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  5. 流星群の夜公開日:2012/11/26

流星群の夜

ななななさん著作

 ※作中に著:宮沢賢治『よだかの星』のネタバレを含みます(本編を読む前に青空文庫辺りで読んできたらいいと思います)。
 ※あとアンドロメダの神話のネタバレも含みますが、そっちはまあどうでもいいですよね。









■11月3日

 引き戸を開けると、満天の星が広がっていた。
「わあ……」
 思わず声を漏らす僕の脇を、先輩が軽やかに駆けていく。くすくす、とこぼれた笑い声が耳朶をくすぐる。
 屋上の中央まで行くと、くるりとターン。夜風に長い黒髪を遊ばせて、こっちを振り返った。
「ご覧よ、この空! 素晴らしい眺めだ!」
 いつにないはしゃぎようだ。喜んでもらえたなら、僕だって嬉しい。頬の緩みを苦笑で誤魔化して、精一杯しかつめらしく言う。
「あんまり騒ぐと、警備員が来ちゃいますよ」
「そう思うなら、早くドアを閉めるべきだね」
「はいはい」
 音を立てないように、慎重に――。重い引き戸を閉めてしまえば、もう下界の事どもは僕らに触れられない。
 ここには僕らと、そして星だけ。
 先輩はジャケットのポケットに両手を突っこんで、星空に静かな視線を投げかけていた。艶やかな髪が星明りに濡れて燐光を纏う。切れ長の瞳は星空を映して、夢見るように輝いている。
 その横顔の美しさに言葉を失っていると、不意に視線がこっちに落ちてきた。
「どうかな」
「え、えっと――」
 冬用のジャケットで着膨れし、下は味も素っ気もないジーンズ。背中には大きなナップザック。そんな色気のない格好でもふとした瞬間に見惚れてしまうのだから、僕って奴はどうしようもない。
「……不法侵入した甲斐がありましたね」
 どうにか捻りだしたその言葉は、決してお世辞ではない。
 夜空には見たこともない数の星が散りばめられて、穏やかに煌いている。先輩に誘われなかったら、これほど美しい景色を見る機会は二度となかったかもしれない。
「なら、良かった」
 えへへ、と先輩ははにかんだ。
 途端、凛々しい美貌は崩れて、とびっきりの宝物を自慢する子供のような顔になる。直視していられなくて、目を逸らした。
 冷たい風がひゅるひゅると鳴きながら吹き抜けて、火照った頬を冷ましてくれる。
 秋が深まるに連れて、夜は驚くほど冷えこむようになってきた。校舎は山の上に立っているから、なおのこと。
 ふるり、と思わず肩を震わせると、
「だから言ったじゃないか」
 と先輩は笑った。
「いいかい? まだまだ秋だからと言って、油断していてはいけないよ。私たちは運動するわけでも、何かものを食べるわけではないのだし……それに、山と町とでは環境が違うのだからね」
 背中のナップザックを下ろして、中身を手探りしながらこっちへ寄ってくる。取り出したブランケットを差し出してくれた。
「良かったら、使ってくれ」
「いいんですか? ありがとうございます」
「いいよ、私はこれだけで充分暖かいから」
 ちゃんと防寒対策をしているのに、どうしてわざわざブランケットを持ってきたのか。
「……ありがとうございます」
 僕が気づいたことに、きっと先輩も気づいたはずだ。それでも彼女はとぼけて笑っていた。
「一応、防寒着のつもりだったんですけどね」
 冬用のコートと長ズボン。先輩とそう違うとも思えないけれど。
「インナーを着ていないだろう」
「え、先輩そんなの着てるんですか」
「うん。ほら」
 と、ジャケットのファスナーを開いて胸元を見せようとするので、僕は慌てて飛び退いた。こういうところは本当に無防備で、彼女が意外と着やせすることを僕は知っている。
 遅れて、あっ、と呟き、先輩はそそくさとファスナーを閉じた。
「……見た?」
「見てません。すぐ逃げましたから」
「ごめん」
「……いえ」
 謝られることではないのだけれど。
 先輩は手のひらを額に当てて、俯いてしまった。長い髪が顔を隠して、どんな表情を浮かべているのかはわからない。
 かけるべき言葉を思いつかず、僕はただ隣で静かに星を見上げていた。傍にいてくれるだけで嬉しく思うと、そう言ってくれたことを思い出しながら。
 やがて、先輩は毅然と顔を上げた。頬に垂れた髪を耳にかけて、横目で僕を見る。
「七年に一度の、流星群の夜だ」
 淡い微笑みが瞳に宿る。
「良い夜にしよう」
「……はい」
 その横顔が寂しそうに見えたのは、僕の気のせいではないはずだ。

 先輩と星を見るのは、きっと今夜が最後になる。

 ☆ ☆ ☆

■4月22日

「まっつん、何部入る?」
 唐突に問われて、三秒ほど固まってしまった。
 そう言えば、入部締め切りの期日が今週末までという話だった。
 部活のことなんて考えもしていなかったから、右から左へ聞き流していた。教室で今度こそ孤立しないことにばかり腐心していて、とてもそんな余裕はなかったのだ。
「ちなみに俺は、サッカー部だ! モテるぜ!」
「サッカー? なるほど」
「なんだ、その興味ない反応は!」
「そういうわけじゃないけど」
 実際、なんの興味も持てない。僕は根っからのインドア派だ。どうやら外向的なタイプらしい彼とは、そろそろ話を合わせるのが難しくなってきた。このままではまずい。つまらない奴だ、と思われたら。彼が離れていったら。
 また、独りに――
 ……それは、そんなに悪いことだろうか?
 興味のない漫画を読み、テレビを見て、つまらないことにも笑って相槌を打つ。入学してから三週間もそんなことを続けて、僕はもう疲れきっていた。
 沈んだ思考が、心の底から古い記憶を引っ張り上げる。
 中学時代の担任の声が蘇った。
 ――高校生になったら、何かやりたいことはないのか?
「……天文部」
「あん?」
「そっか、天文部に入ろうと思ったんだ」
 星空にそれほど興味があるわけではない。きっと自分から進んで知識や情報を集めることはないだろう。
 でも、せっかく高校生になるのだから、何か新しいことを始めようと――あの時、そう思ったのだ。
「地味だなー」
 一言で切って捨てられた。やはり彼とは話が合わない。
「……地味かな?」
「ってか、天文部なんてあんのか? 説明会に出てきたっけ?」
「覚えてない」
「まっつんって、けっこうアレだよな」
「アレって何」
「なんつーか……、どんまい!」
「何が?」

 その日の放課後――
 僕は天文部の門戸を叩き、現われた先輩の美しさに度肝を抜かれることになる。

 ☆ ☆ ☆

■11月3日

 いつ置かれたとも知れない錆びついたベンチに、二人並んで腰掛けた。
 町の明かりは木々に隠れて、地上は夜の底に沈んでいるかのようだ。降り注ぐ星の光だけが僕らを照らしていた。
「あれが北極星……ですよね?」
 いつしか、夜空を見上げれば北極星を探すようになっている。北天に一際輝く星を指差すと、先輩は静かに頷いてくれた。
「えーと、北斗七星が……」
 と、視線をさまよわせるのだけれど見つからない。
 初心者が星座を探す時は、北極星を起点にするとわかりやすい――先輩に教わったとおりにしているのだけれど。夏に見たときは簡単に見つけられたのに。
 隣で先輩がくすくすと笑う。
「北斗七星は、春の星座なんだ。この時期に見えるとしたら……、あの辺りかな」
「……先輩、意地悪くないですか?」
 指差した先は、屋上のタイルだ。
 地平線の向こう側。見えるとしたら、昼のことになる。太陽の光に燃やされて、星の明かりは届きはしない。
「笑いすぎです」
「ごめん、ごめん」
 言いながらまだ笑っている。楽しんでもらえるなら、嬉しい。その思いに嘘はないけれど、これはちょっと違うと思うのだ。
「あれ! あれはわかりますよ。えーと……、カシオペヤ座!」
 星座に詳しくない人でも知っている。北極星に程近い、W字の星の並び。
「うん」
「……先輩?」
 笑いの余韻を残しながら、声のトーンが少し変わった気がした。
「うん。……大丈夫だよ」
 何が? と問うより早く、すっ、と先輩がカシオペヤ座を指した。細い指先がゆっくりと右のほうへ滑り、やがてぴたりと止まる。
「この先。五角形と、随伴する二つの星が見えないか? ケフェウス座だよ。――ああ、慌てなくていい。影の薄い人だからね。のんびり探そう。あの星と、あの星と、……そう、わかる?」
 気づけば今しも頬が触れそうな距離に先輩の横顔がある。その無防備さに、抑えようも鳴く胸が騒ぐ。先輩にとってその行動は、指差す先をまっすぐ見られるようにという気遣いでしかないのだけれど。
「カシオペヤは、ケフェウスの妻なんだ。二人の娘がアンドロメダ。――アンドロメダの物語は知ってる? 秋の夜空には、物語の役者がすべて揃っている」
 先輩の落ち着いた声が、動悸に浮かされた僕の意識を星の海へといざなう。
 アンドロメダ座はあそこ、その隣にペルセウス座、ペガスス座、そしてくじら座……。
「ケフェウス王とカシオペヤの娘、アンドロメダは、それはそれは美しい姫君だった。ところが、カシオペヤがあまりに娘の美しさを自慢するものだから、怒ったポセイドンによって化け物クジラの生贄にされてしまう。そこへ現われた、英雄ペルセウス。メデューサを倒し、天馬ペガススに乗って故郷へ戻る途中だった。彼がメデューサの首を突きつけると、化け物クジラは見る見るうちに石になり、海の底へ沈んでしまった。二人は結婚し、幸せに暮らしました。めでたしめでたし」
「…………」
 知らず知らず息を吐いていた。
 それは、騙し絵のもうひとつの側面に気づく感覚に似ているだろうか。
 秋の夜空に、遥か昔の物語が浮かび上がる。
 僕はもう、秋の夜空を見上げるたび、アンドロメダの物語を思い浮かべずにはいられないだろう。いつしか北極星を探していたように。
「……あっ」
 小さく声を上げて、先輩が慌てたように身を引いた。近すぎる距離に、今さら気づいたらしい。
「ごめん」
「……いいんですよ」
 消え入るような声が痛ましい。
 そんなことはない、といくら言っても、先輩には届かないのかもしれなかった。
 千切れるほどに手を伸ばしても、張り裂けるほどに声を上げても、天上の星には届かないように。
 例えば、僕が英雄ペルセウスのように強ければ、先輩を悲しませる何もかもを蹴散らすことができたのだろうか。これから先もずっと二人で並んでいられるような、「めでたしめでたし」があったのだろうか――
「さよなら。もうあわないよ。さよなら」
 その声は、天から降ってきたかのようだった。
 驚いて見つめると、先輩は淡い微笑みを浮かべていた。
「知らないかな? 『よだかの星』。宮沢賢治だよ」
 微笑んでいるのに、なぜだか僕には、今しも泣き出しそうに見えた。
『よだかの星』――。いつ読んだのだったか。あらすじだけは覚えている。
 醜いよだかは誰からも疎まれて住処を追われ、最後には星になってしまう。

 ☆ ☆ ☆

■9月6日

 体育の授業終わり、着替えに手間取っているうちに、チャイムが鳴ってしまった。
「すまん、まっつん。俺は先に行く! さらばだ」
「あ、うん」
 彼がちょっかいをかけてきたせいで遅くなったのだけれど。
 最近わかってきた。あの程度でいちいち腹を立てていては、彼の相手は務まらない。
 静かな廊下を一人駆けていると、向こうから女子生徒が連れ立って歩いてくる。上履きの色から、先輩と同じ学年だとわかった。彼女らは僕の姿を認めると、密やかに含み笑いを交し合う。立ち去る後ろ姿に首を傾げた。なんだったんだろう、どの顔にも見覚えはなかったけれど。
 その場で立ち止まったのは、虫の知らせとしか言いようがない。
 彼女らが出てきたと思しき女子トイレを見つめていると、内側からドアが開いた。
 現われたのは、先輩だった。
 頭から水を被ったかのようにびしょ濡れで、スカートの裾からぽたぽたと雫が垂れる。ふらふらと歩く様子は幽鬼さながらなのに、そうして打ちひしがれている姿さえ凄絶に美しかった。長い睫毛の先で、小さな水滴がきらめいていた。
 中で何が行われていたか、容易に想像がついた。
 かけるべき言葉が見つからないまま、何か言わなければという思いばかりが先走って、あ、と声が漏れた。
 先輩が顔を跳ね上げ、僕を見て青褪める。白皙の美貌が泣きそうに歪んだ。
 呼び止める間もなく駆け出す後ろ姿を、咄嗟に追いかけようとしてから、僕は結局、力なく歩き出す。どうして気づいてあげられなかったんだろうと、自分の愚かしさを責めながら、辿り着いたのは天文部の部室だった。転々と落ちた雫の跡が、ドアの前まで続いていた。
 萎えかける心を奮わせて、どうにかドアをノックする。
 ドアを開けた先輩は、濡れていない制服に着替えていた。部室に隠してあったのだと言う。その周到さが、先輩の置かれた境遇を思い知らせる。頬に張りついた黒髪が痛々しかった。目元がかすかに赤く腫れていた。
 僕の視線に気づいて、先輩は弱々しく微笑む。
「笑ってしまうだろう? 君の前でいくら強がってみせても、本当の私はこんなにも無様だ」
 いじめ、というものなんだろう――先輩は掠れた声で言った。
 その口調は、いじめられていることが恥ずかしくて認められないというより、いじめられていることそのものが信じられないという響きを帯びていた。ここまでされて――スペアの制服を用意しなければならないほど繰り返されて、まだ他人の悪意を実感できないのか。
 それを愚鈍と呼ぶのか、それとも清廉と呼ぶのか、僕には判断がつかなかった。
「こんな私にも、入学してすぐの頃は友達もたくさんいたんだ。クラスメイトも普通に話しかけてくれたし……実は、ラブレターを貰ったこともある。女子からだけどね」
 悲しいほど穏やかに語られる先輩の話を、僕は静かに聞いた。
 誰にも知られたくはないけれど、誰かに話を聞いてほしい。そういう相反する願いを僕は知っている。
「私は離島で生まれたんだ。三國島って、知ってる? いいところだよ。星がすごくきれいに見える。人は少ないけれどね。――子供があまりいないから、小学生も中学生も同じ校舎で勉強していて、そこには同年代の男の子がいなくて……」
 だから、自分の美貌に自覚がないし、異性との距離感もよくわからない。
 そういう態度を、男に媚びている、と誰かが評した。
「やはり、私のほうに問題があるのだと思う。この口調も、何度かおかしいと言われたのに、どうしても帰られない。男子にどういう風に接したらいいのかも、よくわからないんだ。きっと、君にも知らないところで迷惑をかけているんだろう。ごめん」
「そんなはず――」
 喉の奥に熱い塊があって、なかなか言葉が出てこなかった。
「はず、ないじゃないですか……。先輩は、悪くない」
 笑ってしまう。それはあの時、僕自身が何よりも欲していた言葉だ。お前は悪くないのだと、いじめるほうが一方的に悪いのだと、誰かに言ってほしかった。
 霞む視界の中で、先輩がそっと手を伸ばす。冷たい指先が頬に触れた。
「泣かないで」
 言われて初めて気づく。視界が霞むのは泣いていたからだった。
 先輩の指が耳をくすぐって、そっと後頭部に回る。と思うと、恐る恐る引き寄せられた。抵抗することもできず、僕は身を硬くしてされるがままになるしかない。先輩は僕の頭を掻き抱いて、「ありがとう」「ごめん」と何度も繰り返した。
 そうしてずっと長いこと、離してくれなかった。

 ☆ ☆ ☆

■11月3日

 ――よだかの星は、今もまだカシオペヤ座の隣で青白く燃えているという。
「……先輩」
 カシオペヤ座の話をするとき、先輩の様子はおかしかった。
 そんなはずはないと思う。それなのに、不吉な想像は消えてくれない。
 気づけばベンチに置かれた先輩の手を握り締めていて、そのことを恥らう余裕もなかった。
 先輩は微笑んだまま、かすかに首を振る。
「大丈夫だよ」
 そうして、僕の手を引くとそっと頬に寄せた。
「そんな顔をしないでほしい。ひとつだけ確かなことがある。君が傍にいてくれたから、私は最後の一線を越えずにいられる。――ありがとう、私のかわせみ」
 手の甲にやわらかく温かな頬の感触が当たって、けれど今はささやかな欲心も生まれなかった。
「私は逃げることを恥とは思わない。だって仕方がないじゃないか、私たちには鋭い爪も鋭い嘴もないのだから。あんな奴らに、立ち向かってやる義理もない。どこまでだって逃げてやるさ」
「……カシオペヤ座の隣にも?」
「もちろん」
 くすくす、と先輩はかすかに笑い、でも、と儚く囁く。
「でも、悔しいね。とても悔しい。どうして君と離れ離れにならなければならないのだろう。それだけが悔しいよ」
 まばたきの瞬間、先輩の瞳から透明な涙がこぼれ落ちた。半ば魅入られたまま指先で雫を掬うと、途端にぱっと手を放された。
「あっ……」
「わ、わあ! すみません」
 二人して真っ赤になって慌てる。耳の後ろが熱い。似合わないことをしてしまった。
「いや、謝るようなことじゃ……あれ?」
「どうかしましたか?」
「……なんでもない」
 手のひらを額に当てて、あうう、と俯いてしまう。長い髪に隠されてどういう表情を浮かべているのかはわからない。
 悔しい、と先輩は言った。僕と離れ離れになることが悔しいと、そう言ってくれた。
 ずっと、このままなのだろうか。僕らはずっと弱いまま、虐げられることに怯えて、傍にいてほしい人と一緒にいることさえできないのだろうか。
 見上げれば、星空にアンドロメダの物語が浮かぶ。先輩に教わったばかりの星座の連なりを、ゆっくりとなぞる。
 ほんの少し前まで、そこにはただ星の海があるばかりだったのに。
 これは成長だろうか?
 いつか、遍く星々の名をすべて知ることができたなら、その時の僕は先輩の傍に立つことが許されるくらい強くなれているのだろうか。
「あっ!」
 思わず大きな声が出る。
 東の空を、白い光の筋が走った。流れ星だ。生まれて初めて見た。
「先輩――」
 空を見上げたまま、穏やかな声で呼びかける。
「知ってますか? 流れ星が消えるまでに三度願いをかけると、それは叶うんだそうですよ」
「……そうか」
 そんなものは迷信だよ、とは先輩は言わなかった。今の僕らには、きっとそういうささやかな希望が必要だった。
 先輩の淡い微笑みを見つめながら、僕は精一杯笑ってみせる。
「今日は流星群の夜でしょう? きっと願い放題です」
「うん」
 二人並んで、空を見上げた。
「先輩、何をお願いしますか?」
「そうだな。私は――」

 やがて、空一面を埋め尽くすように、いくつもいくつも星が流れた。

 ☆ ☆ ☆

■10月29日

 放課後、僕は天文部の部室にいた。
 運動部の掛け声が遠く聞こえてくる。サッカー部かもしれない。思考の隙間に自然に入りこんでくる姿に、面映く笑う。彼は頑張っているだろうか。モテたい、などという不純な動機のせいで、辛い思いをしていなければいいけれど。
 でも――
 彼ならば、どんな境遇に置かれても笑って切り抜けていくかもしれない。
 彼は強い。羨ましいくらいに。
 すべての音は遠く、部室は静かだ。
 だから、ぱたぱたと駆けてくる上履きの足音が、奇妙なくらいくっきりと耳に届いた。
 ドアが開く。
 先輩は弾んだ呼吸を整えて、静かに微笑んだ。
「終わったよ」
「お疲れ様です」
「やっぱり、転校することになってしまった。けど、私は後悔していない」
「そうですか。……良かった」
 行かないでください。
 そう言うのを堪えるのは、思った以上に難しかった。
 引き止めてはいけない。一緒にいたいという僕のエゴで、先輩が辛い目に遭うなんて許されるはずがない。
「すみません。僕は……何も、できなくて」
 その上、身勝手な願いばかりを抱えている。
 顔を見ていることに耐えきれなくなって俯くと、びっくりするほど大きな声が降ってきた。
「そんなことはない!」
「……先輩?」
「傍にいてくれただけで嬉しかった。ずっと。今も、嬉しく思っているよ。君は何もできなくなんかない。そんなことは絶対にない」
 なんてずるいんだろうと思う。
 僕の言葉はこの人に届かないのに、この人の光は余さず僕に届くのだ。
「ありがとう」
「……いいえ。僕のほうこそ、天文部に入れて良かったです」
 雑多に散らかった狭い部室を、二人して顧みる。先輩がいなくなったら、ここで一人になる。不思議と寂しいとは思わなかった。
「そういえば、天文部らしい活動はあまりできなかったね。――知ってるかな? 来月の三日には、七年周期で極大になる流星群が観測できる。私は前回、島で見たけれど、それはそれは美しかったよ」
 室内を穏やかな目で見回していた先輩が、ふと動きを止める。視線はまっすぐ窓の外――屋上のフェンスに注がれていた。
「実は引っ越しまで時間があるんだ。せっかくだし、一度くらいはきちんと天体観測をしてみないか?」
 そうして、先輩は悪戯っぽく笑った。

 ☆ ☆ ☆

■11月3日

「あっ。――見ました?」
「うん」
「あ、また!」
「うん」
「ほら!」
「うん」
「……あの、先輩」
「なに?」
「見ないんですか、空」
「見てるよ」
 秋の夜空を、数えきれないほどの流れ星が走る。あまり感受性の強くない僕でさえ目を奪われる壮大な光景なのに、先輩はさっきから僕の肩口に顎を乗せることに腐心していた。
「ところで、先輩。さっきから気になっていることがあるんですけど」
「なに?」
「……なんでジャケットの前、開けてるんですか」
「くっついてれば寒くないよ」
「あの、背中に……当たってるんですけど」
「君が寒そうだからね。さっきから震えているじゃないか」
「それは先輩の息が耳にかかるからです」
 くすぐったくてしょうがない。多分、わざとだ。
 その時、ブルーシートの端で寝ていた人影が、「へっぷし!」と盛大なくしゃみをするとともに跳ね起きた。自分の腕を抱いて、ずび、と鼻を啜り、きょろきょろと周囲を見回す。しばらくすると状況を思い出したようで、力強くこっちを指差した。
「うおーい! そこのバカップル! 俺の毛布返せ!」
「……邪魔者が起きてしまった」
「寒ィよちくしょー! 凍死したらどうしてくれるんだ!」
「その時は埋めようと思って、シャベルを持ってきてある」
「聞いたか、まっつん! こんなこと言う女だぞ! 悪女だ、悪女! 別れたほうがいいって、絶対!」
 高校時代からの悪友は、先輩といまいち馬が合わない。
 二人羽織りよろしく巻きつけている毛布は、先輩が寝ていた彼から剥ぎ取ったものだ。本気で止めなかった僕も同罪だけれど、僕はどちらかと問われれば先輩を選ぶので諦めてほしい。埋めろと言われれば埋めよう。
「何に使うのかと思えば……そんな冗談のためにわざわざシャベル持ってきたんですか」
「私はいつでも本気だよ」
 冗談ではないと言っているのか、冗談さえ本気だと言っているのか――。後者だろう。後者のはずだ。
「……毛布は返してあげましょうよ。見てるだけで寒い」
 天体観測に親しみのない彼は、いつかの僕よりも軽装だ。このまま放置すると、冗談ではなく凍死しそうだった。
「これも私が用意したものなのだけれど」
「先輩」
「……毛布がないと、前閉めないと寒い」
「閉めてください」
 そうして毛布を纏って、ようやく人心地着いたのだろう。空を見上げた彼は、大袈裟なほどの歓喜を見せた。
「すげえ! すげえすげえすげえ! うわっ、……うわー」
 興奮した声が少しずつ収まり、いつしか無言で空を見上げるままになる。笑みの形のままぽかんと開かれた口から、時折、ほう、と吐息がこぼれた。
 この時ばかりは先輩も何も言わず、彼に慈愛に満ちた眼差しを注いでいた。
「流れ星が消えるまでに三度願い事を唱えると、それは叶うのだそうだよ」
「え? はあ……。知ってますけど、迷信ですよね」
 そう言うと、先輩は眩しそうに目を細めて僕を見た。
「いいや、叶うんだ。七年前の願いは、今夜叶った」
「今夜ですか?」
「うん」
 先輩は頬に垂れた髪を耳にかけて、夢見るような視線を空に投げかけた。
 思い出す。空を仰げば、屋上から見たあの星空と重なる。アンドロメダの物語を、教わったのはあの夜だった。そして、
 ――ありがとう、私のかわせみ。
 そうだ。僕は、あの時、
「……僕の願いも、叶ったのかもしれません」

 この人の傍にいられるくらい、強くなれますように。

作者コメント

>良い機会なので、私も一週間に一作に再々挑戦(前やったけど駄目だった)してみようと思います。さ、三度目の正直! ……うるせえ二度あることはとか今言うな。泣くぞ。

 って言ってたのが2012年10月10日(水)20時49分だそうです。二度あることはプークスクスあああああやめてくれ(泣)。

 ちゃうねん。

 一応一週間で完成したんですよ。でもその時点では全然面白くない二人称小説でして、掌編の長さでして、こんなもん投稿できるかーい! とほったらかしていたんですよ。で、それをちまちま手直ししてたら一ヶ月経ってました。っていう……。
 もうどうでもええのんじゃー。

 そんな感じです。

2012年11月20日(火)21時19分 公開

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感想

エソラさんの意見 +40点2012年11月20日

 はじめまして。作品、読ませてもらいました。

 友達の紹介でこのサイトの存在を教えてもらい、何本か作品を読んだのですが、やっとぜひ感想を書きたいな、思える程の作品に出会えた気がします。

 よだかの星は1度読んだことがあり、馴染み深さをを感じながら読むことができましたが、よだかと先輩の境遇が重なっていること、そして僕と先輩の距離感が物語に深く絡んでいるストーリーに感銘を受けました。もう一つ、会話文に不自然な言葉を感じることなく、リアルさを感じた所に良さを感じました。
 一つ不満な所があるとすれば、この部分。
 まばたきの瞬間、先輩の瞳から透明な涙がこぼれ落ちた。半ば魅入られたまま指先で雫を掬うと、途端にぱっと手を放された。
 現在進行形で進む小説としてはあまりゆっくりとした描写は避けたいものですが、話の起承転結で言う転を見せるこの場面ではもう少し描写を増やし大事な結を迎えるべきかな、と思いました。

 短編小説の話のまとめ方としても参考にさせてもらいます。ありがとうございました。

-D-さんの意見 +20点2012年11月20日

読ませていただきました。
なんというか驚きました。一週間でできたもの手直ししたら一か月経っていたって、私もそうだったんです。
作品も夜をテーマにしていますし、なんと構成まで似ているという偶然。
こういうことってあるんですねえ笑。というわけで、よろしければ私の作品を片手間にでも読んでもらえたら嬉しいです笑。

よだかの空はすきな作品です。銀河鉄道の夜ばかりが有名ですけど、ほかにもいいお話ありますよね。双子の星なんかもいいな。
寒くなって星がきれい見えるようになると、つい読み返したくなります。

てなわけで、ななななさんとは感性が似ていると勝手に思っているわけですが、その通りなのかドツボにはまるお話でした。
もう指摘らしい指摘も見当たりません。とにかくたまらない話だと思いながら読みましたよ。

一点だけ述べさせてもらうと、先輩が去る理由ですね。
いじめで転校するというのは、いかにも、という気がしました。
いえ、よだかの空的にはそれで正解なのでしょうけど、ちょっと話の雰囲気から浮いてるかなあと。
別の理由のほうがよかったかと思いますと書いて、これ自分のわがままだなと気づきました。流してもらって構いません。

なんかもう今日はこれ読めたから満足しました。いい夢見られそうです。

次回作、待ってます。
お疲れ様でした!

Hiroさんの意見 +20点2012年11月21日

こんばんは、ごぶさたしております。Hiroです。
拝読しましたので、拙いながらも感想を残していこうと思います。

行間でいろいろな想像が膨らむ良い作品でした。
先輩と僕とおまけの彼の物語が、寒暖(イジメと天体観測)をもって書かれているところの上手さには舌をまきました。

若干、サッカー部の彼の存在理由に疑問がわきましたが、「そういうものだ」と言われればなっとくできる程度のものなので、それほど気にすることはないかと思います。

また、最後の場面が「これって七年後でいいんだよな?」と、なかなか確信が持てずもう一読することになりました。
単に私の察しが悪いだけでしょうから、こちらも気にする必要はないかもしれません。

個人的には七年後の先輩の描写も欲しかったように思います。


他、適当に…

>この口調も、何度かおかしいと言われたのに、どうしても帰られない

>校舎は山の上に立っているから
建つ?

>僕は身を硬くして
固く?


いつもながらに偏った生き物の感想ですが何かのお役にたてれば幸いです。
では失礼します。

あっ、点数は20と30で迷ったので、とりあえず低いほうに入れておきます。

ジャクシー大玉さんの意見 +20点2012年11月21日

こんにちは。ジャクシーです。

拝読いたしました。
読みやすいサイズにナイーブな情感がぎゅっと詰まっている。
不要なものをそぎ落として行間からにじませる書き方が見事です。

ラストに至るまでにあったはずの遠距離恋愛をくだくだ書くことをせず、バッサリ切っているのは英断だろうと思います。私にはできない。いや決して皮肉ではなく。

そうすると、

サッカー部の彼は「モテるぜ!」という目的を果たしたのだろうか?
どうして「僕」は先輩に気に入られたのだろう。親交を深めていった過程はは?

などの説明を求めるのは、ないものねだりか。
だから、これは本当に個人的な欲を言えば、ですが、いじめの現場を見てしまった「僕」が先輩を追って、それから「僕」は彼女にどんな言葉をかけようと思ったのか。その辺の葛藤を描いてくれると、もっと良かったと感じました。

他の方のご指摘にあるような多少の不注意はあるものの、慎重に言葉を選んでお書きになり、雰囲気を作る姿勢は多くの読者に好感を持って迎えられるものと思います。

ご活躍を祈ります(でも、まあ、そんなに無理をせずに)。

tanisiさんの意見 +40点2012年11月21日

『何なのだ、これは!どうすればいいのだ?!』
 というのが率直な感想でした。
 テンパるぐらい好きだったということで。

 こんにちは、tanisiです。

 最近は「感想で褒めるのってようは作者様の計算通りだったって話になるだけだから言うだけ無駄じゃん。作者様が得られるものないじゃん。レス困るじゃん」と褒め言葉七割引の誰得セール中だったのですが、クオリティの高さへの嫉妬と純粋な嫌がらせの意を込めてベタ褒めさせていただきます。うざがられても構いません。困ってください。
 
 僕、昔から大好きな漫画をじっくり読むときはセリフの文字を数えながら読む癖がありまして。
 なんでか自分でもよくわからないんですが、癖なんです。
 正直文字を数えてはいなかったんですけど、文章が素晴らしいので気がつけばそれと非常に似た読み方をしていました。
 こういう時の僕は同じ文を三度読みます。読み進めるのがもったいないと感じるのです。いやこの作品に関して言えば途中で話を進めないで欲しいとさえ思いました。
 ちなみにGWの時この読み方をさせていただいた作品には生涯二回目の50点を入れさせていただきましてですね、とどうでもいいですね。
 この作品ももちろん最高点を視野に入れてました。でも最後の章でちょっとあれって感じだったので減点しました。一年に二回も五十点使っちゃいけないだろうというような、自分ルールに自ら縛られたのも多少はありますが。
 まあ、以下、分割して細かく褒めさせていいただきますのでこまごまと困っていただければ――…………ん?

 ……………………こまごまと困っていただければいいと思います!

◆文章
 オサレでした。すごくオサレでした。
 僕は冒頭の文章を読んで素直に『青空文庫 よだかの星』と検索しました。そこには百年近く前の文豪の文章がありまして、感嘆しながら読んだのです。
 ぶっちゃけその文章に感動したので、読後しばらくなななな様の作品のこと忘れてました。少しして思い出しても、今読んだって比較対象が文豪だしなー、みたいなすごく失礼な気持ちで読み始めたわけですけども……。
 まあ、詳しいことは省きますが、僕は真ん中ぐらいですでに感動してました。馬鹿なのかと思われても仕方ないかもしれませんが、すごく文章が綺麗なんですもん。いや、僕は「なななな様にはいつも丁寧な感想をいただいてるから、頑張って指摘して少しでも役に立てていただこう」と健気な(自分で言う)恩返し的な何かを考えながら読み始めたはずなんです。(比較対象文豪の失礼な気持ちと一緒に)
 でも、メモ容姿に刻まれた言葉は「警備員と山の上」だけでした。しばらくして詩的な言葉に酔わされたのでしょうね、指摘を諦めまして。次に僕は知らない言葉をメモしようとしました。ぶっちゃけ浅学なので知らない言葉や読めない漢字がいくつかあったんです。でもそれもしみじみと噛み締めるように読んでいる間にだんだんとどうでもよくなりまして(辞書は引きましたが)、三章(二回目の十一月三日)の終わりぐらいでしょうかこれ以上読み進めたくないと思いました。
 二人があまりに幸せそうなので、これから暗いエピソードが始まることを予感した。というわけではないです。
 浮かび上がった情景と極度の感情移入により「時間が止まればいいのに」と思ってしまったのです。
 ええ、ちょっと恥ずかしいですが、率直な気持ちなので笑わないでくださると信じています。結果止まったのは時間じゃなくてスクロールですが。
 いや、その前に読んだ『よだかの星』との相乗効果もあったかもしれませんが、めっちゃロマンチックでした。

◆構成(※そのまま構成のお話に移ります)
 普通お話の真ん中ぐらいだと読者に何かを求めさせているべきだと思うんですよね。例えば、推理小説だったら謎の答えだし、恋愛小説だったら今後の二人の展開だし。
 今作は恋愛小説なのに、けっこういい雰囲気なんです。ただ別れを予感させているので、それはそれで気になるのですが。
 もし二人が、見てて「爆発すればいいのに」と感じるようなカップルならば、リーダビリティにも成り得たかもしれません。描写がテケトーならば「はいはい、次々」と傍観者の立場で続きを読もうとしたかもしれません。ただ僕はその時確かに『僕』だったのです。主人公と化した僕には次の章題の『9月6日』を見ても「昔のことはもういいじゃん」としか思えず「さよなら。もうあわないよ。さよなら」という言葉を反芻しては「明日なんて来なければいいのにね」(絶対笑わないでください)と目頭を熱くしていたんです。
 はっ……今作者コメを見て気づきました。構成の項に移っているのに何ですが、二人称ウェルカムでしたよ、このお話! というか主人公!

◆キャラ(※そのままキャラのお話に移ります)
 構成で何か言いたいことがあったような気がするのですが、言いそびれたことは最後にまとめればいいやってことで主人公のお話です。
 二人称の最大の弱点はやはり勝手に動いたり考えたりしてしまうので、読者を振り落としてしまいやすい部分だと考えてます。
 ギャルゲの二人称が許されるのはその部分を選択肢でカバーできるから……と、いうことを最近思いだしたのですが、この主人公はサッカー嫌い(?)で過去にはいじめの被害者という個性を持っているのに妙に親近感が湧きます。不思議です。よくわからないのですが、これは恐らくキャラ内面の描写だけでなく、周囲の描写のことごとくが主人公の目線を意識して書かれているという、文章面での技術の賜だと思います。

◆文章(※そのまま(ry
 具体的には三章の初め。『地上は夜の底に』って表現だけで屋上にいることを理解させようとするチャレンジ精神が素晴らしいです。
 ここに関しては、ぶっちゃけると三回ずつ読んでるくせに振り落とされていたダメ読者だったのですが。だって屋上にベンチってイメージなくて……『木々』と『ベンチ』で勝手に公園をイメージしてました。「ああ、屋上降りたんだ、おなか空いたのかな」みたいにフリーダムな想像をしつつ、物語に復帰できたのは十行近く先の『屋上のタイル』でした。あれ、いつの間にかダメ出しっぽくなってる。やった。
 閑話休題。
 また先輩の視線の描写など、一人称なんだから当たり前っちゃ当たり前のことなんですが、その当たり前をハイレベルで実践されているので現実世界の嗜好を吹っ飛ばす感情移入を可能にしているのだと思います。
 ですので、物語の中の『僕』がその後の先輩の姿を見たときはショックでした。

◆キャラ(※もはやリアルタイム感想的な何か)
 先輩のキャラのリアリティのなさが物語にリアリティをもたらすとは思いませんでした。
『こんな子現実にいたら絶対いじめられるよ』みたいな三次元の野暮なツッコミをそのまま伏線にしやがられるとは思わなかったです。嘘ですが泣きました。
 お別れの伏線らしい伏線が見当たらなかったので、なんかよくわからないけど引っ越すんだろうと思ってました。驚かされました。言われてみれば、しっとりした文章の中で、確かに彼女の口調はどこか浮いていましたが、その引っかかりがむしろ美点にさえ見えるのは驚き以外の何物でもないです。
 この設定をするに当たってのデメリットは、彼女のキャラが男友達たくさんの悪く言えばビッチ臭くなってしまう、なんですがその辺もあまり引っかからなかったので良かったです。まあ、ただストーリーの中で触れていないだけなのですが、触れていたら個人的に大問題だったので。と言ってもなななな様に限ってそんな地雷踏みませんよね。
 
◆最後の章(※もう適当です)
 なんだか完成されていた空気を崩しにかかっているような感じがしました。
 突然緩い空気になるのも、軽いミスリードが入るのも、ほのぼのハッピーエンドになるのも全部計算だと思うのですが。
 最後数行の文章は綺麗で締めにふさわしいと思います。しかし、そこまでの会話でそれまでの緊張感がなくなったのでそれほど効果なかったです。
 ハッピーエンドは素晴らしいですし、この作品の構成に文句をつけるつもりもないです。ただ、もしなななな様に感動系のバッドエンド書かれたら手元のキーボードが涙で漏電するかもしれません。
 コメディやギャグも素晴らしいですが、今作を読んで次回も同じような綺麗なお話が読みたいと強く感じました。
 豊富な語彙を使ったオサレな表現が好きなんだと思います。
 笑いってやっぱりギャラリー視点で見てても楽しいと思うんです。なんだか、話の中に引き込める、読者を浸らせる文章が書けるのにそれをしないのはもったいなく感じました。
 もちろんコメディ全否定ってわけじゃないです。『告白』なんて両立させてましたし。
 
 何が言いたかったのか自分でもよくわからないですが、疲れてきたのでそろそろ終わりにします(コラ
 とにかく楽しめたとかいうより、なんでしょうね、驚きました? 浸りました? 
 文章に感動してキャラ設定に驚いて構成でほのぼの読み終えた感じでしょうか。そのままの順番で感情が動いたので、逆だったらもっと良い読後だったかもです。
 アバウトですいません。そもそも引っかかったような部分っていうのが『懸賞ででかいテレビが当たった。テレビ自体は素晴らしいが、置いてみたらなんか部屋が狭く感じるようになった』みたいな。それは仕方ないんじゃないかというような部分なので、碌な指摘ができません。テレビ捨てれば解決するって話でもありません。

『最高でした』-『山の上の学校って警備そんな厳しいのかな』=『すごく良かったです』

 ということで点数に変えさせていただきます。
 一週間後の新作も楽しみにしてますね! ジャンル問わずすごく楽しみにしてますね! 
では、駄文失礼しました。

インド洋さんの意見 +30点2012年11月21日

 なななな様、こんばんわ。
 インド洋でございます。
 拝読させていただきましたので、以下にて感想を残させていただきますね。


 本当に指摘できる点がないぐらい上手いですね……。
 主軸となる1シーンと過去を交互にしていく構成でしたが、最後にワントラップ入れた上でハッピーエンドへ一気にひっくり返す。構成だけ見ればそれほど複雑なことではないのだと思うのですが、雰囲気に呑みこまれてめちゃくちゃ簡単に騙されてしまいました。やっぱりアイデア以上に文章を描く上手さがないとこれはできないだろうなと感じます。


 指摘できる点がないので書くことがなくて困るのですが、強いていえば、ラストの>■11月3日の冒頭部分、友人の登場シーンなんですけども、落差のインパクトが強すぎる上、会話の流れも早いので、ちょっと思考停止に追いこまれたような印象もありました。
 ここは、もう少し地の文を差しこんでくれればやんわりと仕組みに気づけたように個人的には思います。

 評価は、これが掌編サイズだったら迷わず30点以上にしていたと思うのですが、短編の自由度を考えると、20と30のあいだでちょっと迷いました。でも、ちょうどシーズンだってこともあるので最終的にはこっちでファイナルアンサーです。


 短い感想で申し訳ないですが、以上です。
 今後とも執筆活動のほう、ぜひともがんばってくださいませ。

 ではでは~

いりえミトさんの意見 +20点2012年11月22日

 拝読しました。また忘れられてる気がするいりえミトという者です。


 いやー、相変わらず文章と描写がうまいです。
 シンプルで短めなセンテンスがつづく文体なのですが、文章のそぎ落とし方が非常にうまく、研ぎ澄まされたような美しさのある文章でした。
 その端麗な文章で登場人物たちのセンチメンタルを上手く描写しており、ぐっとくる作品でありました。
 『挨拶のない風景』を読んで以来、ななななさんは私が目標とする投稿者さんの一人だったのですが、一生敵わないことを今作で確信しました、ええ。
 こういった内容はななななさんの新境地のような気がしました。いや私が知らないだけかもしれませんが、コメディとミステリのイメージしかなかったもので。

 ただ、私はラストがあっさり加減に感じたんですよね。それはどうも私がバカだったせいみたいなのですが、その理由を以下にあげます。

1・ラストシーンの時系列について

 最後の11月3日は7年後のことなんですよね?
 いや、私はHiroさんの感想を読むまで気づきませんでした。 
 なんでサッカー部の友人がいるんだ?とは思いましたが、読み返してみると「高校時代からの悪友」と書かれていますね。そこを読み落としていたようです。

2・『よだかの星』について

 恥ずかしながら『よだかの星』を読んだことがありません。というか宮沢賢治自体読んだことがないんですけど。
 冒頭の注意文を読んでも、「ネタばれ?宮沢賢治なんてどうせ一生読まないから別にいいや」と思ってそのまま読み始めたのです。どうやら青空文庫というのはネット上で読める物だったみたいなのですが。(それも知らなかった)
 まあこうして自分のダメ人間っぷりと教養の無さをバラしても仕方ないですが、ともかく、作中の先輩とよだかがリンクしているみたいなのですが、そのあたりがいまいち掴めませんでした。
 「かわせみ」というのも「よだかの星」関連ですよね。最初に読んだときはそれの意味もわかりませんでした。
 ネタばれといってもそんなに多くないですし、どうせならもつちょっと細かく「よだかの星」の説明を入れてしまってもよかったと思うのですが。それで「ネタばれするなゴラァ」と怒る人はあんまりいないと思いますし。たぶん。


 というわけで私はどうもこの作品の本当に深いところまでは楽しまなかったみたいです。なので点数はこのようになっています。
 感想としては役に立たないものになってしましましたが、読解力や教養のない人間の一意見と捉えていただければと思います。


 感想は以上です。
 それでは失礼します。

一文字バサラ・バーニングさんの意見 +30点2012年11月22日

 はじめまして、一文字バサラ・バーニングと申します。
 ラ研の新入りなので至らない点ばかりだと思いますが、気合いと根性で何とかよろしくお願いします!(こんな紹介ですが体育会系じゃありません!!) 『よだかの星』は懐かしいですね。自分、とりあえず自称高校生なんですが、大学生の頃にちくま文庫だったかの全集で読んでやけに印象に残った作品でした。それはさておき、新入りなりに考えたことを指摘させてください――


『よだかの星』というショートショートの悲劇性、それに「先輩と星を見るのは、きっと今夜が最後になる」という冒頭から過去へと回想が飛ぶ構成の妙といった二つの仕掛けがあって、一気に作品に没入できました。構成上、上手い演出だなと思います。

 ただ、その構成についてなのですが、一つだけ、やや曖昧に感じた部分がありました。ラストシーンは社会人になったまっつんと親友と先輩の三人が天体観測に来ていたシーンで、冒頭のもの(=高校時代)とは違うというわけで、そうなると上記の「今夜が最後になる」というのが、単純に「(高校生活では)今夜が最後になる」となってしまい、読み返すと、物語の引きとして弱く感じられてしまいます。そこらへんは、言い方が悪くて申し訳ないのですが、何だか冒頭詐欺のように感じられました(何だそれ)。

 またもう一つだけ残念だったのが、作者さんが意識的にやっているのかどうかは分かりかねますが、先輩を描写する際に「美」という言葉を多用していたこと。あと、先輩を描写する際に黒髪と瞳のみが何度も強調されたいたことでしょうか。嫌らしい言い方をすると、途中から、まっつんは先輩のそこらへんしか見ていないんじゃないかなと気になりました。まあ、「僕」による一人称ですから、まっつんが髪と瞳(睫毛)フェチなら仕方がありませんが……

 さて、悪い方を強調したので良い方も。構成の妙は高評価したい点です。また『よだかの星』と同様、先輩をよだかに例えて、いじめ、遠く離れていく存在といったダブルミーニングをしていたのもとても良かったです。惜しむらくは、美しい先輩ではなく、よだかのように醜くても、まっつんにだけその魅力が伝わるような人だったらなあとは思いましたが、まあ、それはきっと自分の趣味でしょうか。あと、親友の存在も効いていました。この短さを選んだ理由は分かりかねますが、もう少し親友とのエピソード(まっつんと親友、先輩と親友)があればベストだったと思いますが、それもまた自分の趣(ry


 評点は30点となります。冒頭の引きについて自分の中で若干釈然としない部分もあったので、20点かどうかで悩みましたし、個人的にはいちゃラブ小説は嫌いなジャンルではあるのですが、久々にクッパさん以降、ラ研で良いいちゃいちゃを見たなあと心洗われた気持ちです。ありがとうございました。
 そうそう、自分、ラ研ではここ数年ほどまともなHNやPNを使って現れておらず、ななななさんからは企画等でたくさん感想をもらっているのに、ろくに挨拶もお返しもできていませんでしたが、本来のHNはmayaと申します。これからも機会がありましたらよろしくお願いします。以上、拙い感想ですが、参考になりましたら幸いです。

一文字バサラ・バーニングさんの意見 +20点2012年11月23日

こんばんは。
自分が感想を書かなくて、誰が書く……とやってきました。はい、九人目です。
いつも、大変お世話になっております。作品拝読させていただきましたので、感想を書かせて頂きます。

と、そういえば、これだけは最初に言って置かなければいけないと思いまして……。週一、どんまいです。
自分もダウンしました。また一からやりなおせばいいさぁ!です。


《ストーリー》

過去と現在が交互に入れ替わって話が進んで行きましたね。日付をつけてあるなど、工夫があって特に混乱することもなく、読み進めることができました。
 ストーリーとしては……っていうか、ストーリー自体があまりないですよね。別れなければいけなくなった主人公とヒロイン=先輩が流れ星に願をかける、という感じだったと思います。

星座や流星などを使って、とても雰囲気の良い話になっていたなぁ、と思います。
ただ、これはほんとうに自分が言うのもおかしな話なのですが、かなり「雰囲気」だけの話だったなぁ、と。
とても心地よいのですが、逆に、なぜだが自分は冷めてしまいました。
うーん、なぜなんでしょう。言うなれば、すごく雰囲気のいい、素敵なカップルには近づけない、みたいなそんな感じでした。
なんとなくですが、ちょっといきなりロマンチックすぎるのではないかと思います。冒頭からすでに、クライマックスレベルの雰囲気がどっと押し寄せてくるので、そこにのめり込めるかどうかでかなり勝負が決まってしまいそうです。
自分はこういった話はモロ好みのはずなのですが……どうしてなんでしょう。自分でもわかりません。今が夜だからかもしれません。きっとそうです。

あと、これは意図的に省かれたのかもしれませんが(読み落としているかもしれません)、主人公と先輩の天文部での活動については書かれていませんよね。
これが個人的にはちょっと物足りなく感じました。
「美しさに度肝を抜かれた」あとには、すぐに、先輩がいじめられている場面に遭遇することになっているんですよね。これだけでも十分といえば十分なのですが、自分的には天文部での活動もちょっとは入れて欲しかったように思います。
先輩が教えてくれた星座は、全部覚えてますよ的なことがあれば、よりロマンチックになると思うんですよね。たったいまロマンチック過ぎると言ったところなのですが。

先輩がいじめられている、という過去があきらかになっていくわけで、「現在」の描写でもそういったことが匂わされていくわけなのですが、どうしても冒頭からロマンチックなので、結局こいつら最後には幸せになるんだろうな……という予感があるんですよね。
それが、一つ入り込めなかった原因の一つかもしれません。ちょっとあざとさをそこに感じてしまった、と言いますか。いやぁ、なに偉そうなこと言ってんでしょうね、自分。すみません。スルー推奨です。

上に色々と書きましたが、逆に御作の魅力とは、やっぱりそのロマンチックさだと思います。
前述のとおり、星座と流れ星という小道具と、綺麗な情景描写が絡みあって、とても良いモノになっていると思いました。

ただ、前半に豊かなストーリーがあった上で、最後にこれを持って来れば、なお生きただろうな……と思ってしまいます。
独立した作品としてみると、ちょっと惜しいような気がしました。まぁ、これが惜しいのであれば、自分のやつは残念なものでしかないのですけれども。

そういえば、「ひときわ煌く星」=「北極星」という描写があったようなきがするのですが、北極星ってそんなに明るかったでしたっけ?
「北天において」という意味なのかもしれませんが、ちょっとだけ引っかかったのです。自分の中では、北極星は、地味だけどなぜかいつでも見える星、というイメージが定着しています。


《文章/キャラクター》

御作においては、この項目はあまり必要ないのかな……と思い始めました。
ええと、文章については、自分が指摘できるようなことは、ないと思います。

ただ、一つだけ誤字を見つけましたので、ご報告を。

>この口調も、何度かおかしいと言われたのに、どうしても帰られない。

【帰られない】➔【変えられない】ですね。


キャラについては……ううん、なぜかあまり印象に残っていないんですよね。あまりにもすっと読み終わってしまって、覚えていないといいますか……。
でも、雰囲気には合っていると思います。

本当にコメントが思いつかないので、うっちゃっていきます……。


《総括》

凄く良い作品のような気がするのですが、さらっと読み終わってしまって、雰囲気だけ堪能した感じでした。
それでも十分といえるほどのクオリティはあると思いますが、やはりそこにストーリー性がほしいな、と思ってしまいます。このままでも良い作品だけれども、もっと良い配置の仕方があったのではないか、といった感じでした。

偉そうなことを言ってすみません。


そういえば、御作を読んでいて、自分の悲しい過去を思い出しました。

実は自分もかなり星に興味があるので夜な夜な星を眺めては、一人神話などを思い返していたのです。そしていつだったか、クラスの女子たちの星を見る機会がありました。これは出番だ! とそう思いました。
そこで、言うじゃないですか、女子が「あれって北斗七星……?」とか。そこで出ていって説明したところから、一気に冬の星座とその伝説とかについて説明したんです。とてもいい雰囲気だったと自分では思います。
そしてそれが終わったあと、女子が言った一言。
「空ばっかり見ずに、足元見たら? だからモテないんだよ」。
そうですか。天文系男子ってそんなに地味ですか。そのあとしばらくしてから彼女の言った「あ、冗談だよ~」という言葉は自分の耳には届きませんでした。

凄く悲しくなって来ましたので、ここらで失礼します。
とても参考にならないものになってしまいまい、申し訳ありません。

それでは、これからもお互いに頑張って行きましょう!


――――――――追記――――――――――ー

感想を投稿してから、ほかの方の感想とレスを読みました。
なるほどです。
自分が物足りないと感じた部分は、全部推敲でそぎ落とされた部分だったのですね。書く前に何となくでごまかそうとしてしまう自分と比べると圧倒的な差をそこに感じるのですが、それは置いておいて、おそらく、これは自分に行間を読み取る感性がなかった、ということなのだと思います。

それを踏まえて、なのですが。

御作の弱点の一つは、かなり「さらっと読めてしまう」ということなのではないかと思います。それだけに、自分のような雑な人間は、どうしても行間を感じる前に、さっさと読み終わってしまうのかもしれません。
何かしら、このロマンちっくな世界に読者を引きずり込むような(←半端無く抽象的ですが)ものがあれば、個人的にはよりのめり込めたような気がします。

あくまで難癖つけようとしている感じになってしまいました……。
すみません。
それでは、これにて失礼致します。

grass horseさんの意見 +20点2012年11月23日

こんばんは。
自分が感想を書かなくて、誰が書く……とやってきました。はい、九人目です。
いつも、大変お世話になっております。作品拝読させていただきましたので、感想を書かせて頂きます。

と、そういえば、これだけは最初に言って置かなければいけないと思いまして……。週一、どんまいです。
自分もダウンしました。また一からやりなおせばいいさぁ!です。


《ストーリー》

過去と現在が交互に入れ替わって話が進んで行きましたね。日付をつけてあるなど、工夫があって特に混乱することもなく、読み進めることができました。
 ストーリーとしては……っていうか、ストーリー自体があまりないですよね。別れなければいけなくなった主人公とヒロイン=先輩が流れ星に願をかける、という感じだったと思います。

星座や流星などを使って、とても雰囲気の良い話になっていたなぁ、と思います。
ただ、これはほんとうに自分が言うのもおかしな話なのですが、かなり「雰囲気」だけの話だったなぁ、と。
とても心地よいのですが、逆に、なぜだが自分は冷めてしまいました。
うーん、なぜなんでしょう。言うなれば、すごく雰囲気のいい、素敵なカップルには近づけない、みたいなそんな感じでした。
なんとなくですが、ちょっといきなりロマンチックすぎるのではないかと思います。冒頭からすでに、クライマックスレベルの雰囲気がどっと押し寄せてくるので、そこにのめり込めるかどうかでかなり勝負が決まってしまいそうです。
自分はこういった話はモロ好みのはずなのですが……どうしてなんでしょう。自分でもわかりません。今が夜だからかもしれません。きっとそうです。

あと、これは意図的に省かれたのかもしれませんが(読み落としているかもしれません)、主人公と先輩の天文部での活動については書かれていませんよね。
これが個人的にはちょっと物足りなく感じました。
「美しさに度肝を抜かれた」あとには、すぐに、先輩がいじめられている場面に遭遇することになっているんですよね。これだけでも十分といえば十分なのですが、自分的には天文部での活動もちょっとは入れて欲しかったように思います。
先輩が教えてくれた星座は、全部覚えてますよ的なことがあれば、よりロマンチックになると思うんですよね。たったいまロマンチック過ぎると言ったところなのですが。

先輩がいじめられている、という過去があきらかになっていくわけで、「現在」の描写でもそういったことが匂わされていくわけなのですが、どうしても冒頭からロマンチックなので、結局こいつら最後には幸せになるんだろうな……という予感があるんですよね。
それが、一つ入り込めなかった原因の一つかもしれません。ちょっとあざとさをそこに感じてしまった、と言いますか。いやぁ、なに偉そうなこと言ってんでしょうね、自分。すみません。スルー推奨です。

上に色々と書きましたが、逆に御作の魅力とは、やっぱりそのロマンチックさだと思います。
前述のとおり、星座と流れ星という小道具と、綺麗な情景描写が絡みあって、とても良いモノになっていると思いました。

ただ、前半に豊かなストーリーがあった上で、最後にこれを持って来れば、なお生きただろうな……と思ってしまいます。
独立した作品としてみると、ちょっと惜しいような気がしました。まぁ、これが惜しいのであれば、自分のやつは残念なものでしかないのですけれども。

そういえば、「ひときわ煌く星」=「北極星」という描写があったようなきがするのですが、北極星ってそんなに明るかったでしたっけ?
「北天において」という意味なのかもしれませんが、ちょっとだけ引っかかったのです。自分の中では、北極星は、地味だけどなぜかいつでも見える星、というイメージが定着しています。


《文章/キャラクター》

御作においては、この項目はあまり必要ないのかな……と思い始めました。
ええと、文章については、自分が指摘できるようなことは、ないと思います。

ただ、一つだけ誤字を見つけましたので、ご報告を。

>この口調も、何度かおかしいと言われたのに、どうしても帰られない。

【帰られない】➔【変えられない】ですね。


キャラについては……ううん、なぜかあまり印象に残っていないんですよね。あまりにもすっと読み終わってしまって、覚えていないといいますか……。
でも、雰囲気には合っていると思います。

本当にコメントが思いつかないので、うっちゃっていきます……。


《総括》

凄く良い作品のような気がするのですが、さらっと読み終わってしまって、雰囲気だけ堪能した感じでした。
それでも十分といえるほどのクオリティはあると思いますが、やはりそこにストーリー性がほしいな、と思ってしまいます。このままでも良い作品だけれども、もっと良い配置の仕方があったのではないか、といった感じでした。

偉そうなことを言ってすみません。


そういえば、御作を読んでいて、自分の悲しい過去を思い出しました。

実は自分もかなり星に興味があるので夜な夜な星を眺めては、一人神話などを思い返していたのです。そしていつだったか、クラスの女子たちの星を見る機会がありました。これは出番だ! とそう思いました。
そこで、言うじゃないですか、女子が「あれって北斗七星……?」とか。そこで出ていって説明したところから、一気に冬の星座とその伝説とかについて説明したんです。とてもいい雰囲気だったと自分では思います。
そしてそれが終わったあと、女子が言った一言。
「空ばっかり見ずに、足元見たら? だからモテないんだよ」。
そうですか。天文系男子ってそんなに地味ですか。そのあとしばらくしてから彼女の言った「あ、冗談だよ~」という言葉は自分の耳には届きませんでした。

凄く悲しくなって来ましたので、ここらで失礼します。
とても参考にならないものになってしまいまい、申し訳ありません。

それでは、これからもお互いに頑張って行きましょう!


――――――――追記――――――――――ー

感想を投稿してから、ほかの方の感想とレスを読みました。
なるほどです。
自分が物足りないと感じた部分は、全部推敲でそぎ落とされた部分だったのですね。書く前に何となくでごまかそうとしてしまう自分と比べると圧倒的な差をそこに感じるのですが、それは置いておいて、おそらく、これは自分に行間を読み取る感性がなかった、ということなのだと思います。

それを踏まえて、なのですが。

御作の弱点の一つは、かなり「さらっと読めてしまう」ということなのではないかと思います。それだけに、自分のような雑な人間は、どうしても行間を感じる前に、さっさと読み終わってしまうのかもしれません。
何かしら、このロマンちっくな世界に読者を引きずり込むような(←半端無く抽象的ですが)ものがあれば、個人的にはよりのめり込めたような気がします。

あくまで難癖つけようとしている感じになってしまいました……。
すみません。
それでは、これにて失礼致します。

いさおMk2さんの意見 +30点2012年11月23日

 こんにちは。いさおMk2と申します。先日は拙作にご感想を頂き、ありがとうございました。御作を拝読致しましたので、拙いながらも感想など書かせて頂きます。


 ええと、まあぶっちゃけますと浅学な小生、『よだかの星』なる短編は未読だったのですが。
(アンドロメダの話はなぜか知ってました。ギリシャ神話の神様って割とキ○ ●イばっかですよね)
 しかしそれでも物語には十分に引き込まれました。既読だったら涙腺崩壊モノなのかも知れません。
 あ、でも心の汚れた小生、冒頭の

>※作中に著:宮沢賢治『よだかの星』のネタバレを含みます(本編を読む前に青空文庫辺りで読んできたらいいと思います)。

 の一文は蛇足に感じました。なんか「お前ら予習して来いよ」て言われているみたいでw 
きっと作者様にそんな意図は微塵も無いのでしょうけれど。
 それと、御作のクオリティは、かの作品を知らなくても充分に満足できる上に「いっちょそれ読んでみるか」と思わせる事のできるレベルにあると思います。


 文章について。
 まっつんの軽妙な語り口で綴られる物語は読んでいて既に心地良く、地力の高さを感じさせます。ここの点において小生ごときが指摘できる事など微塵もありません。むしろ参考にさせて頂きます。


 物語について。
 この枚数で、よくもまあこれだけ話にメリハリを付ける事ができるものだと舌を巻きました。
 先輩の、陰影の付け方がとても上手だったと感じます。苛めという重たい素材を使いながらも話が陰鬱にならない所も良かったですね。
 ただ、時系列がバラバラなので読んでいて少し戸惑いました。特にラスト。


 登場人物。
 まっつん、いいですね。何の特徴も無い所が、実にいい。いやマジで。
 彼が内向的で、なんの変哲もない少年だからこそ、

>ずっと、このままなのだろうか。僕らはずっと弱いまま、虐げられることに怯えて、傍にいてほしい人と一緒にいることさえできないのだろうか。

 こういった苦悩が映えます。
 等身大の若者が上手に描けていたと感じます。

 先輩は、概ね良いキャラだったとは思うのですが、口調とか少し作り過ぎかなと感じます。もう少し地味っ子の方が苛めのリアル感も出そうだし(それはそれで重くなり過ぎる恐れもありますが)、何より小生の好みです。黒髪ロング眼鏡の地味っ子。

 友達。要所要所でちょろっと出てきて、場を締める。刺身のワサビみたいな役割でしょうかね。とても良いキャラでした。


 総評的ななにか。
 とにかく、御作の持つ雰囲気が大好きです。
 正直ストーリー的には新しいものは無いとも思うのですが、御作の雰囲気と、構成の妙にはヤられました。完敗です。何の勝負か知らんけど。
 とにかく、良い時間を過ごさせて頂きました。ごちそうさまです。


 乱文、ご容赦を。
 次回作にも期待致します。

チガイさんの意見 +20点2012年11月23日

 恐縮です。なななな先生、こんばんは。チガイと申します。その節はお世話になりました。
 先生の御作を拝読いたしましたので感想を書かせていただきます。
 また、物書き始めたばかりの小生の言う事ですので、不勉強な点も多々あると思います。
 作者先生の方で取捨選択の程、よろしくお願いいたします。

※以下、ネタバレ注意
※一読者として
 「おおっ。イイハナシ……でも、なんか引っかかるような」というのが第一印象でした。

※構成
 鍵になる11月3日と過去を交互に出し、最後の11月3日は七年後という構成の妙。かなり考えられた作りだと思います。

※文章
 一人称、主人公視点で語られる文章は、見習いたいです。誤字はすでに指摘されている他には見つけられませんでした。引っかかる事も無く最後まで一気に読めてしまうのも、文章が上手だからだと思います。

※設定
 「よだかの星」・「アンドロメダの神話」が本歌取りされて、登場人物の苦悩とかに深みを与えていると思います。

※人物
 男言葉で話す先輩は、しっかりキャラ立ちしていました。過去にいじめに会った経験がある以外、これと言う特徴の無い主人公も、感情移入がしやすい良キャラクターだったと思います。

※内容
 時系列順に並べなおして、ストーリーを追ってみました。
 ・天文部で美しい先輩に会う主人公。
 ・先輩がいじめに会う場面に遭遇。
 ・過去に受けた自分へのいじめを思い出す主人公。
 ・転校が決まる先輩。最後の天文部活動をする。
 ・流星群の夜。流れ星に願う先輩。
  (七年後)
 ・再び流星群の夜。星空を見上げる二人。願いは叶った。

 こうしてストーリーだけ追うと、起承転結のうち、転の部分が省略されています。あえて、先輩のいじめの詳細と、七年の間にあった苦労が省筆されており、読者に想像させるというのも高度なテクニックだと思います。

※総括
 少々気になった点というか、小生側の問題なんですけど。
 ・主人公と先輩が、アクセルワールドの黒雪姫とハルユキくんの姿がチラついてしまいました。
 ・幸せな結の場面で安心してしまうのですが、転のパートの内容が知りたかったです。主人公が七年の間に、どうがんばったのか。どうやって逆境を振り払ったのか……
 とは言え、二十五枚の短編にそれを求めるのは酷な気もしますし、読者の想像にまかせると言う利点と背中合わせな欠点な気もします。
 すみません。揚げ足取りっぽいです。
 (というか、諸先生が感想でベタ褒めしている中、盛大に出遅れといて、こんな事を書くのは気が引けます)
 上記指摘、無視でお願いします。無かった事に。

 高度なテクニックが用いられた、コンパクトで、綺麗な作品だと思いました。
 以上です。今後とも先生の執筆が順調でありますよう祈念いたします。執筆お疲れ様でした。

tanisiさんの意見 +40点2012年11月23日

 こんにちは、追記失礼します。

>ってか私はtanisiさんにプロットの作り方仕込みたくてしょーがないんですけど。

 これって真に受けていいんでしょうかw
 僕なんかに時間を割いていただくのは超申し訳ないのですが、例え一言二言でもなななな様に指南していただけるのであれば超超嬉しいので、ずーずーしくお願いさせていただきます。
 一応アドレス置いときますが、レスでちょこちょこっと書いていただくだけでももちろん構いませんし、新作や他の方へのレスで時間が取れないようならば、放置して忘れていただいて構いません。

 ちょうどこれからは長編に専念しようとしていたところでして「これからはなななな様のアドバイスもいただけないなー」とか「プロット作りたいけどうまくいかない」とか困っていたところでして、なんていうかすごくありがたいお話です。
 あ、と言っても「長編できました!読んでください!」とか「プロット添削してください!」みたいな厚かましいお願いをするつもりはないのでご心配なくです!
 
 なんかこう、小説談義の一端でもなんでもいいのでお話をいただければありがたく思います。
 
 冗談だったら適当に流してくださいね。
 駄文失礼しました。
 あ、今後短編は書かないつもりですが、感想は一方的に書かせていただきたいので今後ともよろしくお願いします。 

タカテンさんの意見 +30点2012年11月23日

いつもご丁寧な感想をありがとうございます。タカテンです。
拝読いたしましたので、感想を送らせていただきます。

まず、個人的には冒頭で少し「あれ?」と感じたところがありましたのでお伝えしておきます。

>引き戸を開けると、満天の星が広がっていた。
「わあ……」
 思わず声を漏らす僕の脇を、先輩が軽やかに駆けていく。くすくす、とこぼれた笑い声が耳朶をくすぐる。
 屋上の中央まで行くと、くるりとターン。夜風に長い黒髪を遊ばせて、こっちを振り返った。
「ご覧よ、この空! 素晴らしい眺めだ!」
 いつにないはしゃぎようだ。喜んでもらえたなら、僕だって嬉しい。

冒頭のこのシーン、最初の「わぁ……」で主人公が満天の星空に感嘆しているのが分かり、主人公の予想以上のものであったと想像が出来ます。つまり、主人公がそこへ招いたのではなく、招かれたと感じたのです。
でも、その後、先輩のはしゃぎぶりに喜んでもらえたとある所に「ん?」と違和感がありました。
「喜んでもらえた」という表現は、どちらかと言えば招く側の感情だと思うのですよ。
後に流星群の観測には先輩から誘っていますし、ここは「いつにないはしゃぎぶりに僕もつい顔が綻ぶ」ぐらいでいいように思います(逆に先輩を元気付ける為に主人公が誘った側だったら、今のままでいいようにも思えます)

はい、なんかいきなりケチをつけて申し訳ありません。
まぁ、でも、3日ほど仕事中に考えたのですが、結局これぐらいしか指摘出来そうな所はありませんでした。
ええ、なんかえらくお高い肉を高級ステーキ店で食べたような感じです。
もう余分な所なんてなくて、一番美味しいところだけを贅沢に切り取られて皿に盛り付けされたような。
もうちょっと脂身(エピソード)あってもええんとちゃう?とか思わなくもないのですが、そうしちゃうと途端に味(読書感)が変わっちゃいそうな、完成された作品だと思います。

読了後に物語の続きを想像したくなる作品は珍しくありませんが、物語の核となってもおかしくない部分(空白の七年間)を想像したくなる作品を自分はあまり知りません(明らかに手抜きで想像するのも馬鹿らしくなるものならありますけど)。
こういう方法もあるのかと非常に勉強になりました。
ありがとうございました。
んでは。  

れんじさんの意見 +30点2012年11月24日

はじめまして。れんじと申します。
ライトノベル研究所で感想を書くのは初めてで緊張しております。

読みやすく想像しやすく心に入ってくる文章に好感を持ちました。文章の一つ一つに繊細さを感じ、どれほどの推敲をしたのかが気になりました。一文一文がすごく綺麗でした。

構成なんですが、時系列が入れ替わっているのに読みやすいので、おもしろかったし、勉強になりました。プロット段階から完成までの流れを知りたくなりましたw
最後の部分、七年後の所はちょっと分かりづらかったかなと思います。
『高校時代からの悪友』でおかしいなと思い、もう一度読み直して気づきました。

疑問に思ったところだと、ラストでどうして先輩はジャケットの前を開けていたんでしょうか?
私の読解力だとどうしても分かりませんでした。もしよければ教えてください。

それと最初の「引き戸を開けた」という所なんですが、屋上の扉って引き戸より開き戸のほうが多くないですか? 
引き戸と最初に書いていたので、どこの話だろうと思っていると満点の星空とすぐに出てきて、庭に出たのかな? と思いました。
マンションとかだと開き戸が多いですよね。この作品では学校の屋上なのかな。学校だと引き戸も多いかもですよね。

キャラクターはみんな魅力的でした。サッカー部の友人は主人公の性格を浮き上がらせるためだけに出てきているのかと思ったら、主人公が成長した七年後も友人として続いているんですねw いい奴だったんだと思い、ほっとしましたw
先輩のどこか浮世離れした雰囲気の理由も作中できちんと説得力のある説明がなされていたし、そんな先輩のつらそうな日々や嬉しそうな会話などに一喜一憂してしまいましたw

感想のまとめに入りますが……。
星座の話を入れたり、よだかの星という話を関わらせたりしているのに、説明的な様子はなく、完成度が高いと思いました。
とても面白い作品を読ませてもらいました。ありがとうございました。

以上です。
初めての感想だったので、失礼なところがあればすみません。
それでは。

西宮竹時さんの意見 +20点2012年11月25日

文章が憎たらしいほど綺麗で、そして羨ましいです。内容もわかりやすく、恋愛物嫌いな僕の心がいつもと同じ反応をしたので、恋愛物としては完成されいたのでしょう。これからも頑張ってください。

03さんの意見 +20点2012年11月25日

拝読いたしました。
先日は拙作に感想ありがとうございました。03と申します。

【良かった点】
・文章が上手い
・主人公と先輩のやりとりがほほえましい
・雰囲気がふつくしい

【悪かった点】
・話がありきたり

【総評】
まず最初に感じたのが「文章Umeee!」でした。過不足ない描写。止まらずに読了できるリーダビリティ。秋の寒空を思い描きやすい表現。まさに私の理想とする文章でした。お世辞抜きで「You、こんな所で遊んでないでさっさと本出しちゃいなよ」と思いました。本気で。
ただですね、文章力については本当に素晴らしいのですが、ぶっちゃけてしまうと「話は普通だな」と感じました。さんざん褒めておいて落とすのは非常に心苦しいのですが、なななな様はこれだけ素晴らしい作品を書けるのですから、もう一段階上を目指して欲しいな、というのが正直なところでして…。
ハッキリ言えば、二人のやり取りもそうなのですが、話自体はそこらへんの書き手でも容易に思いつくような内容だと個人的には思うので、設定やストーリーまで含めてなななな様にしか書けないような作品を期待しております。
…すいません、これでは曖昧過ぎるので詳細を。個人的な意見としては、エンタメ要素という点で、現代が舞台の作品だとずば抜けた文章力を持ってしても、他に「あ、この人にしか書けなさそうな作品だな」と思わせる設定やミステリー要素を持った作品には見劣りしてしまうと思います。逆に言えば、なななな様の文才+SFやらファンタジーの世界観なり、ミステリー要素やら専門知識を加えた作品であればまさに鬼に金棒。プロ顔負けの一作が書けるのではないかなと。
もし私の感想を見て「ハードル上げてんじゃねえよこのビチグソがぁーーーーーーッ!! 」と思われたのでしたら、遠慮なくURYYYY!してください。

拙い感想で申し訳ございません。
以上、失礼いたしました。