ライトノベル作法研究所
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  4. 愛情×技術=おもしろさ公開日:2013/09/20

愛情×技術=おもしろさ

 私はオリジナリティとは「こだわりと愛の中から生まれる」と考えています。

 例えば、格闘技の中でも合気道が好きで好きでたまらなくて、合気道の技から歴史までとことん調べ尽くして、実際に合気道をやっている人が、合気道の使い手を主人公にした小説を書いたとしましょう。
 すると、とんでもなく個性的な話になると思うのですね。
 だって、ふつうの人はそこまで合気道のことなんて知りませんから、経験と知識に裏打ちされた圧倒的なリアリティのある作品があると、異彩を放つと思います。
 ただし、おもしろいかどうかは別です。オリジナリティがあることと、おもしろいことはイコールではありません。おもしろくさせるためには、ノウハウや技術が必要不可欠です。

 「愛情×技術=おもしろさ」だと考えています。

 例えば、私の好きなライトノベルで『フルメタル・パニック!』(1998年9月刊行) という作品があります。

 これは戦場で育ってきた特殊部隊の少年・相良宗介が、日本の学校に任務で転校してきて騒動を起こすという話です。
 ここまで聞くとありふれた話に思えるのですが、軍隊と軍事技術にたいする作者のこだわりがハンパじゃなく、戦場の常識しか持っていない相良宗介と、ヒロイン達の価値観のズレが、 非常にリアリティを持って描かれています。
 この作者のこだわりが、そのまま他にないオリジナリティを生み出していると私は分析しています。

 『フルメタル・パニック!』は、ギャグ満載の短編集と、シリアスな長編集が交互に刊行されました。作者の賀東招二さんは、ギャグとシリアス双方を非情に高いレベルで書ける能力を有しており、アイディア勝負の一発屋とは比べ物にならない、高い技術力を誇っていました。
 だからこそ、この作品は1000万部を越える売り上げを記録しております。

 もう一つ、電撃文庫に『DADDYFACE』 (2000年3月刊行)という作品があります。

 古代文明、古武術、軍事兵器、最新テクノロジー、オーパーツ、超能力といった、いろんな要素を詰め込んでおり、かなりごたごたしている小説なのですが、それぞれに対するこだわり方がハンパじゃないのです。
 伝説・伝承の知識、それに対する個性的な解釈。
 軍事兵器・最新テクノロジーの知識、古武術の設定、どれもこれも素人では考えられないほどにこだわっています。
 なぜそこまでやるか? と思っわずツッコミしたくなるほどに。
 でも、そこに作者の愛が感じられるのですね。
 この人は本当に好きでこの作品を作っているのだという気持ちが伝わってくるのです。
 これが『DADDYFACE』特有の個性、オリジナリティになっているのだと考えています。

サイラスさんの意見2014/09/06

 この記事を見て、思い出すのが、日下秀憲氏原作の漫画『ポケットモンスターSPECIAL』 シリーズです。

 原作が、ゲームな上、漫画作品。それでも挙げたのは、この作品も、こだわりが強く感じられ、なおかつ、連載も長いからです。
 この作品のこだわりは、原作ゲームのポケットモンスター(以下、ポケモン)の設定はもちろん、他のポケモンメディアの要素や設定まで踏まえた設定やストーリー展開がきちんと出来ていることです。

  例を挙げると、アニメ版のポケモンの戦闘は、人間(トレーナー)がポケモンを出して、出してもらいたい技を命じ、技を出してもらうを、繰り返すような展開をしていくのですが、このシリーズになると、ポケモンの生態や技の性質、自分が戦っている環境、さらには、科学の知識までを考えながら、技や命令を出していくため、相手どころか、読者が予想もしなかった展開で、うまく事態を切り抜けていきます。そうしないと、ポケモンどころか、トレーナーすら命を落としかねないことが多々ありますからです。
 また、出てくる道具も多く、他のポケモンメディアの物や設定が加わっていることもあり、それをうまく使いこなしていくのも、この作品の魅力でもあります。

 そして、何より、言いたいのは、ゲームが原作でも、徹底的なこだわりと技術があれば、かなり面白い作品ができる、それほど、技術とこだわりの相乗効果が強力ということです。

 このシリーズも、きちんと設定等を踏まえること(こだわり)とそれを表現できる技術があったから、他のポケモンメディアでは、あり得ない駆け引きやドラマが成立しています。
 これによって、私をはじめとする、多くのファンがつき、長期間の連載が許されています。
 だから、自分のこだわりといえる知識。それを表現し、伝える技術を磨くことを厭わなかった作家の作品が、良作やオリジナリティーがある作品といえるような気がします。

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