのような状況でしたら、「各シーンを、地の文を書かずにセリフだけ並べていく」のも手ですね。
 セリフとは山と谷で言えば山の部分で、地の文にくらべて非常に早く書くことができます。なにせつじつまを合わせる必要のない(そういうことは谷である地の文に振ってしまいます)山の部分ですから、楽しいばかりの作業です。

■質問2015/01/20
 物語の時系列が『第一章→第三章→第二章→第四章』となっています。
 月と日は書いているのですが、ややこしいでしょうか? 試行錯誤した結果、この方式が良いと判断したのですが……。
●ジジさんの回答
 時系列に沿って書くほうがわかりやすいですが、それを崩すだけの理由があり、さらにその構造が読む側に正しく明示されているならよいかと思います。少なくとも、そこに引っかかっただけで即投げるような下読み、編集者はいません。

■質問2015/01/19
 主人公の目標は閉鎖された島を脱出して「旅に出ること」で、様々な妨害をクリアして、結末は島を出るところなので一応目的は達成されています。しかしふと、これは「俺たちの冒険はこれからだ!」エンドではないかというのが脳裏に浮かんで不安になりました。これはちゃんと終了していますか?
●ジジさんの回答
 島から出るまでを正しくドラマチックに描き、カタルシスのあるクライマックスで締めくくれているならば問題ありません。
 ぜひ「この物語の売りは何で、どのようにおもしろいのか」をどうやって他者に伝えるかと併せて考えてみてください。

■質問2015/01/19
 中高生がメインターゲットであるライトノベルでギャンブルを扱うのは問題がありますか?
 現時点では面白く書くための要素は何も考えていないのですが、ふと「中世+ギャンブル」なんて面白いかな? と短絡的に考えてしまいました。
●ジジさんの回答
 ギャンブルものは、応募作の題材としてたまに見かけます。
 ただ、「ギャンブルの説明」から抜け出せず、物語としてのおもしろさに繋がらないものが多いです。
 このジャンルの起点は冲方丁氏の『マルドゥク・スクランブル』(2003/5刊行)かと思いますが、それだけにいろいろ難しい部分があります。
 また、ラノベはやはり対象読者層が未成年ですので、お金を賭けるのも厳しいですね。以上を踏まえて、
1.説明をいかにシンプルにできるか、もしくは説明をいかにおもしろくできるか
2.このギャンブルになにを賭けるのか(命はすでにコミック作品で人気作が複数あるのでほかのものが望ましいですね。貞操やヒロインの寿命などはラノベらしくできそうですが)
3.お題になるギャンブルと、それに関わる主人公や主要キャラを魅力的に結びつけられる構成ができるか
 の3点がクリアできれば戦えるものかと思われます。

■質問2015/01/19
 異世界転生系小説をほぼ完成させています。強大になり過ぎ、結果、世界に追い詰められたヒロインを主人公が殺す、というのが大筋です。 以前ジジさまがおっしゃってた「カタルシスを与える悲劇」を目指したものですが、そのカタルシスを大きくする肉付けとは、悲劇と対比する作中シークエンスの強化(主人公とヒロインを深める絆、共に戦うシーンなど)でしょうか?
●ジジさんの回答
 いちばん簡単なのは恋愛関係にすることですが、できればもうひとひねり欲しいですね。
 必要なのは、「大事なものが失われることで得られるカタルシス」です。
 それを成立させるためには、ご自身がおっしゃられているとおり、「同じ時間を積み重ねることで絆を深める」のが第一になります。
 そして、そこからさらに絆を深めるためには「制約」を課すのがよいかと思われます。たとえば主人公が死ぬとヒロインも死ぬ、などですね。ふたりが殺し合えばかならずふたりとも死ぬ。でも殺し合わなければならない宿命が! という絶望感がクライマックスを黒く昂ぶらせます。

■質問2014/10/02
 電撃小説大賞の方では、章分けをするかしないか、するにしても書式等は自由となっています。実際、新人賞の応募作品は章分けをしているものが多いのでしょうか? たとえば物語が三つほどの章にわけられるとして、章の切り替えの際に章タイトルを挿入し、読みやすいようにページを変えたり改行で空白をあけたりするのが普通だと思うのですが。
 そうすると、章分けをすることによって字数を何行分も無駄にすることになります。章分け自体は無駄な行為とは思っていませんが、地の文や会話文が何行か書けなくなると思うとつい唸ってしまいます。
●ジジさんの回答
 基本的に、ご自身が読者としてその作品を読むことになった場合を想定してください。
 章分けのない、応募用紙100枚を越える物語を読んだとすれば、おそらくは猛烈な疲労を感じ、さらにはせっかく作者が用意したギミックにも伏線にも気づくことなく、物語を読み流してしまうことかと思います。
 物語にはかならず複数の節目があり、話が転じるためのカギとなるエピソードが存在します。
 それを整理し、読者に知らせるためのものが章や節であると考えてください。
 つまり、空白も大事な文量の一部だということです。
 だとすればマイナスに考えるのではなく、その空白をいかにして余韻や情感として使うかを考え、カットするセリフや説明文以上の効果を上げることを考えるのが正解かと思います。

●ジジさんのコラム 2014/10/02
 プロットを作る際、章ごとではなく、項ごとの細かいプロットを作ってみてください(これは今ある原稿で大丈夫です)。
 それを読み返して、まず設定と中心軸になるストーリーラインがおもしろいかどうか見ます。
 次に、ストーリーを通して主人公とヒロインが物語を開始し、終わらせるために必要な活躍をしているか(ふたりのエピソードが充分な量確保できているか)を見てください。
 最後に、売りになる設定が、主人公たちを行動させるマクガフィンとして機能しているかを見てください。
 とりあえずこの3点を見れば、おおよそ物語のつじつまが合っているか、自分が読ませたいものを表に出せているか、主人公とヒロインが正しく機能しているかが分かります。

■質問2014/10/02
 新人賞における小説の完結とは何か?
●ジジさんの回答
 私は以下のように「完結」を定義しています。
1.伏線や次巻への引きを残さない
 応募作の中には結構な数、謎を残したまま続きを臭わせるエンディングが書かれたものがあります。これは即落選になりますので、絶対に避けてください。
2.作者が物語中で提示した「お題」がクリアされている
 物語の内容が魔王とのバトルなら、クライマックスでかならず魔王と戦う必要がありますし、殺人事件ものならクライマックスは謎解きでなければならないわけですね。
3.作者が決めた「テーマ」の結論が提示されている
 たとえば「囲碁の力で世界を救う!」というのがテーマなのであれば、囲碁をどう使って世界を救ったのかが破綻なく提示されていないといけないわけです。
4.「最終目標」はクリアされなくても大丈夫
 スポーツものなら大会で優勝するような必要はないですし、異世界ものなら帰還する必要はないということです。
 ただし、最終目標が果たされずに終わるだけの理由とカタルシスが必要になりますね。スポーツものなら、1回戦で負ける代わりに全員の心がひとつになり、弱小チームが変わる。異世界ものなら帰還するよりも大事なものを異世界で見つけ、そのために残ることを決意する等。

■質問2014/09/30
 スポーツラノベに需要はあるのでしょうか?
●ジジさんの回答
 あります。
 ただ、スポーツものには「ルール説明」というラノベと相性の悪い障壁があること、キャラの立ち位置や進行方向の比重をスポーツに傾けるのかヒロインとの恋愛や他の要素へ傾けるのかのバランス取りが必要で(情熱というものがひとつのテーマになるため、両立させようとするとどっちつかずの印象になってしまいます)、難しいジャンルではあると思います。
 ただ、第3回講談社ラノベ文庫の新人賞において、テニスを題材とした『サービス&バトラー』 (2014/4/2刊行)が優秀賞を獲得していますし、この作品は私も好評価です。

 大筋としてはスポーツラノベの大ヒット作『ロウきゅーぶ!』(2009年2月刊行)と同じく、打ち込んでいたスポーツができない状態に置かれた主人公がコーチ役に……という感じですが、主人公のキャラ立てがすばらしく、王道ど真ん中を貫くストーリーラインが爽快です。

■質問2014/09/30
 スポーツラノベにおいて、完結のラインはどこでしょうか?
●ジジさんの回答
 「目標を達成すること」になります。
 弱小チームなら1回戦を勝つ、個人の問題ならライバルに勝つ、もしくはものすごい敵と同じグラウンドで対戦するでもいいのですが、ひとつの最終目標を設定し、それに立ち向かわせて結果を出してください(勝ち負けはどちらでもよいです)。

■質問2014/09/30
 どういう話が、「泣ける」小説なのでしょうか?
●ジジさんの回答
1.物語のカギになるキャラに、果たされない思いが存在する(ロボなら人間になりたい等)。
2.そのキャラの思いを共有したり、受けて広げたりするキャラが存在する(通常は主人公になります)。
3.カギになるキャラと主人公の間をつなぐためのギミックがある。
4.主人公がカギになるキャラの思いを受けて、成長ないし変化する。
 おおまかに整理するとこのような感じです。

■質問2014/09/30
 プロットの破たんしやすい個所はどこですか?
●ジジさんの回答
1.物語の起点と終点が明確に設定されているか?
2.中盤のメインになる事件が、作品の長さに合わせた数だけ設定されているか?
 起点と終点は企画や作品に合わせて結構すんなり決まるものですが、中盤は意外にうまく決まらないものです。起点と終点をつなぐ展開ができているか、見せるべきキャラの魅力エピソードが物語の軸にからめられているか等、実はかなり気を配って配置なり流れを作らないと、物語があっさりおもしろくなくなってしまうからです。
 よって、範囲が広くなるのですが商業的におもしろいものを考える際は「中盤の設計」が肝になるものと、私は考えています。

■質問2014/10/01
 物語の起点と終点は決まっていましたが、終点を迎えるための筋道が明確でなかったため、中盤以降で物語が空中分解することになってしまいました。どうすれば、こういったことを防げますか?
●ジジさんの回答
 構成が視界に収まるショートショートを書いてみるのがいいかと思います。
 原稿用紙5枚、多くても10枚以内なら、ひとネタの起承転結だけで考えられるので、展開方法を整理しやすいです。

■質問2014/09/29
 エロ要素というのは、新人賞ではどのように評価されるのでしょうか。?
●ジジさんの回答
 基本的には、歓迎されないネタであると認識してください。
 エロは全年齢向けのメディアでは扱いの難しいネタですし、エロをメインに持ってくるとほとんどの場合はエロ小説になってしまうからです。
 基本的にはエロ要素が「エロシーン」ではなく、「ネタ」として成立していることを前提として、どれだけのコメディ要素なりドラマ要素が見せられるかが評価ポイントになるかと思います。

■質問2014/09/29
 キャラクターの成長は必ずしも必要なものではない?
●ジジさんの回答
 成長する必要はありませんが、それを貫くためにはかならず「成長しない理由」が必要になります。最初の状態から紆余曲折あって、結果的に成長しない……という展開が必要ということです。

■質問2014/09/29
 「成長しないでいいのに成長しない理由?」と、混乱してしまいました。キャラが成長しない場合は成長しない理由が必要ということについて、詳しく教えてください。
●ジジさんの回答
 主人公が成長しなかった理由を、物語の中でエピソードとして見せることが必要、ということになります。
 たとえば悪人の主人公がいて、彼は生きるために人を殺して奪う毎日の中で姫君と会うとします。
 姫は、人を殺すことは生きるために必要ではないと、やさしく主人公を諭します。彼は清らかな姫に触れ、愛を感じ、善人になることも考えます。
 しかし姫君は、愛を説いた誰かの恨みを買い、結局殺されてしまいます。
 主人公は、結局のところ、この世界は殺して命を奪い合うことが生きることだとあらためて思います。姫君を殺した誰かを殺した後、主人公はこれからも殺し続け、奪い続けていくことを誓いました。
 この例で言えば、主人公が悪人のまま生きていくことが「変わらないことを貫く」にあたり、姫君のくだりがその「成長しない(ことを説明する)理由」になります。

次のページへ >> ストーリーについて2

携帯版サイト・QRコード

QRコード

 当サイトはおもしろいライトノベルの書き方をみんなで考え、研究する場です。
 相談、質問をされたい方は、創作相談用掲示板よりお願いします。