ライトノベル作法研究所
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  4. 才能を引き出すシステム公開日:2012/06/15

小説家の才能を引き出すシステム

・毎年、新人賞に応募する。
・一日の決まった時間帯に、30分~2時間(無理のない範囲)は創作活動をする。
・図書館で月に15冊くらい本を借りてきて、机の上に並べておく。外出する時、本を持ち歩く。

 以上が、私が考える小説家の才能を引き出すシステムです。
 才能や創造性に関する様々な書籍を読んだり、新人賞受賞者や作家の話を聞いた上で、結論しました。
 なぜ、この方法が良いと考えたかというと、

1・目標に向かって努力できる。
2・締め切りがある。
3・習慣化できる。
4・インプットの障壁が下がる。
5・レベルアップが確認できる。
6・無理なく長い息で続けられる。

 以上、6つの理由からです。

 まず、1についてですが、なんとなく小説や文章を書いていても「成長」しません。
 どうすれば、読者が楽しんでくれるか? クオリティーが上げられるか? 創意工夫する習慣をつけるためには、明確な目標があった方が良いです。

 才能がある人間は、無意識のうちにも、どうすればよりクオリティーアップに繋がるか、めまぐるしく思考を回転させています。目標を設定することで、システム的にこの思考に近づくことができます。

 また、とにかく応募していればマグレでも受賞することがありますが、応募していなければ何年経っても受賞できません。
 目標に対する明確なアクションを続けることが、目標に到達する唯一の道です。

 次に2についてですが、締め切りが設定されてると、限界以上の力を発揮できます。

「ああっ、もう間に合わねぇー! なんとしてもこの限られた時間で、できる限り作品の質を高めなれば!」
 という状況に追い込まれると、身体の芯が熱くなったように感じ、怒濤の勢いで執筆活動が進みます。
 私も本を出版するときに担当編集者さんから「一ヶ月半で完成原稿を用意して下さい」と言われ、このような状態になりました。

 原稿を用意できなければ企画は流れる、本が売れなければ次からは使ってもらえないかも知れない、という状況では、とにかく現在自分にできる最高の物を作るしかありません。
 すると、不思議なもので、ああしたら良いのじゃないか、こうすればもっと良くなるのじゃないか? というアイディアがひらめきやすくなります。
 追い詰められると、新しい力に目覚めるというのは、漫画の世界だけの話じゃないんだなぁ、と実感しました。

 アマチュアの場合は、締め切りの設定がないので、自ら作って追い込むしかありません。
 そこで有効なのが、新人賞に応募することです。

 期限までに作品を完成させなければならないので、自然と執筆が進むようになり、完成作品という「実績」を作りやすくなります。「実績」は積み重ねることが「成長」に繋がるので、失敗作になってしまっても問題ありません。

 3の習慣化についてですが、人間の「潜在意識」には現状維持メカニズムというのがあります。
 例えば、体重60キロの人が、暴飲暴食して70キロに太ると、最初は「なんてこった! ヤバイ痩せないとなぁ」と思いますが、しばらくすると太っていることが当たり前になり、ダイエットしようなんて考えなくなります。
 無意識のうちに、今現在の状態を当たり前と考え、これを維持しようとする思考が働くのです。

 このため「夜9時から10時までは、毎日、小説の執筆に当てるぞ」と決めて、最初は辛くても、これを一週間以上繰り返すと、やがてこれが当たり前になります。

 なんとなく夜9時になったら、執筆活動をしないと気持ちが落ち着かないような状態になるのです。
 もちろん、別の予定などが入って、できないこともあるでしょうが、二日以上は休まない方が賢明です。
 私の経験からすると、三日以上サボると、今度はやらないことが当たり前になり、「まあいいや、明日があるさ」とグータラ過ごすことになります。
 必要な努力は習慣化して、それを崩さないように気をつけると良いです。

 4のインプットの障壁が下がるについてです。勉強というのは、根性を出してやろうとするよりも、努力しやすい環境を作った方が、効率良くできます。

 図書館で、本をたくさん借りてきて、いつも使っている机の上に並べておく、外出用の鞄に入れておくのが、私が考える上で、最も良い方法です。できれば、ゲームなどが好きな人は、ゲーム機の上に本を置いておくと良いでしょう。

 図書館の本は、借りられる期限が決まっているので、なんとなく読まねばもったいないような気持ちにさせられます。また、無料で借りられるので、お金を出すという障壁がなく、気軽に手にできます。
 外出した時に鞄に入れておけば、電車の中や待ち合わせなどの空き時間に読めるので、自然に知識が増えていきます。

 特に名作とされる、ライトノベルや文学作品は読んでおいた方が良いです。
 これが習慣化されれば、読書量はドンドン増えていきます。
 できれば、図書館に近いに所に住むことができると最高です。遠くて行くのがめんどくさい、交通費がかかる、といった状態だと図書館への足が自然と遠のきます。
(私の知人のライトノベル作家さんは、図書館から歩いて五分のところに住んでいました)

 15冊としたのは、昔、単行本を多数刊行しているプロ作家(ライター系)の方から、「月に30冊は読め」と教えられたからです。それはちょっと無理なので、月に平均10~15冊くらいは、目を通すようにしています。出来る人は30冊に挑戦してみてください。

 5についてですが、人間は努力の成果が目に見えないと、やる気が出ないものです。
 私はゲームが大好きなのですが、ゲームがなぜおもしろいかというと、キャラクターの成長が数値化されているからです。
 敵と戦うと経験値が手に入り、新しいスキルや魔法を覚え、どんどん強くなっていくのが、はっきり確認できます。
 ゲームがつまらなくなるのは、最強の魔法を覚えたり、最強の武器防具を手に入れたりして、もうこれ以上、強くなれないことがわかった時です。

 しかし、創作活動では、自分の努力に対して、どれほどのリターンがあったのか? 
 果たして、レベルアップしているのか、それともしていないのか、自分ではまったくわかりません。
 また、現在している努力に本当に意味があるのか? もしかして間違った方向に進んでいないか? 不安になるものです。

 努力と結果の因果関係がわからないことほど、人間のやる気を削ぐことはありません。

 新人賞に応募すれば、あなたの実力やアイディアの質の善し悪しが、プロの目で鑑定され一発でわかります。
「前回は、一次選考で落選したけれど、今回は二次まで行けたぞ!」
 となれば、はっきり成長の手応えが掴めます。
 また、最近(2012年6月)は、評価シートを送ってくれる新人賞もあり、作品の長所、短所がよりわかりやすくなっています。

 だた、ゲームと違って、常に成長し続けることが約束されていない点はお忘れなく。
 創作活動は「三歩進んで二歩下がる」の三百六十五歩のマーチそのものの世界です。
 一作目は売れたのに、二作目は鳴かず飛ばず、というのはプロの世界では当たり前に起きます。

 一次選考がどうしても突破できなかったり、前は最終選考までいけたけれど、今回は二次落ちしてしまうこともあるでしょう。
 その場合は、不安になるかも知れませんが、焦らずに創作活動を継続しましょう。
 歩み続けいれば、必ず前進していきます。

 6の「無理なく続けられる」についてです。
 あまり無茶な努力をすると、短期間で燃え尽きてしまう危険性が出てきます。

 「欲求」とは、行動をすることで得られる快感を苦痛が上回った時に、消えるのです。
 物事を長く続けるコツは、60%くらいの力で緩くがんばることです。

 私は2004年にこのサイトを立ち上げてから現在いたるまで、いろんなトラブルに見舞われても継続していますが、これができているのは苦痛にならない程度に続けることを課しているからだと考えています。

 もちろん、二時間以上、執筆活動に時間を傾けてもへっちゃらな人は、この限りではありません。
 そういった人の方が成功する可能性は高いでしょう。
 実際にプロになった人にインタビューすると、一日に3時間以上、執筆に時間をかけている人ばかりです。

 しかし、多くの人は、仕事や勉強など、他に優先すべき生活上の活動もあるでしょうから、無理のない範囲で、ゆっくりやっていくことがオススメです。
 才能を開花させるために必要な訓練時間は最低一万時間なので、腐らず長く続けることが夢を叶えるポイントです。あんまり慌ててデビューしても、売れなかったら使ってもらえなくなるので、じっくり実力を養成していく、というのも有効な戦略です。

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