ライトノベル作法研究所
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  4. 色や物の持つイメージでキャラを伝える公開日:2013/10/06

色や物の持つイメージでキャラを伝える

 以下、私がコレはうまい美少女の描写だ!と感銘を受けたライトノベルの美少女描写例をあげてみます。
 プロの方がどのように比喩を活用しているか考えながら読んでみてください。

 テーブルのすぐ側に、一人の少女がいた。腰まで届きそうな長い白銀の髪が、喫茶店の照明をはね散らして輝くようだ。色素が抜けたような白い肌、尖るような顎先と、襟から覗く細い首筋と胸元が危うい魅力を醸し出している。伏し目がちの銀の瞳の上では長い睫が揺れていた。
 人形のようにきれいな少女だ。
富士見ファンタジア文庫 『鋼殻のレギオス』

 以上は、『鋼殻のレギオス』(2006/03刊行)に登場するフェリというヒロインの初登場シーンです。
 彼女は、上流階級出身の無表情タイプの子で、戦闘要員ではあるもののその能力は索敵や情報収集で、その分野にかけては天才です。
 そのため、容姿もそういった性格や能力に見合ったものになっています。

 単に美しさを描写するのではなく、そのキャラがどんな性格や役割を担っているのか、初登場シーンで早くも伝えている訳ですね。

 白銀の髪、色素が抜けたような白い肌、といった白い色からは、神秘性、虚脱感、空虚さ、夢、といったものを人は連想します。
 白から受けるイメージが、実は彼女のキャラクターにそのまま重なっているのです。
 フェリはその後、夢のために学園に来たものの兄によってそれが阻まれ、虚脱感を感じていること、神秘的な力を持っていることが明かされていきます。

 髪が白銀、肌が白い、といったことを描写として強調すると、神秘的で空虚なイメージを与えるので、そのようないわるゆる無口系の美少女を描写する場合に向いています。
 また、白い色は、頼りないイメージ、汚してはいけないというイメージも与えるので、主人公が守ってあげるようなタイプのヒロインにも向いています。

 歳はおそらく十代前半──13か14だろう。人形のように整った顔立ちで、陶器のようになめらかな白い肌がひどく印象的だった。目鼻立ちには幼い柔らかさがあるのだが、同時に端麗な容姿が持つ、鋭利な硬さ──不可侵の気品のようなものが、薄っすらと漂っている。美しい少女だ。それは間違いない。しかも彼女のまとうそれは、媚びを含まぬ、純粋で透明な美しさである。
富士見ファンタジア文庫 『ストレイト・ジャケット』

 以上は、『ストレイト・ジャケット』(2000/08刊行)に登場するヒロイン、カペルテータの描写です。
 彼女もフェリと同じタイプの無口で神秘的な何を考えているのかわからない子です。魔族との混血児で虐待されて育ったため、感情が欠落しています。現在は、主人公のレイオットの保護下にあって、彼に守られています。
 このようなタイプを描写するたには、『白い肌』を強調するのが、やはり効果的と言えます。
 また、陶器に例えることで、硬い印象を与えます。
 硬さは、近寄りがたさや、頑なさといったイメージを与えます。

 硬さを伝えるためには、陶器の他に『水晶』などが使えますし、肌の白さを強調するには『雪』に例えるのも良い方法です。

 その前に座すのは、まだ少女と言っていい歳の娘である。
 櫛のとおった長い髪は射干玉(ぬばたま)のように黒く、赤い丈長でまとめている。上に羽織った千早は雪のように白く、袖から出た掌は、色鮮やかな緋袴の上に置かれていた。
 背筋を伸ばし、正面を見つめた少女の表情は、水晶のように透き通り、そして硬く引き締まっていた。
ファミ通文庫 『式神の城』

 『式神の城』(2002/04刊行)のヒロインである結城小夜の登場シーンです。
 彼女は、神と戦う兵器として育てられ、ふつうの人間の持つ常識や感情に乏しいのが特徴の戦闘機械のような娘です。このため、雪のような純白さと、水晶のような硬さ、という比喩がマッチしています。
 雪の白さは、神秘性、空虚さだけでなく、『清純さ』『冷たさ』といったイメージも与えます。

 逆に、主人公をグイグイ引っ張っていくような活発系の少女を描写する場合は、赤のような暖色系のイメージや、人工物ではなく自然や動物の持つ美しさを利用するのが良いです。

 ティグルは呼吸すら忘れるほど、彼女に見惚れた。
 自分と同い年くらいの若い娘で、朝の陽光を反射してきらめく白銀の髪は甲冑の外、腰まで届き、紅の瞳には明るさと凛々しさが輝いていた。
 甲冑からのびた腕は年相応を思わせる華奢さで、しかし、その手に握られた長剣は不思議と似合っている。
MF文庫J『魔弾の王と戦姫』

 以上は、『魔弾の王と戦姫』(2011/04刊行)一巻より引用したヒロイン、エレオノーラの描写です。
 彼女は、戦姫と呼ばれる最強の武将の一人で、性格は自信に溢れ、活発で好戦的です。
 そんな彼女の描写には「太陽」「紅の瞳」が強調されています。

 「朝の陽光を反射してきらめく白銀」を、『鋼殻のレギオス』のフェリの描写で使われた「白銀の髪が、喫茶店の照明をはね散らして輝くようだ」と対比してみましょう。
 同じ白銀の髪でも、受ける印象はぜんぜん違いますよね?

 太陽から受けるイメージは、活発さ生命力です。
 一方、喫茶店の照明から受けるイメージは、無機質、控えめな明るさ、です。
 これはそのまま二人の少女の性格を見事に反映しています。

 また、紅の瞳から受ける赤のイメージは、活気、自己主張、情熱、です。
 これもエレオノーラの性格そのままです。
 一方、フェリは人形に例えられています。人形は完璧に計算された美しさを持っているけれど、生命力に欠け、意思の疎通が難しい印象を与えます。こもフェリの言動に合っています。

 美少女描写は、たんに美しさを伝えるのではなく、そのキャラの性格や内面も伝わるように書きましょう。

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