ライトノベル作法研究所
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  4. 下読みがラノベ新人賞の疑問に答えます公開日:2014/01/06

下読みがラノベ新人賞の疑問に答えます。その7

真豪鬼さんの意見2014/01/10

 回答感謝いたす。うむ、やはりワシが思ったとおりの回答だった。それしかないな。自分の領分を全うする。それが職人であり武士だな。うむ、愚問だったな。
 最後にもうひとつ質問がある。ジジ殿が下読みをしていて「おっ、大賞が獲れるかはわからないけど、間違いなく受賞はするだろうな」と感じて、実際受賞してしまった作品をあったのだろうか。あったとしたら、どんな作風だったのだろうか。

ジジさんの回答2014/01/10

 押忍押忍。
 これまでの下読み経験の中で、受賞を予感した作品が賞を取らなかったことは一度もありません。

 これは不思議なもので、賞、特に大賞を取る作品というのは、「誰が読んでも上がる」んですよ。
 この年はこの作品の年だった、などと審査員選評で目にされたことはないでしょうか? 大賞作というものは、今感やネタ性、キャラ立て、その他のすべてが「今年はコレ!」となるものなのです。

 ただ逆に、「賞は取れないだろうけど、評価シートを読んでもらうことで次はきっとパワーアップしてくれるはず」という気持ちで上げた作品が銀賞やら特別賞に入ることはけっこうあります。
 私だけでなく、他の下読みや審査員が同じように思い、編集者が「この人は絶対伸びる。伸びたら売れる」と推したからこそかと思います。

ビーバーさんさんの質問2014/01/10

 もし逆にジジ様が面白くないと感じるけれど、商業的な価値があると判断できる作品はどう判断されるのでしょうか?(もちろん基礎的な一定水準は満たしているけれど、個人の趣味には合わない……というラインで)

ジジさんの回答2014/01/10

 おもしろければ上げます。重要なのはおもしろさです。
 自分の趣味に合わないのと作品がおもしろいのは別問題ですから。

 おもしろい作品とは、たとえ最初に目が滑ったとしても、不思議なほど読む側の気を惹くものです。
 そのような作品を上げ、それが実際に賞を取ることも希ではありません。

匿名さんの質問2014/01/10

 こんばんは。先日にも質問させていただいた者です。
 アドバイスは本当にありがとうございました。重ね重ねお礼を伝えつつ、質問に移りたいと思います。

 せっかくプロに質問できるチャンスなので、まだ何か聞きたいことは無いかと考えたたところ、一つ聞きたいことを思いつきました。

 それは、物語の終わり方についてです。
 やはりラノベにおいて、バッドエンドというのは印象が良くないものでしょうか?
 10代を対象にしているラノベは、必ずハッピーエンドで終わらせるべきでしょうか?

 お答えいただけると嬉しいです。

ジジさんの回答2014/01/10

 必要ありません。
 物語が読者にもたらすカタルシスはプラスだけのものではないからです。

 たとえばゾンビホラー物があったとしますが、エンディングで主人公もヒロインもゾンビに食われてしまったとして、それがハッピーエンドでないから駄作だ、とはなりません。

 重要なのは、作品のストーリーラインが「作者の決めたエンディングへ至るために必要な過程を、正しくたどっているか」です。

 作品を構成するすべてのエピソード・伏線が、匿名さんの決めたエンディングで解決する構成にきちんとなっているかどうかが重要であると考えていただければ。
 そしてそれができていれば、バッドエンドには読者の心を黒く呑み込む負のカタルシスが生まれ、読者を納得させるのです。

 読者を納得させられれば勝ちです。
 それだけを目ざしてプロットを組み、エピソードをたたみ込んでみてください。

ラノベの王女様さんの質問2014/01/11

・「魔王勇者もの」「学園ハーレム」などのよくあるジャンルについて
 あたしはむしろテンプレ的作品の方が好みよ。
 変に奇をてらったって、作品の質が上がるわけじゃないのよ。

・『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』などのハウツー本に関して
 まあ当たり前のこと書いてる、ってのが読んでの感想ね。
 ただ、『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』で言語化されたことによって、ラノベへの理解が深まったのは確かかしら。
 あたしとしては、そろそろ「◯◯と??は一見すると似ているが売上は違う。何故か」みたいな分析をして欲しいんだけどね。ビジネスの世界ではよくやる分析じゃない?

ジジさんの回答2014/01/11

 ご機嫌麗しゅう。

> あたしはむしろテンプレ的作品の方が好みよ。
> 変に奇をてらったって、作品の質が上がるわけじゃないのよ。

 それはまさにそのとおりですね。
 だからこそ王道テーマの応募作が一定数以上集まるわけですので。
 問題はオリジナリティと差別化ですが、これがなかなか難しい。

 「同じ素材をいかに角度を変えて見るか」、王道を選ぶ方は、ぜひこれを考えてみていただけたらなと思っています。

> まあ当たり前のこと書いてる、ってのが読んでの感想ね。

 質問者がいないのもあって、具体的対策がアドバイスできないですからね。これをムリヤリ設定してしまって失敗する、というパターンが実に多いです。

> ただ、『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』で言語化されたことによって、ラノベへの理解が深まったのは確かかしら。

 妙な表現ですが、王女様は「ハウツーを読むためのマニュアル」をお持ちであると思います。

 武道や格闘技の世界に「見取り稽古」というものがあります。
 これは他人の稽古や練習を文字通り見て取り、実際に自分が稽古するのとはちがう角度で技術を学ぶものですが、その武道や格闘技の知識がない……いわば技術論のマニュアルが自分の中にないとできないことなのです。

 ハウツーを読む大半の人は、思考のとっかかりが欲しくてそれを手に取る、いわば初心者です。
 そして、前スレで述べましたが、その初心者がなにができてなにができないか、作者という玄人は理解できないことがほとんどです。
 だからこそ作者は自分の考える論を「自分の言葉」で展開せざるをえず、そして大半の人は作者語と展開で書かれたマニュアル本の内容を見て取ることができず、無駄になってしまいます。

> あたしとしては、そろそろ「◯◯と??は一見すると似ているが売上は違う。何故か」みたいな分析をして欲しいんだけどね。ビジネスの世界ではよくやる分析じゃない?

 分析ものは私も読んでみたいですね。
 ただ、作品というもので比べるのは難しい気もします。
 サブカルの「今感」を、読者に納得させられるレベルで考察するためには時代性やなぜそのような流行が生じたのか等、もろもろの要因考察と観測が必要になります。
 しかし、現在の流行は非常に短く、本にしている間に過ぎ去ってしまう恐れもあります。観測スパンがどうしても短くならざるをえないのはやはりネックですね。

蒼空チョコさんの質問2014/01/11

 はじめまして。横槍、失礼します。
 一つ気になったのですが、

>だからこそ王道テーマの応募作が一定数以上集まるわけですので。
>問題はオリジナリティと差別化ですが、これがなかなか難しい。自説の「同じ素材をいかに角度を変えて見るか」、王道を選ぶ方は、ぜひこれを考えてみていただけたらなと思っています。

 と、仰られていましたね。

 記憶が不確かなのでソースが確定しないのですが、榊一郎さんがネットで仰られていたことがありました。
 その内容というのが、新人賞は奇をてらったものやオリジナルティー溢れるものが選ばれる。王道ストーリーは既存のプロに書かせた方が安心だし、その人自身のブランド力もあるのであえて選ぶことは少ないでしょう。という感じのものでした。

 私も何度か賞に送ってみたのですが、そういうことから得た感触だと、
『設定(真新しさ)・キャラクター>ストーリー構成>>文章力』
 という感じがしました。
 構成や文章については編集さんと後々に修正することもできますし。

 魔法や超能力を交えたのみの王道は除外するとか、真新しい設定があればポイントは高くとか、そういった指示などはなく、下読みさんの主観のみでの判断となるのでしょうか?

 それともう一つ。
 A大賞に送ったものが選考に落ちてB大賞に送る人というのは少なからずいますよね。
 あれはどこどこで落ちた作品などと情報は出回っているものなのでしょうか?

 長々と失礼しました。
 既存の質問でしたら申し訳ありません。

ジジさんの回答2014/01/11

 特別審査員という、読むために雇われた傭兵(下読み)とは立場のちがう人達が加わる最終審査においては、確かに榊氏のおっしゃられている傾向はあります。
 しかし、その前までの段階――最終審査のひとつ前にあたる編集部審査までは、「おもしろさ」が第一に来ます。
 ですので、王道が最終審査まで進んだ場合、“大賞”を取りにくい可能性がある、という解釈をしていただくのが程よいかと。

 そして応募者の方が王道を題材として選ぶ際の問題は、「設定も筋も既存作に類似してしまうこと」に他なりません。オリジナリティがないと判断されがち、ということですね。
 だからこそ、既存作や他の応募作との差別化が重要になり、その差別化のために「同じ素材を角度を変えて見る」のが良い。というのが私の意見になります。

> 私も何度か賞に送ってみたのですが、そういうことから得た感触だと、
> 設定(真新しさ)・キャラクター>ストーリー構成>>文章力という感じがしました。
> 構成や文章については編集さんと後々に修正することもできますし。

 私自身、「設定」こそが最重要であると思いますが、それは真新しさではなく、差別化というオリジナリティであると思っていただきたいところです。

> 魔法や超能力を交えたのみの王道は除外するとか、真新しい設定があればポイントは高くとか、そういった指示などはなく、下読みさんの主観のみでの判断となるのでしょうか?

 主観と言われれば主観です。
 一次審査は特に、ひとりの下読みだけでどの作品を上げるか決めるからです。
 ただ、おもしろい作品というものは、下読みの別関係なく上がるものです。まあ、世の中には例外もあるので、言い切ってしまえない部分もあるのですが。

 ちなみに私はそこそこ長く下読み業務を請け負ってきていますが、編集部からこういうものを上げてくれと言われたことはありません。常に「おまえのこと信じてるぜ! 任せた!」という名の放置プレイを食らっています。

> それともう一つ。
> A大賞に送ったものが選考に落ちてB大賞に送る人というのは少なからずいますよね。
> あれはどこどこで落ちた作品などと情報は出回っているものなのでしょうか?

 他の下読みさんとはとにかくそういう話をしないので(応募者の方の個人情報を守るためです)、ほかの下読みさんから聞くことはありません。また、私は先入観を持ちたくないので、年齢や性別とあわせて一切編集部にも聞きません。
 ですので使い回し情報を聞くこともないのですが……
 複数の賞に関わっていると、違う賞で同じ作品と出会ってしまうことが少なからずあります。

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