ライトノベル作法研究所
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  4. 新人賞下読みが質問に答えます公開日:2014/11/14

ラノベ新人賞下読みが作家志望の質問に答えます5

ポップさんの質問2014/10/01

 こちらの掲示板を利用するのは初めてになります、ポップと申します。
 趣味で小説を書きながら漠然と作家を目指し、ようやく新人賞に応募する心積もりができました。
 この機会に、ジジ様にご意見を伺いたいと思います。

 自分が新人賞に向けて設定を練っているのは、スポーツラノベです。
 そこを中心に質問させてください。

1.スポーツラノベに需要はあるか。
 市場での需要はもちろんですが、そもそも新人賞で勝ち目はあるか、というような質問になります。
 といいますか、スポーツラノベと言ってはみたものの、自分が思いつくのは『ロウきゅーぶ』(2009/02刊行)のみです。
 恥ずかしながら、読書量が多い方ではありません。
 新人賞を受賞しているスポーツラノベ、そうでなくともジジ様から見て「この作品は成功したな」と思えるスポーツラノベがありましたら、それもご紹介していただけると幸いです。

2.新人賞の完結ライン
 新人賞に応募する作品は、受賞すれば続刊が出る可能性も大いにあると思いますが、応募段階で完結している必要があったと思います。
 スポーツラノベにおいて、完結のラインはどこでしょうか。
 自分が書くのは部活ものですから、スポーツをすることで世界を救ったりなどとうていできません。(設定上可能でもありますが、それは置いておきます。)

 描きたいのはスポーツを通した興奮と、部活特有の人間の成長です。
 例えば『全国大会で優勝して日本一になる』というようなエンディングですが、これは考えていません。
 尺が足りねぇよというのもありますが、自分の練っている設定にはそぐわないエンドだからです。
 いま自分が考えているのは、『試合に負けて俺達の戦いはこれからだEND』です。
 そこまでの過程などは作品の根幹に関わりますので割愛させてください。
 このエンディングでも、新人賞としての【完結】という条件に合っている、と考えていいでしょうか?

3.新人賞のレーベルについて
 自分が考えているのは電撃文庫です。
 理由は単純に締切までの期間と、設定ですね。
 スポーツラノベと言いましたが、ちょっと特殊なスポーツにしようと思っています。
 『テニスの王子様』のような人間やめてる奴らがスポーツをするというよりは、『イナズマイレブン』のような【特殊能力ありきのスポーツ】ものを想像していただければいいかと思います。
 世界を救うことも可能、と注釈したのはこれが理由です。
 今のところ世界を救う予定なんて微塵もありませんが。
 とにかく熱い展開、雰囲気を志しているのでとりあえず電撃を選んだのですが、ぶっちゃけレーベル毎の特色とかわかりません。
 電撃よりもここがいいのでは、というレーベルがありましたらお教えください。

 長文乱文失礼しました。
 よろしくお願いします。

ジジさんの回答2014/10/01

> 1.スポーツラノベに需要はあるか。

 あります。
 ただ、スポーツものには「ルール説明」というラノベと相性の悪い障壁があること、キャラの立ち位置や進行方向の比重をスポーツに傾けるのかヒロインとの恋愛や他の要素へ傾けるのかのバランス取りが必要で(情熱というものがひとつのテーマになるため、両立させようとするとどっちつかずの印象になってしまいます)、難しいジャンルではあると思います。

 ただ、第3回講談社ラノベ文庫の新人賞において、テニスを題材とした『サービス&バトラー』(2014/4/2刊行)が優秀賞を獲得していますし、この作品は私も好評価です。
 大筋としては例に挙げていただいた『ロウきゅーぶ!』と同じく、打ち込んでいたスポーツができない状態に置かれた主人公がコーチ役に……という感じですが、主人公のキャラ立てがすばらしく、王道ど真ん中を貫くストーリーラインが爽快です。

> 2.新人賞の完結ライン
> スポーツラノベにおいて、完結のラインはどこでしょうか。

 「目標を達成すること」になります。
 弱小チームなら1回戦を勝つ、個人の問題ならライバルに勝つ、もしくはものすごい敵と同じグラウンドで対戦するでもいいのですが、ひとつの最終目標を設定し、それに立ち向かわせて結果を出してください(勝ち負けはどちらでもよいです)。

 あと、一応念を押させていただきますが、

> 応募段階で完結している必要があったと思います。

 絶対にきちんと完結させてください。
 また、

> いま自分が考えているのは、『試合に負けて俺達の戦いはこれからだEND』です。

 このパターンを尻切れさせずに完結へ持って行くのはかなり難しいので、プロット段階での練り込みは必須ですね。

> 3.新人賞のレーベルについて
> 電撃よりもここがいいのでは、というレーベルがありましたらお教えください。

 これは他の方にも同じお返事をしているのですが、レーベルやジャンルの選択は応募者の方が決めなければなりません。
 作品が商業的に通用するだけのおもしろさを持っているなら、どのレーベルでもかならず評価されます。

ポップさんの質問2014/10/01

 わかりやすい回答ありがとうございました。

 レーベルについては電撃でいきます。
 前述のように締め切りが主な理由ですが、 初めての挑戦ですし大手に殴り込んでどこまで通用するか試してみます。
 あとはガガガとスーパーダッシュぐらいしかよく知らないというのもありますが。

 目標の達成と恋愛要素ですね。
 まず恋愛要素はエッセンスとして組み込むつもりです。
 恋愛をメインにするのではなく、部活特有の懸命さや熱量を引き立たせるために用います。

 次に目標の達成ですが、 現状のキャラ設定では、ストーリーが部活設立(というより再建)から始まります。
 そのスポーツに憧れる主人公と、人数不足により部活を休止した先輩が物語のメインになります。
 ジジ様の言うように勝ち負けは重要視しておらず、キャラクター達にはチームとして戦う楽しさ等を演出してもらいます。
 ですので、目標は『皆で一丸となり戦うこと』でしょうか。
 とにかく【チーム】に比重を置いたストーリーにする予定です。
 もちろん「勝ち負けを一切気にしない」というわけではありませんが。
 なので、大会に出て本気の試合に臨むという時点で、目標の達成は一応クリアしているとみていいでしょうか。

 『サービス&バトラー』の概要だけ調べてみました。
 本屋で探してみます。
 ところで、こちらと『ロウきゅーぶ!』について考えて思ったのですが、

 主人公が競技の選手である、また女の子ではなく男が主にスポーツをするラノベはないのでしょうか。
 スポーツラノベ自体、知人に尋ねても知らないと言われる始末で。
 先駆者が少ないのはむしろ好機と捉えておりますが。
 その分、ルール説明などの障害にも立ち向かわなければならないようですね。

ジジさんの回答2014/10/01

> 次に目標の達成ですが、
> 現状のキャラ設定では、ストーリーが部活設立(というより再建)から始まります。

 ラノベ――少なくとも私の読んでいる範疇では見かけませんが、少年マンガ(特にジャンプ系)ではよくある筋書きですので、「差別化」については考えるべきかと思われます。

> 主人公が競技の選手である、また女の子ではなく男が主にスポーツをするラノベはないのでしょうか。

 知人の方と同じく、ラノベでは私も思いつきません。
 年1000冊を越えるタイトルが出版されている世界ですので、なにかしらあるのかもしれませんが、少なくとも一般読者のアンテナに引っかからない程度のヒット率であると思えば開拓の余地はありそうですね。
 ただ、ネックになるのは説明だけでなく、「登場人数」であると思われます。
 チームという複数人が入り乱れるスポーツものは、登場人数の多さによる視点ブレや優遇キャラの偏りなどが生じやすくなりますので。

斎藤さんの質問2014/10/01

 ジジさま、はじめまして。
 斎藤と申します。
 早速ですが、質問させて下さい。

 小説を書いているとキャラが勝手に動くことがあると思うのですが、わたしはあまり経験したことがありません。やはり、世界観やキャラ設定が甘いことが原因でしょうか?

 あと、わたしの書く小説のほとんどが物語の展開が似ています。全く違った展開にするためにはどのようなことに心がけたらよいでしょうか?
 お忙しいと思いますがご回答よろしくお願いします。

ジジさんの回答2014/10/01

> 小説を書いているとキャラが勝手に動くことがあると思うのですが、わたしはあまり経験したことがありません。やはり、世界観やキャラ設定が甘いことが原因でしょうか?

 特にキャラが勝手に動く必要はないかと思います。
 この現象はようするに、作者がキャラに対してこの子はこういう性格でこんな言動をしてこう動く! という設計(想像/妄想)を立て、それを無意識でシミュレートしている状態だからです。

 ちなみに、
メリット =自然な人間像が描けること
デメリット=プロットという設計図がキャラのせいで崩れ、物語性を損なうこと
 になるかと思われます。

> あと、わたしの書く小説のほとんどが物語の展開が似ています。全く違った展開にするためにはどのようなことに心がけたらよいでしょうか?

 ご自身が書かれているジャンル以外の本を読むのが第一。第二は映画でもコミックでも、小説以外の作品を、シナリオの構造を確認しながら見ること。
 自分の中のマニュアルを厚くする作業が有効です。

迷える狼さんの意見2014/10/01

 私から、幽霊ものについて、番外編と言うべき事案を少々。

 「コロコロコミック」に連載されてた(エロ)ギャグ漫画に、「おじゃまユーレイくん」という有名な漫画があります。

 交通事故で死んだものの、実は予定に無い死者だった為、霊界へ行けずに迷ってしまった主人公が、10000ポイント貯めて天国へ行くか、-10000ポイントで地獄へ行くか、自らの行いで決まるという処置を受けるというのがストーリーなのですが、この主人公、生前はのび太の如く駄目人間だったのに、幽霊という特性(普通の人には姿が見えなかったり、どこでも通り抜けられる)を利用して、毎回エッチな騒動(女子更衣室や女湯を覗いたり、女性に取り付いて服を脱いだり、いやらしい事をするなど)を起こし(主な被害者はヒロインの「こだま」だが、実は彼女には主人公が見えている)、それが元で一時は-10000ポイントで地獄へ落とされかけたりします。

 それが、ある日突然霊界のミスで10000ポイントに到達していた事が解り、生まれ変われる様になるのですが、こだまちゃんと一緒(年齢や場所など)でなければ嫌だという願いを叶えてもらい、時を遡(さかのぼ)って生まれ変わる事になります。

 ところが、主人公が生まれ変わる直後、今度はこだまちゃんが予定外の事故(練習中の野球部の打球が当たる)で死んでしまい、幽霊になってしまいます。

 その後、主人公がクラスメートに生まれ変わっている事を知ったこだまちゃんが、今度は生まれ変わった主人公(こちらも、幽霊になった彼女が見える)にまとわりつく様になるというラストで終わります(ただし、当然ながら主人公には前世の記憶が無い)。

 しかし、今考えると、良くコロコロコミックという舞台で、この様な過激なエロ漫画が載せられたものだと思います。

 もう1つは、「週刊少年ジャンプ」に連載されていた「アウターゾーン」の短編に、「マジック・ドール」という作品があります。

 強盗事件に巻き込まれた女の子が、流れ弾に当たって死んでしまうのですが、霊界のミスで予定外の事故だった為に生き返ろうとした所、すでに遺体は火葬されてしまって戻る事が出来ず、着せ替え人形(リカちゃんかバービーの類)に取り付いて、事件の担当だった刑事の元へ転がり込むというものです。

 人形だけど中身は女の子という事で、いつしか刑事と惹かれ合う様になるのですが、やがて代わりの肉体が見つかって生き返る事になります。
 ところが、生き返れば記憶を失ってしまう為に、刑事の事を忘れてしまう事に悩みます。

 結果、生き返る事を選ぶのですが、ある日自分が乗ったタクシーが、刑事の運転する自動車と衝突(軽い接触事故)して巡り合う事に成功します(実は、彼女が乗ったタクシーは、彼女の担当の死神が化けていて、刑事と会わせてくれたのです)。

 余談
 出会った時のセリフは、お決まりの「どこかで会いませんでした?」

ジジさんの回答2014/10/01

> 「コロコロコミック」に連載されてた(エロ)ギャグ漫画に、「おじゃまユーレイくん」という有名な漫画があります。

 コロコロの第一期黄金時代の代表作、そのひとつですね。『ゴリポポン君』、『ザ・ゴリラ』、『超人キンタマン』、『金メダル先生』など、あのころのコロコロがあったからこそ後の月間マガジンや月間ジャンプの流れが生まれた……と、深酒をしたうちの師匠がほろりと語ることがあります。

> もう1つは、「週刊少年ジャンプ」に連載されていた「アウターゾーン」の短編に、「マジック・ドール」という作品があります。

 アウターゾーンの思い出は、ジャンプのある号にアウターゾーンに対する意見募集のような項目があり、【アウターゾーンには格闘バトルものになってほしい】という選択肢が用意されていたのが驚愕でした。

サイラスさんの意見2014/10/01

 お疲れ様です。サイラスです。

> >  なるほど、ただ、こうなると読者では、居られませんよね。
> > 楽しむことも、無責任に意見をいうことも……
> そこを意識しつつ、さらに読者や視聴者として楽しんでインプットまでしたいのが職業人です。
> 私も含めて、明日の生活がすべて頭の中からアウトプットされるネタにかかっているジャンルの人間は、なにかしらガツガツしてしまいがちです。

 自分も目指したことがあるため、その一端は、分かります。ただ、そうなる前に、求めることに疲れてしまい、プロになることをやめてしまいました。
 ただ、今、思うと、インプットに偏らず、もっとアウトプットにも力を入れていれば、作家になれたのかな?と思うところがあります。
 また、小説家になろう等が、発達した一端には、ガツガツと新人賞の締め切りやレーベルに振り回されず、作品を書き続け、見初められれば(デビューできれば)、いいかという志望者が側の願望もあったのかもしれません。

> 起点と終点は企画や作品に合わせて結構すんなり決まるものですが、中盤は意外にうまく決まらないものです。起点と終点をつなぐ展開ができているか、見せるべきキャラの魅力エピソードが物語の軸にからめられているか等、実はかなり気を配って配置なり流れを作らないと、物語があっさりおもしろくなくなってしまうからです。
> よって、範囲が広くなるのですが商業的におもしろいものを考える際は「中盤の設計」が肝になるものと、私は考えています。

 物語の起点と終点は決まっていましたが、終点を迎えるためには、どうするかという手段が明確でなかったため、中盤以降が、空中分解することになっていました。
 夏祭り企画では、主人公が、ヒロインの代わりに魔法少女として戦い、ヒロインを魔法少女に戻すという話を書こうとしたのですが、そのための手段や条件を決めず、敵サイドに堕ちたヒロインを戻すために、主人公が命がけの説得をして、魔法少女に戻すという願望を優先させたのが、失敗の一因にもなりました。
 また、2についても、いらいないキャラがいたばっかりに、主人公とそのキャラの接点が増え、ヒロインの影が薄くなるという失態を犯しました。
 今回の夏祭り、失敗は多いものの、今の自分の力量が、分かり、挑んでみた甲斐はあったと思います。

ジジさんの回答2014/10/01

>  また、小説家になろう等が、発達した一端には、ガツガツと新人賞の締め切りやレーベルに振り回されず、作品を書き続け、見初められれば(デビューできれば)、いいかという志望者が側の願望もあったのかもしれません。

 なろうだけでなく、エブリスタを始めとするネット投稿形式の台頭は、道が1本ではない、というところに意義があるのかなと思っています。
 実際、サイラスさんのおっしゃるように、自分のペースを貫くことでデビューできる例を作っているわけですので。

>  物語の起点と終点は決まっていましたが、終点を迎えるためには、どうするかという手段が明確でなかったため、中盤以降が、空中分解することになっていました。

 練習というのではないのですが、構成が視界に収まるショートショートを書いてみるのがいいかと思います。
 原稿用紙5枚、多くても10枚以内なら、ひとネタの起承転結だけで考えられるので、展開方法を整理しやすいです。

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