ライトノベル作法研究所
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  4. 読者の夢を壊す現実性に注意!公開日:2013/08/22

読者の夢を壊す現実性に注意!

 物語におけるリアリティとは現実に即していることではなく、リアルっぽく見える楽しい夢のことです。

 一言で言うと、「アイドルはトイレなんて行きません!」ということです。良いところだけ見せて、悪いところは見せないのです。
 現実をありのままに作中で再現したら、リアリティに富んだすばらしい作品になるかというと、そうではありません。
 これは女性向けレーベルのライトノベル作家さんにオフ会でお会いして教わったことです。

「中世ヨーロッパにはトイレがなくて、人々は窓から溜まった汚物を捨てていた。とか、平安貴族のお姫様の頭は、実は虱でいっぱいだった。というようなことは、絶対に作中に描いてはいけません。美しい幻想が壊れちゃうでしょう?」
 と、その方はおっしゃっていました。

 女性に人気の物語の舞台として、中世ヨーロッパや平安時代がありますが、その時代をありのままに描いてしまうと、ライトノベルでは不都合な事態になるのです。ラノベというのは、人々の願望や幻想を反映して作られたものなので、それを壊すような現実性を持ち込むのは、自殺行為なのですね。

 お姫様を抱きしめたら、その頭に虱の大群がいたなんて話をされたら、萌えもへったくれもありません。ただのホラーです。
 汚物まみれの臭い城や街で恋愛したいなどと憧れる人がどこにいるでしょうか?

 物語においては、美しさ、清潔感が大事です。

 現実には、キスをしたら、若くてきれいな娘が相手であっても口臭がすることがあって、「歯磨けよ!」と思うかも知れませんが、ラノベの美少女は、イイ匂いしかしません!
 フランスの太陽王ルイ14世はルーヴル宮殿が耐え難いほど不潔だっため、ヴェルサイユ宮殿に移ったと言われていますが、お城というのはピッカピカで、王子様やお姫様が夢のような恋愛をする舞台でなけなればならないのです!

 キャラや舞台のイメージを損なうような場合には、あえて現実性よりイメージを優先させた方が良いです。

 例えば、漫画『ふしぎ遊戯』の作者、渡瀬悠宇さんは、中国皇帝の一人称は『朕(ちん)』だけれど、これだと登場人物のキャラに合わずに笑ってしまうため、『私』にしたと語っています。
 アニメ映画監督の押井守さんは、その著書「他力本願 仕事で負けない7つの力 」で次のように述べています。

「アニメの中で登場人物が読む新聞は、『クレヨンしんちゃん』であれば記事が縦の線で描かれているだけで十分だ。本物の新聞のように記事や写真が載っていたら、かえって違和感をもたらすことになる』
引用「他力本願 仕事で負けない7つの力 」押井守

 クレヨンしんちゃんは、幼稚園児の男の子が主人公のホームコメディなので、その主題から逸れて世界の広がりを感じさせるような情報は余計であり、隠しておいた方が良いということです。
 なんでも現実に近づければ、作品の質が上がるかと言ったら、そうではないのですね。

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