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  5. 弧殺のロード公開日:2013年05月11日

弧殺のロード

デビルハラマキ・内さん著作

 《確率と確立の谷》には、いまだに一人の少女が住んでいるといいます。かつて大陸全土のみならず、外世界への侵略すら企て、そのたびに歴史に深い傷跡を残し続けてきた魔女達の、最後の一人です。
 《確率と確立の谷》にたどり着いたあなたは、まずその荒廃具合に閉口しました。そこに残っているのは岩と土くればかりで、あなたの少年時代に社会科の教科書を賑わせていた、黄金の建造物も七色の装飾の数々も、一つとして見られなかったからです。
 それも当然でしょう。衣食住すべてを魔法によって代替していた彼女たちの王国は、魔力を失った現代において、一抹の存在さえも残すことは許されないのですから。瞬間的に生成されたすべてのモノは、その速度に比例するように、歴史の中でも瞬間的に消えていきました。
 あなたは、質素だが明らかにこの退廃的な風景にそぐわない、白い小さな家を見つけました。それは魔法学に乏しいあなたの目から見ても、明らかに魔力を帯びた建築物であり、目的とする少女がそこにいるということは明白でした。
 あなたは少女の家の扉を、ゆっくりとノックします。
「だれ?」
 ドアの向こうから、幼く震えた声が聞こえてきました。
「ここでなにをしてるの?」
 あなたはその問いには答えられず、ドアの前に立ち尽くします。
「わたしに会いに来たの?」
 あなたは頷きました。
「そう……扉越しの対応で悪いね」
 あなたは、魔女の魔力が魔物達にとって最上の美味であるという知識を思い出しました。少女が警戒するのも仕方がないと、納得します。
「ほら、こんな時代だからさ。軽々しくお客さんを信用できないの。もしかしたらあなたは人を装った魔物かもしれないし。ね、わかるでしょ? 人が未知を恐れるのは、当たり前……そうでしょ?」
 そうだね、とあなたは言います。
「でも、あなたはわたしを怖がらないんだね……わたしが魔女だってわかっているのに」
 あなたは何も答えなかったので、少し沈黙が続きました。
「わたしはそれが怖い。あなたがわたしを恐れずにいられる理由がわからないから、怖い。言ってることわかるでしょ?」
 わかるよ、とあなたは答えます。
「ねえ、あなた人間? あなたが本当に人間なら、わたしはあなたを我が家に招待するわ。……あなたが人間であることの証明は、わたしの質問にいくつか答えてくれるだけでいいの」
 わかった、とあなたは言いました。
「まず一つ目、あなたは自分自身を傷つけて、その血が赤いかどうかを確認したくなったことがある?」
 ある、とあなたは答えました。
「じゃあ二つ目、空はどうして青に染まっているの?」
 見上げたときに、気持ちがいいからじゃないか。と、あなたは答えました。
「恐ろしいほど饒舌で、的確ね。わたしが聞きたかった正解はもっと理屈めいたなものだったのに、あなたは叙情で返してみせた……。ますます、人間を装っているように見えるかな……なんてね、冗談だよ」
 少女が笑っているのが、ドア越しにもあなたに伝わりました。
「最後の質問、夢を追う人をなぜ他人は笑うの?」
 自分がかなえられなかった夢を他人にかなえてほしくないから、足を引っ張りたいのさ、とあなたは答えました。
「はい、しゅーりょーです。どうぞ、あなたは人間です」
 少女がそう言うと、ドアの施錠が解除されました。
 あなたは初めて見た少女の容姿に驚きました。とってもかわいいのです。
 明緑の髪の毛を肩につかない程度に切りそろえ、無為に伸びた前髪で少し隠れる大きな瞳は、活力でぬれています。シミ一つない白い肌は健康的な赤色が差し込み、うっすらとした脂肪とその下に奔る青白い血管が、若い肉感と美しさを醸し出している。また、あふれんばかりの水分を含んだ唇が、今にもはじけて崩れそうな危うさも孕み、それがひどく官能的だ。
 背は低くころころとした、子犬のようでもある。
 代謝の良さそうな細い呼吸が、たびたび幼いつぼみが納められている場所を、膨らませたりへこませたりしているのが見て取れる。
 さあ、うっとりしていないで、靴を脱いでお上がりなさい。少女は自分の部屋まで、あなたを案内してくれます。
「さっきの質問ね、あれ別になんて答えても良かったんだよ。自分の意見を持つことができたなら、わたしはあなたの姿形を問わずに人間と認めるつもりだったんだよ。ここにたどり着けることのできた人は、魔物も含めて実はあなたが一番最初だしね」
 さて、少女の部屋は一面ファンシーであふれていました。色とりどりの家具とぬいぐるみに囲まれた、いかにも乙女チックなお部屋です。
 おお、もしやあれは大陸西部の《森海》においてみられる、羊亀のぬいぐるみではないか! もふもふとのんびりした雰囲気を醸しつつ、がっちりと背中に背負う青い甲羅とにょっきりと生えたくるくるの角のギャップによってかわいらしさを引き立てる、大陸ナンバーワンのゆるキメラ、羊亀のぬいぐるみがここにおられるではないか!
 あなたは一目見ただけで、その羊亀に心を癒やされてしまいました。
「ああ、これね。これもわたしの魔法によって作り出したんだよ、すごいでしょ。そうだ、あなたの分も作ってあげようか?」
 そう言うと、少女は右手に暗在系を、左手に明在系を具現化し、因果律を糸と定義し視線を以て紡ぎ出すと、質量の表裏を多次元的に捉えることにより、『目の前に二体目の羊亀のぬいぐるみがいきなり出現する』、という天文学的な数値で起こりうる奇跡の発生確率を100パーセントまで引き上げ、『目の前に二匹目の羊亀のぬいぐるみがが存在する』という現実を確立してみせました。
 ぽわわーん。
 みごと、あなたの羊亀のぬいぐるみがこの世に生を受けました。おめでとー。
 生まれて始めてみた、魔女の高位魔法に、あなたは目を白黒させて驚きました。
「ま、こんなもんだね。あ、わたしの羊亀はメスだから、あなたの羊亀はオスにしといたよー」
 すると少女は自分の羊亀の口を、新しく生まれたあなたの羊亀の口にコツンとぶつけます。
「はじめましてのちゅー」
 あなたもこの少女と初めましてのちゅーをしたいと言いそうになりましたが、間一髪でぐっと我慢しました。いやはや、ここで我慢できなかったら、あなたはロリロリです。
「あなたも、遠路はるばるご苦労様。ちゅー」
 と、少女は自分の羊亀をあなたの口元にもっていきました。うれしくない布きれとの接吻です。だから羊亀じゃなくてお前の唇がほしいねん! と、突っ込みたいのをまたもやぐぐっと我慢です。
「はい、ありがとうございました。これで私たち二人と二匹は、無事お友達となれました」
 あなたは、だからまだ僕と君の間ではお友達となるためのちゅーが終わっていないやろ! と、少女に突っかかりたくなりましたが、冷静に考えてみて、キスから始まるお友達の方がどう考えても圧倒的に特殊なケースです。あきらめなさい。
「ふう、それにしてもさ」
 少女がすっと、笑顔を物憂げな表情にうつし、あなたを見つめます。
「こんな忘れられた土地に来るなんて、あなたもとんでもない物好きだね」
 そうなのかもしれないな、とあなたは思いました。
「あなたも、さみしかったんだよね。ずっとずっと、友達を探してここまで流れ着いたんでしょ」
 そうかも、とあなたは言いました。
「わたしも、ずっと話し相手がほしかったんだ。実のことを言うと、さっきの人間テストであなたが失格しちゃったらどうしようかと思ったよ。本当に久しぶりの話し相手なのに、顔も見ないまま殺しちゃうなんて、悲しすぎる」
 あなたは『殺す』というワードにぞっとして、なぜそういった発想に至るのか気になりましたが、深くは詮索しないことにしました。魔物だったら殺すのかな?
「あ、そうだ。まだお茶も出してなかったね。《大きな街》から大昔に輸入した、おいしいお茶があるんだよ。わたしの魔法でも再現できる味だけど、魔法食物を口に入れるのは、あなたたちには抵抗あるでしょ? ちょっと待っててね」
 気にすることはない、と言おうとしたあなたでしたが、少女がさっさと出て行ってしまったため、言いそびれてしまいました。
 しばらくすると、少女がおいしそうなハーブティーを手に、戻ってきました。
「いやー、お茶自体は本物なんだけど、お茶請けは見当たらなかったから、つい魔法でつくっちゃったよ。人体に害はないし、味は保証するから、良かったら食べてよ」
 申し訳なさそうに少女が言うので、あなたは元々気にしていないよ、と笑いながら少女の用意したスコーンをほおばりました。なるほど、これは美味い。本当にオーブンで焼いたかのような、もっちり感にあたたかさ。あなたがかつて旅の途中、小国《ネクロピア》の王室に招かれて食したものにすら匹敵します。
 あなたが実直な感想をこぼすと、少女は「それはよかった」と、うれしそうに笑いました。進められるまま、ハーブティーもずずず……これも美味い。
「昔のわたしの友達なんかはさ、こんな汚水はいらないから、お前の血を飲ませろ! なんて言ってきたんだよ。吸血鬼でさ、その娘」
 物騒な話だな、と、自分とは違う世界の話にあなたは苦笑いでかえしました。
「結局そいつ……エルドレッド・ネフロードって娘なんだけどね。ある日、不死鳥の血を飲みたいとか言い出して、とうとう不死鳥の血をすすっちゃったの。そしたらね、不死鳥の怒りを買っちゃって、それ以来その子の表皮は不死鳥のまとう炎そのものとなって、その娘を燃やし尽くしているの。燃やし尽くしている、って現在進行形なのは、その娘、吸血鬼の不死性に不死鳥の神性が上乗せされて、神話レベルでの不死身に昇華されちゃったから、なにがあっても死ねない体になっちゃったの」
 ここまでぶっとんだ話には、あなたから言える言葉はありませんよね。
「今はなんとか炎への耐性もできはじめたらしくて、最北の洞穴で療養しているらしいけど、モデルになる夢が潰えたってへこんでたなー。あはは、その娘、常に燃えているから服が着れないのさ。そういえば今は《灼熱姫》とか名乗ってるって言ってたかな? 自分で姫を名乗るのもどうかと思うよね」
 と、そんな他愛のない話で、お互いのお茶がほとんどなくなってきた頃に少女が思いついたように言いました。
「あ、そうだ。最近ガーデニングに凝っててさ。みる?」
 こう聞かれて、みたくないとはさすがに言えませんよね。あなたは少女に促されるままに、裏庭へと向かいます。
 そこには、狭い花壇に申し訳程度の赤白黄のチューリップ……それぞれが、それでも背筋を伸ばしたように、しっかり根を張ってつぼみを揺らしていました。
「ガーデニングはいいよ、心が落ち着く。今はまだこれだけしか球根を手に入れてないから、少し寂しいけど、いつかはこの裏庭中をチューリップで埋め尽くすんだ」
 少女はかがむと、チューリップのつぼみの高さまで顔を持って行き、我が子の成長をみまもる母のような優しい表情で、ほほえみながら言いました。
「こればっかりは生命だから、魔法でどうにかできないのがいい。慈しみってゆうのかな、心の中があったかくなる……こういうのってすてきだと思わない? 魔女をやってるとさ、思い描くだけでできることが多すぎて、ここが本当に現実なのかって疑っちゃうときがあるの……。たとえばさ、あなた、目の前の壁に体をすり抜けられるとしたら、その壁が存在するってはっきりと自覚できる? わたしは透過の魔法を使えるけど、そんなことばかりしてたら、自分が幽霊なんじゃないかって想いがよく頭を駆け巡ったよ……。魔女がたくさんいた時代はまだ、みんなが同じだったからよかったんだろうけど、今はわたし一人だからね」
 あなたには高尚な話題だったので、花はいいね、とだけ言いました。そんなあなたに少女はきょとんとしたもの、何かを察したのか、クスクスと笑いました。
「うん、この子達がいるから、わたしは生きていられるようなものだよ」
 そうこうしているうちに、日が沈みかけました。《確率と確立の谷》では、夕焼けがとてもきれいに見えますね。あなたの胸の内は、このきれいな夕日をどういった語彙で装飾し、表現しているでしょう。どうか、少女に打ち明けてみてください。きっと少女は喜ぶはずです。

 これは余談ですが、かつて、《有限と夢幻の空》に巣くう鳥人にとってのあこがれは、海でした。空も陸も自由に飛び回れる彼らにとって、日と空と詩はなにより身近な存在でしたが、唯一、海だけは飛び込んだら最後、翼の重みで沈んでしまうので、遠くで憧れていることしか叶いませんでした。
 ある日、そう、今から50年ほど前でしょうか。一人の鳥人エアロコマチが、海に関するある一編の詩を綴りました。
 陸に巣くう我々人間は、海に触れることすら叶わない鳥人の海の詩を、最初は遠巻きに笑っているだけでしたが、その詩を読んだ人間が一人、また一人と感嘆の声を上げるにつれ、やがてその一編の詩は大きな話題を呼び、エアロコマチの詩集は栄誉ある《王立魔法図書館》へと納書される運びとなりました。
 それは、こんな詩でした。

 1

 わたしは鳥 あなたは海
 世界で一番身近い詩をあなたに送ろう

 《I Love you》

 2

 I Love youの両端で ふたり離れているけれど
 愛にふれあう二人なら いっしょにいるのも同じこと
 I Love youの真中に ふたり阻まれているけれど
 愛にふれあう二人なら いっしょにいるのも同じこと
 I Love youの真中で ふたりつながっているのだな
 Loveがないなら Iyou で わたしは溺れてしまいます
 I Love youの真中で ふたりつながっているのだな
 
 これは海に恋い焦がれ、けれども触れることすら叶わなかった鳥人が、自分と海との関係を、人と人の恋心に見立てた一編の詩です。
 鳥人と海のように、触れあえられぬものにだからこそ、強い執着と熱い想いが宿るのだと、あなたも思いませんか?
 あなたは人間です。鳥人と違い、海にはその身を落とせますが、天高き日の光にはおよそ及びません。さあ、そんな人間のあなたが紡いだ夕日への叙情はどのようなものでしょう?
 わたしはそっと耳をふさいでおきますので、どうぞ、思う存分ロマンチシズムを発揮してください。
 少女があなたの言葉に、笑顔になったことを確認したら、わたしはふたたび物語の外側に戻ることとしましょう。
 ………………。
 …………。
 ……。
 はい、笑顔になりましたね。
 少女があなたの言葉に、感想を述べるようです。
「あなたはなかなか詩人だね。大昔に出会ったことのある詩人に、エアロコマチって鳥人がいたんだけど、その人の言葉にちょっと似てるかな」
 おやおや、この少女はエアロコマチと知り合いだったようです。それにしてもエアロコマチはずいぶん昔の詩人なのに、そんな人と知り合いなんて、少女の外見年齢から察するに、少し考えられませんね。
 あなたも不思議に思ったのか、少女にいったい何歳なのか問いただしてみることにします。
「15歳だよ」
 気持ちのいい声で少女はそう言いました。
「でもこれは肉体年齢で、生活年齢はもっといっているはず。この《確率と確立の谷》の中では、時間が経過するのと同時に、過去の時間が現在からの距離の2乗に反比例して短くなるでしょ? だからわたしは永遠に肉体年齢15歳でいられるんだ」
 ……なるほど。
 理解していただけたでしょうか? つまりはそういうことなのです。
 《確率と確立の谷》の中では、肉体の時間経過がないそうです。
 彼女はもう100年近く生きていますが、それでも15歳だというのです。
 あなたは苦笑いです。理解からはほど遠い頭の中、のど元からはつい飛び出そうになった、ババアじゃねえか、の声をぐぐぐっと我慢しています。問題はそこじゃないでしょうに。
「詩も、いいよね。後世に残ることだから。生きてきた足跡って感じ。振り返ればそこにある宝物って感じ。……そう考えると、わたしのガーデニングは、ちょっと弱いのかな」
 少女がしゅんとしてしまいます。
 「いずれ息絶えるものだし、誰にも知られないし。踏みしめてきた足跡も薄けりゃ、雨で流されちゃうもんね。振り返ったときに自分が残してきたはずのものが見当たらないなんて、ちょっぴりさみしいかー」
 でも、と、少女は自分の言葉に付け足します。
「終わりがある、ということは、もしかしたら永遠に残ってしまう一編の詩よりも美しく、幸福なことなのかもしれない」
 あなたにはわかりますか? 有限を生きるあなたには、もしかしたら理解し得ないかもしれません。
 しかしここ《確率と確立の谷》で、終わりの見えない生活を続けている少女には、思うところがあるのでしょう。 
「ねえ、日が暮れたし、今日は泊まっていくでしょう?」
 元よりそのつもりだったあなたは、少女の提案に快く頷きます。
 リビングに戻ると、少女は魔法で外世界の珍しい食べ物をいくつもつくってくれました。それはラーメン、ミソスープ、ライスボール、サバノミソニなど、あなたが世界地図の端から端まで旅してみても見つからなかった、不思議でどこかなつかしい味のする食べ物でした。
「初めて見るでしょ? 旧地動説に守られた世界の、とある島国の食べ物なんだ」
 あなたはいたく感動しました。
 そしてあれこれかき込んでいるいる最中に、ひょんな偶然からミソスープの中にライスを落とし込むという斬新な料理を開発してしまったので、あなたはそれにネコマンマと名付けて、持ち合わせの粉みたいなもので味を調えると、あなた自身のオリジナル料理として少女に振る舞うことにしました。まあ、料理じゃないですけどね。
「少し行儀が悪いけど、急いでいるときとかにはいいかもね。っていうか、ライスとミソスープの合体なのに、なかなか刺激的な味になってるね。あなたの持っていた調味料のおかげかな?」
 あなたのネコマンマは、残念ながら少女には少し不評だったようです。
 次に少女は魔法で、電気を使って楽器を演奏するおかしな楽団を生成しました。
 あなたが見たことない形の弦楽器や鍵盤が、魔法の発動音にも似た奇妙な音を鳴らし音楽を奏でています。あなたに押し寄せるこの衝撃は、音圧なのでしょうか。すごい迫力です。
「エレキギターにシンセサイザーっていうんだ。これも外世界の文化だよ」
 あなたはだんだんと楽しくなってきました。気分が高揚してくるようなアップテンポのリズムに乗った、ノイジーなサウンドが心地よいのです。
 楽しい食事が終わったあとは、少女が自分たち歴代魔女の有名なエピソードを話してくれました。
 最強の魔女アベニーパファーの伝説や、外世界で魔法少女デビューした魔女っ娘マジョリティの物語、第七魔王と死闘を繰り広げ戦死したリンスカム・R・メッセンジャーの勇士に、辺境の村を自分の箱庭にして遊んでいた趣味の悪い“カタチ”の話などです。
 あなたも負けじと、歩んできた旅路の話をしました。《確率と確立の谷》から一歩も出ることのない少女は、大陸での話を興味深そうに聞いてくれます。
 あなたは死体が第二の人生を歩む国《ネクロピア》や、死後自分の人生が神によって一冊の物語として綴られる《スクアード》の話などをしました。少女は饒舌に語るあなたの顔を見るたびに、うれしそうに相づちを打ってくれます。
 さてさて、楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、時刻はもう日付をまたごうとしています。
 少女はちいさなあくびを恥じるようにすると、照れたような顔であなたを見つめます。
「さ、もうねよっか」
 そうしてあなたは少女に促されるまま、さきほどの少女の部屋に向かいます。
 ん、でも……あれれ? そういやここにはベッドが一つしかないぞ?
「あはは、来客なんて今まで一人もいなかったからね。ベッドは一つしかないんだよ」
 少女の顔がほんのり赤くなっているのに、あなたは気がついて、でも、気がついていないふりをしました。
 さりげなく、しかし、意を決して少女は言います。
「もしよかったら、いっしょに……」
 あなたは、魔法でもう一つベッドつくればいいや! などと無粋なことは言いませんでした。
 少女はちいさなベッドの中にそっと入ると、隣を半分だけ空けてあなたが来るのを待ちます。
 さあ、あなたも男です。覚悟を決めていきましょう。
 あなたは照れながらも、ベッドに潜り込んで、少女の隣で寝転びます。いいにおいがしますね。女の子のにおいです。
 少女があなたの方向へ、くるんと半身を倒します。
「もっと、近くによっていいかな……? 添い寝……、して、ほしいん、だよね」
 少女の積極的な、しかし語尾が弱々しくなっていく赤裸々な言葉が耳元でつぶやかれ、あなたはついピクンとしてしまいました。
 少女は返事を待たずして、這うようにあなたに近づくと、ちょこんと少女の手があなたの上半身に乗っかりました。密着まではほんの少し空間がある、微妙な間です。
「いきなりこんなことして、ごめんなさい……」
 いやいや、とあなた。胸がどきどきです。でも、それは少女も同じことなのだと、ふれあう細い腕の震えが教えてくれます。
「でも……さみしかったから……ずっと、何年も。人に触れるなんてできなくて……。あなたもそうでしょう?」
 そうかも、とあなた。あなたの旅路も孤独でしたよね。
「わたしは他の人と、生命体としての存在次元がかけ離れすぎているから、友達も作れない。人と相容れることはない」
 少女はすっと表情を暗く落とします。
 あなたは何も言えません。少女を見据えることもできず、ぼーっと天井を眺めます。
 すると少女は、そんなあなたをまっすぐにみつめ、何もかもを見透かしたような声色で言いました。
「でも実は、あなたもそうでしょう?」
 …………うん、とあなた。
「ふふ……やっぱり人間じゃなかったか。怪しいと思っていたんだ」
 なぜわかったの? と、あなた。とうとうばれてしまいましたね。
「わたしの名前を聞かないからね。個体を識別するnameにまるで興味を示していなかった。あなたはわたしじゃなくて、見たことのない魔女に興味があっただけ。それは人ではなく、もっと高位な生命体の視点」
 なるほど、とあなた。
「それに、あなたの言葉が……なんというのかな? 実体を伴っていない? ……のも気になっていた。何を言っても観念的な印象を受けるというか……。んー、縁取られてないって言うか、言葉が世界に溶けている感じ」
 うん、とあなた。
「わたしの名前は、ジョック・イン・カーショウ。ジョッキン・カーって呼んで。カーの方が名前だから、そっちの方で。かわいくない名前だけど、わたしの名前だから……」
 なぜ、いまさら名前を? と、あなたは聞きます。
「わたしに固執してほしいから。あなたの次元を一つ落として、わたしと同じフィールドに立つことで、わたしの孤独を癒やしてほしいから」
 それは……と、あなたは言いよどみます。
 少女の体が毛布の中でもぞもぞと動き、強く、強く、あなたの左腕に絡みつきます。もう離さないという、確固たる意思のように。
「だったらせめて、わたしといっしょにここにいて。永遠に二人でいることを許容して。二人で孤独を埋め合おう。本当はわたしがあなたの旅について行けたらいいけど……わたしは魔力のたぎる《確率と確立の谷》でしか生きられない魔女だから……」
 それは――鳥人と海の関係に似ている。と、あなたは思いました。
「なんでもあげる。わたしの魔力でできることは全てあなたに捧げます。わたしの体も好きにしていい、年齢固定型の15歳のボディがどれだけの価値を持っているか、わたしだって知っているから……」
 魅力的な提案でしたが、あなたにはとどまるという選択肢はないのでした。孤独な旅を続けることこそが、あなたの生きる意味なのですから。
 あなたは、それはできないと渋々言い放ちます。夜が明けたらこの家を出て行くと、宣告します。
 少女の体温がすっと下がったような気がしました。ちいさな体は握り拳のようにぎゅっと固まります。
「なんで……どうしてなの。わたしたちは孤独を埋め合うために出会ったんじゃないの!? そのためにあなたはここまで旅をしてきたんじゃないの!? そういう因果で結ばれた二人じゃなきゃ、あなたはこんな場所に流れ着くはずないよ!」
 突き放すようなあなたに向かって、少女の焦燥と怒りが堰を切ったようにあふれ出します。
 少女の言葉にあなたは、君の思う僕は少しだけ違う、と言いました。それがもはや少女に聞こえていたかどうかは定かではありません。
「さみしいの! さみしいさみしいさみしいさみしいさみしいさみしいから、視線を絡め合おう! 言語で愛撫し合おう! 傷口を接着させよう! 体温を確かめ合おう! 一人は嫌だ! 二人がいい! ねえ、お願いだから!」
 あなたは言う。
 僕は孤独を埋め合いに来たのではなく、孤独を殺しに来たのだ。
 弧殺のロード。それが僕の旅の名前だ。あなたは教えてあげました。
「意味わかんないよ! 抱けよ! その赤痢病患者の垂れ流した排泄物がごとき醜悪な性欲をもってわたしを抱けよ! ゴミカス! クソムシ! ゲロチンヤロー! たとえ魂が個体と定義されていようとも、吸着しあう涙のように、絡み合う体液のように、砕き溶かし混ざり合おう! ひとつになろう! ねえ! 孤独を慰め合おう!」
 あなたは言う。
 僕の孤独が死んでしまったら、安堵を知ってしまったら、僕の旅が終わってしまう。
 僕の旅の目的は、魔王が死に魔女が滅びたこの世界で、物語に残されてしまった生命すべての孤独を殺すこと。それが僕の役目だから、君一人のために僕の孤独は殺せない。
「じゃあ、わたしの孤独はどうするつもりなんだよ! 孤独を殺すってどういう意味だよ! 救ってよ! このドブネズ猥褻物! ウジムシ! 毒毒モンスター!」
 少女に当初の凜然とした様子は、もはや見当たりません。まさに15歳の少女然とした調子です。
 いつのまにか涙で決壊した瞳と、喉を枯らしうわずった声で、ベッドの上、恫喝するようにあなたに組み付いたまま、泣き叫びます。
 あなたは、あなたの左腕をつかんで離さない少女の後頭部に、抱きつくような体勢で、捕まれていない方の右手の手のひらをそっとのせました。
「なに、この手。わたしを殺すつもり?」
 殺す? そんな発想が真っ先に来る少女のこれまでの人生を、あなたは哀れみました。
「やめといた方がいいよ、無駄だから。さっきの夕食の時、楽団の音に紛れてあなたに魔法をかけておいたから! わたしへの攻撃は全て無効になるように、防衛魔法を!」
 数多の選択肢から、少女があのタイミングであえて選んでかけた防衛魔法という選択に、あなたは少し……泣きそうになりました。それは少女のかけた魔法が、あなたを傷つける可能性のある反撃の魔法や、意思を奪い行動を束縛する暗示の魔法じゃなかったからです。少女の優しさが、心にしみました。
 あなたはそっと笑うと、そのまま手のひらで少女の頭をなでつけました。
「なんのつもり……いまさら情をかけてどうするつもり?」
 睨み付け、呪詛の言葉を唱え続ける少女をよそに、あなたは少女をあやしつけます。時計の針が二十四時にさしかかるのを、確認します。
 すると、あるタイミングで少女は、いきなり憑き物でも落ちたかのように、すーすーと寝入ってしまいました。
 あなたは時間通りだ、とつぶやきました。
 少女がいきなり眠ったのは、あなたのあやし方がうまかったのではありません。かつて大陸を支配した魔女を殺した凡夫の最大の武器、薬学の英知の一部のおかげです。
 遅効性の睡眠薬の効果です。
 王国薬学における遅効性の睡眠薬は通常、即効性の睡眠薬の何十倍もの効力を発揮します。この睡眠薬の最も優れた点は、摂取量を問わず、粘膜から吸収した瞬間からちょうど5時間後に確実に効果を発揮する、悪魔めいた正確性にあります。
 あなたは夕食の時、自作したネコマンマにそっと、粉状の睡眠薬を混ぜましたよね。全ては少女の完全なる隙をつくるため。そして、本命の人形薬を少女に飲ませるためです。
 人形薬とは、その名の示すとおり、摂取した人間が人形同然の廃人になる劇薬です。人間を人間たらしめる機関を全て麻痺させるこの悪魔の薬物は、数年前、王国が魔女狩りを行うために開発されました。
 魔法に長けた少女のような魔女は、その万能性を過信するあまり、魔法以外の危険物への注意力が著しく低いのです。そこが魔力を持たない人間が、魔女へつけいる隙でした。
 あなたはそっと、少女の口元に、隠し持っていた人形薬を運びました。
 少女の喉は驚くほど素直に……自分の運命を受け入れるかのように、人形薬を飲み込みました。
 もしかしたら少女は、目が覚めていたのではないかとあなたは思いましたが、すぐにそんなはずがないと思い直しました。
 そしてここに、人形が生まれました。
 眠り姫です。
 名前をジョック・イン・カーショウという、魔女です。《確率と確立の谷》の中で、腐ることなく永遠に眠ります。
 それは死よりも安らかな生を漂うということです。もう少女が孤独を感じることはありません。
 いい夢を見てほしいと、あなたは願いました。
 《確率と確立の谷》に残った、最後の魔女の孤独はここで終わりました。
 これが最良の決断だったのかは、あなたにはわかりません。本当は少女の横で共に過ごし、求められるがままに抱きしめてあげたかったようにも思います。
 しかし、こうするほかになかったのも、確かなのです。あなたは死ぬまで、孤独を殺す孤独な旅人なのですから。
 あなたは眠り続ける少女の横で目をつむると、次はどこの孤独を殺しに行こうかと考えました。
 ふと、少女の話していた、最北の洞穴に住む《灼熱姫》を思い出しました。
 燃え続ける少女はさぞ不幸だろう。誰にも触れてもらえず、自分からも触れられないのは、どれだけ孤独なのだろうか。そんなことを考えているうちに、あなたはうとうとと眠りかけました。
 そして、完全に眠りに落ちてしまうその瞬間に、少女に嘘でもいいからここに残ると言って安心させてやれば良かったなと思いました。
 あなたは不器用なのでした。


 おわり 

作者コメント

かっこつけて括弧つけてないです。おいおい球磨川か。妄想世界垂れ流しです。無駄にシリーズもの構成です。続編ないけど。あと、変な視点です。
読者様の理解を置き去りにしているかもしれません。先に謝っときます、ごめんなさい。

2013年05月11日(土)12時04分 公開

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感想

えんさんの意見 +20点2013年05月11日

デビルハラマキ・内さんこんにちわー

感想返しにきました!

んーと、興味深いお話でした。

謎が謎を呼び、大きい謎と小さい謎が提示されて解決されていくのがすごく楽しかったです。

特に最初の三つの質問とか、ちょっと怖かったです。
こういう雰囲気好きですね。

これは二人称の語り口ですよね? たまにゲームブックで読むくらいなので、新鮮に感じました。

こんど自分も挑戦してみようかなーなんて、思ったりしました!

さて、ちょっと気になった点がありました。

二人称の語りの途中で心理描写が入ったりすると、読みにくかったんです。
テンションが違うせいでもあり、またですます調ではなくなるからだと思いました。

そこがちょっと残念でした。

えーと、他にも色々伝えられればと思うのですが、もっと読み込まないと見当ちがいなことを言っちゃいそうなのでここらへんにしておきます。

すごく胸にひっかかる文章で、面白かったです! どうもでした!!

etunamaさんの意見 +30点2013年05月11日

 衝撃です。感動しました。

 と、詳しい感想を書く前に謝らなければなりません。
 すんません。一回挫折しました。
 あまりに変わった手法ゆえ、読み方がわからず混乱しました。
 で、誰か読んだ人がいるぞと思い、感想欄だけ覗いてしまいました。
 ご、ごめんなさい。

 ただ、えんさんの感想にある「ゲームブック」「二人称」というワードで、ようやくこの小説の読み方がわかりました。
 あなたとは読者のことなのですね。読者に語りかける小説自体はわずかだけですが読んだことがあります。しかし、このように読者と共に進む小説は今回がはじめてでした(ゲームブックとかは知識としてあるだけで、実際には読んだことないです)。

 あと、おそらくこの独特の世界観も、理解をさまたげる原因になっていたのだとおもいます。(いきなり《確率と確立の谷》とか出てきたから、うわあ……ってなってた)
 すみません。自分の読解力の無さを恥じるばかりです。

 ただ、理解してからはすごい。とてもおもしろい。こんな手法もあるのかとおどろいてばかりです。なにもかもが新鮮。世界観、文章、キャラクター(ヤンデレですね。かわいい!)などなど、これほど個性に満ちた作品は見たことがない。(あ、もしかしてこういうのってけっこうあるんですか? 勉強不足ですみません!)

 どこをどうすればいいか、ぼくにはまったくわかりません。指摘点、改善案などは少しも思いつきません。なにせぼくにとっては初めての型ですから、どのようにするのがいいのか想像がつきません。

 ぼくが言えることは一つです。
 とてもおもしろかった。感動しました。
 感想は以上です。失礼します。

(てかゲームブックって流行ったのけっこう昔ですよね……やっぱりえんさんって……)

日笠トモロウさんの意見 +30点2013年05月12日

 はじめまして。日笠トモロウといいます。
 作品を読ませて頂いたので、感想書かせてください。

○ 僕の好奇心をくすぐる言葉がめっちゃ出てきました! なんか、すごすぎです、なんか! 冒頭の『《確率と確立の谷》』の時点で引きこまれました! と言うか、いろいろ出過ぎて、ある意味焦らしプレイをくらった感じです。けれど、それらの固有名詞のチラ見せは、今作の世界観の不気味さやエキセントリックさをかもし出すのに一役買っていたように思います。欲を言えば、ひとつひとつお話として読んでみたいのですが……(笑)。
 個人的には作者レスで目に飛び込んできた、《世界外世界》と《奇戒王ジグ・ザグ》がめちゃくちゃ気になります。
 デビルハラマキ・内さんは、とんでもない設定厨ですね(褒め言葉です)。もっと読ませてください(笑)。

○ アルファシステムさんもスッテパーズ・ストップさんも存じあげないのですが、どことなく僕が敬愛している作家のにおいを感じました。セリフ回し――言葉の使い方とかからですね。いやぁ……すごい好みです。

○ どこをどう突けばデビルハラマキさんのためになるアドバイスになるのか、ぜんぜん見当たりません。困りました……。
 絞りに絞って助言をするならば、もう少し、世界観に統一感があってもよかったかなと感じました。いろいろな世界が広がってはいても、どこの世界からも共通するにおいがする感じで(もちろん比喩ですが)。

○ 『魔女』というワードは僕が追求している題材のひとつでもありますので、いい刺激になりました。良作をありがとうございます。

▽短い感想ですいません。かなり楽しい一作でした。
 それでは!

関羽萌え!さんの意見 +30点2013年05月13日

 始めまして、関羽萌え!です。
 ご作品を拝読させていただきました。楽しめましたよ。
 雰囲気たっぷりの世界観がいいですね。
 二人称の文章の、ナレーションも時々笑えて、小技が光っています。
 強いて言うなら、設定にやや入りにくいことでしょうか。
 私の頭が原因かもしれませんが(汗)
 では、感想は以上です。執筆、頑張ってください。

鍵入さんの意見 +10点2013年05月14日

 初めまして、鍵入と申します。拝読しましたので感想を。

 とりあえず、あまり楽しんで読むことができませんでした。なんでかと考えてみると、たぶん色んな要素や設定がとっ散らかって何の方向性も示していないからで、レスを読む限りそれは作者さんが意図的になされたことのようで、どうも私にこういう類のお話を楽しめる素地がないっぽいからです。
 とっ散らかしはするけど中心にはストーリーラインがしっかりあって散らかすのは余興、みたいな物語ならついていけるのですが、本作は散らかってるところにひょいひょい飛び移りながら進めていくので、終盤まで具体的にはベッドシーンまでずっとそれっぽい描写が並べ立てられているだけな印象でした。それっぽい描写が並ぶのでそこから「なんかイイ!」雰囲気を感じ取れる方にはとても楽しめる作品なのだと思います。

 全体は置いて部分を突くなら、魔女が魔女っぽくないように感じました。ひどく個人的かもですが。「魔女」というワードから期待されるような雰囲気を持たない、普通の女の子。魔女っぽいことはするんですけど、言動が。あー、でも、相応に「弱さ」を持たせないとラストみたいな爆発は書けないんですよね。でもでも感情爆発させちゃうと魔女っぽくないんですよね。
 あと、どうでもいいといえばどうでもいいんですが、孤殺のロードは男性なんでしょうか。男性として書かれているように見えました。が、こう、擬人化でない超越的な存在にとても分かりやすく性別が与えられていることに違和感がありました。評価には一切関係ないのですが、なんでこう書かれたのかが気になります。単にラノベ的要請でしょうか?

 落としてから持ち上げておくと「言葉が縁取られていない」「世界に溶けている」みたいな遊び心は好きです。好きなんですが、こういう発想が遊びにとどまって、これも「なんかイイ!」で終わってしまうのがもったいなかったなあと。なんとなく良い、ではなくて、理由の分かるスゴイ、まで高めてくれたら。でもそれって結局発想のすごさであってこういう雰囲気で押す作品ならではの良さではないんですけどね。というか結局落とすのですが。

 以下、誤字とか。

>理屈めいたなもの
:理屈めいたもの

>背中に背負う
:背中以外に背負えないのでは。

>生まれて始めて
:初めて

>この《確率と確立の谷》の中では、時間が経過するのと同時に、過去の時間が現在からの距離の2乗に反比例して短くなるでしょ?
:ガーデニングしようにも花が育たないような。

 それでは、失礼しました。

神咲ユイさんの意見 +40点2013年05月18日

 こんにちは、神咲ユイです。ごめんなさい。ちょっと感想が変になるかもしれません。そのくらい興奮しました。
 正直に言うと、以前に感想を読んだことがあったんです。で、日笠さん(私の駄作を全部読んで下さるような物好き……いやいや、ありがたい方です)が30点をつけてらっしゃったので内心内容が気になりながらも、「私のが20点止まりで、なんで30点とかつれてんすかー」って嫉妬して結局読まなかったんですよ。
 でも今日読んで、自分が完全に間違っていたことに気がつきました。凄いです。衝撃でした。
 まず文章力。私なんかとは桁違いです。言葉というものを、とても上手に使ってらっしゃるなと思いました。「あなた」という二人称を使った表現も面白かったです。
 それから内容ですよね。私の話のテーマは、「孤独」と「本当の自分」なんですね。この作品の「孤独」に関しては、特筆すべき点だと思いました。
 ここからは私の個人的な思想ですが、若干セックスに対する感性が違うかなと思いました。以前、「孤独」をテーマに長編を書いたことがあって、その時のヒロインは彼氏とのセックスを拒否するんです。「孤独同士のセックスはより孤独を深める、虚しい豚の戯れ」というのがヒロインの言い分です。
 あ、別に何にも作品とは関係ないです。徒然なるままに書いているだけです。ごめんなさい。

 それから伏線の張り方。自分が主人公なのに、伏線が作用するというもの凄い仕掛けです。まぁ、私もハラマキさんと性格が似ているのか、こういう作品の技巧面は述べないのですが、これは驚きでした。とても真似できないです。

 ハラマキさんの作品は、綺麗だと思います。そしてそれが非常に良い。これをどんどん生かして頂けたらと思います。ええと、綺麗というのは、ドロドロしてないってことです。でもそれだけじゃない。上手く言い表せないけれど、綺麗なんですね。私の話とは同じことを真逆に表現(私が勝手に思っているだけです)しているな、と。正直羨ましいです。本当はこういう話を書きたいけど、私には書けないんです。

 一応、辛口評価をする場所らしいので、気になった点を述べます。でもこの作品はそんな事が気にならないほどの破壊力があったという事は先に述べておきます。

 まず、全体的に文章が読みにくいかな、と。雰囲気に合っていて、読んでいくうちに慣れてしまう(のが更に凄い)のですが、冒頭が取っ付きにくかったです。
 それから魔女が主人公に言い寄るシーン。15歳の女の子っぽさや、必死さを出したかったみたいなのは良く分かるのですが、俗語を連発するのは雰囲気と合ってるのかな、と思いました。

 ええと、それだけです。本当にそれだけです。凄いです。
 50点を付けられると、このサイトではあんまりよろしくないみたいですが、50点を付けられる方の気持ちがよく分かります。
 と言っておきながら、上記の理由と、嫉妬と、次回作への期待を込めて40点とさせて頂きます。なんか最後まで滅茶苦茶でごめんなさい。

 普段は掌編の方みたいですが、是非短編の方にも投稿しに来て下さい。私個人的には高得点入りして欲しいので、短編の間でも他の方に感想を投稿して下さい。あー、凄い変なこと言ってるわー。まぁ、そのくらいの価値がある作品かな、という事です。

ユウキさんの意見 +30点2013年05月20日

こんにちわ。ユウキです!
拙作に二十点もくださった方はどんなの描いてるんだろ?
と思って、覗いてみました。
読了して、思いました。
なんだか、ふんわりしたお話だなと。
それでいて、ぐっさりと突き刺さるようなトゲも感じました。
まるでワタアメの中にたっぷりと画鋲をからめているような印象です。
甘ーい! と思ったら、ぐさぐさ! みたいな。
世界観は、自分の好みでした。わたしは言葉遊びで作られた作品が大好きなんです。
最後の、少女がぐちゃぐちゃに混ざり合いたいということを言ってる辺りを読んで、いいなあって思ってしまったのですが。
わたしは一応精神をほんとに病んでる人なんですが、自分の表現力に難があるので、ぐっちょぐちょの表現ができないことを悩んでます。
まあ、この女の子はただのさびしがり屋だと思うんですが。
参考になると同時に、アドバイスは大事にさせていただきます。いい作品をありがとうございました!

たまさんの意見 +30点2013年06月25日

読ませていただきました。

一読して、作者様独自の世界をそこに見出しました。
続きが気になり、下にスクロールする手が止まりませんでした。
日本という国を別の視点から捉えるとこんな感じになるのか、など
色々と興味が尽きない話題ではありました。実際に遠くでこういうやり取りが
あるのだと考えると、どこか面映ゆいような気持ちになりますね。

それはさておき。
弧殺のロードは何とも不思議な存在でしたね。
人間とは異なる存在でありながらも、やり取りを見ていると
結構人間に近いところがあります。というか、人間そのもの。
孤独を殺す旅をしていますが、やっていることは神様のそれでは
なくて、やや俗っぽい人間の仕業かなと思いました。特にラストで。

こういう、ファンタジーっぽいんだけどファンタジーではない話は
どのように見ていけばいいのか戸惑うところもあるのですが、
全体的には好みの世界観でした。もう少し、話の内容を整理されると
より素晴らしい作品になるのではと思います。

展開の仕方について目新しいものはなかったように思いますが、
御作は独特の着眼点を上手く使って話を読ませるところに長けているように思いました。
読んでいて、色々と想像が膨らんでくるのもいいですね。

かなり遅くなってしまいましたが、感想は以上です。
執筆、お疲れ様でした!

YUOさんの意見 +30点2013年07月08日

こんばんは!
まず感想に入る前に。
影響を受けたといわれていたであろう作品を、いくつか触りました。
ついでに小説もいくつか読みました(「ニワトリ」がツボだった)
かなり独特で、暗く、切なく、明るく、でも芯がある。そんな感じでした。
そして、ややこしくて壮大でした。
個人的に、好みな部類でした。(「これが○ ○ の成り立ちである」という言い回しの原点も見ました)

御作のつくりも、それに似て独特だったので、事前情報無しではちょっと点数を付けにくかったかもしれません。
でも今回はちゃんと世界観に入り込むことができました。(魔女のベッド上での乱暴な言葉使いなどは、知らなかったら抵抗感を感じただろうと思います)

感想にて「アルファシステムに影響を受けた」と書かれていましたので、「そうか、それで色んな世界を混ぜ合わせたような作風なのか」と納得しました。
まあ、私は聞きかじった程度の知識しかないのですが。

ファンタジーな世界と、聞いたことある名称や道具、専門用語、詩まで入ってて、好きなものをたっぷり詰め込んだのだろう、と感じました。
そして、それを追体験させるような語りが、まるでゲームをしているような気分でした。

そして、切ないオチ……
雰囲気がでてました。主人公の優しさや孤独感も心に響きます。

ちょこっと、いちゃもんをつけるなら。
所々にゆるい感情が混じってましたけど、そこは読者様の共感を狙ったということでよろしいでしょうか?

と、まあ色々言いましたが、かなり面白かったです。
読む側でも色々と収穫がありました。
それでは、これにて失礼いたします。

本moto元さんの意見 +30点2013年07月15日

はじめまして本moto元といいます。
とても興味をそそられる設定の連続に、どきどきわくわくさせてもらいました。
あなたというキャラクターの設定はちょっとよくわかりませんでしたが、そういう細かいことを感じさせない凄さがありました。
個人的にさらなる続きを見てみたいと思いました。
言葉の使い方なども楽しかったです。
つたない感想ですが、これで失礼します。