たとえば、『時をかける少女』(1967年刊行)や『おおかみこどもの雨と雪』 (角川文庫・2012年6月22日刊行)のように、ストーリーがしっかりしていて素直に感動できる。
けど、ライトノベルに求められてるであろう萌えだとかものすごく突飛な出来事がある訳ではない。
ライトノベルの賞の場合、こういった作品が送られてきても下読みで落とされてしまいますか?
例にあげた二つは一応、ライトノベルではないみたいです。
相対評価で他作品よりもおもしろければ上げます。
商品価値については編集部が判断する領域なので、下読みはとにかく「おもしろい作品」を見つけ出すことだけを考えますので。
ちなみに、例に挙げていただいた前者はともかく、後者は作者が設定しているだろうターゲット層が読めないことと、物語の構成・構造面での疑問を理由に高い評価はつけない可能性があります。
またここラ研に来ていただきありがとうございます!
まずはお礼を言わせてください。
前回のジジ様の回答を参考にして、新たに小説を書いたところ、友達から大きく評価されるようになりました!
友人A「ずいぶん面白くなったな」
友人B「なんか急に良くなってきたね」
などなど、今までとはまるで違う評価をもらえました!
これも全てジジ様が基本を教えてくれたおかげだと思っております!
やはりライトノベルは自分が書きたいことを書くだけでは辿り着けない領域があることを思い知りました。
あと誰かに自分の小説を面白いと評価されるのは、信じられないくらいの嬉しさがありますね!
ジジ様本当にありがとうございました!
それで一つだけ質問させてほしいです。
実は自分が今書いている小説なのですが、主人公があるバトルでヒロインと仲間たちと共に全国制覇を目指すストーリーなんです。
そして応募作品には「無理だ無理だ勝てないと言われていた最初の強敵を倒し、全国制覇への一歩を踏み出す主人公」
主人公「よし!俺たちはまだまだ強くなれる!全国制覇に向けて進むぞみんな!」
仲間たち「おおおおお!」
のところまで書きました。
いまゆる「俺たちの戦いはこれからだエンド」ですね。
これはやはり未完結と見なされてしまうでしょうか?
これが気になってお風呂で眠れません!
ご回答をどうかよろしくお願いいたします!
> やはりライトノベルは自分が書きたいことを書くだけでは辿り着けない領域があることを思い知りました。
作品の向こう側の読者を意識できるのは非常に強い武器となります。ぜひその姿勢を極め、「読者がオリジナリティを感じてくれる設定(ネタ)」と「読者にとって魅力的なキャラ」にこだわってみていただければと思います。
> 「俺たちの戦いはこれからだエンド」ですね。
> これはやはり未完結と見なされてしまうでしょうか?
規定的には大丈夫ですが、読後感のチェック項目にマイナスがつく可能性があります。
ですので、「俺たちの戦いはこれからだ」の部分に強いカタルシスを感じられるようなエンディングにするべきかと思います。
たとえば強敵に勝つことで物理的か心理的かの大きなご褒美的なもの(主人公が大きく成長する、片思いが実る等)を用意し、読者に満足してもらう構成にすることを心がけるとよいかと。
物語の基本構造がわからないのでふわっとしたお返事になりましたが、疑問点などありましたら再質問してください。
1・ホモやレズといった同性愛要素(もちろん恋愛要素の範囲)については何か審査基準などがあったりしますか?
例えば、
1)主人公やヒロインはダメだが脇役はOK
2)同性愛要素は笑いを誘うようなものでなければダメ
3)ストーリーに直結していなければOKだが、同性愛自体が展開の上で大きな意味を持つようなのはダメ
4)ストーリーやキャラクターが申し分ない作品でも、同性愛要素があると落とされる
5)同水準の作品が複数並べば、同性愛要素のない作品が必ず選ばれる。
などなど
2・女主人公や女しか登場しない作品よりも、男主人公の方が優遇されますか?
3・文芸・娯楽小説とラノベの境界が曖昧になっていますが、どこまでがラノベとして審査範囲ですか?
(ハヤカワ系・メフィスト系・ミニスカ宇宙海賊・魔術士オーフェンの新シリーズ等)
内容以前にこれはラノベではないとされる基準などはありますか?
4・西洋・東洋を問わず100年以上前に出版された古典をラノベ風にアレンジしたものは、ラノベ業界ではオリジナリティとしては認められるのか否か。
5・ポストフェミニズムな男女平等の現代社会において、女性が読んで「セクハラじゃん!」と思うような内容と審査の関係について
> 1・ホモやレズといった同性愛要素(もちろん恋愛要素の範囲)については何か審査基準などがあったりしますか?
特に審査基準はありません。
が、同性愛を嫌う層のほうが圧倒的多数派であることを、特に賞へ応募されている方は考えるべきかとは思います。
味つけ程度のものなら問題になりませんが、同性愛要素が濃いほどに減点要素も増えるからです(このような人権問題がからむ要素は常に大問題へ発展する危険性がありますし)。
> 2・女主人公や女しか登場しない作品よりも、男主人公の方が優遇されますか?
男子向けライトノベルならかなり優遇されます。
女子の主人公を立てる場合、男子という読者が性別を越えて支持できるだけのネタやドラマが展開できていないと辛いですね。
> 3・文芸・娯楽小説とラノベの境界が曖昧になっていますが、どこまでがラノベとして審査範囲ですか?
実はあいまいです。
> 内容以前にこれはラノベではないとされる基準などはありますか?
主人公が若くない(おっさん、妻帯者、老人等)、物語がただの文芸(自分探しの旅で人の情に触れたりする物語等)、カテエラ(第二次世界大戦で日本が勝つ話等)でない、「まあラノベってことでいいんじゃなかろうか」というものなら審査範囲です(いちおう申し送りはしますが)。
> 4・西洋・東洋を問わず100年以上前に出版された古典をラノベ風にアレンジしたものは、ラノベ業界ではオリジナリティとしては認められるのか否か
出自がわかってしまうと難しいですね。
オリジナルだと言ってもばれないレベルで上手にアレンジしていただければ問題ないかと思います。着想を他の作品から得るのは別におかしなことではありませんので。
> 5・ポストフェミニズムな男女平等の現代社会において、女性が読んで「セクハラじゃん!」と思うような内容と審査の関係について
少なくとも応募作では避けていただきたいところですね。アイデアや読後感のチェック欄にマイナスをつけざるをえませんので。
回答ありがとうございます。
質問が2つか3つ、いや4つ以上あるかもしれません。
応募される作品で、面白い作品と面白くない作品の違いや特徴は何ですか?
それと、ジジさん的に「後半の盛り上がりに欠ける」と感じる原因は何ですか? 盛り上げる上で注意することはありますか?
もう一つ、「設定や世界観などがありがちである」そう思わせないために注意すべきは何ですか?
複数の質問申し訳ありません。
おつかれさまです。
> 応募される作品で、面白い作品と面白くない作品の違いや特徴は何ですか?
キャラはどの応募作もそれなり以上に魅力的であることが多いのですが、おもしろい応募作はもれなく「設定(ネタ)がいい」です。
独自性のあるネタこそおもしろさとおもしろくなさを分けるデッドラインですね。
> それと、ジジさん的に「後半の盛り上がりに欠ける」と感じる原因は何ですか? 盛り上げる上で注意することはありますか?
応募作は中盤が冗長になりがちです。
原因は「設定をうまくキャラとからめられていない」ため、「最初と最後の盛り上がりをつなぐ谷の部分のドラマが作れない」からかなと。
設定をキャラで展開させた「終盤で思いきり盛り上がるための、嵐の前の静けさ」的な谷のドラマを中盤に置くことで、物語は引き締まり、後半に対する読者の期待値もぐいぐい上がります。
このとき注意することと言えば、この「谷のドラマでは作品テーマと逆のテーマを描くこと」になりますね。
たとえば熱い友情物語であれば、その友情が破壊されてしまうのではないかと読者を不安にさせるべき、ということです。
その不安や恐怖を乗り越え、主人公が友情を貫き通す姿は読者に大きなカタルシスをもたらします。
> もう一つ、「設定や世界観などがありがちである」そう思わせないために注意すべきは何ですか?
ありがちなテーマをあえて取り上げ、「他人とは角度を変えて描く」ことを心がけてみてください。
いつも榊一郎氏を引き合いに出してしまうのですが、氏の『アウトブレイク・カンパニー』(講談社ラノベ文庫・2011年12月2日刊行)は支倉凍砂氏の『狼と香辛料』が切り開いたファンタジー+商売という図式に「オタク」を混ぜ込み、しかも普通ならこちらの世界での商品として扱われるだろうファンタジー世界の住人を「客」とし、オタク文化を売り込むという角度の変えっぷりを実現しています。
ここで大事なのは、独自性とは「ただ斬新なもの」ではないということです。
「すでに存在する要素」に「今までなかった要素」を少し加え、読者に理解しやすい演出をしたものこそが独自性だと考えてください。
回答ありがとうございます。凄く参考になりました。
ジジさんの下読み経験の中で、泣いてしまった応募作、感動で胸がいっぱいになった応募作などはありますか? またそのような作品は通過しますか?
もう一つ、泣き要素はラノベでは難しいですか? また、泣きは加点要素になり得るのでしょうか?
過去1作だけ、眠れなくなるくらい興奮した応募作がありました。
私はもちろん一推しで上げましたし、その作品は大賞を獲りました。
> もう一つ、泣き要素はラノベでは難しいですか? また、泣きは加点要素になり得るのでしょうか?
泣きというのは感動ということで合っていますでしょうか?
だとすればアリどころかぜひ送ってください。
応募作は(作者が意図しなくても)変化球なものが多いので、直球ど真ん中に突き刺さる物語はかなり期待値が高いです。