ライトノベル作法研究所
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  4. 読者には未知の情報をどう伝える?公開日:2015/01/16

主人公には既知、読者には未知の情報をどう伝える?2

海さんの返信(質問者)2015/01/10

> これは、世界観や設定の説明のみならず、無知な主人公(=弱い、レベルが低い主人公)が強者を倒すというカタルシス、またそうした主人公が成長する過程を描くことで主人公と一緒に読者にも成長の嬉しさを伝えることができます。

 なるほど……。成長の過程、成長の嬉しさ……。そうだったんですか。
 個人的には最強主人公万歳!派なのですが、実際その最強主人公も、最初はしがない平凡なやつ、という設定が多い気がします。でも実は悪魔の息子で…とか、実は勇者の素質があって…なんてよく聞きますよね。やはり、最初は弱い主人公の方がいいのでしょうか。

 話が少し逸れていますがお許しください…。
 私のこの物語では、主人公は例にもれず特殊な能力を持っています。ですが、別にその能力について主人公が知らない、という訳ではありません。いわゆる無自覚主人公、「俺はどこにでも平凡なやつだ」から始まる物語ではないということですね。むしろ、この主人公は自分に力があって、「私ってすごいでしょ?」スタンスです。ですが、実はこの能力の出処も、主人公が一体どんな種族なのかも(ファンタジーですので)、読者は読み始めは分からないのです。

 つまり、主人公が知っているけど読者は知らない、私=作者が意図的に隠している主人公情報があるんですね……。これって共感を得られない、あまりよろしくない小説ですかね…。
 話が逸れてしまって申し訳ないです。もし返信できるお時間がありましたら、ちらっとお答えいただけたら嬉しいです。

> で、じゃあ世界観や設定の説明を焦点にして考えると、作中で「説明する必要がある」というシーンを作れば良いだけなのです。 例えばトップクラスの魔導師である博識な主人公と、魔導は門外漢だけど試合で負けなしの王国騎士という組み合わせのストーリーがあれば、魔術師が騎士に説明するという形を取れます。
> つまり、主人公が無知なサブキャラに教えるという形ですね。

 ほうほう、なるほど……。元々、物知りなおじいさん、のような仙人的に存在はあとで出そうと思っていましたが、案外手軽に出しちゃっても問題なさそうですね……。主人公が、例えば魔法に全然関わらない生活をしてきた、という設定にすれば問題はないわけですし。

 多くの質問に答えていただいて、本当にありがとうございました。

Smanさんの意見2015/01/10

>主人公が知っているけど読者は知らない、私=作者が意図的に隠している主人公情報があるんですね……。これって共感を得られない、あまりよろしくない小説ですかね…。

 ちょっと答えに困るかな……。
 というのは、これは「主人公の情報を隠している」という話と、「それによって共感は得られなくなるだろうか?」という話になると思うんです。

 まず、「主人公の情報を隠している」は、まったく問題ないでしょう。
 『魔法科高校の劣等生』は、主人公が強い理由さえ匂わすだけでちゃんと説明していません(少なくとも序盤は)。
 『魔術師オーフェン』でも、主人公の学生時代(?)の登場人物がいろいろ物語の鍵になったりするのですが、これも説明していないというか……正確には外伝の巻末の章で学生時代の話が出てくるので説明はされてるんですが、本編では主人公が昔の事を話したがらないので、語るに語れない感じです。
 ライトノベルに限らず言えば、意図的に主人公の情報を隠しているなんてのはよくある手法です。

 例えば、そうですね……
 魔王が倒された平和な世界で、しかし魔族を召喚し新たな魔王にならんとする人間組織があるとします。
 これを阻止すべく主人公たちは命令を受けるものの、間に合わずに魔族の召喚を許してしまう。
 召喚された魔族は絶大な力で主人公たちを襲うわけですが、ところが主人公たちは魔族を軽くあしらい、追い返してしまう。
 実を言えば、主人公こそ、倒されたはずの魔王であった。

 みたいな感じですよね。
 こういう話だと主人公が魔王であると最初に言ったらつまらないし、ひた隠しにする必要はないけど、魔族を追い払う、ってシーンまでは普通の人間として描いたほうが良いですよね。
 ただ、この話の場合は魔王や魔族が主な話題になるストーリーなので、たいした伏線もなく「実は……」となっても問題ないわけで(というか「魔王が倒された世界」って言葉が既に伏線として機能しているけれど)、やるなら話題を選ばないと「実は主人公は」という展開は御都合主義になっちゃいますね。

 無策でこういった展開に挑めば痛い目を見ると思いますが、「主人公の情報を隠している」という手法自体は、昔からよくある構成です。

 が、

 ここで「共感は得られるか?」の話題になりますが、この「主人公の情報を意図的に隠す」というのは、昔からよくある通り、憧憬型主人公になりやすいんですよね。
 憧憬型は古いタイプの主人公像で(現代ラノベでも通用するし人気作はある)、現在主流な共感を呼ぶタイプの主人公像とは違います。
 憧憬型は共感ではなく、文字通り「憧れ」を主人公に抱くものですから。
 例に出した『魔法科高校の劣等生』も古いタイプの作品で、共感を呼ぶタイプの主人公じゃありません。
 海さんの小説も、読んでいないので正確にはわかりませんが、

>「俺はどこにでも平凡なやつだ」から始まる物語ではないということですね。むしろ、この主人公は自分に力があって、「私ってすごいでしょ?」スタンスです。

 とあるので、共感とは違うでしょう。むしろ憧憬型に近いような。
 すると、「共感は得られるか?」という問いには、ちょっとどうだろな、と。
 でも、その原因は「主人公の情報を隠している」からではないので、最初に戻って、これを同時に聞かれるとちょっと困る、という。

 共感を与えたいなら、いっそ主人公にではなく、特別な主人公に努力で追いつくサブキャラでも作って、このサブキャラに共感してもらったほうが楽かもしれません。
 しかし、もし「共感」という言葉を「読者に受け入れられるだろうか?」という意味でのみ使ったのだとしたら、共感に関する私の言はほとんど無意味なので、スルーしてください。

あまくささんの意見2015/01/10

 おはようございます。あまくさと言います。

>やはり主人公と読者の異世界知識が違うと、あまりよくないか?

 よくないとまで言うと語弊がありますが、主人公と読者の知識が近い方が物語に入りやすいという傾向はあるようですね。なので一つの有力な手法として「知識の共有化」に気を使う必要はあるのでしょうが、他に方法がないという話ではないと考えています。

>主人公と読者の知識が違う場合、主人公が知っているけど読者が知らないという情報を、どうやって伝えればいいか?
>伝える際に、例えば地の文や会話文に軽く説明を入れるとして、どこかくどくならないか? 一人称の文章ならば、読んでいて「この主人公誰に話してんの?」という違和感を感じる。三人称の文章ならば、やたら説明が多くなる(しかも硬い)などの問題が生じないか?

 これについては他の方がいくつも優れた具体例を示されていて、むしろ私も勉強になりました。なので私からは省略します。別の角度から少々思うところを書いてみます。
 Smanさんとのやりとりから引用させて頂きます。

>つまり、主人公が知っているけど読者は知らない、私=作者が意図的に隠している主人公情報があるんですね……。これって共感を得られない、あまりよろしくない小説ですかね…。

 そうそう、これなんですよ。結構、注意が必要なのは!
 実は私が以前このサイトに投稿した作品のうち、これで失敗したことがあるんです。
 その作品では、主人公の現在の言動に関わる過去の重要なエピソードを後半まで隠したんです。その結果、序~中盤までの主人公の行動の動機が読者によくわからないという状態になってしまいました。頂いた感想の中に「主人公が何をしようとしているのかよく判らないので、1章の最後までしか読めなかった」という指摘があったため、それ以来、知識の一致・不一致の問題については私なりにアレコレ考えてきました。

 まあ、単に私の作品がヘボなだけだと言われたらそれまでなのですが、それは言わない約束ということで(汗

 まず言えることは、その伏せられた情報が主人公自身に関わる場合は、ちょっと注意が必要なのだと思います。(絶対ダメという意味ではなくて、取り扱い注意ということです)
 そして、何を注意するのかというと、共感云々というよりストーリーが判りにくくならない かどうかなんじゃないかと。
 アニメであれば、映像の斬新さとか、絵として描かれたキャラの魅力や動きの面白さでも視聴者を惹きつけられるのでしょうが、小説は文字しかないので、読者は冒頭から早めに何に注目してストーリーを追えばいいのかという拠り所をほしがるんじゃないかと思います。そのための有力な方法の一つが、

 主人公の当面の行動目的を判りやすく示す。

 ということなんじゃないかなと。

 そもそも知識の一致と言っても、主人公の生い立ちから何から全部は書けませんから、知識を完全に一致させることなんてできないんですね。でもストーリーと関係ないことは全部知らせなくてもいいわけです。ただ、

 ストーリーと密接に関わる部分で主人公に謎を作ってしまうと、読者は迷子になりやすい。

 そういうことなんじゃないかなと。
 海さんの作品の例で言いますと、まず「女海賊」というのは今のラノベの読者なら比較的イメージしやすいと思うんですね。例文にしても、世界観に関連するいくつかの情報提示が盛り込まれているようですが、彼女が今何をやっているのかということ自体はそれほど判りにくくはないので、OKなんじゃないかと私は思いました。

 ただ、この時点では伏せられている主人公の正体そのものの謎を盛り込みすぎると、読者は「???? こいつ、何をやってんの?」と迷ってしまいます。ほどほどに入れる程度なら良い伏線になる場合もあるでしょうが、やりすぎると主人公の現在の行動が意味不明になって しまって逆効果。そういう匙加減に気をつければよいということではないかと思います。

 なお、主人公の当面の行動と直接の関わりが薄い世界観設定などは、ストーリーの流れの中で徐々に明かしても構わないと考えています。

海さんの返信(質問者)2015/01/11

> 主人公の当面の行動目的を判りやすく示す。

  なるほど……。わたしと同じことをした経験者様から意見やいただけて、大変嬉しいです!!先人の知恵は借りるべきと言いますか、偶然あまくささんが私の質問を読んでくださったことに感謝します…!ほんとに…!

 行動目的を示すですか……。ふむ…。考えて見ると、私のこの小説は、若干最初のほうは目的を感じられない気がします。というのも、(自分の小説語りをしてしまって申し訳ないのですが)このあとメアリは、ある有名船長の元で働くことになります。(ルテミスのたくさん乗っている船が、その有名船長の船です) ですがそのあとのストーリーとしては、特に目的ありきで航海をしているようには書かないんですね。
 このあとは、ちょっとしたハプニングがあったり、陸に下りたときに新たな登場人物とあったりします。もしかしたら読者は「こいつらは一体なんのために(まぁ現実的な話をすれば、他の船を襲って宝を奪って生きるためですが)航海してるんだ?」となってしまうのでしょうか……。

 実際、メアリの目的は本当はちゃんとあります。海賊になった今、ある人物を探し、殺そうとしているのですね。ただ、最初は他言しないので、読者は分からないままです。メアリは陸に降りるたびに色んな方へ「○○という人物を知らないか?」と聞いて回りますが、しばらくは読者は、この人物が一体誰で、どうしてメアリが探しているのかを知りません……。
 これって、アウトなレベルなのでしょうか…。と、こんな簡略的に話しても理解するのは難しいですよね……!!もしお時間があれば、少し考えていただけたら幸いです。

> そもそも知識の一致と言っても、主人公の生い立ちから何から全部は書けませんから、知識を完全に一致させることなんてできないんですね。でもストーリーと関係ないことは全部知らせなくてもいいわけです。ただ、
> ストーリーと密接に関わる部分で主人公に謎を作ってしまうと、読者は迷子になりやすい。
> そういうことなんじゃないかなと。

 私はけっこう物語の密接な部分を隠していますね……(白目) もはや読んでいただければ!!と思いますが、まだ完結もしていないのにこちらに転載するのはどうかと思うのと、あまくささんにそこまで時間をとっていただくのは大変…申し訳なく……。
 簡単に説明すると、主人公はこの世界観上でも特殊な能力を持っています。ただ、その能力がなぜ使えるか、などのことについて全く記述されていません。それは主人公の正体にも関係する(文章中で、自分が人間ではないことは喋っています)のですが…。

 また、序盤でその正体を例の有名船長だけが気付くのですね。別に主人公がバラしたわけではなく、海賊長が自ら気付くんです。ただその船長も主人公の正体を口にはしませんので、読者は分からず仕舞いです。その上、船長と主人公の間で、主人公の正体について会話をする場面があります。ここなんかは、読者はさっぱり意味不明、だと思います。「こいつら一体なんのことを言ってるんだ?」と思っているのではないでしょうか……。

 一応、その会話部分だけ転載します。文章は三人称。主人公は元男装海賊で、今この瞬間、船長(現時点では敵船の船長という設定)によって名前が明らかになります(メアリは、初め男装用に偽名を使っています)。

「メアリ、やめろ」
 女はぴたりと動きを止めた。
「俺は人よりもココが賢くてさ」
 ラムズは人差し指でこめかみを叩いた。
 未だ掌から血が滴り落ちているのに気付いて、ラムズはぱっと手を広げカトラスを落とした。そして腰をかがめ、傷のないその手を、メアリの足へ優しくのせた。
「なぁメアリ、アンタに何があった? こんな"綺麗な"…………分かるよなあ? 俺はこんな奴、見たことない」
 口元は緩み、青い眼はぎらりと光った。嘲笑う声は、メアリの耳から脳内までを一舐めした。それは凍えるほど冷たい。メアリの背筋には悪寒が走った。
 だが次の瞬間、メアリははっとして眼を見開いた。ラムズを睨み、足にのっている手を素早く払う。
「殺したいなら早く殺せばいいだろ!」
「殺す? 俺はそんな残酷なことはしない」
 ラムズはさもおかしそうに笑った。
「じゃあ売るんだな?」
「まさか。アンタを仲間にしようと思って」

 先ほども申し上げましたが、同じことをしていたあまくささんに、是非文章を読んでいただきたいです……。といってもまだまだ書き始めたばかりで、約3000字×8話分しかないのですが……(笑)
 もしあまくささんに時間の余裕があり、興味があり、アドバイスしていただけるとのことでしたら、読んでいただけると幸いです。下にurlを貼っておきますので、もしお時間が許せば、閲覧後、「主人公の正体隠しとしてアウトなラインか、セーフなラインか」の意見をいただけたら嬉しいです。もちろんここまで読んでいただいて感想などがありましたら、それもも同時にお聞かせ願えれば大変嬉しいです。ただ、8話までしかないので、感想もくそもないかもしれませんが……!

(最初は返事をいただいてからurlを貼ろうと思ったのですが、断りにくいと思ったので先に貼ってしまいます) アドバイスできそうでしたら、どうかよろしくお願います。
HTPP://greyendir.29499.novel.t.xria.biz/?guid=on

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