ライトノベル作法研究所
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  4. 下読みがラノベ新人賞の疑問に答えます公開日:2014/01/06

下読みがラノベ新人賞の疑問に答えます

 ジジさんのQ&A 2014年01月04日

 去年10月にスレを立てさせていただきました、下読みのジジです。
 前回同様、小説の賞に応募されている、されようとしている方の需要がありましたら、職域をはみださない範疇でなんでもお答えします。
 みなさんが現在抱えている疑問はもちろん、前回と同じ内容の質問でも、前回の質問に対する質問でも、大小問わずお聞きください。
 そして横レス、割り込み等々大歓迎ですが、【ご自身を含め、どなたの言葉も否定はなし】でお願いします。

〈ジジの身分〉
 男女それぞれ向きの一般・ラノベの賞において下読みをしています。
 職業は、小説ではないですが文筆業です。

●答え●

匿名さんの質問2014/01/04

 こんばんは。匿名で質問をしたいと思います。
 以前のスレは参考になりました。またこのような機会をつくってくれて嬉しいです。
 では、質問の方をしたいと思います。

1.応募作の選考方法
 これは具体的にどうなのでしょうか?
 加点法、減点法、相対評価、単純に面白いか面白くないかの二択、将来性を感じるか、文章のレベル・・・etc
 気になるので是非教えてください。

2.女性主人公における制約
 感情移入が難しいという理由は分かります。
 では、三人称にしたら男性主人公と同じように評価されるのでしょうか?
 それとも、テーマを男女関係なく共通するもの「孤独」「救い」「友情」など、そういったものにすれば良くなるでしょうか?
 私は女性主人公を書くのが好きで、二作ほど新人賞に投稿したのですが、どちらも二次審査で落ちました。何がいけなかったか悩んでおります。
 どのように考えているのかお聞かせください。

3.オリジナリティ論
 今まで幾度も議論され、その度に目を通しているのですが、未だに要領を得られないものです。一番悩んでいることでもあります。
 まず、オリジナリティとはどこに出せば良いのか? ということです。
 物語における要素として、文章、キャラクター、物語の構成、設定・・・があります。これらのどこにオリジナリティを考えれば良いのでしょうか?
 また、どの要素が重点的に評価されるのでしょうか?
 文章を独特に? 既存作に当てはまらないキャラの作成? 誰もが考えつかないような構成で物語を演出? 既視感のない設定の作成? ・・・難しいです。
 それに、はっきり言って最近の受賞作の中には見たことあるような作品も多い気がします。このあたり、どうなのでしょうか?

4.プロ志望者が参考にできる、まさにお手本とも呼べるような作品はありますか?
 ラノベは基本的に続刊を考えられて作成されていて、あまり参考にできない作品も多いです。一巻はキャラ紹介だけとか……参考にならないよーって作品ばかり。
 教えてくれると嬉しいです。

5.受賞するなら、王道的で堅実な作品? それとも、既存作には無いようなオリジナリティ溢れる作品? 
 最近よく考えているのですが、難しいです。
 受賞作品は王道的なものが多いと感じております。(いわゆるテンプレ的な)
 しかし、求められている作品は「オリジナリティ溢れる作品」ですよね?
 これって矛盾していませんか? 
 オリジナリティの定義を「誰もが見たことないような作風で、かつ面白い作品」とするならば、受賞作が「既視感のある、普通の作品」のような、王道的な作品が受賞するのはおかしいと思いました。
 どちらを書けば良いのでしょうか?

 初っ端から多数の質問申し訳ありません。
 しかし、ジジさんが一月頃に来ると以前のスレで言っていたので、聞きたいことをまとめていました。
 喉から手が出るほどに受賞したいです。だからこそ、このように質問させて頂きました。
 私は新人賞への投稿歴が10ヵ月ほどの者です。この期間で九作書いたのですが、未だ芽が出ません……(ちなみに、六作が選考を終えていて三作が二次落選、残り三作は選考途中)
 最近になってようやく、思い(プロット)通りの作品が書けるようになってきました。あとは
「オリジナリティ」
 これが一番の壁です。どうにかしたいものですが……
 是非お願いします。

ジジさんの回答2014/01/04

 おつかれさまです。こちらこそ、少しでもお役に立てたなら幸いです。

> 1.応募作の選考方法
 基本的に選考は、【他作品との相対評価】で行われます。
 基準は単純で、「他作品よりおもしろいもの」を上げるわけです。
 そのおもしろさとは、なかなかこれと断言できるものではないのですが、物語や文章の完成度よりは「設定とキャラ」が重視される感じでしょうか。そして、このふたつが将来性だと判断される場合が多いですね。

> 2.女性主人公における制約
 匿名さんが言われたとおり、男子をメインターゲットとしたラノベにおいて、読者が視点を預けにくい女性主人公は難しい存在です。
 そしてここからは私見ですが、女性主人公をラノベ応募作に使う際の対処法は「視点キャラとして男子をそばに置く(「涼宮ハルヒの憂鬱」方式)/男子主人公の目線から女子の行動や心情を描く(「とらドラ!」方式)」、もしくは「女子の心理に切り込まず(心情劇をメインに据えない)、キャッチーなネタを中心に据えた物語づくりを行う」のどちらかを選ぶべきかと思っています。

 男子(読者対象層)には、女子ないし女性の心理を高いレベルで理解することができません。ですので、それがテーマと密接にからまなければならない状況を避けるのが無難でしょう。
 例として挙げていただいた孤独、救い、友情は、すべてが心情劇なくして成立しないもの。
 書き手が提示したテーマに読者がカタルシスを感じるためには、主人公の行動や心情の動きを読者が理解できなければなりませんので、テーマでなんとかするのはかなり難しいからです。

 物を読んでいないので問題点はわかりませんが、一次を2本通過しているということは物語の質も方向性もそれなり以上のレベルだと言えます。その上で考えると、「物語の〈勢い/雰囲気/完成度〉はあるが、〈物語のつじつまが合っていない/物語の起伏が薄い/カタルシスがない〉」などの理由があるのかもしれません。
 ただ、一次を通過できる以上は方向性としてまちがっていないと断言できますので、上記以外のやりかたでもなんでも、なにかしらひねりを加えて突き詰めてみるのもアリかと思います。

> 3.オリジナリティ論
> まず、オリジナリティとはどこに出せば良いのか? ということです。
 どこに出すべきかと言われれば、『設定に出すべき』です。
 文章をヘタにいじれば中二病なとんでも文章ができあがる確率が高いですし、キャラはすでに数多のパターンが生み出され、さらには読者が好む像というものもある程度確定している状況ですので冒険する意義が薄い。構成のうまさは加点要素ですが、物語に力がなければ加点に至らない危険性があります。
 しかし、設定は最初にうまく押し出せていれば審査側を「おお」と思わせることが可能。あとはそれをブレさせずに最後まで使い続けられればかなりの結果が期待できます。

 これは質問5への返答にもなりますが、ぜひ、どこかで見たような作品で受賞を狙おうなどと思わず、オリジナリティを追求してください。これは断言しますが、既存作のパロディしか書けない作家に将来性はありません。物語を構成する考え方や視点が借り物なので、遠からず時代に追いつけなくなり、書くことができなくなります。
 ちなみに設定を考えるための方法論は、もうひとつレスを用意しましたのでそちらをご参照ください。

> 4.プロ志望者が参考にできる、まさにお手本とも呼べるような作品はありますか?
 私は榊一郎氏の作品の一巻を集めることをオススメしていますが、理由はもうひとつのレスのほうに。

 以上、不明点等ありましたら、重ねてご質問ください。

オリジナリティ(差別化、独自性)について。ジジさんの回答2014/01/04

 差別化とは以前書いたとおり、「同じ素体をいかに他人と違う方向から見て描けるか?」がポイントになります。

 手法としてひとつ挙げるなら、異能力や魔法といった定番ネタを、能力や状況の「制限」で表現することや、本来その力を使えないはずの人間になんらかの理由を与えて使わせること等ですね。
 ここで重要なのは、どのような手法を使うにせよ、それは読者が想像しやすいフォーマットの中で行わなければならないということです。魔法なら魔法という枠内で、「こんな手があったか!」と思わせなければ失敗。
 以前例に出した榊一郎氏の『ストレイト・ジャケット』( 2000年8月刊行)は、「魔法という理不尽なものを、我々一般人が想像しやすいレベルでの科学技術に落とし込む」という設定の妙が光っていました。魔法という定番ネタに、読者が想像しやすく、しかも思いつかなかった角度から切り込んだからこその妙です。
 榊氏の美点はさまざまありますが、この「角度を変えて描く」をあれだけの執筆スピードで生み出し続けていることに第一のすばらしさがあります。榊氏の各作品の1巻を入手するだけで多彩な資料が手に入りますので、応募者の方にはオススメです。

 次に独自性ですが、もっともわかりやすい形を提示するとすれば「誰も書かないもの、組み合わせを見つける」ことになるでしょう。
 たとえば有川浩氏は、「図書館の理念」を「言葉狩りの横行する世界の中で、武力をもって守り貫く」、「長身女と低身男のぎこちない恋愛」というドラマで描き出すという『図書館戦争』(2006年2月)を生み出しました。
 言葉狩りの横行する世界は、すでに複数の作品で取り上げられている要素ですし、長身女と低身男の恋愛は、少女マンガでは人気作を生んでいる要素です(有川氏は、ラノベ編集のでかい女は萌えない発言を耳にして、あえてそれをやってみることにしたそうですが)。しかし、図書館の理念というものは、誰も注目していなかったし、気づかなかった要素ですよね。

 ここで注目すべきは、『図書館戦争』を構成する要素の66パーセントがすでに存在するものであるという事実です。
 読者がまったく知らないものばかりで構成しては、単なる「斬新なもの」でしかありません。作家の独自性とは、読者がそうと認めなければ成立しないものです。有りものの要素の中に彼女ならではの視点が強く機能――スパイスとして効いているからこそ、あの作品は広く受け入れられ、その中に斬新さを見出されたわけです。

 なにが言いたいかといえば、「作家の独自性とは読者が理解できて初めて独自性たりえる」ということ。今までなかった斬新なものとは、今までにもあったものに練り込むことで初めて光っていることが読者に伝わるのだということです。

匿名さんの質問2014/01/04

 「角度を変えて描く」「誰も書かないもの、組み合わせを見つける」
 この二つは重要な要素なのですね。心がけるようにいたします。
 参考になるご意見ありがとうございました。
 しかしながらお聞きしたいことがあるので、質問に答えてくれたら嬉しいです。

 ここからは私的で申し訳ないのですが……
 私が今考えている案にオリジナリティがあるかどうか判断していただきたいです。
 下読みをされている方にお聞きできる機会などほとんどないので、参考にさせてください。

(以下、作品について)
 私が今考えている案として、「王道ハーレムをつくる兄の弟」という物語があります。
 「ハーレム形成」という、いわゆる「鈍感主人公の兄」と「普通の弟」の物語です。

 主人公は「普通の弟」
 兄に対して強いコンプレックスを抱いている(好きになった女性は、ことごとく兄を好きになるから)
 対する兄は「テンプレ的なハーレム主人公」
 自分に好意を寄せる少女の思いにきづかない(鈍感)

 ハーレムって憧れるものですけど、現実にあると絶対おかしいものです。
 だからこそ「物語の主人公的な要素を持つ兄」と「現実の一般的な考えを持つ弟」で物語がつくれないかと考えました。

 大まかな概要としては、兄の「ハーレム形成」によって、ハーレム要員が生み出すであろう「少女の不安心」を弟が「壊す」というものです。壊し方として、弟は少女の夢に入り込み、「少女の不安心」が生み出す精神の乱れを直すというもので……

 夢の世界への手引きは、新たなヒロインに担ってもらいます。

 差別化としては、「ハーレム的な物語を常識的な視点で描く」こと。
 独自性としては、「ハーレム」と「鈍感主人公のせいで生まれてしまう少女の不安」を組み合わせました。

 弟は好きになった少女達の壊れていく姿が見たくなくて、報われない努力をする。
 結果として、報われない努力は陰で弟を見守ってきたヒロインのおかげで報われる。
 兄のせいで「人に好かれない」属性を持った弟が、「人に好かれる」ようになるという物語ですが……いかがなものでしょう?

 ざっくりしていて申し訳ありません。
 細かく書くと長くなりそうなので、短くまとめてみました。

 どうでしょうか? 
 何かご意見をいただけると、嬉しいです。

ジジさんの回答2014/01/04

 提示されたデータではあらすじがわからないので、物語の構成的問題点はお伝えできませんが……
 現状で思いつく問題点は以下のとおりです。

・主人公が報われない行動を繰り返すに足るモチベーションが不明
・新たなヒロインが、現状ではご都合キャラ
・「売り」になる、作品を読んだ読者がどのような「得をする(カタルシスを得る)」のかが不明
・登場人物が多くなりすぎそうな予感
・能力に意外性(もしくは弱点)がないので、やはりご都合的に見える

 ネタの大枠はこれで充分だと思いますが、やはり内側に詰め込む具の選別や調理方法がゆるい、という気がします。
 もう少し詰めたご相談が必要であれば、お手数ですが〈メールでのご相談を希望される方へ〉のレスをご覧いただいた上でメールをいただければと思います。

そいさんの質問2014/01/04

 ジジさん、はじめまして。
 「そい」と申します^^
 以前のスレは大変参考になりました、いつもありがとうございます。
 さて・・・さっそくですが、ご質問させてくださいm(_ _)m

 今回、新人賞用にラノベ小説を執筆してます!
 主人公が異世界に望まず行っちゃったという、ありきたりな設定のファンタジー小説です。
 ちなみに、主人公の最終目標は現代に戻る事です!

 ですが、結論から言うと今回戻る事は叶いません。
 簡単なあらすじは、悪役をやっつけてヒロインに好意を寄せられ、とりあえず戻り方を探さないとな~・・・みたいな終わり方を想定しています。

 ここで、疑問が発生してしまいました!
 『「この謎は次の巻で明かされる」は未完結と見なされるのでNG。』

 結局、現代に戻れてない=最終目標を達成できず。という物語は、未完結とみなされるのでしょうか?
 ちなみに、七つのアイテムを集めないと戻れない(っていう設定は無いですが)って程度のレベルの謎は残ります。
 結局、その七つのアイテムって何なのよ?って謎です。

 もしかして、悪役やっつけてヒロインに好かれて、現代に戻れた!
 ・・・くらいシンプルにした方が、いいのでしょうか?
 ちなみに、シリアスと萌えと恋愛とギャグの成分が激しく混合してる作品です。
 若干、萌えと恋愛の要素が強いです。

1・「やったー!現代に帰れたー!」←最終目標
2・「やったー!ヒロインと一緒に暮らせるぞー!」←今回定めた終わり方

 どっちにすべきか、疑問です。
 気がつけばもう朝6時です。
 ちなみに僕は2で行きたいとは思ってます。

 大変恐縮ですが。どうかご教授願います・・・^^;

ジジさんの回答2014/01/04

 おはようございます。今回も、少しでもみなさまの参考になるようお答えしていきたいと思っております。

> 結局、現代に戻れてない=最終目標を達成できず。という物語は、未完結とみなされるのでしょうか?

 最終目標を最優先しない、もしくはできない理由が明示されていれば問題ありません。
 賞的に欲を言うなら、さらにその理由が最終目標を選ぶよりも起伏あるストーリーラインを描き、カタルシスあるエンディングへたどりつくのがベストでしょう。

 そして、そいさんが「ヒロインと暮らせるぞ!」というエンディングを目ざすのであれば、主人公がヒロインと暮らしたくてたまらなくなるだけの心情・恋愛(の種になる)エピソードを必要量積み重ねる必要があります。ネタを見るかぎり、作品に詰め込まれた要素が多いようですので、その点は推敲時に要確認ですね。

 また、バランス的に可能なら、七つのアイテムを集めないと的な謎には触れずにすませるほうがいいかもしれません。それを説明することで規定的に問題なくとも、読者に未解決感のモヤモヤを与える危険性があるからです。

 結論は、「2で行って大丈夫ですが、謎に関しては受賞後の2巻の冒頭で明かすことにして、応募作では触れないほうが無難」かと思われます。

ジジさんの回答2014/01/07

 少し追記を。

 応募作において最重要な課題のひとつが、「物語が完成(完結)していること」です。
 続編を臭わせるようなエンディングは減点対象になるので絶対に避けてください。

 ですので、「帰れるかもしれない状況」という逃げ道を設定することなく、「帰れない理由」を提示し、かつ「帰らない理由」を提示して、それを貫いて物語を気持ちよく完結させてください。

風月さんの質問2014/01/04

 風月と申します。
 よろしくお願いします。

 新人賞へ応募する作品についての質問です。
 わたしは評価シートに沿って改稿した作品を送り続けることで、いつかは受賞を、と考えています。

 事実一次落ちした作品を批評に従って改稿し、翌年は三次選考へ進みました。
 そしてそのときの批評に従って改稿し、今回も送りました。

 この方法は危険でしょうか?
 懸念されることは、同じ作品を改稿して送り続けることで、
 新しい小説を書くことができない人、と負のレッテルを貼られてしまうのではないか、というです。

 実際のところどうなのでしょうか?

ジジさんの回答2014/01/04

 おつかれさまです。

 「うーん」と思う編集部もあるかもしれませんが、それだけで落とすレーベルはないかと思います。
 賞の世界では実際に同じ作品を改稿して送り続けている人がいますし、その人の応募作を私は毎年読んだりもしています。

 ただ、個人的には改稿作を送るより、やはりその都度新作を書き起こすのをオススメしたいところですね。
 理由は風月さんがおっしゃるとおり、ほかの作品が書けない、新しい発想を送り出せない作家性の低い人間、と判断されがちだからです。

 そして改稿作は、「○年前の風月さんが考えたネタ」で作られたものですよね?
 ネタというものは年数を経るごとに、ラノベでは非常に重要な時代性、今感がどんどん目減りしていきます。

 ですので私の意見としては、「改稿作を送るメリットは確実にありますが(事実風月さんの作品は三次まで進んでいるわけですので)、作家として生きていく予定はあるならアドバイスを踏まえつつ、その都度新作を提出するほうがベター」となります。

 不明点等ありましたら重ねてご質問ください。

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