ライトノベル作法研究所
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  4. 共感できる欲求で笑わせる公開日:2014/02/11

共感できる欲求で笑わせる

 ライトノベルではキャラを立たせるために、非常に極端な個性や欲望を持ったキャラ造形をします。人間が誰でも持っているような共感できる欲求を、極端なな言動で表現することで、ギャグとして機能させるだけでなく、そのキャラの個性を強烈に印象付けようとします。

「ふざんけんな! おまえの勝手な言い分で俺の町を、俺の仲間を、部長を、アーシアを消されてたまるかッッ! それに俺はハーレム王になるんだぜ、てめえに俺の計画を邪魔されちゃ困るんだよ!」
 カッコつけているつもりかもしれないけれど、それじゃダメだよ、イッセーくん。
引用『ハイスクールD×D3巻 月光校庭のエクスカリバー』(2009/4/20刊行)

 こちらは、ハイスクールD×D3巻で、主人公の兵藤一誠が、敵のボスである堕天使の幹部に、啖呵を切るシーンです。
 カッコイイセリフの後半に、素直すぎる本音を繋げることによって、可笑しさを生み出しています。仲間のためだけではなく、性欲に突き動かされて強敵と戦おうとする彼のキャラクター性が笑いの源泉です。
 地の文に入っているツッコミも、うまい具合に笑いを増幅させる機能を果たしています。これは、ここはカッコイイシーンだけれども、笑う場面でもありますよ、というサインです。

「く……。しかしこういうクールキャラこそ、惚れたら激しいに違いない!」
「あ、それは正解。激しいわよ、私。小学校で、初恋の子に一日三百通『好きです』だけを羅列した手紙を渡して、果ては精神崩壊まで追い込んだから。意外と脆かったからそこで恋は冷めちゃったけどね。……貴方はどうかしか?」
引用『生徒会の一存―碧陽学園生徒会議事録1巻』(2008/1/19刊行)

 これは美少女キャラの知弦が、自分を口説こうとしてきた主人公を追い払おうと口にしたセリフです。
 彼女のゾッとするようなシュールなキャラクター性が、けんもほろろに袖にされる主人公の悲哀と相まって、笑いを誘います。

 極端な欲望の露出というのは、それだけで笑いを誘う力があります。

 特に異性のことが好きなあまり、変な言動をしてしまったり、その恋心がうまく満たされずに悶々としたりする様子は、誰しも経験があるだけに、人はおもしろさを感じます。 

「あーん!」
 北村の言葉を披露して、大河はくねくねと小柄な身体をくねらせた。どうしようもない葛藤が、彼女の中で激しく溢れかえっているらしい。
「断りたい……断れない……でも、冗談じゃない……でも北村君の頼み……ていうかなんであの子のことばっかり気にして……うう~~ん、うううう~~んっ」
引用『とらドラ!2巻』 (2006/5/25刊行)

 これは『とらドラ!』のヒロインの大河が、片思いをしている北村から、彼女が大嫌な亜美と仲良くしてやってくれ、昼ご飯を一緒に食べてあげてくれ、と頼まれて悩んでいるシーンです。
 恋心と嫌悪感という相反する強い感情が爆発して、身悶えしています。その本音駄々漏れの様子が、端から見ている読者にとっては、おもしろくて笑いを誘うわけです。

 また、恋心に悩むような共感できる姿に、読者は親近感を感じることができます。

「よ、よし……それでいこう。……ふ、ふふ……ふ」
 誠に遺憾ながら、今の俺は、少々キモいかもしれない。だが、どうか許して欲しい。
 生まれて初めて彼女ができて、舞い上がっているのだ。
 もう夜も遅いってのに、窓を開けて『黒猫ぉ――!!』と叫んでしまいそうなくらいである。
引用『俺の妹がこんなに可愛いわけがない8巻』(2011/5/10刊行)

 これは『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の主人公、京介が黒猫というハンドルネームの少女から告白されて、恋人同士になり、舞い上がっているシーンです。
 彼は黒猫のことを本名で呼び捨てにするところを想像して、恥ずかしさのあまり壁にヘッドバットを食らわしたりします。
 このような端から見ていて、『痛い』シーンというのは、読者にとっても身に覚えがあるだけあって、容易に共感できて、笑うことができます。

 ラノベノのギャグは、単に読者を笑わせるだけではなく、キャラクターの個性や欲望、感情を出すネタをたくさん用意することによって、キャラを立たせ、キャラを好きなってもらうという意図があります。

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