ライトノベル作法研究所
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  4. ラノベ新人賞下読みによるQ&A公開日:2015/01/20

2015年1月ラノベ新人賞下読みによるQ&A8

ラノベの淑女様さんの質問2015/01/22

 純粋な疑問なのですが。
 ライトノベル作法研究所で高得点入りした評価の高い作品や、多数の参加者が競い合う企画で高い評価を得た作品は、公募においても評価されるのでしょうか?
 ようするに、このサイトでの評価が公募で無価値であるか。
 ラ研での評価が、公募に挑む際の自信や後押し、さらには現状から改稿するかしないかの判断材料になるか否かです。

 個人的な分析になりますが、高得点入り作品や企画の優勝作品などは、不特定多数の読者から一定の評価を受けたからこその称号なので、掌編作品や枚数30枚以下の作品を除けば、面白さや娯楽性の観点で駄作と評価される作品は少数であると思われます。

 しかし、某なろうな小説投稿サイトの傾向を分析した感じでは、商業ラノベとして出版レベルにある作品(高次選考通過作など)であってもネットでは人気が伸びていなかったり、また商業ラノベでは通用しない作品(公募に出しても落とされるであろう作品)がネットでは人気のケースがあります。
 これはひとえに商業ラノベを買う層とネット小説を好んで読む層が被っていないことを示唆していると自分では分析しているのですが、いかがなもんでしょうか?

 ラ研はどちらかといえば商業ラノベに向いた作風の作品が評価される傾向にありますが、今後の商業ラノベを読む層とネット小説を好む層が融合した結果、現状の選考に通過しやすい作品(キャラの魅力、設定の魅力、娯楽作品としての完成度、の評価が高い)が、ネット小説の人気作の後追い(テンプレートな展開、物語の起伏は重要視されない、読者の欲望を満たすことに特化)にシフトしていくのではと思っています。

 ラ研の読者層では商業ラノベで評価される作品なら基本高い評価を得る傾向にあると思っていますが、選考基準って奴は、これからではなく、既に変わりつつあるんですかね?

ジジさんの回答2015/01/23

>  ライトノベル作法研究所で高得点入りした評価の高い作品や、
>  多数の参加者が競い合う企画で高い評価を得た作品は、
>  公募においても評価されるのでしょうか?

 これはさすがに送っていただかないとわかりません。
 その作品が良作だとしても、賞の審査は他作品との相対評価だからです。
 当然、多くの人から評価される作品がおもしろくないはずはありませんので、期待はありますが。
 ただ、この期待も難しい部分がありますね。期待したとおりの結果が得られなかったとき、普通に落選するよりも深い傷を負う危険性があります。

 なろうについては、私あたりが語れるようなものではないのでコメントは割愛しますが、

>  選考基準って奴は、これからではなく、既に変わりつつあるんですかね?

 選考基準は時代性に合わせて変わってはいきますが、軸の部分は常に変わらず、「おもしろいものが正義」です。

 これに関しては言葉足らずな部分が相当ある自覚もありますので、なにかありましたら再質問してみてください。

オラの名前さ言ってみてけろさんの質問2015/01/24

 私は一般文芸をよく読むので、そちらへの公募を考えています。
 そこで、ラノベとの違いは「共感」が大事だとおっしゃっていた気がしますが、一般における共感とはどのようなものでしょうか。
 ジジさんの仰る「共感」は「感情移入」とはまた違うものでしょうか。
 一般文芸だと、必ずしも読者とシンクロするタイプの主人公が出てくるわけではないと思うんです。
 個性的だったり、妙な癖を持っている人物もいます。
 一般においても、主人公と読者をシンクロさせるつくりというのは重要なのでしょうか?

 もう一つ質問です。
 ラノベですと、困難が立ちはだかり、主人公とヒロインでそれを打破する……。あるいは主人公が打破し、ヒロインと結ばれるという構成が多いかと思います。
 つまりヤマがとてもシンプルでわかりやすいと考えております。
 が、一般ですと必ずしもそうでは無いですよね?
 一般においてのヤマの作り方、盛り上げ方で好ましいものなど教えてくださると嬉しいです。

ジジさんの回答2015/01/24

> 一般における共感とはどのようなものでしょうか。
> ジジさんの仰る「共感」は「感情移入」とはまた違うものでしょうか

 共感はもちろん感情移入に含まれるものですが、私が言う共感は感情移入そのものではありません。
 思考、心情、行動、状況など、主人公を構築するさまざまなものに、読者が抱える思考や心情、行動、状況など、同じジャンルのものが重なるようにすることを指しています。
 たとえば恋愛ものなら、「恋愛が苦しい」や「恋愛はめんどくさい」など、多くの人がなんとなく抱えているだろう心情を主人公に持たせることで共感を得るという感じですね。

 この共感が多く得られるキャラは、当然感情移入してもらいやすいわけですが、「こいつ変人だけどここは自分と同じだな」という共感ひとつをクローズアップして持たせるだけでも非常に大きな効果を生みます。

 共感をもっとも簡単に引き起こす方法は、主人公の立場を読者に近づけることになります。

 女性成人向けなら主人公を会社員にする、男子向けラノベなら主人公を中高生男子にする、時代ものなら主人公を二十代中盤以降の男性にする……などですね。

> 一般においても、主人公と読者をシンクロさせるつくりというのは重要なのでしょうか?

 少なくとも、なんの共感も得られないキャラクターを愛せる読者はいないものと考えています。

> 一般においてのヤマの作り方、盛り上げ方で好ましいものなど教えてくださると嬉しいです。

 方法論は物語によって異なるものですのでなんとも言えませんが、物語にふさわしいドラマチックな山場を用意し、それが起爆できるだけの伏線を必要数張ってください。そして物語の始まりと終わりをつなぐ中盤を盛り上げるエピソードを、プロット段階で猛烈に練り込んでください。
 おもしろくない作品は総じて伏線が細く、中盤が冗長です。
 一般はとにかく応募時点で要求される完成度が、伸びしろを重視するラノベとは段違いに高いです。

綿アメさんの質問2015/01/24

 質問になります。
・正統派ファンタジーで参考になるライトノベル
・王道ハーレムもので参考になるライトノベル
・広義のSFで参考になるライトノベル
・女性主人公で参考になるライトノベル
・群像劇で参考になるライトノベル
・推理要素ありで参考になるライトノベル
 をそれぞれ何冊か(あれば)教えていただけますか?

ジジさんの回答2015/01/24

 差し障りないあたりで少しだけ。

 ファンタジーなら正統派ではありませんが『エルリック・サーガ』

 SFなら『宇宙軍士官学校』

 推理込みの物語ならラノベではありませんが『着物始末暦』

 いずれも参考になるかと思います。

ティアラミスさんの質問2015/01/24

 お久しぶりです。ジジさん。ティアラミスですわ。
 ちょっとした質問、よろしいでしょうか?

①ネット、及びスマホ小説の長所、短所。

 この間、小説家になろうを覗いたのですが、なんていったらいいのかしら、絵のない絵本を読まされているよう感覚に襲われました。一話分の内容が恐ろしく短いうえ、キャラクターの相関図やら間の空きすぎるレイアウト等、物足りなさを感じました。

 そこで、質問なのですが、現状のネット、スマホ小説の長所や欠点を、ジジさんは、なんだと見ていますか?
 私は、スマホなど、通信環境が整っていれば、どこでも見られ、投稿できる一方、画面のレイアウトやデータ量や通信環境によっては、一話分の長さが短くなってしまうことや、各サイトのレーベル色が不鮮明なところ(似通った作品が多い)が欠点なような気がします。どうでしょうか?
 また、ジジさんがおすすめのスマホ、携帯小説。具体的には、それに馴染みがないが、ラノベ等、紙媒体の小説には慣れ親しんでいる人間でも、読んで満足できる作品があったら、教えてください。
 むろん、男子向け、女子向けは問いません。

②レビューの投稿について

 よくネットや通販サイトで見かける、レビュー投稿なんですが、あれって、作家になるうえで、役に立つのでしょうか?
 私の友達に作家志望の娘がいるのですが、レビューばかり投稿して、肝心な作品は、稚拙なうえ、作品数も少なく、レビューも、自分の自己顕示がすごく目立ち、それ、ちゃんと読んだの?という出来です(しかも、それほど巻数が多くない作品のレビューばかり書いていて、数を稼いでいるような節があります)。
 そこで、お聞きしたいのですが、レビュー投稿を作家修行の中に加えていいものなのか?また、その場合、どういうことに気を付ければ、いいのでしょうか?

ジジさんの回答2015/01/24

> ①ネット、及びスマホ小説の長所、短所。
>
>  この間、小説家になろうを覗いたのですが、なんていったらいいのかしら、絵のない絵本を読まされているよう感覚に襲われました。

 これについては、スマホ小説には一画面を「空間デザイン」する能力が必要であることを考えなければならないところです。

> 一話分の内容が恐ろしく短いうえ、キャラクターの相関図やら間の空きすぎるレイアウト等、物足りなさを感じました。

 これはスマホ小説(というか、スマホ小説の投稿サイト)がコミュニケーションツールとしての機能を持っており、更新という作業を細かにすることで読者との「繋がり」を保っているからですね。

> そこで、質問なのですが、現状のネット、スマホ小説の長所や欠点を、ジジさんは、なんだと見ていますか?

 これについては、

>  私は、スマホなど、通信環境が整っていれば、どこでも見られ、投稿できる

 ティアラミスさんのこの推察に、「読者との目線が非常に近い、いわば同人誌的なコミュニケーションツールとしての秀逸さ」を加えて長所かと思います。
 なんにしても、「手軽に発信、受信できる」ことが大きいですね。

> 一方、画面のレイアウトやデータ量や通信環境によっては、一話分の長さが短くなってしまうことや、各サイトのレーベル色が不鮮明なところ(似通った作品が多い)が欠点なような気がします。どうでしょうか?

 「なろう」もそうですが、スマホ小説の読者になる人は書き手に「斬新さ」や「その人ならではの味」は求めない傾向があるものと思っています。
 求められるものは、自分の好みからはみださない「安定」であり、自分の声が書き手へダイレクトに届き、反映される「極限に近しい距離感」です。
 これはある意味長所にもなるわけですが、馴れ合いは作品のクオリティを下げますし、更新さえすれば繋がっていられる安心感は、書き手から「支持されるものをなんとしてでも書かなければ」という意欲を奪う一面がありますね。
 スマホ小説の審査をしていると、そのあたりが目立って見えてきます。

>  また、ジジさんがおすすめのスマホ、携帯小説。具体的には、それに馴染みがないが、ラノベ等、紙媒体の小説には慣れ親しんでいる人間でも、読んで満足できる作品があったら、教えてください。
> むろん、男子向け、女子向けは問いません。

 これについては、おすすめするだけで私の仕事がある程度わかってしまうのでご容赦ください。
 ただ、紙媒体の小説に親しんでいる人は、たいがいあの空間デザインがきついのではないかと思いますが。

> ②レビューの投稿について
>
>  よくネットや通販サイトで見かける、レビュー投稿なんですが、あれって、作家になるうえで、役に立つのでしょうか?

 物語を書くのと評価するのとでは、必要な能力が大きく異なります。ですので、アマチュアのうちは物語を書くほうが絶対によいですね。

 ただ、評価ポイントを審査同様にきちんと自分の内に据えて評価するのは、人によっては修行になるかもしれません……評価する立場に自分があると思うと上から目線になるのが人間ですので、そのあたりの兼ね合いが取れる人ならば、ということですね。
 まあ、難しいところかと思いますが。

>  そこで、お聞きしたいのですが、レビュー投稿を作家修行の中に加えていいものなのか?また、その場合、どういうことに気を付ければ、いいのでしょうか?

 繰り言になりますが、

・その人の評価ポイントが定まっているかどうか
・「他人の作品を評価できる自分はすごい」と思い込まないだけの人間性が備わっているかどうか

 この2点をクリアできているなら、効果は期待できるかと思います。
 ただし、これも繰り言になりますが、アマチュアのうちはなにを差し置いても自分の作品を書くことを優先するべきです。

ゆみみんさんの質問2015/01/24

 前の質問にお答えいただきありがとうございます。
 読者層をどう想定すればいいのか、悩んでます。
 読者層を細かく想定して作風を固定化してしまうのがいいのか、あまり悩まないで書けばいいのか。
 読者を想定して書くのがくせになってしまって自分の好きに書くのができなくて困っています。

ジジさんの回答2015/01/24

 読者を想定しつつ、自分の好きなことの一部を練り込んでいく方法がよいのではないかと。
 これは基本的にプロのやりかたで、書く側としては100パーセント楽しめなくなってしまうので、普通にはおすすめしないのですが。――ゆみみんさんの場合、自分の好きなように書こうとしても、想像以上の負荷がかかってうまく書き切れないかと思いますので。
 とりあえず、デビューできた後の練習だと思いながら、そこで悩まず執筆に向かうのがよいでしょう。

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