ライトノベル作法研究所
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  4. 評価を得ることを最大の目的にしない公開日:2013/08/03

他人から評価を得ることを最大の目的にしない

 ファンを作ることはやる気につながると言いましたが、これには落とし穴があります。
 他人からの評価を得ることを第一に考えてしまうと、小説を書くことが苦痛になるのです。

 『NHKにようこそ!』の著者である滝本竜彦さんは、良い作品を書かなければいけない、読者の要求に応えなければいけない、と考えるようになってから小説が書けなくなり、長期のスランプに陥ってしまったそうです。
 オフ会でお会いした際、『NHKにようこそ!』がヒットして有名になった後より、作家志望として小説を自由に書いていた頃の方が、よっぽど楽しかった、と語っていたのが印象的でした。

 実は、他人からの評価というものは麻薬にも似た危険物なんですね。
 他人の評価を気にしだすと、こんなことを書いたら笑われるのじゃないか? 批判されるのじゃないか? という恐怖が頭を支配し、自由な発想ができなくなります。
 ウケなくてはいけない、と考えるあまり、自分が何を本当に書きたいのかも、わからなくなっていきます。
 そして、だんだん小説を書くのが楽しくなくなっていき、最後にはやめてしまうのです。

 創作の楽しさの本質とは、大勢の人から、すげぇー! と賞賛されて人気者になることではなく、「自分の書きたいことを自由に書いて表現する」ことにあります。
 名声やお金といった結果ではなく、小説を書くというプロセスそのものが快感なのです。

 苦しそうなしかめっ面をしながら、クレヨンで絵を描く三歳児はいません。
 好きなことを自由に創作することに、人間は本能的な喜びを覚えるのです。
 作品の評価は、付加価値的な要素に過ぎません。
 しかし、この付加価値は、名声やお金といった社会的評価に結びつくので、多くの人は、これに惑わされてしまうのです。

 小説を書くことを名声を得る手段にしてしまうと、創作の喜びは消え、無限地獄に突き落とされます。

 なぜなら、他人の評価ばかりを求める人間には「自分のやりたいこと」が無いからです。
 「やりたいこと」は「やらねばならない」ことと化し、喜びは苦痛へと変わります。

 例えば、ネットで小説を発表する場合、必ず気になるのがアクセス数や感想、ランキングです。
 アクセスが大量に集まれば、鼻高だがですが、一日のアクセス数が10人、そのうちの半分が自分とかなると、もー、世界から疎外されまくった孤独感でいっぱいになります。
 必死になって宣伝し、腕を磨いて、人気が出ると、自分よりもっと人気がある人がうらやましくなり、なんであいつばっかり注目されるんだろう? と嫉妬の炎がメラメラと燃えだします。

 アクセスアップなど、小説を読んでもらうための手段に過ぎなかったのに、いつの間にか、これが目的化して、追い立てられるようになります。
 こうなると、一体何のために小説を書いているのかわからなくなり、疲ればかりが溜まっていきます。

 これはプロ作家になっても同じです。
 本を出版すると、アマゾンのレビューが気になって何回も見に行ったり、自分の作品名で検索をかけて、どういった評価を受けているのか、個人のブログや書評サイトを巡回したりします。
 そこで酷評されていると、鬱病になるくらいのダメージを受けるし、反響があまりないと「俺って人気ないんだなぁ……」と、これまた不安になります。

 自分が他人にどう見られているか? 評価されているのか? 
 これを気にし出すと、頭の中がグチャグチャになって執筆なんて手につかなくなります。
 そうやって、多くの作家は、才能の芽を自ら潰して消えていくのです。

 他人は関係ない、本当に耳を傾けるべきは、他人の声ではなく、自分の内なる声です。
 名声やお金、といったものは小説を発表した後で付いてくる単なるオマケです。
 これは、「あれば、いいかなぁ」程度に考えておくのが吉です。
 もし、酷評されたりしたら、

 俺は小説が書くのが好きだから、小説が書ければそれだけで良いんだ!

 と、開き直ってしまいましょう。
 もちろん、評価されないことは、悔しいし、つらいでしょうが、小説を自由に書くことで、もう十分すぎるほど報酬を受け取っているはずです。

 肩肘張らずに、他人と競おうとはせず、自由に創作を楽しんだ方が、結果として、欲しかった名声を得られる近道になったりします。

 なぜなら、他人からの評価を求めて完璧な名作を作ることにこだわる人は、結局、失敗の恐怖が勝って、小説を書かなくなるからです。
 理想的な創作者の姿勢として、アメリカの詩人ウォルト・ホイットマンは次のように述べています。

 世界中の誰もが自分を称揚しても、私は独り静かに満足して坐っている。
 世界中の誰もが私を見捨てても、私は独り静かに坐っている。

●補足
 他人からの評価は気にしないと言いましたが、これは小説を発表する必要はない、という意味とは違います。

 人目に触れない小説はこの世に存在しないのと同じです。

 小説を発表すれば、少数ながらも自分を支持し、共感してくれる人が現れます。
 誰かと共感し合える、世界との繋がりを感じられるというのも小説を書く上での大きな醍醐味です。
 ただ、これを際限なく求めると、書く喜びが消え、苦痛が増大していくのです。

 動機の位置づけは、書く喜びが一番、評価は二番くらいに置いておくのがベストです。

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