ライトノベル作法研究所
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  4. 現役下読みによるラノベ新人賞Q&A公開日:2013/10/20

現役下読みによるラノベ新人賞Q&Aその5

須賀透さんの質問2013/10/14

 はじめまして、ジジさま。須賀透と申します。
 いままでのご回答を拝見し、勉強させていただいております。
 その上で、いくつかご質問をさせてください。

【質問1】
 「ラノベは想像しやすいもの、一般は共感しやすいもの」という意見には、おおいに得心しました。
 これだけすっきりと両者の違いを表現できるのは、すごいことだと思います。
 しかし、頭では理解できていても、いざ手を動かして創作するとなると、人はトンチンカンなことをしてしまいがちです。
 とくに、ライトノベル、一般小説の双方の公募に手を出している人ならば尚のことでしょう。
 こういった応募者が見落としやすいミス、というものはあるのでしょうか?
1.ライトノベル作家志望が、一般エンタメの新人賞に送るときに陥りがちなミス。
2.一般エンタメ作家志望が、ライトノベルの新人賞に送るときに陥りがちなミス。

【質問2】
 とことん差別化を突き詰めれば、世に出たことのない作品が生まれます。
(もちろん、現実的にはそこまで極端になることはありえませんが……)
 しかし、それでも商品性、つまり売れるかという点において、差別化と未確定要素は正比例すると思います。
 すると「売れるかどうか」の判断は、下読みさまの手にゆだねられると思うのです。
 そのあたりの判断は、どのようにこなしておられるのでしょうか?
 難解な表現になってしまったので、具体的な例をだします。
 斬新だけれど、どうも売れないような気がする。でも確信までは持てない……という作品は通しますか?

【質問3】
「同じ素体をいかに他人と違う方向から見て描けるか?」が差別化の鍵なのですね。
 しかし、「差別化を狙ったのは分かるが、こういう角度からの挑戦はあまり感心しない」という失敗例はかならずあると思います。
(たとえば主人公が意味もなく物語半ばで死んでしまう、メタ的な要素を多分に含んでいるなど……)
 失敗の具体例をあげていただくのがもっとも分かりやすいとは思いますが、それはなかなか厳しいと思います。
 そこで、作品の差別化に取り組んでいる作家志望に向けて、注意点やアドバイスなどがあれば教えてください。
 あまり大げさに捉えず、「新人作家が陥りやすい創作上のミスについての一言コメント」くらいに捉えてください。
 一般エンタメ、ライトノベルで違いがあるならば、それぞれ分けて教えてください。

【質問4】
 ある方への返答で、ジジさまは下記のような趣旨のことを書いています。
 男性読者は「主人公との同化」を妄想し、女性読者は「主人公の立場に我が身を置くこと」を夢想する。
 この違いを、わたしはとても面白く感じました。
 それを踏まえて、訊きたいことがふたつあります。
 1.視点主に男性、女性を据えるときに、気をつけるべきことの違いはありますか?
 2.レーベルカラーはさておき、出版社が男性新人作家、女性新人作家に期待するものに、それぞれ傾向はあると思いますか?

【質問5】
「この応募作の売りはなんなのか?」が、読む側にもっとも印象づけが成される序盤でしっかり押し出せているかどうかが大切であるとジジさまはおっしゃっています。
 ここでいう「売り」とは、「他作品との違い」と捉えてもよいでしょうか。
 たとえば、美女ハーレムものの小説を書いたとします。
 そこで、男女の関係や恋愛模様がどれだけ上手に描けていても、それは「売り」にはならないということでよろしいでしょうか。
 もちろん、文章力、構成力が高ければヒネリがなくても通ることはあるでしょうが、それはジジさまのおっしゃる「売り」ではない?

【質問6】
 「あらすじがきちんとあらすじになっているか」に留意せよ、とジジさまはおっしゃっています。
 これは「梗概」と「アオリ」の違いを理解しろ、と捉えて構いませんか?
 もっと深い意味、あるいはそれ以外に注意すべき点があればご教授ください。

【質問7】
 下読みをしていて、最近感じたことがあればなんでも教えてください。(できればライトノベル、一般小説を分けて)

 わたしが未熟ゆえに、答えづらい質問も混じってしまったかもしれません。
 その場合は、答えても構わない質問だけ選んでください。
 長々とお読みくださり、ありがとうございました。
 よろしくお願いします。

ジジさんの回答2013/10/14

> 【質問1】
>  1.ライトノベル作家志望が、一般エンタメの新人賞に送るときに陥りがちなミス。
>  2.一般エンタメ作家志望が、ライトノベルの新人賞に送るときに陥りがちなミス。

 程度問題ですが、「読者ニーズ」を取り違えてしまう応募者の方が意外なほど多いです。
 これは応募する賞の要求ジャンルや読者傾向をリサーチしていない(締め切りがちょうどいいから送ってしまう等)結果です。
 各賞がどんなジャンルの作品を求めていて、読者がどんな作品を好むのかをきちんと調べることが重要です。

> 【質問2】
>  斬新だけれど、どうも売れないような気がする。でも確信までは持てない……という作品は通しますか?

 おもしろければ上げます。売れる売れないは、編集部が悩む範疇ですので。
 ただし斬新だからといって、おもしろくない作品を上げることは絶対にありえません。

> 【質問3】
>  作品の差別化に取り組んでいる作家志望に向けて、注意点やアドバイスなどがあれば教えてください。

 一般・ラノベ問わず、差別化もあまりに捕らわれると自己満足になりがちです。
 知り合いにアドバイスをもらうという方も多いかと思いますが、アドバイスをもらうのはネタ案や応募用原稿ではなく「あらすじ」にするとよいかと。
 ネタ案では判断がつきませんし、応募原稿を読んで正確に問題点を洗い出せるような人は滅多にいませんので。あらすじを見せてその人が目新しさに食いつくようなら、それはいいネタだし物語構成だという目安になります。

> 【質問4】
>  1.視点主に男性、女性を据えるときに、気をつけるべきことの違いはありますか?

 読者対象が少年・少女・成人男性・成人女性など、どの年代の男女なのかを意識する必要があります。
 基本的に人間は、自分に近い境遇(たとえば年代)の同性キャラに思い入れを抱きます。それがラノベという男子向けメディアに女性主人公が少ない理由でもあるわけです。
 視点を据えるのは、読者にとってもっとも視線を預けるに足るキャラにするのが無難です。

>  2.レーベルカラーはさておき、出版社が男性新人作家、女性新人作家に期待するものに、それぞれ傾向はあると思いますか?

 男女の別なく、応募作品を見て賞に選ぶわけですから、応募作の魅力を踏まえてその後の期待をすることになります。

> 【質問5】
>  ここでいう「売り」とは、「他作品との違い」と捉えてもよいでしょうか。

 それも含みますが、応募者の方がその応募作でもっとも読者にアピールしたい要素ということになります。
 それが差別化よりも心情劇ならこれから巻き起こる心情の嵐を予感させなければなりませんし、バトルアクションならクライマックスを匂わせる嵐の前の静けさを演出しなければなりません。
 要は、ご提示いただいた例はすべて売りに含まれます。

> 【質問6】
> 「あらすじがきちんとあらすじになっているか」に留意せよ、とジジさまはおっしゃっています。
>  これは「梗概」と「アオリ」の違いを理解しろ、と捉えて構いませんか?

 まさにそのとおりです。

> 【質問7】
>  下読みをしていて、最近感じたことがあればなんでも教えてください。(できればライトノベル、一般小説を分けて)

 一般・ラノベ問わず、応募作で多いパターンに「実は○○は●●だったのだ」というものがあります。
 転章を盛り上げたい気持ちはわかるのですが、これだけ多く使われるということは応募者の方にとって楽な一手だからに他なりません。
 差別化を考える際、このパターンを使っていないかどうかを確認してみるとよいかもしれません。

京也さんの質問2013/10/14

 便乗で質問させてください。
 例えばアニメ、サザエさんですがあれを小説に起こした場合、物語に起伏が生じているとお考えでしょうか。
 もし「起伏があるなら」どんなふうに起きているとお考えでしょうか。たとえでいいので教えていただけると幸いです。

ジジさんの回答2013/10/14

 あの一家はそれぞれの構成メンバーが明確な役割を持っています(いちばんわかりやすいのはカツオ=トラブルメーカーですね)。

 つまり、あの一家の一員がなにかしらのアクションを起こせば、その属性を反映させた事件が起こるわけです。
 そして、その事件を個々の役割に基づくリアクションによって発展させ、立ち向かい、解決に至る。
 そういう意味では、あの一家はその構成人員がそれぞれの役所を演じるだけで山も谷も表現できる強固な物語世界を持っているのです。

 よって、物語として描くならば起点になるメンバーにアクションを起こさせて事件を勃発、随時他の家族を投入して事件を育成、家族ないし家族外のメンバー(中島やらノリスケ一家やら花沢さんやら)によって事件をかきまぜたりにぎやかしたりし、起点キャラに近い家族キャラ(たとえばカツオが波平に怒られるのが起点なら波平)のリアクションでどんでんを返して物語の着地点へ至らせる。という構成になるかと。

Diceさんの質問2013/10/14

 初めましてながら恐縮ですが、少し引っかかったので便乗させてもらいます。

>独自性を出そうとしすぎて日本語の文法を歪めた文章、ネット用語や造語満載の文章が二大巨頭でしょうか。

 武器となるものであれやめるべきものであれ、「独自性」が鍵となるのは大変面白く参考になります。
 ここで自分なりに「じゃあ、何故『独自性』が武器にも弱みにもなり得るのか」を考えてみると主観と客観を正しく使い分けられるか、に因るのではという結論になりました。
 この考え方に何か危険な点があれば、ご指摘お願いします。

 最後に一つ、説明と描写って何がどう違うのか分かりやすいポイントがあればお答え願います。

ジジさんの回答2013/10/14

 Diceさんのご意見を正確に理解できているかどうか不安ですが。

 エンタテイメントという一点から考えれば、独自性とは主観によって生み出される、その人でなければ思いつかないなにかです。
 しかしエンタテイメントとは独自性を生み出し、書き上げた「自分」ではなく、読者という「他人」に認識してもらわなければ成立しません。
 自分がいくらこれは独自のものだと主張しても、多くの他人から賛同と賞賛を得られなければ意味がないのです。

 以上のことから、独自性を生み出し、表現するためには基本的に主観よりもむしろ客観を意識する必要があるということになります(あくまでも私個人の意見です)。

 まとめるなら、読者の心に「これは新しい!」と思わせることを考え、そのために必要なものはなんなのかを読者目線で考える必要があるという考えかたです。

> 最後に一つ、説明と描写って何がどう違うのか分かりやすいポイントがあればお答え願います。

 説明とはまさに「○○の理由で●●は▼▼なのである」というもの。
 描写とは主に行動や展開といったなんらかの動きを描くものということを私は指しています。
 ファンタジーや能力物では、作った設定を何ページも説明してしまう応募作がよくあります。説明というのは基本的におもしろくないので、短くわかりやすくまとめつつ、さらにそれを書く必要がある箇所に散らすのがよいかと思っています。

逢雄さんの質問2013/10/14

 はじめまして、逢雄と申します。
 いくつもの質問をすることをご容赦下さい。

・まず、最近の傾向とか流行りとか
 これからある章へ向けて、会話主体の日常モノ、邪魔にならない程度のSF要素という作品を考えているところですが、最近の応募作の中ではやはり目立たないというか、差別化を図れないような気もします。ただ流行を気にしないわけにも、と迷っておりまして。
 ただの意見でいいので、ひと言いただければ。

・次に、作品について
 日常モノ、会話主体の良い面悪い面、理想像やこれはやってはいけないというものもありましたら。混乱を避けるため、ほとんど二人だけで進めて時々三人目が現れ、というかたちにはするつもりですが。

・最後に、SF要素について
 ネタ程度には頻繁に登場、わりと最後になって重要なピース、という扱いですが、ほかのものや人で代替することは可能です(変猫の猫の像よりは重要かな)。
 問題は、それを突きつめるか否か、なのです。
 ストーリーの進行に大きな違いは出ないのですが、学生グループの身でそれの開発と研究に明け暮れるのか、できないねー、と言いながら人間関係などに悩むのか、という点で迷っています。
 ジジ様がよく見るのはどちらなのか、またお薦めはどちらか、教えていただければ。

 久々の質問でおかしな文体になったような気もしますが、よろしくお願いします。

ジジさんの回答2013/10/14

> ・まず、最近の傾向とか流行りとか

 ラノベということなら、異能力系と無気力主人公が巻き込まれる系は多いと言えるでしょう。
 あと、ジャンル問わず「実は○○(キャラ名)は●●(異能力者等特別な存在)だったのだ!」というパターン。
 このへんはライバルが多いとお考えください。

> 日常モノ、会話主体の良い面悪い面、理想像やこれはやってはいけないというものもありましたら。混乱を避けるため、ほとんど二人だけで進めて時々三人目が現れ、というかたちにはするつもりですが。

 会話メインなら、「間が保たせられるほど会話密度を上げられるか?」、そして「会話をうるさく感じさせない味が出せるか?」が満たせるかどうかになるでしょうか。これができていれば理想ですし、できなければ辛いということになります。

 ちなみに会話主体の日常モノは、今年(2013年)のこのラノ大賞の大賞作『セクステット』 が「基本会話だけで成立させた日常モノ」なので、独自性という点から言えば危険かもしれません。ご興味あればご一読いただくとよいかと。

> ネタ程度には頻繁に登場、わりと最後になって重要なピース、という扱いですが、ほかのものや人で代替することは可能です(変猫の猫の像よりは重要かな)。

 これは私が最初で述べた「実は!」のパターンですね。もし独自性を押し出す目的なら、王道の手法ですので再考の余地ありです。

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