ライトノベル作法研究所
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  4. 実在の人物はOK公開日:2011/12/20

実在の人物や現実の事件、歴史をモチーフにする

 実在の人物や現実の事件には著作権がありません。
 当たり前ですが、これらは誰かの創作物ではないからです。

 幕末の坂本龍馬やナチスドイツの総統アドルフ・ヒットラーを登場人物にしても、パクリだ、などと誰からも批判されることはありません。
 例えば、時代小説の大家として知られる司馬遼太郎は、『竜馬がゆく』『燃えよ剣』など、坂本龍馬や新撰組副局長、土方歳三を主人公にした小説を書いています。
 大文豪として知られる芥川龍之介は、乞食俳人「井上井月(いのうえせいげつ)」の生き様、作品に感銘を覚え『庭』という短編小説に井月を登場させ、当時、彼の俳句とされていた(後に別人の作と判明)「山はまだ花の香もあり時鳥」を作中に載せています。

 また、かの名作漫画『ベルサイユのばら』は、フランス革命の時代を舞台にし、マリー・アントワネットという実在の人物を登場させています。

 フランス王妃、マリー・アントワネットは、非常に人気のある人物で、映画、アニメ、小説、ミュージカルなど、さまざまな作品に登場しています。
 同じ人物を登場させていても、マリー・アントワネットの人物像の解釈は、作者によってまちまちなので、盗作にはあたりません。

 他にも、漫画『るろうに剣心』には、斉藤一という新撰組隊士である実在の人物が登場します。

 ここで注意していただきたいのは、『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネットのキャラクターや、『るろうに剣心』の斉藤一のキャラクターをパクれば、それは盗作となることです。
 『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネットの台詞をトレースしたり、斉藤一に「牙突」などという技を使わせたり、「フン、阿呆が」などという台詞を言わせるとアウトです。

 マリー・アントワネットや、斉藤一を出したいのなら、歴史書に当たって、自分独自の解釈を加えた彼らを出さなくてはなりません。
 その解釈が、すなわち作者のオリジナリティとなります。

 また、幕末や戦国時代、中国の三国志時代を舞台にした物語もたくさんあります。
 これらの激動の時代は、さまざまな人間ドラマが生まれたため、エンターテイメントと親和性が高く、あらゆるジャンルで作品化されています。

 もっとも、新撰組のようなファンがたくさんついている組織や人物を出したり、過去の時代を舞台にすると、時代考証のために膨大な資料に当たる必要があります。

 歴史ファンは、非常にうるさく、生半可な知識でこれらに手を出すと大火傷をします。
 さらに、時代小説は小難しくて売れない、という欠点も抱えています。
 これらを回避するため、サブカル作品においては、ファンタジー要素を付加した架空の大正時代や、Ifの要素を交えたイギリスやフランスといった人気のある外国を舞台にした作品が一般的です。
 あくまで、現実の歴史と似た架空の世界だから、歴史と違っていても許してね、という言い訳ができ、口当たりも良くなります。 

 ライトノベルだと、GA文庫に『織田信奈の野望』 という、日本の戦国時代を舞台にしながらも、なぜか有名武将のほとんどが美少女という設定の作品があります。
 ヒロインの織田信奈の元ネタは、当然のことながら織田信長です。
 戦国時代をラノベ向けに上手にアレンジした作品と言えるでしょう。

 現実におもしろい個性を持った人がいたら、その人をモデルにキャラクターを作ってしまうのも、良い方法です。

 モデルが実在の人物であれば、あの有名作品の●●に似ている! などと批判されることはまずありません。
 漫画『『グラップラー刃牙』には、ジョージ・ボッシュ大統領など、連載当時のアメリカ大統領や日本の政治家をモデルにした人物が登場します。
 作中で活躍する格闘家にも、それぞれモデルが存在しているようです。
(存命中の人物の場合、名前をそのまんま使うのは著作権とは別の問題が発生する可能性がある)

 逆に、漫画やアニメ、ゲームなどからインスパイアされて物語を作ると、よほどうまく自分の中で昇華しなければ、既存作品と類似した物になる危険があります。

 めんどくさくても、実在の人物や歴史に当たり、そこから発想を得た方が安全だと言えるでしょう。
 「現実は小説より奇なり」ということで、歴史上には、とんでもない事件や人間ドラマ、おもしろい個性を持った人物がたくさん潜んでいます。

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