キャラクターの魅力、おもしろさを生み出すもう一つのコツ。
それは、1人の人物の中に『同じ』と『違う』を混在させることです。
おもしろさとは、他者と『同じ』部分と、『違う』部分の2極のギャップによって生み出されます。
例えば、410万部以上を売り上げた人気作『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(2008/8/10)のヒロイン、高坂桐乃は、ハイスペックの美少女なのに妹物のエロゲーが大好きな妹です。
この物語は、同じ家に住んでいるのにまともに会話をしない、といった現実的な兄妹関係を描いており、魔法などのファンタジー要素が一切ない、現実志向のラノベです。
ただ、一点、妹が「重度の妹萌えオタク」であることを除いては……
桐乃は、学校の人気者で、モデルもこなす美少女なのに、その圧倒的なオタク知識で、兄である主人公をドン引きさせます。
このギャップが、彼女の魅力になっています。
本来、まったく正反対の水と油の属性が、桐乃の個性を深く印象づけているのです。
(特に秀逸なのが、桐乃がオタクであることをひた隠しにしている点で、これが読者層に共感を与えています。なにより、主人公に自分を投影して、美少女とオタクトークできるというのが楽しいです)
直木賞受賞作家・桜庭一樹のライトノベル『GOSICK』のヒロイン・ヴィクトリカ(2003年)は、ビスクドールと見紛うような美しい容姿をしていながら、、老婆のようなしわがれた声で話し、大人顔負けの優れた頭脳を持っています。
支倉凍砂のヒット作『狼と香辛料』(2006年)のヒロイン・ホロは、外見は美しい少女なのに、正体は何百年も歳を重ねた人間を丸呑みにできるほどの巨大な狼です。
他にも例を上げみれば。
といったタイプのキャラクターが存在します。
ここで、おそらく気付かれた方もいらっしゃるでしょうが、ギャップとは、主に外見と中身の相違です。
人を見かけで判断してはいけないと、世間では良く言われます。
なぜ、こんな格言がはやるかというと、私たちは人を外見で判断しているからです。
モヤシみたいに痩せている人を見れば、ひ弱な人だと思うでしょう。
89式小銃を持って自衛隊の駐屯地の前に立っていたら、自衛官の人だなと思うでしょう。
(防衛省に喧嘩を売ろうというテロリストかもしれませんが……)
私たちは相手の見かけで、その人の人格や知能、職業、運動能力の有無を判断してしまっているわけです。
見かけの呪縛とは強力なもので、外見で判断してはいけないなどという理性のささやきなど軽く吹っ飛ばしてしまいます。
そして見かけとはおおよそ、その人間のパーソナリティーを現しているものです。
皺だらけのおじいさんが、怪力だったり、中国拳法の達人だったり、正確無比な超記憶力を有していたりすることなど、現実にはありえません。
ここにギャップを生み出す下地があります。つまり、
外見と中身をアンバランスなものにしてしまえばいいわけです。
ライトノベルで良く見かけるタイプのキャラクターとして、美少女なのに男顔負けの戦闘能力を持っている娘というのがいますよね。
これも、本来か弱い存在であるはずなのに強いというギャップが魅力の源泉となっています。
ただし、この手法を使うキャラは作中で1人、多くても2人にとどめた方が無難です。
ギャップのあるキャラばかりにすると、リアリティーが無くなってしまいます。
だって、現実には起こりえないアンバランスな設定だからこそ、ギャップとなる訳ですからね。
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