ライトノベル作法研究所
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  4. 成功できるかは遺伝子ですべて決まっている!?公開日:2013/11/13

ラノベ作家として成功できるかは遺伝子ですべて決まっている!?

 quia*さんの質問 2013年11月03日

 quia*です。前回『創作とは時間の浪費ではないか?』はあまりの反響に驚きました。
 中には「(最近は学生時代から成果を出す人が主流になっており、成人した人間は経験年数の面で不利になる可能性があるという意味で)低年齢化が問題だ」という私の主張を「年齢が高いと公募で足切りされる」と誤読したラ研住人も数人いましたが、それだけ関心を寄せていた方が多かったということですね。

 さて、本題です。
 どんな情報も一瞬で伝播するこのネット社会。洪水のごとく溢れる大量の情報に飲み込まれている以上、時には目を背けたくなる現実を直視しなければならない時が来てしまいます。
 その1つがリンク先にある『ネトゲの次に人生の貴重な時間を吸い取られる極悪趣味「創作」 』でした。今やイラストレーターやボカロPはどんどん低年齢化する時代。ラノベ作家の年齢もそこまで低くないといえ、多くが30歳未満。若い期間に成果を挙げた彼らは相当な時間を技術の習得に費やしているはずです。学生時代にデビューできなかった。大学に入ってから、就職してから、あるいはニートになってから書き始めた。遅れて競争に参入した人間はこれからの時代、ますます不利になっていくことでしょう。絶望的です。

 ですが、うっぴーさんがまとめた『創作とは時間の浪費ではないか?』ではほんの少し、希望が示されていました。
多くのライバルは一万時間到達前に脱落していく。楽しければそれでいいじゃないか。低年齢でデビューしたとしても生き残れるかが心配。厳しいコメントもありましたが、励みになるものもありました。他人を気にせず書けばいいのか、と。

 ところが、またも突きつけられる容赦のない現実。名工が研ぎ澄ました日本刀のような現実が。
 2013年10月22日、一つのツイートが日本を震撼させます。

為末 大 ?@daijapan 10月22日
成功者が語る事は、結果を出した事に理由付けしているというのが半分ぐらいだと思う。アスリートもまずその体に生まれるかどうかが99%。そして選ばれた人たちが努力を語る。やればできると成功者は言うけれど、できる体に生まれる事が大前提。

 私風にアレンジするとこんな感じでしょうか。

quia* ?@quia 11月3日
成功者が語る事は、結果を出した事に理由付けしているというのが半分ぐらいだと思う。ラノベ作家もまずその頭に生まれるかどうかが99%。そして選ばれた人たちが努力を語る。やればできると成功者は言うけれど、書ける頭に生まれる事が大前提。

 この何気ない一言はたちまち話題になり、ついにはJ-CASTで取り上げられるまでに。

 陸上界で活躍した日本のトップアスリートの為末大さん(35)がツイッターで、「やればできると言うがそれは成功者の言い分であり、例えばアスリートとして成功するためにはアスリート向きの体で生まれたかどうかが99%重要なことだ」と持論を展開した。すると、「身も蓋もない」「道は努力で切り開くもの」などと批判が殺到し「炎上」した。

 為末さんはこの「炎上」を受け「努力だけでオリンピック選手にはなれない」などと2013年10月28日にツイッターで寄せられた批判に応戦した。

(中略)

批判している人たちの多くは為末さんの意見が「正論」であることは分かっているようなのだが、日本のトップアスリートがそれを言ってしまうのは身も蓋もないことだし、夢も希望もない、現在努力し頑張っている人に失礼だ、ということで怒っているようなのだ。また、「世の中は公平で理不尽ではない」と信じている人もいて、そうした様々な思いが「炎上」につながっている。
為末大「努力すれば成功する、は間違っている」 「正論」なのに「炎上」してしまうのはなぜ

 元々為末さんが有名だったためか、Twitterでこの話題に触れるラノベ作家も出始めました。
 『シスターサキュバスは懺悔しない』の折口良乃先生と『ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー』の三河ごーすと先生です。

折口良乃@百殺目の恋 ?@origuchiyoshino 10月28日
もっと細かい話をすれば、たとえばラノベでも、センスや発想力なんかはすぐには伸ばせないけど、文章力や構成力は勉強と努力次第でどうにかなる部分もあるわけで、一つの分野でも色々あるんじゃないかな。
三河ごーすと@祓魔学園の背教者発売中 ?@mikawaghost 10月28日
@origuchiyoshino 実は文章力・構成力は絵や音楽よりも才能が必要だという研究もあるそうです。しかも生まれ、環境というよりは先天的な才能だとか……発想力にかんしては最近はブレーンストーミングをひたすら反復して鍛えるように試みています。
折口良乃@百殺目の恋? @origuchiyoshino 10月28日
@mikawaghost なんと……! もしかすると、何気なくやっていることが一番才能が必要だったりするのでしょうか。
三河ごーすと@祓魔学園の背教者発売中? @mikawaghost 10月28日
@origuchiyoshino 書けない人は技術を学ぼうが何をしようが書けないらしいです。どれだけ技術が及んでいなくても書けるというだけで、先天的に才能はあるっぽいですね。むしろ発想とかのほうがわりと「生まれた後、なにをしてきたか」がかかわってくるので後天的かも……。

 書けない人は技術を学ぼうが何をしようが書けない! 絶望!
 三河先生のツイートにある「研究」とは「知能指数は80%遺伝」の衝撃のことでしょう。
 慶應義塾大学文学部で行動遺伝学や教育心理学を研究している安藤寿康教授によると、自尊心やうつ感情や外向性、果ては空間認知能力に至るまで、人間の全ての能力に程度の差はあれど、何らかの形で遺伝が関与しているというのです。
 そんな彼も最初は「遺伝よりも環境」派でしたが、最終的には「環境よりも遺伝」派へと転向してしまいます。

ちなみに、安藤さんは、教育学の学生として、最初は「遺伝よりも環境こそ大事」とする、「ピッカピカ」の環境派だったという。

(中略)

しかし、大学院での指導教官だった教授から行動遺伝学の本を紹介され、衝撃を受けた。

(中略)

「もともと環境によってこれだけ変わるという研究をしたかったのに、あらゆることに遺伝の影響が入ってるっていう論文ばかりなわけですよ。で、考えてみりゃ当たり前じゃないかと。人というのは遺伝子の産物なんだから、遺伝の影響が現れてくるのは当然なのに、社会科学では結局ナチス以来のタブーのベールに覆われてしまっている。これはむしろ、知的に不誠実だと感じたんです」

というわけで、安藤さんはピッカピカの環境派から方向を修正し、「遺伝と環境」の影響の仕方を見る行動遺伝学を学んでいくことになる。
「知能指数は80%遺伝」の衝撃

 ラノベ作家はスポーツ選手とは違う。才能はあんまり関係ないさ。そんな期待を、安藤教授は一撃で粉砕します。
 『週現スペシャル 大研究 遺伝するもの、しないもの【第1部】一覧表でまるわかり 遺伝する才能、しない才能、微妙なもの』を参照します。
 一作書き上げるには十万文字以上書ききる集中力やサボらない真面目さが必要ですが、集中力は五つ星(多いほど遺伝の影響が強い)、真面目さは三ツ星、ラノベ作家に必要な文才は四ツ星なのです!
 プロのアスリート同様、プロの作家になれるかどうかには遺伝が大きく影響しているのです! 遺伝は生まれで決まるので努力でどうにもできませんから、デビューできるか、生き残れるか、ベストセラーを出せるかどうかもまた、努力でどうにもできないことが判明してしまったのです! これが絶望でなくてなんでしょうか!

 ラノベ作家になるのが私の夢でしたが、その可能性が閉ざされてしまったことを考えると泣き叫びたくなってしまいます。ラノベを書かない自分、胸の中の蟠り(今回みたいな絶望)を世に吐き出さない自分、そんなものが到底考えられないからです。このまま自己実現できずに死んでいくことを考えると、虚しくて生きていく気が起こりません。自殺を考えてさえいます。
これからどうすればいいのでしょうか。お願いします。誰か助けてください。

●答え●

 SFの父と言われたH.G.ウェルズは、歴史的名作となった『タイムマシン』(1895年刊行)を出版社に持ち込んだところ、「……たいして将来性のない、マイナーな作家だ。この作品は一般読者には面白くなく、 科学的知識のある者には物足りない」と編集者に言われて、出版を断られたそうです。

 才能があるか無いか見極めるのは、実は結構、難しいのです。その道のプロでさえ、相手の才能を見誤ることがあります。
 また、才能があっても最初から認められる人は稀で、大抵の人は不遇の時代を過ごしています。

 才能が本当にあるかどうか、その潜在能力はどれほどか? を見極めるためには、粘り強い挑戦が必要となるのです。
 もし、H.G.ウェルズが編集者に批判されて『タイムマシン』の出版を断念してしまったら、彼の名は歴史に残らなかったかも知れません。

 『遺伝子がすべてを決定する』というのは8割方、事実でしょうが、本当に才能がある人まで、ちょっとうまくいかないとすぐに遺伝子のせいにして挑戦をやめてしまうようになっては、もったいないと思いませんか?
 そして、自分に才能が無いと、確実に判断できますか? ベストセラー作家でも原稿を突き返されるし、プロの編集者でも見誤るのに?

 才能の有無というのは、とりあえず考えなくて良いと思います。そんなことは真剣に10年(才能を開花させるのに必要な一万時間の訓練期間)も努力してみなければ、結局わかりません。書きたいから書く、これだけでOKです。

 挑戦をやめたら、才能の有無にかかわらず、成功の可能性はゼロになります。

●追記
 ハーバード大学の医学博士ジョン J. レイティの研究によると、読み書き能力や集中力は、運動することによって向上することがわかったそうです。ベルモント大学の研究では、スポーツをしている子供はADHDを発症しにくいということがわかています。
 実際に、ADHDには運動療法と呼ばれる治療法があり、運動することで脳の前頭葉の働きを活発にして集中力を高め、ADHDの1次的な症状を緩和できます。
 ADHDは先天的に集中力が長く続かない発達障害ですが、こういった先天的なハンディキャップを克服する手段が存在しているのです。
 つまり、先天的に集中力が欠如していても、後天的な努力で向上することが可能ということです。

 ちなみに村上春樹は小説家にとって才能の次に重要なものとして、集中力をあげており、これを鍛えれば才能の乏しさをある程度カバーできるとしています。彼は嘘か真か、自分のことを才能にあまり恵まれていないなどと言っています。
 だから、毎日10キロ近くのマラソンを続けているようです。

ばrrrさんの意見2013/11/03

 これだけの長文を書いた熱量を小説に使えばよいのでは・・・

ケスウ・ユジン・ヘイテさんの意見2013/11/03

 こんばんは。ケスウ・ユジン・ヘイテと申します。

 大丈夫です。難しい事は分かりませんが、私がその定説とやらを、覆して見せます。
 ただし代価をもらわない以上、納期は無期限でお願いします。まあ、十年は待たないと駄目かもしれません。

 頑張りたくないなら、適度に真面目に生きて、後は適度に遊んでいてもいいんですよ。
 ゆっくりする権利は、全ての人間に等しく与えられるべきだ、と信じています。

 虚仮の一念岩をも通す。と言います。
 ゆっくりした一念が岩をも通す事を、身を以って証明してみせましょう。

なるさんの意見2013/11/03

 どうせ死ねばなにやったって無駄なんだから好きにしなよ。

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