ライトノベル作法研究所
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  5. しりとり公開日:2012年12月31日

しりとり

表参道さん著作

 この壮絶な状況の発端は親友アキラが俺の部屋でジュースをこぼしたことから始まった。
「……やっちまった」
「おいアキラ。ちゃんと拭けよ」
「なあ、しりとりしないか?」
「何のしりとりだよ」
「絨毯を拭くしりとり」
「ざっけんな。黙って拭け。シミになるだろうが」
「ならしりとりで勝つことだな」
 正直、面倒くさかったので、俺が拭こうと立ち上がった。
「待て待て! 勝てば拭いてやるから!」
「高校生にもなってしりとりって……」
「ふふふ。ただのしりとりじゃねえよ?」
「どこがだよ?」
 さすがにイラッとした声で睨みつける。
「一言返すごとに相手のルールを追加できるんだ」
「? よく分からないな。例えば?」
「語尾に必ず『候』をつける、とか」
 ちょっと面白そうだった。
「じゃあ、絨毯拭きながらな」
「補足としては、しりとり自体に影響するルールは駄目な。必ず『ん』で終われとか。
 あと、ルールは重複して、消えることはない。
 ルールを達成できなければ負けな」
 最後に、俺からでいいか? と訊いてきた。
「ああ、好きにしろ」
 俺は絨毯を拭きながら気軽に答えた。
 途端。
「しりとりの『り』から! 『りんご』! この勝負に負けたら五万円払え」
 むせた。
 見れば、アキラは。それはそれは凶悪な顔を向けていた。
 なんだこれは! なんで絨毯にジュースこぼされて、五万円払わなきゃならない!?
 つーか、計画犯だろオイ。
「……『ゴリラ』お前も負けたら五万円払え」
「『ラッパ』で。ヒゲダンスを踊ってろ」
「こんの……『パジャマ』だ。土下座しろ」
 アキラが土下座をし、俺はやむを得ずヒゲダンスを始めた。
「えっと、『マッチ』……全裸になれ」
 俺の動きが止まった。
 ふざけんなコンチクショウ! こいつ、初めからこれを狙ってやがった!
 アキラがにやりと笑った。
 五万円、五万円だ。
 こいつは俺ができないと踏んでいる。
 そうはいくか……!
 俺はズボンに手を添え――
 アキラの顔から余裕が消えた。
 そして、一気にパンツごと下ろした。そのまま上着も。
「『チーズ』! お前も全裸になるんだ」
 アキラも数秒迷った後、全裸となった。もう引き下がれないのだろう。
「畜生、こんなはずじゃ……『ズボラ』。母親の下着を被れ」
「『落花生』! イノキの物真似してろ」
 ここで、敵は切り札を出してきた。イノキの真似をしながら。
「『犬』。好きな人に仮想告白しろ」
 最低だ! 最低がいるぞ。俺は好きな人を誰にも言っていない。ここまで隠し通してきたんだ。言いたくない、言いたくないが……五万円。
 俺が好きなのは、同級生のマオちゃんである。おとなしくて優しい娘で人気も高い。
「……だ」
「えぇ?」
 どこまでも嫌らしい奴だった。
「好きだ! マオちゃん! 『濡れティッシュ』! 足の裏を舐めろ!」
 がらがらがしゃん。
 そして、この状況だ。
 見れば、隣に妹が立っていた。落ちたトレイを見る限り、お菓子を持ってきてくれたのだろう。
 ちなみに、この中学生の妹の名前も偶然にもマオと言う。
 さて、状況を整理しよう。
 まず、俺が全裸。おふくろの下着を被りながら、こなれてきたヒゲダンスを踊っている。目の前には親友のアキラがやはり全裸で土下座している。……イノキの真似をしながら。さらに俺はマオちゃんに告白し、濡れティッシュと叫び、足の裏を舐めろと言った。
 終わった……。何が? しりとり以外のすべてだよ。

作者コメント

 お久しぶりになります。表参道です。
 またしても勢いに任せて書いたのですが……酷いですね。実は僕は馬鹿なんじゃないかと思えてきました。いやいや、言うまでもなく馬鹿ですね。
 そんな作品ですが、読んでいただけたら幸いです。もしよければ感想もお願いいたします。
 2012.12.31 修正しました

2012年12月31日(月)02時37分 公開

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感想

木本 奏太さんの意見 +30点2012年12月31日

 こんにちは、表参道さん。木本奏太です。
 読みましたので、感想を残したいと思います。

 面白かったです。妹のくだりでは笑いころげました。
 こういった愉快な話、自分は好きです。
 男子高校生の日常を思い出します。

 アキラ……。
 全ての元凶のはずなのに、ラスト土下座しているため、妹からは被害者に見えなくもない。
 最悪ですね。
 でも、不思議と憎めない良キャラで、友人に一人は欲しい逸材です。
 
 ぐだぐだな感想で、すいません。
 批判や指摘を希望でしたら、申し訳ない。
 
 とても楽しませていただきました。ありがとうございます。
 では、失礼します。

空ノさんの意見 +20点2012年12月31日

初めまして、空ノと申します。

面白かったですね、普通に。すごくアホな展開ですが、そもそものアイデアが微妙に良質なため、使い方によってすごく面白くもなるものだと思いました。
二人の仲の良さも伝わりましたし、凍りつく妹の心境もよくわかります。

御作に対する指摘って、なんだか個人的嗜好を披露するようで気後れしますね。私には無理です(笑

いいなぁと思ったのは、二人が一定の制限を自分の中で設けたうえでルールを追加していっている、というところでしょうか。ちゃんとギリギリ楽しめるようなルールにしているところを見ると、間接的に仲の良さが伝わってきます。上手い手法だと思いました。

>マオちゃんに告白し、濡れティッシュと叫び、足の裏を舐めろと言った。
 これは酷い。なぜ濡れティッシュ(笑

何も考えず笑えました。ライトでいいですね。

以上です。
良き時間をありがとうございました!

ヤモリさんの意見 +20点2012年12月31日

こんにちは。ヤモリと申します。
コメディーは僕にとって専門外なので本来ならば感想を残すべきではないのかもしれませんが、読んでいて思わず吹き出してしまったので、感想を残していきたいと思います。


笑いました!
小説を読んで笑ったのは本当に久しぶりです。
なぜしりとりを始めたのか。
結局絨毯にこぼれたジュースはしみになってしまったのではないか。
などなど疑問は残りましたが、もうそんな細かい部分ははどうでもいいと思えるほど面白かったです。

「しりとり」を題材に選らんだ理由がもっと明白になっていると、より楽しめたかもしれません。
でもまあ「濡れティッシュ」と叫ぶ兄はとってもシュールでしたので、そこで「しりとり」が生きている気もしますから、ささいな違和感は無視できてしまいますが。

最後に一言。
マオちゃんが可愛かったですっ!


楽しいひと時を過ごさせていただき、ありがとうございます。
ではでは。

あるびのさんの意見 +20点2012年12月31日

はじめまして、あるびのと申します。

拝読させていただきましたので、拙いながら感想を残させていただきたいと思います。


いいですねー、男子高校生の青春群像の一部って感じで。羨ましい。女の身ではできませんね、全裸辺りが。

全体的にバカな展開ですが、それが本来のライトノベルの形だと思っているので。

掌編という短さの中でうまく纏まっていて良かったです。


短くなりましたがこの辺で。
楽しい時間をありがとうございました!

あ、ちなみにしりとり3時間続けると人間関係にひび入るんで気を付けてください(経験談w)

とよきちさんの意見 +20点2013年01月01日

明けましておめでとうございます、表参道さん。遅まきながら感想返しに参ったとよきちですよぃ。

それではさっそく。

いや、馬鹿すぎて笑いました。完全なるギャグですね(笑)
シンプルで分かりやすく、なおかつ馬鹿なルールがとても気に入りました。
なるほど、こういった遊び的なルール作りは掌編に向いているのかもしれないですね。……よし、かっぱろう(笑)

締めの妹の登場はけっこうベタですし、まさかの妹の名前がマオちゃんというのも強引な気もしましたが、最後の一文で綺麗にまとまっていて良かったと思います。
欲を言うのなら、オチをもっと意外なものだったら良かったなと思いました。


拙い感想はここまでで、一個人の意見ですので取捨選択をお願いします。

それでは表参道さん、ごちそう様でした!

ラスタさんの意見 +20点2013年01月02日

どうも
ラスタです
明けましておめでとうございます
作品、読ませて頂きました

面白かったです
ワロタwww

ただ演出が足りないかなと
もっと情景や心理等を描写した方が、空気感が伝わって面白いと思います
コントと同じ要領ですね
話で聞かせてもらうよりも、実際に見た方が面白いものです

うん、笑いました
男子高校生の日常という漫画を思い出します
ナイスな馬鹿さ加減です
覗きの話を書いた私が言うんですから間違いありません

感想に不備等ありましたら申し訳ありません
ご存知の通り素人ですので間違ったことを言っているかもしれません
ご容赦ください

ではでは、次回作も期待しております

赤い杯さんの意見 +20点2013年01月02日

表参道様、こんばんは。
赤い杯です。先日は私の作品に感想ありがとうございます。
拝読しましたので、感想を書かせていただきます。

これは面白かったです(笑)
よかったです。なにより勢いがあるのが素晴らしいですね。

些細なことですが、やはり妹をほのめかす描写があるとなお良いかもしれないですね。
または、せっかく母親の下着がありましたので、妹の代わりに母親が登場しても、うわぁ……という雰囲気は出たかもしれないです。
とても完成度が高いなと思いました。お見事です。

大変失礼いたしました。
次回作も楽しみにしています。

純黒猫貂孤月さんの意見 +30点2013年01月03日

こちらでは初めまして。先日は感想をありがとうございます。
私なりのスタイルで批評させて頂きます。
悪い点
・途中で誰が何をしてどうしての言動が曖昧になっている。これは仕方がないことかなとも思いつつ、私はイノキのモノマネ辺りから数行読み返しました。
・『候』 多分、「そうろう」と読むのだと思いますが、これを実際の会話に当てはめると、この漢字が浮かびにくい。連想しにくい。例えば「なりけり」とかであればさらに読みやすくなったかもしれないなと。かなり高難度な指摘かもですが。本当にそこにキャラクターが居て、話している。その時をイメージした時の会話を難読な漢字に変換すると、違和感が生じます。障子枡。庄司増す。こういう意味だと思って貰えれば。長くなりました。

良い点
・作者様のコメント通り、素晴らしいまでの勢いです。オチも、最後の一言も、私の中では綺麗に消化されました。
・アイディアの良さ。既に指摘されていますが、私もこのアイディアは素直に良いなと。

総じて、随分と書き慣れている印象を受けました。というかここまで多くの批評を頂ける方はそういないようですし。作品の点ももさることながら、日々の活動が後押しを受けている。あまり関係ない話で申し訳ない。
作品に対しては、もっとクオリティを追求できる気がします。書き慣れいてらっしゃるだけに、さらに良い物を期待します。
素直に面白かった事と、次回へのプレッシャーも込めて30点で。

はなうたさんの意見 +20点2013年01月03日

表参道さん、こんばんは。はなうたです。
先程は拙作にご感想ありがとうございました。
拝読しました。

なんとシュールなお話!(笑)面白かったです。
御作に突っ込みを入れるとしたら、全てでしょう(褒め言葉です)
ただ笑いました。
あと、マオちゃん(妹)の描写が少なかったにも関わらず、キャラが立っていました。これは不思議です!

以上、ただの感想になってしまい申し訳ないです。
楽しいお話をありがとうございました。
次回作も楽しみにしています。

横溝峻一さんの意見 +30点2013年01月04日

表参道さん初めまして!感想ありがとうございます!お礼と言ってはなんですが、いまさらですが感想書きに来ました。

実はもう早い段階で読んでいたのですが感想を書くタイミングを失ってしまっていました。

すごく面白かったです!最後の妹のオチもすばらしい。

この二人は仲がいいですね。きっと作者様にもこのようなお友達がいるんだろうな~と想像しました。

ヒゲダンスとかイノキとかも知ってて素敵です。

拙い感想ですが、以上です。次回も期待しています。ありがとうございました!

新田朗さんの意見 +30点2013年01月06日

こんにちわ、新田朗です。先に電撃の方を読んじゃったっていう。

感想!

素直に笑いました。
一人でパソコンに向かって「エヒヒヒヒ!」と不気味な笑い声を上げて笑ってしまいました。

タイトルからは想像しがたい、壮絶な内容でした。一言で言えば、男ってバカだよなぁ……。という感じです。実際やりかねませんよね。あのお年頃は。

>「えっと、『マッチ』……全裸になれ」
 俺の動きが止まった。

ここで一気に文章が加速しましたね。(面白さ的に)

>アキラの顔から余裕が消えた。

ここでもうダメでした。ブホッと。

>「『犬』。好きな人に仮想告白しろ」

安いな秘めた想い! いや、高いけど!

>がらがらがしゃん。

ああーー……。うん。
しかしいい妹さんですね。わざわざお菓子を持ってきてくれるなんて。

ラストの畳み掛けるようなオチは最高でした。情景を思い浮かべながら台詞を読んでみると腹筋が綺麗に割れるようです。

私はギャグ作品を書きたいと思っているので、笑わせて頂きましたし、参考になりました。面白かったです。

感想は以上です。ありがとうございました!



…………しかし主人公。なぜ母親の下着が自分の部屋にある……?

白ぶどうさんの意見 +50点2013年01月14日

はじめまして。
面白かったです。最高でした。声をあげて笑いました。
これからも頑張ってください。
では。

桐生 桜さんの意見 +40点2013年05月11日

笑いました。
ずっと笑ってました。

こういうギャグがツボなんですよねー……。


とっても面白かったです。
次回作品も期待しています。

えんさんの意見 +30点2013年06月12日

おもしろかったです!
こういうトボケタ作品、好きです!