ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. ライトノベルの書き方
  3. ストーリー
  4. 登場人物に複数の動機を与える公開日:2012/01/09

登場人物に複数の動機を与える

 物語とは、主人公が目的を達成する過程であることはすでにお話しました。
 次に重要になってくるのが、この目的を達成したいという理由、つまり動機です。 
 人が行動するには、動機が必要です。なにか理由が無いと、人は行動しません。

 主人公が命をかけて敵と戦うのなら、命をかけて当然と読者が納得できるような動機が必要になります。

 もし、納得できないような理由で命をかけてしまうと、とたんに物語が嘘臭くなり、読者は白けてしまいます。  

 例えば、好奇心から事件に首を突っ込む主人公がいたとします。
 この場合の主人公の目的は、「事件の解決」です。
 好奇心は人間誰しも持っている感情なので、好奇心で行動することに不自然さはありません。
 しかし、事件に関わったことで、自分よりはるかに強大な悪役から、「殺すぞ」という恐喝を受けたとしたら、いかがでしょう?

 命を危険にさらしてまで事件にかかわり続けるなんて、現実には、まず考えられませんよね。
 好奇心より、自己防衛本能を優先させるのが人間です。
 それなのに、強引に好奇心という動機だけで登場人物を行動させてしまうと、その物語はリアリティの無い駄作になります。

 そこで、有効なのが登場人物に複数の動機を与えることです。

 人間が行動する理由は1つとは限りません。
 有名大学への進学という目的のために受験勉強するにしても、
 「良い学校に行ってステイタスを得たい」
 「受験に失敗すると恥ずかしい」
 「親に勉強しろと言われたから」
 「良い点数を取ると優越感に浸れる」
 「みんながやっていることだから」
 「社会で負け組になりたくない」
 と、いろいろな理由がありますよね。
 登場人物にも現実と同じように複数の動機を与えることによって、行動にリアリティを持たせることができます。
 人間が行動する理由としてあげられるのは、

 1・愛情 (異性愛、兄弟愛、親子愛) 
 2・友情
 3・復讐 (怒り、憎悪、嫉妬、劣等感)
 4・義務 (仕事だから・命令されたから)
 5・欲望 (金銭欲・名誉欲・支配欲・物欲・性欲)
 6・趣味・嗜好・ポリシー (それをするのが好きだから)
 7・正義感 (恩・義理・情け)
 8・好奇心
 9・自己防衛
10・忠誠心

 などが、あります。
 これらをいくつか組み合わせて、登場人物の動機を強化させましょう。

 例えば、最初は単なる好奇心から事件に関わったけれど、悪役の親玉が親の仇であることがわかり、どうしても事件を解決したくなった(復讐)。
 悪役から追われている美少女のコトが好きになったので、彼女をどうしても守りたくなった(愛情)。
 悪いことをする奴らのコトが許せない(正義感)。
 事件の秘密を知ってしまったことで、悪役から口封じのために狙われることになった(自己防衛)。
 事件を解決した者には、莫大な賞金が出ることになった(金銭欲)。
 自分の親友が事件に巻き込まれてしまった(友情)。

 このように、主人公を行動させるにも様々な動機が考えられますよね。

 悪役の場合でも、例えば征服欲から、主人公の住む土地を侵略しようとしたのでは行動の動機が弱いです。
 ここにも愛情や復讐心などをブレンドして、動機を強化しましょう。
 例えば、その土地を支配する王族や貴族の少女のことが好きで、彼女を自分のモノにしたいから、その土地を征服しようなどというのなら、悪役に感情移入しやすくなります。
 それが主人公の妹や恋人であるなら、主人公と悪役の確執が強くなり、より物語がドラマチックになるでしょう。

 ただの征服欲に愛情という動機を加えて、動機を強化するのです。

 復讐心、憎悪なども人間を行動させるための強い動機です。
 その土地を侵略するのは、征服欲もあるが、復讐のためでもあると、悪役の行動に感情移入しやすくなります。
 例えば、昔、その土地に住んでいたのだが、なんらかの理由で迫害を受け追放された、などというエピソードを加えるのです。

 こんな風に、登場人物には複数の動機を与えてみてください。
 動機が強くなれば、その行動にはリアリティと人間臭さが出て、読者はより感情移入しやすくなります。

 特に、読者を納得させやすいのが、「愛情・復讐・自己防衛」の3つです。
 恋愛を物語に絡めることは王道かつ、古典的な手法です。
 愛情は、人の共感を最も呼びやすい動機です。
 愛情を動機としている行動は美しく、読者に好感を与えます。

 復讐も、人間の強い感情である憎悪に起因しているので、納得しやすい動機になります。
 ただ、ネガティブな動機なので、主人公の行動の理由にすると、どうしても暗い話になります。

 自己防衛本能も、誰しも持っているものなので、読者に受け入れられやすいです。
 いきなりわけのわからない敵に襲われ仕方なく反撃する、なんていうストーリーの小説は結構、多いですよね。
 極端な例だと、敵を倒さないと、世界その物が滅ぼされるというのなら、否応なく戦わなくてはならなくなります。

 ただし、こういった動機は登場人物の性格とマッチしたモノを選んでください。

 正義感に溢れた人物が、金銭欲で行動することはあまり考えられません。
 友情に価値を見出していない人間が、友情のために行動するのも不自然です。

携帯版サイト・QRコード

QRコード

 当サイトはおもしろいライトノベルの書き方をみんなで考え、研究する場です。
 相談、質問をされたい方は、創作相談用掲示板よりお願いします。

意見を送る

『登場人物に複数の動機を与える』に対して、意見を投稿されたい方はこちらのメールフォームよりどうぞ。

カスタム検索