ライトノベル作法研究所
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  4. 風景描写とリンクさせる公開日:2013/10/10

風景描写とリンクさせる

 少女の容姿を直接、描写するのではなく、周りの自然などの風景の美しさとリンクさせて、絵画風の美しさを表現するという手法もあります。
 やや高度な文章技術で、わかりやすい表現を重視するライトノベルにはあまり見られません。
(使いこなせる人が少ないから、とも考えられます)

 心音が耳を聾せんばかりに響き渡る。それでも自然と耳に染みいる少女の歌声。
 月に歌を捧げているのか、月を祀っているのか。神に仕える巫女のごとく真摯なその姿は、あまりにも清らかで気高く──
(僕は……何を見ている……?)
 神事を覗いているような疚しさが心をかすめる。それでも目を離すことができない。離そうと考えることさえ叶わない。目に映るものは輝く月と、月に祝福された少女の姿──
「……ぇ……」
 これは現実なのか。この少女は人間なのか。あるは天使か妖精か──それとも魔性か。
富士見ファンタジア文庫 『風の聖痕』第3巻より引用

 2003年2月に刊行された山門敬弘の『風の聖痕』3巻にあるヒロインの描写です。
 ヒロインの美しさを、月の美しさとリンクさせて語っています。また、この場面での視点である準主人公、煉の内面の驚きや心臓の高鳴りを書くことで、ヒロインの美しさが、どれほど衝撃的なのかを伝えています。
 この中で少女自身の容姿は、まったく描写されておらず、月を引き合いに出すことで、その神秘性を強調しています。月は女性性や魔性、神秘性の象徴です。
 実際にこの少女は、富士山の噴火を抑える儀式の『生贄』のために作られたクローンという、二重の意味で神秘的な存在だったので、「月に歌を捧げる」「神に仕える巫女」といった表現は、その本質に合っていると言えます。
 ヒロインを描写する場合は、そのキャラクターの個性にあった描写をする必要があるのです。

 また、風景も一緒に描写することで、ストーリーのテンポを落とさずに周りの状況も伝えられています。

 風景描写などは、あまり書きすぎるとストーリーの展開速度を落として、読者を退屈にさせてしまいます。なので、必要最小限の描写でうまく伝える必要があり、ヒロインの描写に利用してしまうというのは、かなり高度なテクニックだと言えます。

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