ライトノベル作法研究所
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  5. PRIDE FLY HIGH公開日:2014年04月27日

PRIDE FLY HIGH

肉球さん著作

ジャンル: 友情・成長

――皆様、ようこそお集まりくださいました
 今より皆様にお聞かせしますは、ひとりの勇者の物語。
 さかのぼること十有余年、まだこの国が戦火に包まれていた頃のこと。我らが故郷、シャーファンベツクの大海を、我が物顔で突き進む、禍々しい一団がございました。
 ご存知の方もいらっしゃるでしょう。あの憎きファオの大艦隊、率いるはファオにその人ありと詠われた《死神提督》ドブニツク。
 ファオの汚い策略に、我らが連合艦隊は遥か遠洋へとおびき寄せられ、無力となったシャーファンベツクの港町は、その蹂躙を待つばかり。
 町を守るは二門の古い大砲に、未熟な少年兵が五〇足らず。そして彼らを鍛える任務を受けた、この物語の主人公、英雄ギュスターヴ軍曹にございます。
 彼は未来の勇者たちを、過去の勇者たちを、今を生きる女たちを守るため、愛するアイリーンに別れを告げて、独り決死の戦場へ――

 他人なんて信じない、と殴られながら思う。
 目つきが生意気、いつも下を向いていて暗い、そばかすが汚い、チビがごちゃごちゃ言うな、馬鹿は黙って言う通りにしろ。
 聞きあきた、と思う。
 結局、僕を殴る理由なんて何でもいいんだろう。嫌いだからいじめる。それだけだ。
「ほら、立てよ! 弱虫パイク!」
 赤毛のマイルズ、この辺りの悪ガキをまとめてるデブだ。そいつが僕を踏んづけながら、何やらわめいてる。
 汚れて破けたシャツとズボン、家に帰ったらまた叱られるにちがいない。
「おい、いいかげんにしろよ。亀みたいに丸くなりやがって、そういうとこがムカつくんだよ」
 そう言って僕の脇腹を蹴りあげる。僕は吐きそうになりながらも、うずくまって動かなかった。
「ちょっとはやり返して来いよ。面白みがねーなぁ」
 何が面白みがないだ。僕が立ち上がって殴りかかろうものなら、後ろに馬鹿ヅラ下げてつっ立ってる三人が、喜んで参戦してくるじゃないか。
 この前みたいに、僕の茶色い髪の毛が気に食わないとか、適当な理由をつけて。
「まぁ、仕方ねーよな。こいつ友達いないし、俺らに逆らったら本当に一人になっちまうからなぁ」
 ぎゃはは、と下品な笑い声。でも僕はそんな安い挑発には乗らない。
 ひたすら頭と膝を抱えて身を守る。
「いつまでも丸くなってると、ボール代わりに転がすぞ? ほら土下座して俺の靴をなめろよパイク。そしたら今日はもう勘弁してやる」
 はは。笑えない冗談だ。お前の体の方がよっぽどボールみたいだよ、マイルズ。
 ……これが僕の日常だ。いつも殴られ馬鹿にされる。何も楽しいことのない、嬉しいこともない毎日。
にじんだ涙で目の周りは泥だらけ、体は生傷だらけ、これが僕。
 だから僕は他人を信じない。殴られている僕を笑って見過ごす奴らを信じない。そんな奴らと友達になんてなるものか
 靴をなめて終わりなら喜んでなめる。反撃なんて馬鹿のすること。黙って言う通りにすればこいつらも、すぐ飽きてどっかへ行くさ。
 そう、思っていた。

「ぬうぉおおおおおおおおお!」
 聞きなれない叫び声が聞こえたのは真上からだった。
 次いで、ごづんっという何かがぶつかり合う鈍い音。僕への暴力が止み、唐突に辺りが静かになった。僕はおそるおそる顔を上げる。
 辺りをもうもうと舞う土煙。目をこすってよく見ると、すぐ前にマイルズがデカい図体を仰向けにして伸びている。
 取り巻きたちは呆気にとられて僕の隣を凝視していた。
 僕も彼らの視線の先へと目をやる。すると僕の身長の半分くらいだろうか、黒い何かがひくひくと痙攣しているのを発見した。
「おい……。何だよあれ」
「空から降ってきたよな。もしかして爆弾か何かじゃないか?」
「でも、なんか動いてるぞ……?」
 口々に言って、遠巻きにその黒い何かをとり囲む三人。
 僕を含め、全員が固唾をのんで様子を見守る。
 一分ほどの間、沈黙が場をつつんだ。
「……おい」
「……よし」
 三人は頷きあうと、一番身長の高いヤンが意を決したように前に出る。彼は足元に落ちていた棒切れを拾いつつ、ゆっくりと近づく。そして、深呼吸を一つしてから、そっとそれをつついた。
……と、同時に黒い塊は飛び起きる。
「うわああああああああああああ!」
 慌てて元の位置まで飛びすさるヤン。
「……いづづづ。一体、何がどうなったのか」
 くぐもった声が響く。明らかに、僕達の声じゃなかった。
 きょろきょろと辺りを見回して、右手……いやヒレだ。右ヒレでぱんぱんと埃をはらう。
「ふむ。ここは町の入口だな。これではゆっくり落ちただけだ。飛んだとはいえぬ」
「お、おい!」
 ヤンは明らかに怯えながら、黒い塊……どう見てもペンギンにしか見えないそれに向かって怒鳴る。
「む? 何か御用かな?」
「……な、なんだこれ。しゃべってやがる」
「ペンギン……だよな?」
 ヤンの後ろで肩をよせあい、ぼそぼそと何か話しあう取り巻きたち。
「お、お前は何だ! パイクのペットか!?」
「ほう? 初対面の相手をペット呼ばわりとは、無礼な奴だ」
 黒い体に白いお腹、黄色いくちばしと短い足、頭には同じく黄色の飾り羽。光を帯びたつぶらな瞳は右にしかなく、左目には縦一文字の古い傷が走っている。
「我輩の名はギュスターヴ。誉れ高き軍人である。ペット扱いはやめてもらおう」
 彼は猛々しく叫んで、胸を張った。

 結局のところ、よく分からないものっていうのは誰だって怖いんだ。
 見たことがないもの、会ったことがない人。黒いリンゴがあっても誰も食べようとは思わないし、海が茶色かったら皆で何があったと騒ぐ。
 黒や茶色っていうのはチョコレートの色なんだ。まぁ、僕はホワイトチョコも好きだけど。
 しゃべるペンギン。そんなものは、生まれてから十一年、見たことがなかった。
 それは僕も僕をいじめていた奴らも同じはずだ。
「ば、化物! 何しにきやがった! 俺達とやろうってのか!」
 だから、こう口走っても当然だ。
 実際、僕も化物って叫びたかったけど、あいにく初対面の相手にいきなり悪口を言うほどすさんでない。念のために言っておくけど、怖くて声がでなかったとかでは、絶対にない。
「やれやれ。ペットの次は化物か。本当に無礼な奴らだ。なっておらん」
「……てめぇ、ゆるさねぇぞ」
 頭を押さえながら、マイルズがよろよろと立ちあがる。……最悪だ。
「ペンギンのくせに、なめた真似しやがって」
「……ふむ? 我輩は別に貴様をなめたりはしてないぞ? そんな汚いツラはなめる価値もない。顔を洗って出直すがいい」
「うるせぇ! なんだか知らねーが、つかまえて売り飛ばしてやる!」
 マイルズは言うが早いか、ヤンから棒切れをひったくると、ペンギンに向かって振りおろす。
……でもそれがペンギンに当たることはなかった。
 なぜって、気付いた時にはマイルズの手から飛ばされていたから。
 ペンギンの短い足で蹴りあげられた棒きれは、くるくると空中で何回転かしてから、硬直するマイルズの頭に落ちてきた。
「……え? あれ? 何で?」
 棒の当たった本人は、何が起こったのか分からない様子。
「寝てろ」
 つづいて響く、びたん! という乾いた音。間髪入れず飛びあがり、ペンギンがマイルズの頬を引っ叩いたのだ。
 マイルズは、はぁん! という気の抜けるような悲鳴をあげて、錐もみしながらすっ飛んだ。
「愚か者め。これより喧嘩を売る時は、相手を見てからにするがいい」
 ペンギンに言われたくはないだろう、とほんの少し同情する。
 彼は何事もなかったように、今度は残りの三人へと向きなおった。
「多勢に無勢で狼藉を働こうというのか? お前たち」
 鋭い視線。ペンギンの言葉に、金縛りが解けたように三人が反応した。
「こ、この野郎! ペンギンのくせに何してくれやがる!」
「二度と立てなくなるまでぶん殴ってやる!」
「いや、それより剥製にしてやろうぜ! で、マイルズの親父さんの部屋に飾ってもらおう」
 口々に威勢のいい言葉が飛びだした。……裏腹に体は後ずさってるけど。
 ペンギンは小さなため息を一つ。くちばしの付け根を少し持ちあげると、不敵に笑う。
「ふ、なるほど、よく分かった。やはり、仕置きが必要だな」
……あとはもう、でたらめだった。数のハンデ、大きさのハンデをものともせずに、ペンギンは三人をあっという間に叩きのめした。三者三様の、ひぃん! ふぁん! ほぉん! なんてやっぱり気の抜けた声をあげて、地面に転がされる。
 僕はその光景を、ただ黙って見ていた。
「……さて、最後になったが君の番だ」
「へ?」
 初めてペンギンと目が合う。隻眼の瞳は黒く透きとおり、吸いこまれるように深い。
「ふむ。どうやら大した怪我はないようだな」
「え……? う、うん」
「クワックワックワッ! 怖がる必要はない。我輩は、誰彼かまわず殴りかかる乱暴者ではないぞ」
 ペンギンはよちよちと僕に近づくと、右ヒレを無造作に差しだした。
 よく見ると、左側のヒレは根元の辺り……人間でいう二の腕の辺りで千切れている。
「先程も言ったが、我輩の名はギュスターヴ。ここで会ったのも何かの縁だ。以後よろしくたのむぞ、少年」
 グンソーと僕の、それが出会いだった。

 マイルズ達を木陰に寝かせてから、僕たちは町はずれにある一本杉の下までやってきた。
 小高い丘の上にある一本杉は、すぐ裏手が崖であり、シャーファンベツクの穏やかな海を臨む。
 木の根元にあるツルツルの岩に腰をおろすと、ギュスターヴと名乗ったペンギンは咳払いをした。
「さて、ここまで来れば問題なかろう」
「何でこんなとこまで来たの?」
「あの場合、仕方あるまい。こちらに非がないとはいえ、あのままあそこにおっては、奴らが目を覚ました時に面倒なことになるであろう」
「まぁ、間違いなく怒り狂って襲ってくるか、悲鳴をあげて逃げだすだろうね」
「……ぐむぅ」
 目立つのは本意ではない、とペンギンは言った。まぁ、しゃべってる時点で目立つもクソもないと思うけど。
「なんにせよ、助かったよ。まぁ、明日学校で会ったら、今日の倍殴られるだろうけど」
「……ふむ。もしや、余計なお節介を焼いてしまったか?」
「いや、単なる八つ当たりだよ。自分より強い奴を殴るのは怖いだろ? だから僕を殴って憂さ晴らしってことさ」
「ほとほと性根の腐った奴らだ。大体、君の親は何も言わんのか」
 ばたばたと右ヒレを振って怒りをあらわにするペンギン。
「いないよ、そんなの。二人とも戦争で死んじゃった」
「む……、そうか。では、家族は?」
「親戚のおじさんの家に住んでるけどね。あんまり」
 上手くいってない、という言葉は飲み込む。僕の表情を見て察したのか、彼はばつが悪そうに目をそらした。
「だからといって、君も殴られてばかりではいかんぞ、少年。奴らが弱い者を襲うのならば、君が強くなるしか道はないのだ」
「会ったばかりでお説教? やめてよ、そういうの。聞きあきてるんだからさ」
「ぬぅ……」
「ところで、何しにあそこに来たの? しかも空から」
 僕が話を変えると、ペンギンの瞳に嬉しそうな光がちらつく。
「ふふふ。気になるかね、少年。そうであろう、そうであろう。ハトやカラスが降ってくるのとはわけが違うからな」
「別に、そこまで気になるわけじゃ……」
「他人においそれと簡単に話すわけにはいかぬが、事情が事情だ。少年がそこまで聞きたいようなら、仕方あるまい」
「いや、だからね……」
「き・き・た・い・であろう?」
 鼻先に鋭いくちばしを突きつけられる。ペンギンにすごまれ、今度は僕が目をそらした。
「……そうだね。教えてくれる?」
「よかろう!」
 岩にオンステージし、ペンギンは胸を張る。僕は少しげんなりしながら、その前であぐらをかいた。
「我輩はギュスターヴ軍曹。こう見えて、れっきとした軍人である」
「軍人……ねぇ。軍曹のわりにはずいぶんと偉そうだね」
「正確には元軍人、だがな。偉そうなのは生まれつきだ。」
「いくら十数年前まで戦争中だったとはいえ、ペンギンを雇わなきゃならないほど僕らの国の軍隊は人手不足だったの?」
「……昔の話だ。我輩は少々特殊な任務についていたからな。知らぬのも無理はない」
 自重気味にうつむくペンギン。僕は胸中で嘆息した。
「で、そのギュスターヴさんが、なぜ空から? 訓練か何か?」
「訓練と言えば訓練だが、軍とは関係がない。あくまで個人的なものだ」
「個『人』ってかペンギンだけどね……」
「うむ。個鳥的な問題だな。端的にいえば、我輩は空を飛ぶための訓練をしている」
……なるほど、空を飛ぶ。ペンギンが。
「ふざけてるの?」
「いいや、大真面目だ」
 僕は聞いているのが馬鹿馬鹿しくなって、かぶりを振る。
「あのさ。なぜ空を飛びたいのか知らないけど、君は……」
「ギュスターヴ軍曹、だ。軍曹でかまわん」
「そう? じゃあ、そう呼ばせてもらうよ。で、グンソーは、本当に空を飛ぼうと思ってるの? ペンギンなのに?」
「うむ。困難な道のりだが、必ず達成してみせよう。我が命をかけて」
「どうやって?」
 グンソーは待ってましたとばかりに岩の裏から、何かを引っ張り出した。
「これだ。もっともこれは失敗作だがな。先程まで使っていたものは、落下の衝撃でバラバラになってしまったから、今はこれしか残っておらぬ」
 不揃いな木の枝を組み、薄い布を張っただけの、パッと見ガラクタとしか思えない代物。
 グンソーがそれを背負うことで、やっと正体が分かる。
 それは不格好な翼だ。わずかに残った左ヒレの付け根を動かすと、バタバタと音を立てて羽ばたく。小さな穴がたくさんあって、見ただけで空を舞うなど夢のまた夢だと分かる。
「……本気?」
「これで二度目だが、我輩は大真面目だ」
「何のために? ペンギンは海を泳ぐものだよ。空を飛ぶものじゃない。今だってグンソーの仲間は、氷の上で寝そべっているか、海の中を泳いでいるんじゃないの?」
 グンソーは僕の言葉に悲しそうにうなだれる。
「この有様では、もう海を自由に泳ぐことはかなわんよ。軍務で片手を失って以来、海は我輩の家ではなくなった。そして、泳げぬペンギンを受け入れる仲間などおらん」
「それなら、空を飛ぶ訓練じゃなく、海を泳ぐ訓練でもすればいいじゃない。羽を生やそうとするよりは、手を生やそうとする方が現実的だ。そうでしょ?」
 背負った翼をそっと降ろし、ペタペタと崖の縁へとグンソーは歩を進める。
「確かにそうだ。仮に翼が生えたとしても、我輩はどうやって空を飛べばいいのか分からぬ」
 だが、と海を見つめながら、グンソーは続けた。
「愛する者が死したとて、おいそれと代わりが見つけられるものかね? 少年」
「……どういうこと?」
「仮に、とても出来のいい義手を作れたとしよう。しかし、それはあくまで義手だ。かつて共に海を駆け抜けた、我が手とは違うものなのだ」
「よく分かんない……」
「少年には少し難しかったかな。感傷、というやつだ」
 グンソーはこちらに向き直る。
「誤解してほしくないが、我輩は別に手を失ったことを後悔しているわけではない。自分なりに最善をつくした結果であるし、何よりこうして今も生きているのだから」
「でも、何も空を飛ぼうとしなくても……」
「いや、我輩には意地がある。手を失った我輩を、使えぬとつまはじきにした元仲間たち。奴らを空の上から見下してこう言ってやるのだ。『どんなもんだ!』」
「……ふふ」
「お、ようやく笑ったな、少年。そういえば、名を聞いていなかったな」
「……僕はパイク」
「パイク、か。良い名だ。それは誇っていい」
 不思議だった。最初は軍人だの空を飛ぶだの、全く信じていなかった僕が、いつの間にかグンソーの言葉に耳を傾けていたことが。
 そもそも、しゃべるペンギンなんてものが変てこ過ぎて、感覚がマヒしてしまったのかもしれない。
「また来るといい、少年。しばらく我輩は、この辺りで空へと挑んでいるだろうから」
 別れ際のグンソーの言葉に、僕はためらいながらも頷いた。

「昨日の言葉通り、見事にやられたようだな」
 グンソーは僕の顔を見て、少し呆れたようだった。
「まぁ、分かってたことさ。いてて」
「ほら、動くな。薬がぬれんだろうが」
「これ、本当に効くの? 動物専用とかじゃないだろうね? いだっ!」
 ヒレで僕の背中をびたんっと叩く。どうやら治療は終わったらしい。
「安心しろ。軍人だったころ、人間の仲間からもらったものだ。しかし、この町の学校では子供に礼儀というものを教えんのか? 助けてもらった者の態度ではないな」
「少なくとも、ペンギンに対するマナーは教わってないよ」
「……ほほう、よかろう。ならば我輩が少年に、Mの文字から順に叩きこんでやる」
 物騒な空気を感じたので、僕は話をそらすことにした。
「ところで、グンソーの調子はどう? 訓練は順調?」
「ふ。今回だけはごまかされてやる。首尾は上々だ。見ろ」
 グンソーはさっきから視界の端に、でん、と置かれていた何かを指した。
 ああ……やっぱりあれ、翼だったんだ。僕はこめかみから、じとりと嫌な汗が一筋たれるのを感じた。
「念のため聞くけど、それはこの前の落下を教訓に、どんな改良を加えたの?」
「よくぞ聞いてくれた!」
 グンソーはその場でステップを踏むと、つまさきで回転。
 勢いはそのままに岩の上に飛び乗って、歌うように解説をはじめる。
「前回の我輩は、空という巨大な敵に対してあまりにも無防備であった。しかし、それゆえに悟った。いや、啓示を得たというべきだろう。驚くなかれ、鳥類にも神はおわすのだ!」
「……どうでもいいけど、グンソーって軍人っていうより芸人だよね」
 僕の言葉はさりげなく無視。説明にも次第に熱がこもっていく。
「完璧に物事をこなしても、大自然を相手にする以上、絶対はありえない。つまり求められるのは、あらゆる突発的な事故への柔軟な対応力!」
「一応、最後まで聞くよ」
「わかるかな? 少年。我輩は前回、唐突にふいた横風にあおられ、体勢をくずした。翼が真横をむいた瞬間、翼膜に穴があき、どうしようもなくなってしまったのだ」
 つまり! とグンソーの顔がせまる。近いし、怖い。
「翼が二枚しかないから、いざ壊れると苦労する、ということだ。逆説的にいえば、常に予備の翼をそなえていれば、事故がおこっても恐れる必要はない!」
「……ああ、なるほど」
 だから、あんなに大量の翼がくっついてるわけね。ざっと三〇枚近いだろうか。固定器具の周りに翼がぐるりと円を描いてぶらさがっている。あれじゃ、見た目は羽というよりマントに近い。
 翼を広げれば、おそらく立派な傘、あるいは獅子のタテガミのようになるだろう。
「見たまえ、少年。本邦初公開、これが世界ではじめて、ペンギンを空の眷属へとかえることになる翼。名付けて《新境地》!」
 僕はそっと空を見あげた。雲一つない青空、風は東南から西北、微風。頬をなでると、少し傷が痛んだ。
「人の言葉をしゃべれても、所詮は鳥か……」
「なぜっ!?」
 取り乱すグンソー。鳥だけに……、いや何でもない。
 僕は彼が翼だと主張するガラクタの前に腰をおろした。
「なるほど。三六〇度、全て翼だから、どうやって背負うんだろうって思ったんだけど、頭からかぶるんだね」
「いかにも! 大きさは我輩の体にぴったりと合うように作ってある」
「地味に器用だよね、グンソー」
「当たり前だ。教練では、もやい結びから、シーツのたたみ方まで、手先を使う作業は多岐にわたるのだ」
「ところでさ。これってもう、使ってみたの?」
「いや、これからだ。少年が来るかもしれないと思ったのでな」
 じゃあ、と僕はグンソーを無造作に持ちあげると、新境地とやらに頭からつっこんだ。
「ぬおっ! いきなり何をする」
「論より証拠だよ。飛んで見せて」
 僕がうながすと、グンソーは逆立ちでしぶしぶ承諾した。
「ふむ、まぁよかろう。出来ればもう少し勿体つけたかったのだが……。行くぞ、新境地! 我輩をはるか高みへ誘え!」
 勇ましい言葉。そして、かけ声。グンソーは気合をこめて、とー! とか、やー! とか、叫んでいる。僕は小鳥のさえずりを背中ごしに聞きながら、ばたついているグンソーの両足へと生暖かい視線をおくる。
 次第に、彼の言葉が激しさを増していった。
ガッデムとかサノバビッチとかシットとかフ〇ックとか、僕は健全な少年だから意味はこれっぽっちも分からないけど。
とにかく、いろいろ騒ぎながらも、微動だにしない新境地を眺めていた。
 一分、二分、五分、一〇分は過ぎたろうか。不意にグンソーは動くのを止め、ぼそりと呟く。
「……重さは重要だな」
「自分で気付いただけでも上出来だね」
 僕はグンソーを再び持ちあげた。
「言っていたじゃない。自分の手に代わりはないって。鳥の翼だって一緒だと思うよ」
「まさしくその通りだ」
「なら、自分の命をあずけることができる、ただ二枚の翼を作るべきだよね」
「……返す言葉もない」
 グンソーを地面におろすと、その目は若干うるんでいる。
「まさか、少年に語った言葉が自分に返ってこようとは」
「まぁ、良かったじゃない。今日はムダな怪我をせずにすんだよ」
「……少年、頼みがある」
 グンソーはその瞳に真剣な光を宿して、僕を見すえた。
「我輩を手伝ってはくれぬだろうか?」
「いいよ」
 僕が即答したので、グンソーは拍子ぬけしたようだった。
「む、い、いいのか? そんなに簡単に」
「もともと、そのつもりだったんだ。放っておくと空を飛べるのはいつになるかって思ってたし。それにグンソーと一緒にいれば、いじめられることもないだろうしね」
「なるほどな。ギブ&テイクというやつか」
「そうだね。それくらいの見返りはいいでしょ?」
「ふむ、確かにただ手伝わせるのも気が引けるところ。よし! 訓練のかたわら、我輩が少年を立派にきたえあげてやろう!」
……はい?
「いや、僕はそんなこと全く期待しては」
「みなまで言うな。腕がなるぞ。我輩は未熟者をきたえることが、三度の飯より好きなのだ!」
「だから頼んでな」
「いいな。学校が終わり次第、毎日ここに来るのだ。その生っちろい体が日に焼けて真っ黒になるのを覚悟するがいい。分かったら語尾にサーをつけろ! クワワッ!」
「聞けよっ!」
 グンソーと会って二日目。なぜか僕はグンソーの部下になった。

――ギュスターヴの思いつき、それは至極単純でございました。
 敵の艦隊は、少なく見積もっても二〇隻。正面からやり合うなど、正気の沙汰ではありません。それは彼が優秀な軍人でなくとも分かること。
 彼はまず、シャーファンベツクの岩壁に多くの篝火を焚かせます。
 篝火は夜の闇に小さく揺れて、艦隊の目をほんの少しずらすことでしょう。
 灯りが消えれば、篝火こそが目的地となるのです。
 そうして、露出した艦艇の横腹へ、それもドブニツクの乗り込む指揮艦艇に、軍曹は愛機である《晴天》に積めるだけの爆薬を積みこんで、体当たりを食らわせようと考えたのでございます――

「誇りとは何か、知っているかね? 少年」
「さぁね、知らないよ。でも、今から話してくれるんでしょ?」
 僕は骨組となる木の枝を削りながら答える。グンソーは翼膜に使う布をたたんでいる。
「それは空に挑んだ証だ。試みが失敗に終わった時、満足感と共に我輩の体を包むもの……それこそが!」
「まさかとは思うけど、埃のことを言ってるの?」
「……」
 さりげなく目をそらすグンソー。どうやら正解だったらしい。
「グンソーってもしかして、僕が思ってるよりおっさんなんじゃ……」
「年齢など飾りだぞ、少年!」
 グンソーは背中を向けたまま立ち上がる。
「見よ、このぴんと伸びた背筋。大切なのは心の持ちようなのだ。我輩自身が少年であると望めば……」
「いくつ?」
 僕の追い打ちに、グンソーの背中がびくん、と震える。
 無言で腰をおろすと、今度は布を広げ始めた。僕たちの間の沈黙を、作業の音だけが埋める。
 しばらくして、心なしか肩を落としてからグンソーは口を開いた。
「……大切なのは心の持ちようなのだ」
「そうだね」
 微妙な時期なのかもしれない。僕はこれ以上の追及はやめておいた。
 再び作業を始めてから、ふと思いついたことを聞いてみることにする。
「そういえば、グンソーって何軍だったの?」
「何軍?」
「陸、海、空とあるじゃない。やっぱり海?」
「うむ……そうだな。空軍、だな」
「空軍だって!? ペンギンが?」
「あ、ああ」
「一番大変だった任務は?」
 グンソーは少し考えるように空を見あげてから、不意に震えだした。
「……大砲……赤い火……怖い」
「ど、どうしたの?」
「いや……何でもない。心の傷がうずいただけだ……」
「ごめん、聞いちゃいけなかったみたいだね」
 グンソーは震えが止まってから、今度は僕に質問を投げかける。
「ところで少年。我輩はあと何回この行為をくりかえせばよいのだ?」
「ん? ……うーん」
 グンソーの作る翼の最大の問題点は、作りの荒さにあった。ペンギンが片手で作業するんだから当然だ。骨は歪んでいるし、長さもまちまち。こんなんで飛べるわけがない。
「すでに百回広げて、百一回たたんだのだが……」
「考えちゃだめだよ、グンソー」
 つまり、制作過程では完全に足手まといなんだ。
「心で感じるんだ」
「なるほど、心か!」 
 お尻をふりふり、上機嫌で作業に没頭するグンソー。
 日が傾きかけた頃、僕らで作った初めての翼が完成した。
「おお……! これは、今までのものより翼っぽいぞ! 翼感とでも言うべきか。ひしひしと伝わってくるではないか!」
「早速背負ってみてよ、グンソー」
「了解した!」
 グンソーの身長の倍近くある翼、それがヒレの動きに合わせて動く。ぴんと張られた翼膜、しなる骨、見た目はカモメの翼をイメージしてある。
「これなら……いけるのではないか!?」
「グンソーが作ったのよりはまともだね」
 うんうんと、目を輝かせながら頷くグンソー。はたと気づいたように、僕を見た。
「ところで少年。我輩の布をたたんだり開いたりするあの作業には一体どんな意味が?」
「そんなもんあるわけないでしょ」
「……へ?」
 固まった表情のまま、風に飛ばされるグンソー。僕はにこやかに手を振った。
 二人の滑りだしは上々と言えたのかもしれない。
 この記念すべき第一号《友情》と名づけられた翼は、グンソーが浮いてからわずか十秒で真っ二つにへし折れた。
 騙されたことに怒るグンソーと、腹を抱えて笑う僕。二人の間に芽生えかけた友情と同じように。

――唯一の問題点は、《晴天》号の離陸でございました。
 なにしろここは小高い丘に囲まれた港町。十分な距離のある滑走路などございません。
 加速が出来なければ、飛行機など翼を持った棺桶と同じ。
 ギュスターヴは熟慮の末に、部下である少年兵たちの助力を得て、愛機を高い崖の上まで運んだのでございます――

 茜色の空に、どちらからともなく溜息が出た。 
「……これで何度目だっけ?」
「ふむ、少年に協力してもらってから、ちょうど十度目の挑戦であろう」
 僕とグンソーは今日の分の墜落を終え、丘の上に広がる草っぱらに、大の字でひっくり返っていた。
「二日に一回は飛んでるから、三週間くらい?」
「いや、一週間ほど雨で飛べなかった時期があるので、すでに一ヶ月は経過したはずだ」
「中々上手くいかないね」
 僕は手元にあった、翼の切れっぱしを凝視する。
 それなりに頭は良いつもりだったけど、空を飛ぶっていうのは中々難しいことらしい。
 僕が手を貸すようになって、翼は少なくとも外見だけなら見ちがえるようになった、と思う。けど、問題は町の上空をふく浜風なのだ。
 いつ吹くかわからず、いつ止むかもわからない。どちらからふくのか、どのくらいの強さなのかも見当がつかない。まぁ、そんな荒れた空だからこそ、僕とグンソーの作った不細工な翼でも、ある程度空を舞うことができるんだろうけど。
 課題は山積みのようだった。
 僕が考え事をしていると、グンソーはむくりと体を起こして言った。
「よし。起きろ、少年。気分転換に、戦いの訓練だ」
「……あのさ。僕が戦わなくても、危なくなったらグンソーが代わりに戦ってくれればいいじゃないか」
「隙ありっ!」
 僕の言葉を聞き流し、グンソーは僕に馬乗りになった。
「うわっ、ちょっと!」
「まずはおさらいだ。相手が自分よりも図体がでかいときは?」
「危なっ! グンソー、いい加減に……!」
 振り下ろされるヒレをどうにか躱して……これが出来るようになるまでの二週間、頬の腫れが引かなかった……僕は答える。
「鼻っ柱をぶっ叩く!」
「正解! 本番では仕損じるなよ? では次! 敵が多勢の時は?」
 僕はお腹の上のグンソーを抱きしめると、そのまま草の上を転がった。
「ぬおおおおおっ! 目が回るっ!」
「指揮官を集中攻撃! あははははっ!」
「ぐうう、ギブギブ! ギブアップだ、少年!」
 一しきり暴れてから、再び横になる。暮れかけた空を一筋、星が流れた。
「ふふ、たくましくなったな少年。相変わらず、生傷は絶えないが」
「……グンソーに言われたくないよ」
「クワワッ。違いない」
 ふと手を見ると、指先が傷だらけなことに気づく。不思議なことに、少しだけ誇らしかった。
 グンソーはそんな僕をじっと見つめていた。けど、その表情は読めない。
「……何?」
「学校に行っていないようだな」
 グンソーがそう切りだすと、自分の顔がみにくく歪むのが分かった。
「関係ないでしょ。こっちの方が楽しいし」
「陳腐な言葉であると分かっていて言うが、逃げていても何も解決せんぞ?」
「うるさい!」
 寝返りをうち、グンソーに背を向ける。
 逃げることが悪いことなのか、と思う。やっと、それなりに楽しいと思えることをみつけたのに、否定されて少し頭にきた。それも手伝ってやってる相手からだ。
「……強い軍人さまには、弱い僕の気持ちなんてわからないよ」
「我輩が強い?」
「うん」
「少年、なぜそう思う? 我輩がデブと取り巻きを倒したからか? 空を飛ぼうとしているからか?」
「……うーん。多分、ちがう、と思う」
 僕は再び寝返りをうって、グンソーへ向きなおる。
「では、なぜだ?」
「上手く言えない。でも……そうだな。グンソーは、いつも戦ってる。そう思うから、かな」
「いつも戦っている?」
「初めて会った時も戦ってた。空を飛ぼうとしてる時も。グンソーは『空に挑む』って言ってたよね。だから強いって思ったんだ。」
「ふ、クワックワックワッ!」
「……恥ずかしいこと言ってるのはわかってるよ。これでも僕は真剣なんだけど?」
「いや、笑ってすまない。こんなに褒められることは中々ないのでな。少々こそばゆいのだ」
 グンソーは翼の残骸へ目を向ける。
「戦っているから強い、か」
「うん。怪我したら痛いし、失敗するのも怖い。実際、僕はマイルズの前じゃ借りてきた猫だ。殴られっぱなしさ。グンソーに教えてもらったことも生かせる気がしないよ。でもグンソーは違う。怖いもの知らずだなって思うよ」
 そして僕は弱虫だ、そう口にしたら、自然と少し、涙がこみあげてきた。
「……なぁ、少年。我輩は怖いもの知らずなどではないぞ?」
「……え?」
「我輩が怪我や失敗を恐れないのは、もっと恐ろしいものがあることを知っているからだ。手や目を失っても、こうして我輩は生きている」
「もっと恐ろしいもの?」
「ああ、そうだ」
「それは何?」
 グンソーは残された眼で真っ直ぐに僕を見すえた。
「……誇りを失うことだ」
「誇り?」
「そうだ。人はそれがあるから困難に立ち向かえるし、守るために戦うこともできる」
「……失うとどうなるの?」
「魂が血を流すのだ。体は失っても代わりを作れるやもしれん。怪我もいつか治る。だが、魂は……魂だけは義手も付けられない」
「……魂」
「だからこそ、我輩は誇りを守るためには命をかける。害する者と戦うことも躊躇しない。そのために自分を奮い立たせる力こそが『勇気』なのだ」
「……なら、僕は魂が死んでいるんだね」
 視界を膝で押しつぶす。グンソーの言葉はむき出しの僕の心に深く突き刺さった。
「聞いてくれ、少年。我輩は少年を守るためなら、喜んで命をかけられる。理由がわかるか?」
「……分からない」 
「友だからだ」
「えっ?」
 グンソーが僕の肩にヒレを置いた。
「友とは生きざまの現身。誇りそのものだ。友が傷つくということは誇りが傷つくということ、友が愚弄されるということは誇りが愚弄されるということ。ならばこそ、命をかけるのだ」
――君が我輩の誇りなのだ、パイク
 そう言ったグンソーの顔は、確かに優しく微笑んで見えた。
「だから、少年。君も怪我を恐れるな。戦いから逃げてはいけない。君の魂が死ぬということは、我が誇りが失われるということなのだから」
「でも、僕は……」
「保証する。君が勇気を持てば、決してあのでくのぼうに負けたりはしない」
 グンソーはそっと、僕に何かを手渡した。細い鎖に繋がれた、金属製のちいさなプレート。
 彫ってある文字は、潰れかけていて読めない。
「何、これ?」
「認識票……といっても分からんか。これは我輩が軍人であった証。我輩の存在を証明するものだ」
「……なんで、そんな大事なものを僕に?」
「お守り代わりさ。これを握っていれば、君も軍人として戦う気概を持てるやもしれん」
「……」
 勇気を持ってくれ、少年。友としての頼みだ。グンソーがそう言った時、僕は生まれて初めてペンギンがウィンクするのを見た。

――作戦の決行は刻一刻と迫っておりました。ギュスターヴは愛機の操縦桿を握りしめ、心は凪いだ海のごとし。
 そこへ、彼と最後の逢瀬をかわすため、アイリーン嬢がやってきたのでございました――


 次の日の朝、僕は町へ来ていた。翼に使う廃材を集めるためだ。
 足取りも軽く大通りに出ると、辺りがいつになく人でごった返しているのが分かる。
 不思議に思いながらも歩いていると、唐突に破裂音が耳を叩いた。
……花火だ。
「さぁさぁ、道行く嬢ちゃん、坊ちゃん、旦那さま。そして美しい奥様方! 西はファオより公演を終えて、バイラム一座が帰ってきたよ!」
 噴水広場に人だかりができている。その中央で、派手な民族衣装を着たおじさんが、声をはりあげている。
「バイラム一座?」
 僕はその声がはっきりと聞き取れるくらいまで近づいた。
「目玉は世界で唯一の演目、ペンギンの火の輪くぐりだ! こいつを見た日にゃ、お肌はぴちぴち、体も健康、果ては死ぬまで思い出し笑いときた! 見ないと損だよ! 今ならお子さんの分のお代は結構! さぁ、寄ってってくれ!」
 言って、ビラを空へ向けてばらまく。僕は足元に落ちてきた一枚を拾う。そこには、グンソーに良く似たペンギンの絵が描いてある。当然、目は二つあるけど。
「ペンギンの芸……か」
 なるほど、騒ぎの原因はこれか。
 改めて通りを見渡すと、親子連れが港の方にある空き地へと向かっている。ビラによれば会場はそこだ。
「グンソーのこと知ってるペンギンがいたりして」
 普通に考えたら、可能性は低い。でも、もしグンソーのことを知っているペンギンがいたら、話を聞いてみたかった。
「まぁ、しゃべれるわけないんだけど」
 僕は自分の考えに苦笑する。
「土産話にはなるよね。タダみたいだし」
 僕は廃材集めを一旦やめ、空き地へと向かう人の波に加わった。
 
 空き地に設置された巨大なテントに入ると、中は薄暗く、かすかに魚の香りがした。
 ぐるりと階段状になった席がテントの半分を占め、ステージを見下ろす形になっている。
 その中を響きわたる声。背を軽く押され、僕は慌てて割りあてられた席へ腰掛ける。
 ステージに目をやると、どうやら最大の見せ場には間に合ったみたいだ。
 舞台の前に立った語り部の声にも熱がこもっている。彼が舞台端を示すと、そこには美しい少女が立っていた。
『なぜなのです! なぜ、貴方がたった一人、死を受け入れてまで戦わなければならないのでしょう! 私を連れて逃げてください。私が愛する貴方のためではなく、貴方が愛する私のために。そう生きたとして、どうして貴方を責められましょう?』
 少女は両手を祈るように胸の前でからませ、悲痛な叫びをあげた。

――肩で切りそろえられた金色の髪を振りみだし、青い瞳は涙にぬれて、彼女は必死にすがりつきます。けれど男の黒い瞳には、すでに決意の光がやどり、愛する女性の肩を抱き、穏やかな笑みを浮かべてすらいたのです――

 語り部は感極まった様子で、今度は反対側の舞台端を指さした。そこに立つのは、あのビラの絵そのままの姿のペンギンだ。
『行ってくる』

――最期の言葉は部下のために残されました。アイリーンの悲しみを背に受けながら、振り返ることもなく――

 語り部はそこまで言ってから、手をパンッと叩く。同時にテント内を照らしていた松明の火が一斉に消える。ざわめきが広がり、僕は暗闇の中で辺りを見回した。
 時間にして十秒くらいだったと思う。不意にステージの上が明るくなり、少し目が眩む。
 やがて目が慣れてくると、ステージの上には二つのものがあった。
ペンギンの立っていた辺りには、飛行機をかたどった、翼の生えた大砲。少女の立っていた辺りには赤く燃え盛る火の輪だ。
 ペンギンはヘルメットをかぶると、大砲の砲口へ、危うく落ちそうになりながらもすべりこむ。
 少女は観客に向かって手を振ってから、大砲の後ろにある導火線へと松明を当てる。
 それを確認してから、語り部が僕らに向かって言った。
「さぁ、出撃の時がやってまいりました。上手くいったらお慰み。勇者のためにどうぞ、皆様お祈りを!」
 小刻みに響く太鼓の音。語り部と少女は耳をふさぐ。
 僕も思わずつばを飲み込んだ。
……やがて、太鼓の音が消えるのと全く同じタイミング。大砲は轟音と共にペンギンを吐き出す。彼は火の輪に向かって、ゆるく弧を描きながら飛んでいく。
 思わず何人かが目をおおった。
 そして大観衆の中、彼は見事に火の輪をくぐって見せたんだ。僕はその姿に少し、グンソーを重ねてしまった。
 悲鳴と歓声が入り混じる中、語り部は客を両手で制し、演目の終わりを告げる。
「軍曹の特攻は見事に実を結び、ファオの艦隊は偉大なる指揮官を失うと、自分の国へ逃げ帰っていきました。……え? 軍曹はどうしたかですって? ご安心ください! 彼は左目と左手を失いながらも、見事、愛するアイリーンの元へと生還したのです! 勇敢なるギュスターヴ軍曹へ拍手を!」
 いつの間にか、少女の手の中にはヘルメットをかぶるペンギンが抱かれていた。少女は観客に向かって笑顔で手を振り、観客も歓声と拍手で応えている。
 けど、僕は別のことで頭がいっぱいになっていた。
「ギュスターヴ……軍曹?」

 全ての演目が終わり、日が暮れる頃、僕はテントの裏で片づけをする一座の人達を眺めていた。客もはけて、動いているのはもう一座の芸人らしき人だけになっていた。
 じっとテントの裏口を見ていると、さきほどの少女が伸びをしながら顔を出した。
 僕は意を決して近づき、声をかける。
「あの、すいません!」
「ん……? あなたは?」
 間近で見ると、その子はとても可愛かった。ウェーブのかかった金髪を後ろで一本にまとめ、キラキラひらひらとした赤と桃色の衣装……美しい民族衣装だ。それがすごく似合っている
 僕は一瞬、何をしに来たかを忘れて見惚れてしまう。
「何か用? 今日の分はもう終わってしまったから、まだ見足りないのなら……」
「……あっ! う、ううん。違うんだ。実は、聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「うん。ペンギンのことなんだけど」
 少女は不思議そうな顔で首をかしげる。
「ギュスターヴがどうかしたの?」
「その名前! やっぱり、さっきの演目は、ギュスターヴっていうペンギンがモデルなのかい!?」
「……どういうこと?」
「実は、僕……ギュスターヴっていう、人間の言葉を話すペンギンを知っているんだ。もしかしたら何か関係があるのかなって」
「……! 本当なの!?」
 少女の表情が見る間に険しくなり、声も大きくなる。それに気づいたのか、荷物を運んでいた芸人の一人が近寄ってきた。
「どうかしたのか? アイリーン」
「あ、お父さん! この子、しゃべるペンギンを知ってるって!」
「……何だって? それは本当かい?」
 僕は二人の真剣な顔に少し気圧されながらも、頷いた。
「今、ギュスターヴは何をしているの!? 元気なの!? というか、生きてるの!?」
 肩を強くゆさぶられ、胸ポケットに入れていた認識票がこぼれ落ちる。
「……それは!」
 アイリーンという名の少女は、それをそっと拾い上げると、涙を浮かべた。
「ああ……やっと見つけた!」
 彼女のお父さんは、僕をみつめると優しく言った。
「この子を彼のもとへ連れて行ってやってくれないか?」

「あの子はね。もともと、うちの一座にいたの」
 丘へと向かう道すがら、アイリーンは懐かしむように言った。
「グンソーって戦争のあとは芸人をやってたの?」
「軍曹? ……ああ、ギュスターヴのことね。違うの。もともと、あの演目は私たちが作ったの。今ギュスターヴ役をやっている子の本当の名前はフロウベルっていうんだけど」
「お話?」
「そうよ。ペンギンの火の輪くぐりのために作ったお話。ギュスターヴはその演目を演じる予定だったの」
「……ごめん。ちょっと待って。じゃあ、グンソーは軍人じゃないの?」
「あはははっ。確かに態度はかしこまってるし、喧嘩は強いけどね。あの子はただのペンギン。というか芸人、かな?」
「そう……なんだ」
 アイリーンは、僕の表情の変化に気付かず続ける。
「ちょっと事故があって、芸が出来なくなってしまったのよね。ほら、分かるでしょう? 片手と片目を失ってしまって。当時は凄く落ち込んでいたわ」
「……事故、か」
「だから、私たちは彼のために物語を書きかえたの。火の輪をくぐれないあの子にも居場所ができるようにね。ほら、最後のシーン覚えてる?」
「……うん」
「あの子がいた頃は、火の輪くぐりが終わった後で、入れ替わったあの子が私の所に帰ってくる。そういうシーンだったのよ」
「……へぇ」
「すごく感動的なシーンだったんだから。あの子、語りもすごく上手いのよ? ちょっと口調は変だけど。それですっかり人気者になったの」
「……なんだよ、それ」
 僕の小さな呟きは、夜の闇に溶けて消えた。
 話が終わる頃、というか一方的に彼女が話すのを聞いているだけだったんだけど、ちょうど丘の上にさしかかった。遠目からでも、グンソーの姿を確認できた。
 アイリーンはすぐさま走りだす。僕にはそんな元気はなかったけど。
「ギュスターヴ! もう! 急にいなくなったりして!」
「あ、アイリーン!? なぜ君がここに!?」
 彼女は勢いそのままにグンソーを抱き上げると、強く抱きしめる。半泣きで何度もグンソーに頬をすりつけ、キスをする。僕は無表情でそれを見ていた。
 やがて、そんな僕に気づいたのか、グンソーは彼女の手を抜け出すと、よちよち歩いてくる。
「少年、遅かったじゃないか! ここまで暗くなっては、もはや訓練とはいかぬが……」
「……グンソー」
「もう、今日は遅いから帰るといい。彼女は我輩の古い知り合いでな。帰りは我輩が送りとどけるから」
「あのさ、グンソー」
「まったく。予定が遅れてしまったぞ。明日は日曜だろう? 朝から始めるから遅れるなよ?」
 グンソーは僕と目を合わせようとしない。僕が口をはさめないように一気にまくしたてる。
 それで僕は確信したんだ。……グンソーは僕に嘘をついていたんだ、って。

「……楽しかった?」
 僕はいつになく残酷な気持ちになっていた。グンソーを見下ろしながら言う。
「ん? 何がだ?」
「僕をだまして、楽しかった?」
「し、少年……ちがう! それはちがうぞ!」
「うるさい!」
 僕は認識票を地面に叩きつける。
「何が軍人だ! 軍務だよ! 嘘ばっかりじゃないか!」
「……」
「ずいぶん僕に偉そうに説教してくれたよね? 誇り? 勇気? はっ、聞いてあきれるよ!」
「少年……」
 僕の中で、ぶつけ所のない怒りが渦を巻いていた。グンソーが傷つくのが分かっていながら、口から言葉があふれるのを止められなかった。
「笑えるよね。戦争どころか、火の輪をくぐることすらできない。しかも、最後に観客に嘘をついて勇者を演じてさ! 軍人どころか芸人ですらない。裏切り者の卑怯者だ!」
 僕はそれだけ言ってから、グンソーに背を向ける。
「もう、うんざりだ。空を飛ぶのは一人でやりなよ。勇敢な軍人さんなら出来るでしょ?」
 背中ごしにアイリーンが走ってくるのが分かった。でも僕は振り向かなかった。
「ちょっとあなた! いい加減にしなさいよ! 何があったのか知らないけど、この子は卑怯者なんかじゃ……」
「いいんだ、アイリーン! 確かに少年の言うとおりだ。言いわけの余地もない」
「……」
 何も言わず、僕は走り出した。一刻も早くここを離れたかった。何より、グンソーの顔をもう一度見るのが怖かったから。
走りながら、胸にたまった暗い気持ちを吐き出そうと、僕は言葉にならない叫びをあげた。
 
 暗闇で目を開ける。あれから三日……寝つけない夜が続いていた。
 頭の中がぐちゃぐちゃで、何も考えられない。無理やり寝ようとしても、胸の芯がちくちくと痛んで眠れない。窓際に立って月を見ていたら、最悪にも大嫌いな奴の顔が思い浮かぶ。これだから満月は嫌いだ。
「少年。起きているか?」
 唐突に外から声がかかった。聞きなれた声、僕が今一番聞きたくない声だった。僕は返事をせずに再びベッドに横になる。
「応えなくても構わない。これまでのことを詫びにきた」
 僕は毛布を頭までかぶると、耳をふさぎ目をつむる。それでもグンソーの声は聞こえてきた。
「すまなかった、少年。我輩は卑怯な嘘つきだ。君の友としてふわさしくない行いだった」
「……」
「真実を伝えよう……そう思ったことがなかったわけではない。けれど言い出せなかった。我輩を強いと信じる少年の期待を裏切りたくなかった。……いや、ちがうな。期待に満ちた少年の目を見ていたら怖くなったのだ。本当のことを告げて、軽蔑されることが」
 笑ってくれ、とグンソーは自嘲気味につぶやいた。
「初めは軽い気持ちだった。まぁ、これも我輩の勇気のなさ故だ。名乗る時、一座から逃げ出してきたとは言えなかったのだ。我輩は孤独に疲れていた。話し相手が欲しかった」
 僕はそっと窓の方へ目をやる。
「今思えば、認めたくなかった気持ちもあったのだろうな。怪我をしてから、はりぼての軍人を演じることが苦痛で……。つまり、芸人として死んだ自分を、受け入れられなかった。空を飛ぼうと思ったのも、何か芸を一つでも身に着けてからでないと一座に帰れない。そう……思ったからだ」
 小さい男だろう? とグンソーは乾いた声で笑った。僕は少し唇を噛む。
「本当は、ずっと誰かに聞いてほしかった」
 胸の痛みが強くなる。これは一体なんだろう、と思う。
「遅くに悪かった。我輩はこの辺で失礼するが、最後にもう一つだけ、心に留めておいてほしいことがある。この期に及んで何を? と思うかもしれんが」
「……?」
「我輩は友を失うことを恐れ、嘘をつき続けた。我輩に勇気がなかったからだ。結果的に友を深く傷つけた」
 けれど、とグンソーは続ける。
「本来勇気とは、困難な状況においてふりしぼるものだ。友を失う可能性、我輩にとって強敵とはそれだった。そして、一度ふりしぼるタイミングを逃せば、もう取り返しがつかない。だからこそ、もう一つの約束は……それだけは必ず果たすつもりだ」
「……」
「勝てる相手に戦いを挑むのは打算だ。勇気ではない。君が本物の勇気を手に入れられることを、我輩は願っている」
 言い終わるとほぼ同時に、軽快な足音が遠のいていく。僕は弾かれたように窓へ。
 外を見ると、もうグンソーの姿はなかった。代わりに、小さな鉄のプレートが、月の光を浴びて輝いていた。

 認識票を手で弄びながら、僕は一本杉の、町を挟んで反対側にある丘へ向けて歩いていた。
 グンソーの言葉を思い出しながら。
 空を見あげる気にはなれないので、ひたすら自分の足が進むのを、ぼーっと眺めていた。
「ちょっと、きみ!」
「……?」
 顔を上げると、そこにいたのはアイリーンだった。不機嫌そうな顔だ。気が合うね、と思う。
「君に話があるの」
「僕にはない」
 横を通り過ぎようとしたら、腕をつかまれた。すごい力だ。
「……何? グンソーに頼まれたの?」
「違うわ! あの子は自分が全部悪いって言ってた。私はあの子の名誉のために来たの!」
「……名誉? ははっ」
 鼻で笑う。瞬間、パンッと乾いた音が響いた。
「あの子のこと知りもしないで……。嘘をついたからって何よ! あの子の嘘で、何か貴方が嫌な思いをしたの!?」
「それは……」
「ギュスターヴはね……卑怯者なんかじゃない。あの子が怪我をした理由も、他のペンギンをかばって、真っ先にあの芸の練習をしたからなのよ?」
「……」
「初めて人前であの演目を披露することになった日。最後の練習だった。火薬の量を私たちが間違えたの。……あの子は怒らなかったわ。みんなに怪我がなくてよかったって、笑って見せた。卑怯者に出来る!?」
「そんな勇気は人間だって持ってないわ。本物の軍人でもね。分かる!? だからこそ、私たちはあの子のためにも演目を完成させたの!」
「……分かってるよ、グンソーは悪くないことくらい」
 分かってるんだ、と唇を噛む。視界が涙で歪み、胸がたまらなく痛む。
「あの子は飛ぶって言ってるわ。私が言っても聞かなかった。また一緒に芸をやろうって言っても、勇者を演じるのは性に合わないって。馬鹿みたい!」
 言って彼女は目を拭う。僕は黙って立ち尽くしていた。どうすればいいのか考えていた。
 まずはグンソーに謝らなければならない。そう、思った。そして顔を上げる、その時だった。
「おやぁ? パイクが女の子を泣かしてるぞ?」
 下品なにやにや笑いを浮かべながら、二度と会いたくもなかった奴が現れた。

「久しぶりだなぁ、馬鹿パイク。ペンギンは一緒じゃねぇのか?」
「……マイルズ」
 後ろにはいつもの三人組。同じようにいやらしい笑顔だ。吐き気がする。
「何か用?」
「いやあ、用ってわけでもねぇんだけどよ。ここならお前とゆっくり話が出来そうだからな」
「……なるほどね」
「弱虫のお前が逃げ回るもんだから、こうやって俺の方が探してやったんたぜ? ありがたく思えよ」
 例の丘に通いずめだったから、ぶつける相手がいなくてストレスがたまってた、ってところだろうか。今にも殴りかかってきそうだ。
「おら、何黙ってんだよ? 顔見りゃわかるぜ? 腹立つだろ? かかってこいよ」
 罵られ、蔑みの視線をぶつけられる。こいつほど憎たらしい奴はいない、と思う。
 いや、嘘だ。こいつより憎たらしい奴がすぐそばにいた。何も言い返せない、僕自身だ。
 グンソーの言葉を思い出す。勇気……か。でもだめだ。結局僕はだめなんだ、と思う。
 前に立っているだけで心が折られる。目を見ようとすると歯が震える。話にならない。
 口をぱくぱくさせながら、やっと絞り出した言葉、それが
「……いや、いいよ」
「へっ、はははははは! だよなぁ、それでこそだ弱虫パイク」
 マイルズは満足そうに笑うと、アイリーンへ目をやる。
「お前は例の芸人だろ? この前見てやったぜ? ありゃあ、中々面白かった」
「……どうもありがとう」
「ペンギンが軍人ってな。傑作だよなぁ。なぁ、お前ら!」
 マイルズは取り巻き達と頷きあう。
「そういや、面白い話があるんだよ。片手と片目のないギュスターヴなんてペンギン珍しいからよ。終わった後にその辺にいた芸人つかまえて聞いてみたんだ。俺の知ってる奴とよく似てる、ってさ」
「……!」
「なぁ、知ってたか? パイク。お前のお友だちの正体」
 僕は拳を握り、歯を噛みしめた。
「まぁ、弱虫のお前には相応しい友達だよなぁ、パイク。悔しいか? 悔しいよなぁ。いくらお前が馬鹿でもさ。知ってんだぜ? お前、学校さぼって、あいつのところに行ってたろ」
「あんたたち!」
「女は黙ってろ!」
 怒鳴り声に気圧されて、アイリーンは一歩あとずさった。
「お前、あいつの話信じてたんだろ?」
「……」
「いやぁ、変だなぁって思ったんだよ。まさかペンギンが軍人なんてな。いるわけねぇってさ。案の定だ。満足に芸すらこなせなくなった役立たずって話じゃねぇかよ」
 マイルズはなれなれしく僕の肩に手を置いた。
「……なぁ。お前、恥ずかしくない? あんなのと友だちってさ」
「……別に……ぐうっ!」
 みぞおちに衝撃。意識が半分飛んで、その場にうずくまる。マイルズは耳元でささやいた。
「……あいつは大嘘つきだ、友だちなんかじゃない。そう言ったら、今日はやめてやるよ」
「……え?」
「え、じゃねぇよ。簡単な話だろ? 相手はペンギンだぞ?」
 僕はマイルズの顔を見た。
「てめぇも役立たずのために怪我したくはねぇだろ? 言えば、勘弁してやるって」
 笑いながら、僕の背中を踏みつけた。拍子に手の中の認識票が落ちる。
「大体よぉ、生意気なんだよ。死にぞこないのペンギンが、一丁前に口をきいてよ。軍人? 馬鹿じゃねぇの?」
 マイルズの口調は滑らかだった。けれど軽蔑に満ちている。僕は拳を地面ごと握りしめた。
「あいつ今何してると思う? 羽付けて走り回ってるんだぜ? 飛ぼうとしてるみたいにさ。はははっ、ペンギンなのによ。飛べるわけねぇっての」
……ろ
「今度、仲間集めてぼこぼこにしてやろうと思ってるわけよ。その時にはパイク。お前にも手伝わせてやるよ」
……めろ
「まぁ、その前に羽だな。笑えることに、片手で必死に枝削ったり布張ったりよ。あんまりにも一生懸命だから、完成と同時に目の前でぶっ壊してやろうぜ」
「……やめろ」
「……あぁ?」
 僕の声が小さすぎて、よく聞き取れなかったようだった。マイルズは再び耳を寄せてくる。
 僕はグンソーの言葉を思い出す。

――友が傷つくということは誇りが傷つくということ、友が愚弄されるということは誇りが愚弄されるということ。ならばこそ、命をかけるのだ――

 そういうことだ。後はどうでもいい。許せないことがある、それだけでいい。
「……鼻っ柱……集中攻撃」
「? 何言ってんだ、こいつ?」
 僕は拳に力を込めると、腹の底から怒鳴った。
「やめろって言ってんだよ、デブ!」
 勢いよく起き上がると、マイルズは足を取られて尻もちをつく。その目に向かって、握っていたものを投げつけた。
「なっ、ぐあっ、目が! てめぇ、パイク!」
 僕はもう躊躇しなかった。馬乗りになると、マイルズの鼻を力任せにぶん殴る。
 一発、二発、三発。鼻血が出ても気にしない。暴れたマイルズの手が僕をひっかいて、血がにじんだ。でも、そんなのどうでもよかった。
「グンソーを! 馬鹿にするな! この!」
「やめっ……やめひぇ……!」
「グンソーは戦うことから逃げたんじゃない! 戦うことすら許されなかったんだ! お前にその気持ちが分かるのか! 何も知らない、お前に!」
 僕の言葉はそのまま僕自身にはね返ってきた。何も知らないのは僕だ。勝手に裏切られたような気になってすねたのも僕だ。僕がグンソーを傷つけた。
 マイルズを殴りながら、僕は自分自身を殴りつけた。
 次第に抵抗する手がゆるむ。呆気にとられていた三人が、そこでやっと僕をつかまえると、羽交い絞めにした。それでも僕は殴るのをやめようとはしなかった。
「ひぇめ……ひぇめぇ!」
 やっとの思いで出てきた声は、なんとも間が抜けていた。
「ひゅるひゃねぇからな! ほの!」
 マイルズの声を合図に、いつもどおり僕は殴られはじめた。でも、いつもと違ってとても清々しい気分だった。アイリーンの悲鳴がやけに遠くから聞こえた。
 何だろう? やりきった感っていうのかな。そういうので、僕は満足していた。
 そして、こうも思った。グンソーが軍人だと言うのなら、そして軍人であろうとするのなら、それはもう嘘でもなんでもないんだ、と。
「……大事……なのは、心の持ちよう……だったよね?」
 それでもう、殴られていることはどうでもよくなって、あとはグンソーに何て謝るか、それだけを考えていた。そしたら……
「どおおおおおりゃああああああああっ!」
 声。今一番聞きたかった声が降ってきた。ぼこぼこの顔に、思わず笑みがこぼれる。
 そういえば、初めて会った時もこんな感じだったっけ、と思った。今回もまず響いたのは鈍い音。で、次に伸びているマイルズ。
 けど、この後が少しだけ違った。グンソーはしっかりと着地して、背中の翼を壊さないようにそっと降ろすと、怒鳴った。
「許さんぞ、下郎ども! 友に代わって、我輩が成敗してくれる!」
ってね。
 
 それから二週間後。バイラム一座の最終公演の日。僕は、観客席じゃなく舞台袖にいた。
 演目は進み、物語も佳境へと差し掛かっている。
 テント内の興奮が最高潮に達している中、僕は足元へ目をやる。
「期待してるよ、グンソー」
「うむ、任せろ」
 あの時、グンソーは確かに空を飛んだ。翼を背負った瞬間に、ものすごい風が吹いてきて、僕らのいた丘の辺りまで飛ばされたんだって。
 僕の生まれて初めての喧嘩をハラハラしながら見ていたらしい。中々降りられなくて難儀したぞ、とグンソーは照れ臭そうに笑った。
「さぁ、いよいよ出撃の時がやってまいりました!」
 その声を合図に、グンソーはヘルメットをかぶると、大砲へ向かって進み出る。
 アイリーンは少し心配そうに見ていた。僕は彼女にだけ聞こえるように声をかける。
「……大丈夫だよ」
「でも、もし何かあったら……」
「グンソーなら大丈夫。仕事を奪う方がよっぽど傷つくよ。そう言ったろ?」
 僕の言葉に、不承不承ながら頷くアイリーン。
 グンソーは手際よく砲口へ入ると、中から叩いて合図を送った。アイリーンは松明を手に、意を決したように近づく。僕は耳をふさいだ。
 数秒後、導火線へ火が入る。太鼓の音が次第に早くなり、僕の心臓も同じく高鳴る。

――そしてついに、その時は来た。

 音と共に、天駆けるグンソー……火の輪へ向かって。いっそ、優雅にも見える美しい飛行。その姿はまさに、偉大なる勇者ギュスターヴだ。観客たちも息を飲む。
 やがて、グンソーが見事に火の輪をくぐり抜けた瞬間、拍手と歓声が彼を包む。
 着地したグンソーは、多少よろめきながらも舞台の中央へ。胸を張り、約束を果たす。
「どんなもんだ!」
 見届けてから、僕は弾かれるように飛び出した。
 空飛ぶペンギン、グンソー。
 物語のヒロインより先に、僕の誇りを抱きしめるために。

作者コメント

2014年のGW企画に投稿した作品です。
○GW企画テーマ:矛盾・パラドックス
※矛盾やパラドックスを用いて、物語にしてください。最強の矛と最強の盾を同時に登場させる作品も可能です。
作者様が「これは矛盾(あるいはパラドックス)を扱っている作品だ!」と言い張る事ができれば、テーマを満たしているとします。

○お題:10、翼、嘘
※三つのお題の中から少なくとも一つを選択し、使用してください。文字列、比喩、テーマなど使用方法は制限しません。

◆使用したお題: 翼 嘘
◆一行コピー:物語のヒロインより先に、僕の誇りを抱きしめるために
◆作者コメント:
企画運営おつかれさまです。
矛盾というテーマに頭を抱えながら、必死にひねり出しました。
執筆するうえでの個人的な目標は「成長」を描くこと。
少しでも感じ取ってもらえたら幸いです。

※一旦削除し、投稿し直しました。ミチル様にはご迷惑おかけしました。申し訳ないです。

5/12 改行漏れ修正しました。

2014年04月27日(日)09時37分 公開

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感想

kzさんの意見 +20点2014年05月01日

 kzと申します。拝読しましたので、コメントさせていただきます。
 グンソーかっけええええええええええええ! に尽きるでしょう、この作品は。
 かわいらしいペンギンがしゃべる、しかも外見に反したあのキャラクター。しかも展開も熱い! これだけで御作は勝ったも同然でしょう。
 ただいくつか残念な点が――
 一、対象年齢が低め
 人間の言葉を話す動物――それだけでジュブナイル感は否めません。とはいえまあ、そういう作品なんですから、こればかりは仕方ないでしょう。
 二、推敲が足りない
 字下げをしてない箇所がかなり多く見られました。作品の評価とは直接関係しませんが、やはり萎えます。
 感想は以上です。少しでも参考になれば幸いです。

ピンク色公爵さんの意見 +30点2014年05月01日

 お話を読ませていただきました。
 面白いですね。とてもよくまとまったお話だと思いました。グンソーことギュスターヴが非常に魅力的です。パイク君も最後はかっこよかったです。敵役のマイルズ君、やられ役に徹してくれてありがとう。ヒロインなんて要らんかったんや!(問題発言)
 特に粗らしい粗は無く、ストーリーも王道で、キャラクターはかっこよくて、ちょっと笑えて――。終盤の展開なんかも分かっていても熱くなれます。王道を最後まで王道するとこうなるということを体現した物語だと思いました。
 しいて言うなら、王道をなぞるだけでなく、プラスアルファが欲しかったと思います。作者様は最初にこの物語を思いつかれて「これだ!」って飛びつかれたのではないかと思います。だけど、そこで一旦立ち止まってアレンジを加えてほしかったかな、と。この企画においては減点するような箇所がなく、しかし、ラノベとして読者に十分サービスできていたのかというと、どうなのだろうというところがありました。非常に失礼な書き方になってしまいますが、とてもよくまとまっているが、心に訴えかけるものがなかった、というのが正直な感想です。時流に乗ったもの、ヒロインが尋常じゃなく可愛いこと、物語の展開の最大瞬間風速が読んでいて思わず椅子から立ち上がり「おほおおおおー! 気持ちいいのおおおお!」と声を上げてしまうくらい凄いこと――色々ありますが、そういう『攻めていく部分』がこの文章にはなかった。堅実に守りながら結果を出しました、というような作品になってしまっている。王道をそのままなぞってしまった弊害かと思います。日本昔話とか、神話の構造とかをトレースする『だけ』だと、どうしても脳内の思考が作業になってしまう節があって、魂を込める余地がなくなってしまうと思うのですが、それだと思います。例えば読者となる人間の食指が動くのって、そういったお話ではないと思うのですよ。非常に個人的な感想で申し訳ないですが。
 王道を書くときにも、その話の流れの中で、自分だけしか書けない、目に焼き付くような光景、感情が爆発するようなシーンってあると思うのです。書き始める前に、そのあたりをイメージして、古典的な王道ストーリーを彩る華にしてほしかったかな、と。
 色々偉そうなことを書きましたが、読んでいて楽しかったです。ありがとうございました。

GWケモノさんの意見 +30点2014年05月02日

 こんばんは、GWケモノと申します。本作を読ませて頂いたので、感想をかかせていただきます。

 グンソー! 可愛いよ! グンソー!!
 すみません。グンソーに惚れました。
 というか、グンソーを飼いたいです。作者さん、グンソーを嫁にください。
 企画の全作品を読ませていただきましたが、個人的に本作が一番のお気に入りでした。
 何より、作者様が成長を書きたいとコメントに残しておられますが、それがきちんと書けているところが凄いです。
 テーマを適切に読者に伝える。これ、小説を書く上では当たり前のことですが出来ている作品って、実のところあるようで無かったりします。
 

 特に本作は、まさしく王道をいく友情、努力、勝利のお話ですが、テーマに沿ったお話づくりをされているため、キャラクターもそれにふさわしい魅力的なものに仕上がっていると思いました。
 ただ、完成度が高い分、全体的にこじんまりとした印象を受けてしまいます。グンソーの目的は空を飛ぶこと。終盤、パイクがピンチのときにグンソーが文字通り飛んできますが、その姿をきちんと描写するだけで随分印象の違う作品になったのではないでしょうか。
 あと、個人的な感想になってしまいますが、やっぱりギュスターヴ軍曹のお話は実話であって欲しかったです。実はグンソーの正体は、なんて読者に想像力を委ねるようなオチをつけた方が物語も印象的なものになるかと。

高山ゆうやさんの意見 +30点2014年05月04日

――友が傷つくということは誇りが傷つくということ、友が愚弄されるということは誇りが愚弄されるということ。ならばこそ、命をかけるのだ――
(作中より)

 作者様こんばんわ。高山ゆうやと申します。
 拝見させていただきましたので、感想を述べさせていただきます。

 と、言っても、三行感想のようで申し訳ないのですが、引用した部分は特に、「大いに共感しました」これしか浮かびません。

 時間の制約からでしょうか、字下げなどがされていない部分があったのは修正課題ですが、それを気にせずに読ませるだけの力量があったと思います。

 とにかくキャラクターの魅力が前面に押し出されたすばらしい作品だと思います。

 執筆お疲れ様でした。

etunamaさんの意見 +20点2014年05月04日

 マイルズざまあ!
 あ、はい。おもしろかったです。いじめっこに反撃するってすごくいいです。ふひひ。
 ふしぎな喋るペンギンさんと、いじめられっこの友情物語、たのしませてもらいました。あ、芸人さんだったんだね…。びっくりです。
>  物語のヒロインより先に、僕の誇りを抱きしめるために。
 シメの一文、いいですね。ほっこりした!
 てなわけで、読みおわってみれば、あー、いい話だったなぁ、ってなったんですけど、気になったところも多かったです。単純に相性かな、ってかんじなんですけど、世界観が掴みづらかったのと、文章がちょっと描写薄くてものたりなかったかもです。架空の世界の話なんで、冒頭から中盤にかけては、濃いめの情景描写だったりあったほうが、世界観がすっと入ったかも。あ、でも枚数ぎりぎりですね。がーん
 なんとなく、すごく削っちゃったのかな、なんておもったり。
 おもしろかったんですけど、もうすこしぼくのこのみに合った文章だったらもっとよかったです。ぼくが。
 ではではー

タカテンさんの意見 +20点2014年05月05日

 企画参加お疲れ様です。タカテンと申します。
 拝読いたしましたので、感想を送らせていただきます。

 軍曹かっけー。
 正体はともあれ、友を誇り、友の名誉を傷つけられる事にこそ命を賭けると語る彼はまさに男の中の男ですわ。ペンギンだけどw
 何故にペンギン?と思わなくもなかったですが、これは『紅の豚』が「何故に豚なのか?」と同じくらいどうでもいいことですね、はい。

 作者メッセージから目標は「成長」とのこと。確かにパイクは勇気を知り、大切なものを知り、成長したと思います。
 ただ、それでもあえてもうひとつ踏み込んでほしいなと思ったのは、軍曹だけでなく学校での友達も作れたら、という点。
 マイルズに一矢報いたことで学校での人間関係も変わってくるのだろうなぁと想像は出来るのですが、そのあたりもしっかり描けていればさらに成長を感じられたのではないかと思います。

 あと、これは読み終わった後には理解できたのですが、冒頭の語りから本編に入る部分で少し混乱しました。
 恐らく作者様は「――」で語りをくくる事で本編との違いを表現されているようですが、出来ればもっと空行を取った方が読者に違いをより認識できてもらえるのではないかと思います。
 読み始めでちょっと躓いたので、そこは本当に勿体無いなぁと感じました。

 しかし、軍曹がぺんぎんでありながら格好良く、それでいてぺんぎんらしい可愛らしさも持ち合わせていて、魅力的に描かれている作品だったと思います。

 それでは拙いですが自分からは以上です。
 企画、楽しんでいきましょう。

ミチルさんの意見 +20点2014年05月05日

 ミチルと申します。このたびはGW企画に作品を投稿してくださり、真にありがとうございます。
 ペンギンがカッコかわいいw 以下、詳細な感想に入ります。

<文章>
 基本的にパイクの一人称。とことん弱虫だったのに、友情を守るために強くなる感じがよく表現されていて、よかったです。
 会話が多いのは気になりましたが、誰が話しているのか分かるので、許容範囲でした。
 ギュスターヴの敬語語りが所々にはさまれて、やや混乱しましたが、読み返してみるとすんなりと頭に入りました。

<構成>
 いじめられっこパイクが、紆余曲折を経て、成長する話。ペンギンとのかけあいも含めて、随分と練られていたと思います。
 途中でいじめっこ連中がのさばる時には、かなり不愉快になったのですが、きちんとひっくり返されて、爽快感が半端なかったですw

<設定>
・英雄ギュスターヴ
 ペンギンが名乗っていた。この名前、かっこいいですね。名前の由来はなんだろうと、調べる事にしました。

<キャラ>
・パイク 
 主人公。いじめられっこだったが、ペンギンのおかげで成長する。

・しゃぺるペンギン
 とにかくカッコいいw こいつ大好きです。

・アイリーン
 いまいち印象に残りませんでした。何回か名前は出ていたのですが、モブだったかな。

 ペンギンよかったです。これからも執筆を頑張ってください!

雪消陽さんの意見 +30点2014年05月05日

こんばんは、雪消陽という者です。

もういちいちグンソーがカッコイイですね。
これ以上口を開くな、惚れる! という感じでした。

序盤でやられるだけだったパイクがマイルズに殴り掛かった時には、自立していく子供を見ている親の気持ちでした。
そういう点で、作者様が描きたかった「成長」は十分に伝わったかなと思います。

>「……どうでもいいけど、グンソーって軍人っていうより芸人だよね」
>僕の言葉はさりげなく無視。
ただの皮肉だと思っていたら、重要な暗示じゃないですかww
こういうさりげない情報開示は積極的に参考にしたいと思います。

ただ、パイクがそうだったように、私もギュスターブのお話は真実であってほしかったなと思いました。
まぁ、ごく個人的な物思いなんですけどね。

胸熱なお話をありがとうございました!
では、失礼します。

燕小太郎さんの意見 +20点2014年05月06日

 執筆お疲れ様です、燕小太郎と申します。
 御作『PRIDE FLY HIGH』読ませていただきましたので、感想を残したいと思います。
 なんとなく『さようならドラえもん』を思い出してしまいました。

 ストーリー
 臆病な少年が、グンソーと出会い成長するお話。
 作者様のコメントにある通り、確かな成長があったと感じました。ストーリーもきっちり作られ、最後に山場も作られており、字数制限のある中で構成を考え抜かれた結果ではないかと思います。
 強いて難点を挙げるなら、成長『していく』物語ではなかったことではないかと思います。確かに彼はいじめっ子らに反撃しますが、それは最後だけで、グンソーとの訓練でも諦め気味だったり、グンソーの話も聞かず飛び出してしまうなど、子供じみた行動をとってしまっていました。途中のどこかに、『僕にだって意地がある』というところを見せておけば、裏切られたと思った時のショックも大きくなり、クライマックスに向けての成長のステップとしてより自然になるのではないかと思いました。

 キャラクター
 いじめられっ子のバイク少年と、ペンギンのグンソー。グンソーはペンギンなのに強くカッコ良いキャラクターでした。ただ、芸人を辞めた理由のところで共感できなかったので、その辺りでちょいマイナスだったかもしれません。
 バイク少年は、序盤が卑屈過ぎたように感じました。グンソーと接していく中で子供らしさは出ているものの、彼独自の彼の良さを描いてほしかったな、と。『いじめられてネガティブになっているけど、本当の彼は優しい子』みたいな描写があれば、良い印象になると思うのですが。
 アイリーンちゃんに出番が少ないのがちょっと残念でしたが、まあ今作のヒロインはグンソーなので仕方ないですね。

 設定
 喋るペンギンのお話。そういえば、なぜこのペンギンは喋れるんでしょう? 

 オリジナリティ
 ペンギンを題材にした成長譚、今作ならではのオリジナリティを土台によく描けていたと思います。グンソーさんグッジョブですね。あるいはグンソー△ 。

 総合
 立ち位置からか、前述の『ドラえもん』が思い浮かんでしまい、感想に少なからず影響が出ていると思います。
 色々書いてしまいましたが、トータルで見れば重箱の隅をつつく程度の指摘しか許さない、良作であったと思います。
 もう一点、英語タイトルは何となく敬遠されそうなイメージがあります。外国的な世界観の表現にはなりそうですが、素直に日本語タイトルの方が個人的には好みです。すぐに良い案が思い浮かばないので恐縮ですが……。

 拙い感想ですが、少しでも参考になれば幸いです。

たぬきさんの意見 +30点2014年05月06日

おはようございます。たぬきです。

舞台の話が徐々にストーリーと絡んできた時は、かなりひきつけられるものがありました。
まあ、真相は舞台劇だったのですが、戦時中の話ではなさそうなので当然ですよね・・・(あのワルガキ達と主人公が仲直りし、少年兵になって、ギュスターヴが街を救うために特攻するのかと思いましたが、そうではなかった)

不満点はあまりないのですが、後半でパイクがマイルズを負かすシーン。
去り際にギュスターヴが仕留めてくれるのなら、パイクは負けてしまった方がいい気がします。ここで重要なのは「弱気な自分に打ち勝つ」ということなので、抵抗できただけでその目的は達成されます。(二度、マイルズを打ちのめす必要性は無いですね)

ではでは、簡単ですがこれにて。

としきさんの意見 +20点2014年05月06日

お疲れ様です。としき、と申します。

拝読しました。

ペンギン! ペンギン! ペンギン!

パイクの成長は、彼なりの等身大でしっかり描けていたと感じます。
ストーリーも、飽きがこないよう、展開が練られていたと思います。
欲を言うと、もう一段階、山谷の大きさを強くして欲しいかなー、という印象です。
具体的にどこ、というのではなく、漠然とした要望で申し訳ないですが……。

個人的に、初めの方で、マイルズがヒレでびたんと叩かれ、錐もみしながらすっ飛ぶシーンは好きでした。
きっと、ギュルルルルーって高速回転音が鳴ってたんだろーなーと。

拙い感想ですが以上です。
執筆お疲れ様でした。

とよきちさんの意見 +30点2014年05月08日

執筆おつかれ様です。とよきちと申す者です。
拝読したのでさっそくさっそく。


弱虫な少年が漢なペンギンと出会い、友情を結び、それぞれの葛藤を乗り越えるというお話でした。全体的にとても楽しめましたというか、ドストライクな作品でした。こういう『漢』なキャラが出てくるのって大好物なんですよね(笑)

○ 良かった点

・キャラクター
良く描けてたと思います。特にグンソーがとても格好良かったです。イメージとしては映画の『マダガスカル』に出てくるペンギンたちが思い浮かびました。ので、個人的にはペンギンが喋るという設定もすんなり受け入れられましたね。

・構成
サーカスの下りに入って、『おお、なるほど。冒頭はそういうことだったんだ』と納得。上手いなぁ、と素直に感嘆です。

○ 気になった点

・ラスト、グンソーが助太刀するシーン。
助太刀まで良かったんですけど、その直後にいきなり二週間後と時間が一気に流れたので少しびっくりしました。

・タイトル
他の方も仰ってましたが、ちょっとこのタイトルで損してるのかなぁと。読み終わってから『なるほどなぁ』って思うんですが、いかんせん引きが弱いと言いますか。……うーん、というより、この企画だからこそ作者さんは引きよりも意味のほうを重きに置いたのかもと思ったり。
タイトルに加え、冒頭もそうですね。機能を重視して見た目をおろそかにしてしまったといいますか。いや個人的には逆に好感持てるんですけど(笑)
基本的なことではありますが、タイトルや冒頭でいかに面白そうに魅せるかにはもうちょい心砕いたほうが良いかと。すごくもったいないです。こんなに面白いのに。ああでも冒頭はいじれないでしょうから、タイトルですかね、やっぱり。

○ 総評として
中々胸熱くなるような作品でした。面白かったです。『漢』な格好良さにペンギンという要素で上手く『抜け感』を作ってバランスが取れていたと思います。それが作品にダイレクトに繋がっていて、個人的にかなり好みな作風でした。

自分からは以上ですかね。

それではごちそう様でした! 引き続き企画を楽しみましょう!

薄荷さんの意見 +30点2014年05月10日

こんにちは。
「PRIDE FLY HIGH」を読了しましたので感想を書きます。

もう、本当にいいですね!
グンソーがカッコいいです。
カッコいい人(?)は、名前もカッコいいんですね。グンソーの本名も素敵です。

いじめられていたパイクが、少しずつ成長していくところもいいですよね。
最後にマイルズに向かっていくところは、ドキドキしました。
肉体面だけでなく、精神的にも本当に強くなったなあと思いました。

グンソーが誇りを失うというのはどういうことかと、パイクに語る場面が特に好きです。
こういう作品を書きたいと、本当に心から思いました。

あと、グンソーが謝りにくる場面も好きです。
強いだけではない、グンソーの弱さのような面が見えて良かったです。

でも、やっぱり強いんですよね。強くて優しい。素敵なグンソーです。

プレートや炎のトラウマなど、さりげなくグンソーの正体が描かれてあるのも良かったです。
この作品を今後の創作においての目標にしたいと思います。

素敵な時間をありがとうございました!
この作品に出会えて良かったです。

17さんの意見 +20点2014年05月10日

企画作品の執筆、お疲れ様でした!
読みましたので、感想書きます!

▽冒頭から中々良い出だし。ある程度の起伏もあり、最後まで楽しく読み進めることができました。
過去の話だと思っていた物語が実は演目で、さらにそれが現在の話とリンクした時は、思わず鳥肌が立ってしまいました。とても良い構成でした。
主人公の心情描写も上手く、作者さんの目標である『「成長」を描くこと』は、充分に達成されているのではないでしょうか。

▽主人公のキャラも良かったですが、何といっても軍曹が今作一番のお気に入りですね。普段の溌溂とした性格も、反省している時の真摯な態度も、全てに一本のしっかりとした芯が通っていて、だからこそこんなにも魅力的なキャラクターになったのだと思います。

#完璧に余談ですが、『バトルスピリッツ』というカードゲームにペンタンっていうキャラがいるんですよね。いくつか種類があるんですが、剣士ペンタンっていう奴が軍曹のイメージにピッタリで(隻眼とかではないんですけど、何かこう雰囲気が)、自分の中ではそれを思い浮かべながら物語を読んでいました。

#さらに完璧に余談ですが、アイリーンはペンタン大好きラクェル(同じくバトスピ)というキャラで脳内再生してました。金髪で可愛くてペンギンが大好き……ピッタリじゃねえか! と一人で勝手にテンション上がってました。
もし良かったら、画像検索でもされてみて下さい。両方とも愛くるしさを感じるキャラクターです。

▽お気に入りのシーンは、最後、軍曹が約束を果たしたシーンですね。

>物語のヒロインより先に、僕の誇りを抱きしめるために。

#特に最後の文章が好きです。
一行コピーにもなっていますが、本当に秀逸な文章で、感動的な余韻に浸ることができました。

▽何か半分ぐらい余談で埋まってしまっているような気もしますが……ま、まあいいでしょう。うん。他の方々が自分なんかより有意義な感想を残されてますし。こんな奴が一人ぐらいいても問題はないハズ。

短くなってしまいましたが、感想とさせて頂きます。
失礼しました〆

へろりんさんの意見 +20点2014年05月11日

へろりんと申します。
企画参加作品執筆お疲れさまでした。
御作を拝読しましたので、感想を書かせていただきます。
素人の拙い感想ですが、しばしの間お付き合いください。

タイトルを拝見して、私のプライドは空よりも高いのよ! おーっほっほっほ! という声が聞こえたような気がします。
一行コピーを拝見して、ヒロインそっちのけ。。。どんなお話でしょう? 楽しみです。

まず最初に、とても楽しく読了しました。
面白かったです。
最後まで安心して読むことができる作品でした。

いじめっこに毎日いじめられる主人公、そこへ登場するおかしなペンギン・グンソー。
王道です。
話の進行も、ラストまで全て王道。
それゆえ、冒頭でも申し上げたように安心して読むことができました。
読後感もよかったです。
物語を通じて、主人公もグンソーも成長していますね。
これも好感が持てました。

なんかよかったばかり書いていますが、王道ゆえに意外性には欠けていたかも知れません。
でも、王道ゆえにこの展開に期待もし、納得もできるんですよね。
じゃあ意外性を出すにはどうしたらいいかというと、未熟な自分にはサッパリです^^;
下手に意外性を出そうとすると、いびつになっちゃいそうですもんね。。。

と、自分勝手な問題提起をしたところで、逃げるように感想を終わりたいと思います。

好き勝手書きましたが、例によって素人のたわ言ですので、あまりお気になさいませんように。
作者様の身になりそうな部分だけ、取捨選択をお願いします。
失礼しました。

ディック・アナルスキーさんの意見 +20点2014年05月11日

 こんばんは、ディック・アナルスキーです。
 まず大変恐縮なのですが、私は現在肛門のあたりにイボ痔を患っておりまして、下記の感想如何に関わらず、作品の評価はどうしてもイボ痔の状態に左右されてしまいます。つまり、どんな名作に出会っても、肛門のあたりが痛いと評点が辛くなってしまうというわけです。その点、ご了承ください――

※以下の感想には作品のネタバレを含みます。


【キャラクター】
・弱虫バイク
――他人なんて信じない、と殴られながら思う。
――そういうことだ。後はどうでもいい。許せないことがある、それだけでいい。
 両親を戦争で失って、信じるものを失った少年。そのせいで他者と壁を作り、かなり卑屈に育っています。御作は、そんなバイクが友情を培い、誇りを得ることを主軸に置いた作品です。バイク自身にユニークな特徴はないものの、弱虫バイクの成長譚として破綻なく記されていると思いました。
 ただ、一つだけ大きく引っ掛かったのは、そんな誰も信じようとしないバイクがギュスターブにだけ「感覚がマヒ」してなついたことです。御作では、上記の通り、バイクとギュスターブが友情を築いていく過程が重要となりますから、バイクにはもっと、なぜギュスターブにだけ心を開いたのか、と自問するシーンがあってもよかったのではないかと思います。
 また、些末かもしれませんが、なぜバイクはギュスターブのことを終始、「グンソー」とカタカナ表記で呼んでいたのでしょうか? ネタばらしとして、ギュスターブが本当は軍人でないと分かるのは終盤なので、そういう意味ではたしかに軍曹ではなくグンソーだというのは分かるのですが、作品の冒頭からバイクがグンソーと呼びかける心象がどこにも見出せずに気になりました。

・ギュスターブ軍曹
――「軍務で片手を失って以来、海は我輩の家ではなくなった。そして、泳げぬペンギンを受け入れる仲間などおらん」
――「だからこそ、我輩は誇りを守るためには命をかける。害する者と戦うことも躊躇しない」
 左側のヒレに傷を負った元軍人……もとい軍鳥。作中劇が展開され、終盤までは港町を救った英雄かもしれないことが示唆されますが、実際には英雄役を割り当てられた役者だと分かります。
 バイクとのやり取りでも、こまめにギャグが入ってきて可愛らしく、このペンギンのキャラクター性が御作を読み進めていく上での最大の推進力となっています。
 気にかかった点は、ギュスターブが語った他のペンギン仲間についてです。御作が誇りと友情をテーマに置いているのなら、本質的にギュスターブが向き合うべき相手は彼のペンギン仲間なのではないかとも思います。もっとも、そこまでいくと短編でやれる分量ではなくなりますから、大胆にカットしているのかもしれませんが、ギュスターブの今後はやはり気になります。

・アイリーン
 作品に転調をもたらすキャラクター。ギュスターブの同僚。劇中ではギュスターブの恋人と示唆されていますが、作中ではそこまで描かれていません。物語を大きく転がすだけにもう少しキャラクターについての情報を早いうちに幾つか出しておいても良かったんじゃないかとも思いますが、この分量の短編では難しかったでしょうか。

・赤毛のマイルズ
 バイクにとっての壁役となるキャラクター。ややステレオタイプな印象です。


【描写】
 全体的に背景描写に欠ける傾向があったように思います。せっかくの港町だというのに潮風の匂いもなく、汽笛の一つも聞こえず、人物に視点がやや偏っており、何より季節については全く描かれていません。冬の夜空の中でFLY HIGHするのと、夏の青空に向けて飛ぶのとではやはり印象は異なりますから、今後は五感をフルに使った描写を意識されていいと思いますし、それができるレベルの作者さんだと思います。
 また、シャーファンベツクという架空の港町名はどこか北欧・ドイツ風、しかし出てくるキャラクターはイギリス名とアメリカ名の混在で、いったいこの舞台はどこをイメージしているのかと訝しみました。


【設定】
 ペンギンが人語を解することについては、御作がファンタジーだと割り切れば問題ありません。ただ、やはり、なぜペンギンが喋るのかという疑問はついてまわります。たとえば『紅の豚』でしたら、人間に魔法がかかったと作中に出てきます。多くのディズニー作品では動物同士でしかコミュニケーションを取れないか、または獣人として世界にあまねくいる存在としてたいてい描かれます。ところが、御作では「化物」や「変てこ過ぎ」と、喋るペンギンがきわめて珍しい存在だとされる一方で、バイクはそれをすぐに受け入れます。アイリーンも団長もサーカスの見世物程度にしか捉えていません。いわば、他にも喋る動物がいるのか、ギュスターブだけが特別なのか――もし後者ならこんな港町でFLY HIGHさせている状況ではなく、科学史上の世紀の大発見になりますから、作中でもう少し設定考証を示す必要はあったかと思います。


【ストーリー】
 起承転結のうち、起が《新境地》、承が《友情》といったふうにそれぞれギュスターブの愛機の名前になっていたのは良い演出だと思いました。逆に転調は仕方ないにしても、結にもっと《晴天》を強調しても良かったのではないかとも思います。晴れた空に向かってFLY HIGHするだけに、せっかくの演出ですがやや押しが弱いように感じられました。
 とはいえ、御作のストーリーについて最も高く評価されるべきは、ギュスターブが軍人ではなく、実は役者だったという転調の仕掛けであり、また冒頭の口上(=作中劇)がそれに大きく関わっていた点です。これには「うまいなあ」と呻らせられました。
 ただし、承の《友情》がやや駆け足に感じられました。短編ということもあり、難しかったかもしれませんが、バイクたちが友情を育むエピソードはもう二、三シーンほしいところです。そのせいで、転調の演出は素晴らしかったものの、やや唐突にも感じられました。
 全体として、ストーリーに新鮮味はなかったものの、よくまとまっていて躓くことなく、すらすらと読むことができました。


―――――


【総評】
 ライトノベルというより児童文学といった印象を受けます。実際、前述の『紅の豚』、あるいは村上春樹さん訳の『空飛ぶ猫』(講談社)、ルイス・セプルベタの『カモメに飛ぶことを教えた猫』(白水社)など、飛ぶことをモチーフにした動物の擬人化作品は幾つもあります。そういう意味では、このジャンルに新しい何かを注入できていたかという点から鑑みると、「オーソドックスでよくまとまっていたが、ユニークというまでには至らなかった」といったところでしょうか。もちろん、キャラクターのギュスターブは可愛らしく、また作中劇を活かして転調を狙った構成も良く、それらの点は高く評価できます。
 また、お題の「翼」、「嘘」は作品の肝となっていて、作中でしっかりと使われていました。ただ、そもそもの今企画のテーマとなる「矛盾」については……。空を飛べないペンギンがFLY HIGHということでしたら、むしろ喋れないペンギンが人語を解している時点でおかしいですし、そういう意味ではあまり矛盾性を見出せなかったようにも思います。
 評点につきましては、読書中にずっとイボ痔が痛くて血が出てきてしまったので、大変申し訳ありませんが最低評価となります。ご了承ください。
 嘘です。

まーろんさんの意見 +20点2014年05月11日

拝読しました。
僕はライトノベルの他に児童文学にも興味があったりするのですが、今作はまさに小さな子供が胸躍らすようなそんな作品だったと思います。
ストーリーラインが真っ直ぐでした。特にパイクがマイルズに反撃するところ、からの軍曹登場には僕の中に熱いものが込み上げてきました。
文章がすごく読みやすかったです。特にグンソーとパイクの掛け合いの場面、あまり地の文が挟まれてないのですが、二人の表情とかが目に浮かぶようで。きっとセリフに感情がこもっていたから、読み手が二人のことを強く感じれたのだと思います。羨ましい表現力です。
タイトルがまさに作品を表わしていて好感が持てました。
アイリーンは必要だったかな?なんて風に思いました。女は黙ってろ、という言葉で退場するようなキャラだったらいてもいなくてもいいかなーと。物語を進めるための都合良い存在に思ってしまったのかな。
多分、僕が児童文学として読んでしまったせいでヒロインをあまり重要視しなかったってのもあるかもしれませんけど。
なんとなくBUMPの「ステージオブザグラウンド」って曲を思い出しました。どうでもいいですけど。

楽しめた作品でした!企画お疲れ様でした。

枡多部とあるさんの意見 +10点2014年05月11日

・貴作を読ませていただきました。感想を述べさせてもらいます。
・なお、この感想はあくまで個人の主観である旨ご了承ください。
・ディックアナルスキーさんの感想、「ライトノベルというより児童文学といった印象を受けます」がこの作品のすべてではないかと。確かにラノベというより童話の印象を受けました。
・個人的に、確かにパイクは成長したんだろうけど最後片付けたのギュスターブだよなという思いがチラホラ。確か『ドラえもん』でドラえもんが未来に帰るとき、のび太はジャイアンと勝負して勝ってるんですよね。パイク君は勝つべきだったんじゃないかな。まぁそれだとギュスターブの立つ瀬がないのかもしれませんが。
・面白いけど、なんかもやもやしたものが残る、そんな作品でありました。
・私からの感想は以上です。ご縁があれば、またお会いしましょう。

ばしょーさんの意見 +20点2014年05月18日

肉球さん

おはようございます。ばしょーでございます。
先日は感想ありがとうございました。
簡単ですが、感想返しに参りました。
何かのお役に立てれば、と思います。

グンソー人気は私も同感です。渋いペンギンw
グンソーの言葉には金言が詰まっていていいですね。こういうキャラ。
私的には主人公がいじめっ子をボコスカやっているところは
本当にスカッとしました。もっとやれー、鼻の骨折っちゃれー、って。

ただ、グンソーにはサーカス設定よりは普通に軍人で
いて欲しかった気がします。
主人公と同じく読者も『サーカス!?』と驚くと思います。
(主人公と違うベクトルで)
サーカス設定が出て、急に舞台が萎んだ気が。
正体を明かさず、
謎を残して、「結果あのペンギンってなんなん?」って終わっても
主人公の成長っていう主題がクリアされているので、
違和感なく終れる気がしました。
→何が言いたいかというと、サーカス設定じゃない話も読みたかったな
 ってことでございます。


以上、簡単ですが。
またどこかでお会いできたらと思います。
それでは!