企画過去データ

2012GW企画優勝作品
理系女子と恋したら


2012年04月29日(日)13時24分 公開
■著者:黒縁眼鏡さん
■作者からのメッセージ
【使用したお題】赤、橙(オレンジ)、黄、緑、青、白、灰、黒、銀 
【一行コピー】恋する理系女子
【作者コメント】
 企画の賑やかしとして参加。
 盛り上がれGW企画!
 恋愛物難しかったよ……


 第一章

「ねぇ、タケシ。赤いバラって何で赤いか知ってる?」
「赤色系のアントシアニンっていう色素のせいだろ? で、何でまた突然そんなことを」
 実験室内の声がした方向に目線を向けると、実験台に左腕を乗せ、頬杖をついている京子の後ろ姿が見えた。その格好のまま右手が細かく動いているので、どうやら実験器具をいじりながらこっちに声をかけてきたようだ。
「正解。シアニジンっていうアントシアニン系の色素だね。化学式はC15H11O6。なんとなくね、今度の期末テストで出そうだったから」
 会話のキャッチボールは続くものの、京子の視線はこちらに向けられていない。
 どうやら実験メインで、お喋りは単なる気まぐれのようだ。俺も読んでいた本に視線を戻す。すると、外から吹いてきた涼しい風によってページがめくられていたので、さっき読んでいた所にページを戻しながら応答した。
「そんなの知ってるのって、俺達現代科学研究会くらいじゃないですかね? 少なくとも授業にも教科書にも出てないはずだ」
「教科書はどうでも良いけど、不思議だよねぇ。反応一つで色が変わっていくってさ。知ってる? 赤色のバラも作るのが不可能だと言われていた青いバラも、元は同じ物質からスタートなんだよ?」
「バラには材料があっても加工する道具が無いんだよな。卵があるけどフライパンしかないから、卵焼きや目玉焼きは作れるのに、茶碗蒸しが作れない。みたいな感じだな」
 我ながら上手い例えだ。来月に迫った文化祭での研究発表はこれで行くと良いかも知れない。実物も最近は売っているし、なかなか面白いんじゃないだろうか。
「その例え、ロマンも何もあったもんじゃないね」
 何かあっさりと否定されてしまった。科学をメインに活動する部活にとってのロマンはもっとこう壮大な物だからか。宇宙とか生命の神秘とか、そういうのとは真逆な生活感あふれる表現はお気に召さなかったのだろうか。
「物質名を挙げられ続けるのより遥かに分かりやすいと思うけどな……。ロマンは確かに無いけどさ。じゃ、京子はどんな表現にロマンがあるっていうんだよ」
 理系天才美少女。高校教師顔負けの頭の良さを持つ彼女のロマンが気になり、本から目線をあげて彼女の背中を見つめる。炭素と酸素の結合の具合とか言うのだろうか?
「黄色のバラはさ。情熱と不可能を乗り越える力は無いけど、やりくり上手だよね。そんなものが無くても色んな自分を表現出来るんだから」
 俺の予想に反して、天才京子の口から出たのは本当にロマンチックな言葉だった。てっきり、分子や原子の話に飛ぶからだと思ったのに。
 そのせいで、俺はやたら科学的な分析をした感想を述べてしまう。
「黄色だと、カロテノイド系だな。なるほど……。赤からオレンジ、黄色まで意外と色が幅広く変化する物質だからか。確かにやりくり上手だな」
「ちょっとはロマンチックじゃない?」
 そう言って回転椅子を回して、こっちに振り向いた京子は勝ち誇った笑みを浮かべていた。テストで百点を取っても別にこんな顔をしないのだが、こういうお喋りをしていると、たまに見せてくれる何とも楽しそうな笑顔。普段がむっつりしてるように見えるので、尚更この笑顔が映える。
「分かるやついるのかそれ?」
 いや、確かに俺は分かったけど、それは俺達がそれなりに長い間一緒にいるからだ。中学の時から理科の点数はトップを争った仲だからな。最近負け続けなんだけどさ……。
「タケシは分かったじゃん。残念ながらテストじゃ私に勝てないけど、そういう頭の使い方なら私と良い勝負してるよー」
 そう言って、京子は実験台に向き直し作業を始める。右手を忙しそうに動かして、何かの液体を吸っては胸元にある小さなビーカーに入れているようだ。
 京子の言う通り、高校に入ってからは本当に一度も勝てていない。中学の途中までは勝つことがあったのに、最高でも引き分けになってしまった。
「ほめてんのか、けなしてるのか判断に難しい評価をありがとう」
「褒めてるよー。私もそんな黄色なんだろうけどね。やりくり上手だけど、出せない物もあるよ」
「お前で出せない色があるとか言われたら、俺を始め他の奴らは白になっちまうよ。知識の塊みたいなやつなのに」
「白色でも人間の目に映らない色素があるかも知れないし、どんだけ白くても色があるのかも知れないね。他の色に隠れていることだってある。目に見えてることの全てが真実ではないってことだね。みんなは私よりよっぽどカラフルだよ」
 どうやら今回も俺の負けのようだ。しっかり科学とロマンを混ぜられている。さっきの卵の例えが急にちんけに思えてきたよ。
「俺の負けだ。京子に文学的な才能があるとは思わなかったぜまったく……」
「卵の表現は上手だと思うよ。お母さんでも分かる科学の説明が出来る人って少ないからさ。お父さんが良く悩んでる」
「なるほどね。んで、お前が通訳する訳だ」
「正解。おかげさまでそんな知識ばっかり増えてくよ。面白いけどね」
 彼女の両親は二人とも大学教授なのだが、父は理系の生物学系、母は文系の経済系と専門が違うせいで、お互いの仕事を語り合うと一切合切かみ合わないらしい。そんな二人の橋渡しをするのが京子の役目だ。
「それで学校では実践な訳だ。何というか良くそこまで頑張れるよな」
「インプットが来たらアウトプットもしないとね。楽しみもあるしね」
 やれやれ、本当に真面目だ。俺が勝てなくなる訳だよ。勉強が楽しいと言って勉強している奴に、勝てる訳が無かったか。
 ただ、俺はそんなこいつが好きなのだ。やたら理屈っぽいと思えば、ロマンを口にすることもある。むっつりしてるように見えたら、突然目を奪われるような笑顔を見せる。
 そんなこいつを追い越そうと努力していたら、こいつに夢中になっていたんだ。
 この学校に無かった科学研究会を作ったのも、こいつに離されないためだ。
「それにここなら通訳じゃなくて私の言葉でお喋りが出来るし、楽しいよ」
 背中越しに投げられた言葉に思わず照れてしまい、思わず視線を本の上に戻してしまった。そして話題を切らさないために、さっきのやりとりで出てきた単語を選択する。
「そう言えば、青いバラの花言葉って知ってるか?」
「不可能から神の祝福や奇跡になったんだよね。随分印象が変わったもんだよね」
「見たことある?」
「あるよ。というか今、家にあったりする」
「マジかよ?! やっぱ奇跡とか神の祝福とかそんな雰囲気する?」
 京子を追いかけてるために作った科学研究会だが、俺自身科学に興味があるため、普通に興味がわいていた。
「正直、紫色にしか見えないんだよね。細胞内のpHの問題とか本当の青色にするまで時間かかりそうかな? すごいとは思うけどね」
「そっか。でも、それでも奇跡なんだろうけどな」
「奇跡にこだわりでもあるの?」
 別にそれにこだわりがある訳では無い。ただ、お前との関係が友達以上になるっていう奇跡が起きて欲しい。って思っているだけだ。
「別にそういう訳じゃないけどな」
「ふーん。ならムーンダストっていうカーネーションは知ってる? これも普通には存在しない青色カーネーションなんだけど、青いバラよりはお手軽に買えるからこの実験室に飾ろうか。花言葉は奇跡じゃないけどね」
 青色のカーネーションというのも自然界には存在しない。そんな新たな知識を得たついでに、青色のバラとあわせて花言葉に興味がわいてきた。
「青いバラは不可能から奇跡だったけど、同じく存在しなかった青いカーネーションは何なんだ?」
「永遠の幸福だって。花持ち性が高くて、切り花のくせに一ヶ月も持つことがあるから、ある意味ピッタリだよね」
「メチャクチャロマンチックな花言葉に、ロマンのかけらもない解説になってるぞ?」
「ギャップ萌え」
「どう考えても違うだろうよ……」
 とこんな感じで、こいつとロマンスってのは絶対に無い。俺もそこそこ理屈っぽいとは思うが、京子も相当変わり者だからな。正直ついていくのがやっとなレベルだ。
「赤いバラは愛情とかの花言葉だけど、黄色いバラには薄れ行く愛とか不誠実ってのがあるから注意だね。ロマンチックな物ばっかりだと思ってると大事な時にこけるよ」
「そんなのを使える時が来ればの話だな……」
 お前にそんなことをするほどの勇気も無ければ、お前がそういう意味で喜ぶとは思えない。だって、そうだろ? お前は天才理系少女京子なんだから。
「実験材料に使えるから、私はいつでもなんでも歓迎」
 ほらな……。それ以外の意味で、受け取って貰えないのが残念で仕方が無いよ。それでもお前が喜ぶんならそれはそれで良いけどさ。
 惚れたら負けってやつだな。まったく……。
「さっきの話じゃないけどさ、目に見える色ってのは赤から青までの波長で、人間には見えない色って沢山あるんだよな」
 俺の気も知らないで、実験材料ならと言い放った彼女にちょっとした皮肉を呟く。多分俺の真意は伝わることは無いだろう。でも、それでもちょっと文句を言いたかったんだ。女々しいって分かっていてもさ。
「そうだね。虫は紫外線が見えるし、蛇は赤外線を感知できる。物によっては見る方向で色が変わるし、人によって見え方が変わる場合もあるよね」
「なら、見えてる物が同じかどうかを確かめる場合は、どうすれば良いんだ?」
「聞けば良いんじゃない? 今見えている色は何色ですか? ってさ。違ったらお互いに歩み寄ってそれぞれの立ち位置から見れば、真偽が分かると思うよ。まぁ、写真とかでも良いんだろうけどさー」
 聞けばか……。言えないよなぁ……。俺はお前が好きだ。お前は俺のことが好きか? なんて答えを貰うのは一瞬でも簡単には出来ない。色の見え方を確かめる程、簡単では無いんだよ。
「ねぇ、タケシ。科学研究会に属しておきながらこんなこと言うのは変なんだけどさ。科学って現状証明できる範囲でこうだと思われる。って言う物らしいんだよ。だから、後になってひっくり返ることが沢山あるんだよね。なら、きっと間違っていても、突っ走ることが大事なんだよ。ひっくり返るかそのまま正解かなんて、ずっと後になんなきゃ分からないんだからさ」
 確かに科学好きな奴は科学で何でも説明できると思っている人もいる。そんな中、京子が一歩ひいた見方をしているのは知っていたが、何かを応援してているような口調だった。それを不思議に思って、仕草が見えるよう顔を上げて確認を取る。
「親父さんの受け売りかな?」
「そんなところ。前半はちょっと私流にアレンジはしたけどね」
 動きに特に変化は無し。迷い無く手を動かして、液体を移して行っている。どうやら嘘では無いようだ。
「俺流アレンジだと、科学は物差しじゃないが、その世界を測る測定法である。ってところかな?」
 今回はちょっとロマンが加わった自信作だ。思わずちょっと誇った顔をしていたのだろう。そんな俺の言葉を聞いた京子は顔だけをこっちに向けて苦笑いを浮かべていた。
「あれ? ダメだった?」
「ちょっと惜しいかな」
 それだけ言うと彼女はまた実験に戻り、お喋りは終わってしまった。
 惜しいね……。それなりに自信があったんだけどなぁ……。
 しばらく、手元にあった科学雑誌を読みふけっていると、一段落ついたのか京子が椅子から立ち上がり大きく伸びをしていた。
「お疲れさん。今日は何やってたんだ?」
「神の祝福の破片に人の手を加えてました」
 え、青いバラ持ってきてたのか? 何だ。持ってきてたのを知ってたら、すりつぶす前に見たかったよ。それより、多分これは京子なりのボケだよな? しっかり回収しなくては。
「ここはいつから文学部になったんだ?」
「花弁から抽出したデルフィニジンに、酸や塩基によるpH変化、金属イオンと錯体を形成させて色を変化させる実験をしてみました」
「説明にギャップありすぎだろ!」
「ギャップ萌え」
 俺のツッコミを想定してたのか、返答は一瞬で返ってきた。呆れてため息をつこうとしたが、とても楽しそうな笑顔の京子が目の前にあったせいか息が一瞬止まる。そんな動揺がばれないように、がんばって冷静な分析で返した。
「ようは、花の色を変える実験をしてたんだな。ところで、そのギャップ萌えはまってるのか?」
「便利な言葉だなって思うよ? ギャップは簡単に人間に魅力を与えるからね。困ったときのGM(遺伝子組み換え)ってレベルで便利な言葉」
「遺伝子組み換えと同レベルなのそれ?!」
「その科学誌にも無かった? 飢餓対策には作物の収穫量上昇が必要だ。この遺伝子を使えば収穫量が上がる。さぁGMだ! みたいなの。まぁ、そういう会社が書けば当たり前なんだけどさ」
「そんな軽いノリで書かれてねぇよ! ん? いや、まぁ、でも大体あってるか……」
 恐ろしく簡略化された話だが、キーワードを抽出したらそんなレベルだ。もちろん彼女のことだから、そんな軽いノリで書かれている物では無いと知っているだろうけど。
 色々と役に立つ遺伝子っていっぱい見つかっている。でも、遺伝子組み換え技術を使わないと今ある作物につっこむの面倒だもんな。
 桃栗三年柿八年、柚子は九年、梅は十三年。木を植えてからそれだけ経たないと、花が咲いて種が取れない。普通に種を取って、次の良い子供を選ぼうなんか時間的に出来ないよな。
「ギャップ萌えはギャップがあれば良いんだから、有用な遺伝子があればGMだ。って言うレベルで便利な言葉でしょ? でも、便利とは反対に困った言葉もあるよね。ホモって言われたら私達は、《あぁ、同じ遺伝子が二つでワンセットになってるのか》ってすぐ分かるけど、知らない人が聞いたらすごい勘違いされそうじゃない?」
「あぁ……最初はクラスの連中の格好のネタだったな」
 京子が咳払いをして喉の調子を整えると、低い声でこちらを真っ直ぐ見ながら声を発した。
「俺のホモ個体を見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく……ヘテロです……」
 某漫画の台詞を改変したこのやりとりが教室の各場所で繰り広げられたのだ。言葉の響きは確かに同性愛を意味するホモと一緒だから、分からないでも無いのだが……。
「優性ホモをガチホモ。劣性ホモを受けホモ。って何かが間違ってるよな……」
「致死遺伝子の話の時なんて、ガチホモは死ぬしか無いじゃないっ……! って絶望する人達がいたね。マウスの毛色って黄色が優性遺伝子だけど、二つ持っちゃうと死んじゃうから」
「お前ら絶望してるけど、ホモじゃないだろ。ってな。まぁ楽しく科学が覚えられるのは良いことだと思うけどな」
 おかげでそこだけは、みんなの点数が良かったそうだ。恐るべし言葉の力。言葉自体にインパクトがあると語呂合わせ以上の破壊力を秘めている。
「ホモ自体はギリシャ語で同じ、等価を表す接頭語だからね。本来ならその下に言葉が続かないといけないんだけど、日本では接頭語って無いから仕方ないよねー」
「その分析っぷりは科学研究会っぽいな。文系の話に対してもさすがだよ」
「まーねー。そんな私の話にしっかりつっこんでくれるタケシは貴重だよー」
「この学校では絶滅危惧種だからな。レッドリストに登録してもらうか」
 胸をはって鼻息を荒く吐いたら、京子が椅子ごとこっちに滑ってきて、軽くデコピンをしてきた。
「逆にそんな楽しい話題を提供してくれる絶滅危惧種を、しっかり保護して欲しいなー」
 真っ直ぐにこちらを見据えた京子と目が合う。
 痛いところを的確に突かれた。すごく気まずい。というか恥ずかしい。心臓の鼓動が速く大きくなっているのが自分でも分かる。静まれ俺の交感神経! 動け俺の副交感神経! ここで選択できる最良の選択肢は何だ?!
「っと、そんなことより実験結果を見せてくれよ」
 で、そんな焦りの末に選択したのは逃げるだった。我ながら情けない奴である。だが、逃げの一手としてこの手は非常に有効だったらしい。
 この一言で彼女は何かを思い出したかのように、手をぽんと打ったのだ。
「良いよー。こっちこっち」
 また椅子ごと実験台に向けて滑って行った京子の後ろに続いて、隣に立つ。実験台の上には小さな試験管が横に何本も並べられていて、色がついた液体が入っていた。
「前列のは左から右に向かってpHが上がっていった奴。後列は鉄の量を調整したやつだよ」
 言われてみると確かにpHが低い時、つまり酸性の時は赤く、pHが高い時、アルカリ性の時は青くなっていた。鉄も量が増えると色が赤色から青色に変色している。
「なるほど。確かに結構変わるもんだな」
「ねー。だから、これから先もっと綺麗な青色バラが出来るかもね」
 きらきらと目を輝かせながら、京子は試験管を眺めていた。その様子についつい頭をなでたくなる衝動に駆られたが、必死に左腕を理性で押さえた。落ち着くんだ。目の前にある試験管に集中しろ!
「この後、お前ならどうする? 俺だったら、更に遺伝子を組み込もうとか考えちゃうけど」
「簡単に言うけど、バラってすごく難しいみたいだよ? 世界で成功してるのって一例だけだしさ。でも、もっと簡単に出来るようになるかも知れないからタケシの考えには同意だなぁ」
「んー、なかなかうまく行かないもんなんだな」
「それが科学ですから。いやー、科学だね」
 科学も恋も、どうやら世の中そんなに上手くは行かないらしい。
 高野山高校現代科学研究会。このお話はちょっと捻くれた科学者の卵の恋話(こいばな)。

 第二章

「恋は化学反応!」
 実験器具を片付けた後、一緒に下校をしていたのだが京子が突然訳の分からない叫び声をあげた。時計は五時半を回っており、町が赤く染まる中に響く声としては明らかにずれている。
「お前は突然何を言っている……」
 花を買いに行きたいから付き合ってと言われた。それで緊張しまくっている俺を無視して、訳の分からない叫び声をあげられたのだ。あまりの突拍子のなさに俺は気の利いた返しが出来ず、呆れた反応を返してしまった。
「化学の反応って熱による反応な訳じゃん。二つの物をくっつけたいなら、一定以上の熱を加えるし」
 彼女は俺の反応を無視して話を続けた。しかし、俺の方も驚きで緊張がとけたせいか、この話題は彼女の恋愛観を知るチャンスだと思った。そこで、彼女の話を引き出すために疑問系でつっこみを入れる。
「で、それがどうして恋愛なんだよ?」
「恋愛も二人がペアになるんだから、化合式って考えられない? で、二人がくっつくにはある程度のエネルギーが必要になると」
「そのエネルギーは何になるんだ?」
「優しさとか気遣いとか、そう言った相手に好かれようとする行動力なんてどう?」
「なるほど。それは確かにエネルギーを使うな」
 事実、今こうやってお前と一緒にいるのも結構頑張っている。だから、妙に彼女の言葉に納得してしまった。
「でさ、くっつく物質によって必要な熱量は変わるじゃん。例えば、塩酸と亜鉛。入れた瞬間に反応して、銀色の亜鉛は溶けてるけど白い塩化亜鉛に早変わり」
「熱をむしろ放出する反応だな。なるほど、いわゆる一目惚れでくっついた後、熱々な感じという訳だ」
「そうそう。んで、鉄ってのは長い間放っておいても、酸素とくっついて酸化鉄。いわゆる茶色のサビになるよね」
「反応がゆっくりな訳だ。つまり、それは長い間ずっと一緒にいればくっつきやすいってことだな。友達同士がいつの間にかっていうタイプか」
 だからこそ、俺はこうしてお前と一緒にいるし、一緒にいたいと思う。お前と反応出来る物質かどうかは分からないけどさ。
「さすがタケシ。鉄は長い間放っておけば反応するけど、熱を与えるとそれがすぐ起きるよね」
「すぐに黒く酸化するな。なるほど。くっつくべく二人が行動力を示せば、あっという間にペアになるって訳だ」
「で、そこにプレゼントとかが触媒になるんだよ。花束とかアクセサリーとか、ドキッとする物が触媒」
「二つの物質を近づけて、反応をしやすくする物が触媒だから、なるほど。互いがくっつくために乗り越える山が小さくなる訳だ」
「うんうん。一緒に持ってるものとか、二人を繋げやすいよね」
 結局こいつはどのパターンが望みなんだろう? 触媒になりそうな物も分からないし、こいつの嗜好は分からずじまいになりそうだ。分かるのはただこいつが科学マニアで、俺が苦労しそうなことだけだ。
「ところで、何でまたそんな考察を?」
「お父さんとお母さんの結婚記念日が今日なんだ。で、昨日何で二人は結婚したのか聞いてみたの」
「なんて答えたんだ?」
 彼女は俺の疑問を聞くと苦笑いを浮かべた。この反応を見るにどうやら一悶着合ったようだ。話が合わないときはひたすら合わない二人らしいからな。
「二人とも分かんない。だってさ。お父さんは何が原因なんだ? 一体何がカギ刺激だったというんだ……? と真剣に悩み出して、お母さんは一体何の間違いで需給が一致したんだろう? って悩み出すし。笑っちゃうよね」
「悩み方がおかしいだろ……」
 さすが専門職と言ったところだろうか。専門分野を基準に物事を考えている。
「で、恋愛って何だろう? って思った訳だよ。化学に繋げて考えてみると、うちの両親は一番目のタイプかなー」
「出会った瞬間にって奴か」
「そうそう。なんだかんだで仲が良いから、楽しそうな二人なんだけどね」
「化学反応はより安定な物質に向かう。お前の家の両親はくっついたら安定したんだろうな」
「うん。そんな感じだね。タケシはどう?」
「へっ?! 俺?」
 突然俺に話題が移って、声が裏返った。いや、お前の事は好きなんだけど、え? どういうこと?! ちょっと待ってくれ心の準備がまだ出来てない!
「んー? タケシの両親だよ。仲良い?」
 何だ……。うちの親のことか。心臓が飛び出すかと思ったよ。本当に心臓に悪い。
「仲は良いな。んー、タイプで言うと長く一緒にいたタイプだな。いつの間にか付き合って六年くらいしてから結婚したとか言ってたし」
「そっか。もうちょっとかかりそうだなぁ」
「ん? 何のことだ?」
「実験の成果が出るのは時間がかかるって思っただけだよ。六年もかかったんでしょ?」
 六年越しの実験ってのも大変だな。いや、恋愛を実験に例えるってどうかとも思うけどさ。
「やっぱ触媒とエネルギーが無いと化学反応は上手く早く行かないね」
 そう。もう俺達は既に高校二年生だ。中学の付き合いを含めれば結構長いことになる。なのに俺達の関係は特に進展していない。
「もともと反応しない物質だったらお手上げだけどなぁ……」
 例えば金と銀は反応しようがない。金属同士で化合反応は俺が知っている限りは起きえない。
「金属同士でも合金という形でくっつけることはあるけど、これは化合反応じゃないね」
 どういうフォローの仕方だ。たまに俺の気持ちを知っていて、ワザとこんなことを言っているんじゃないかと邪推してしまう。何か悲しくなってくるので、さっさと話題を切り変えよう。
「で、両親の結婚記念日用に花束を買いに行くわけだ」
「そういうこと。カスミソウとポンポンダリア。後は青いカーネーションを入れた花束にしよっかなって」
「二人への感謝と、永遠の幸せを込めた訳だ。ロマンチックだな」
「正解。分かっちゃうもんだね」
 ちょっと驚いたように京子は目をぱちくりとさせている。その様子がちょっと面白くてついつい調子に乗りたくなった。
「長いこと一緒にいれば、それなりにな。微分係数が分かってるから、傾きが分かるって所だな」
 微分係数は瞬間の速度を出すための計算式。その一瞬における動きを知るための数学だ。科学同好会なので数学用語を使ってみるが、結局の所付き合いが長くて、京子の思考パターンが分かっている。ってのを格好つけて言っているだけだ。
「今のはちょっと下手くそだよー」
 残念ながら酷評が返ってきた。やっぱり分かりにくいよな……。数学用語を使うのは無理があったと自分でも思う。思わず右手で頭を書いていると、京子が人差し指を唇に当てて『うーん』と唸り始めた。
「レシピが無くても、材料があれば何となくでハンバーグが作れちゃう感じ?」
「せっかく科学研究会っぽく理系用語で表現したのに。でも、まぁ、間違ってないな。そんなもんだ」
 細かい説明が無くても、何となく分かってしまう。結局の所そんなもんだからな。でも、レシピ無しだからたまに失敗する。全部が全部分かる訳じゃないし、正しい訳じゃ無い。そういう意味でも京子の例えは的を射ていると思う。
「卵の例えもそうだけど、料理で表現するのってイメージわくね」
「そうだな。毎日触れてるからじゃないか?」
「毎日触れても分かんないこともあるけどね」
 ん? こいつが分からないことがある。っていうのも珍しいな。いや、でも前にも言ってたか。『分からないことはしっかり分からないって言うのが、科学者だよ』だっけ。
「何が分からないんだ?」
「遠い宇宙の事から目の前にいるタケシの事まで。生まれや構成とか分からないことはいっぱいあるよ?」
「俺と比べる物のスケールがでかすぎないか?」
「それだけ科学的には分からない事だらけと言うことだね」
「俺もたまにお前が分からないよ。でも、分からない場合には」
「「仮説を立てて、データで証明せよ」」
 二人の声が重なり、その後に京子の決め台詞が続く。
「科学だね」
 気がついたら既に目的の花屋の目の前だ。結構長いことお喋りをしていたらしい。『仮説を立てて、証明せよ』ね。お前が俺を好きでいてくれるという仮説を立てるのは簡単だけど、データを取るのは難しそうだよ。エラーが多すぎて分からないんだからさ。友情と恋の有意差検定の数式を教えてくれ。
「教科書には載ってないことだらけだ」
「だからこそ、面白いんだよ。遅くなると心配されるし、早く入ろー」
「はいはい」
 だからこそ、面白いね。お前は本当に面白い奴だよ。そう思いながら、俺は京子に続いて店の中に足を踏み入れた。

 第三章

 花屋に入ると、色とりどりの花が出迎えてくれた。花だけでは無く、青々とした観葉植物も所狭しと置いてある。どれもこれも手入れが行き届いている。こういう所に来ると、細かく植物を観察したくなるのはきっと科学研究会もとい京子の影響なんだろう。京子の方は店員に注文をすると、こっちに近づいてきた。
「フラワーアレンジメントが終わるまで、ちょっと時間かかるから、もうちょっと付き合ってね」
 願ったり叶ったりだ。この買い物が終われば、また学校でなんだからさ。クラスは別だし、放課後の部活の時間にしか会えない。そして、何よりも残念なこと。京子の誕生日は日曜日。つまり、学校では会えないのだ。だから、せめてちょっとでも長く一緒にいたい。
「ん。構わないよ」
 だが、極力普通に返事をしてみる。ちょっと素っ気なさ過ぎるとも思うけど、俺の本心がばれるよりマシだ。
 京子は俺の隣に立って、バラの切り花をバケツから取り出した。
「綺麗なバラにはトゲがあるって言うじゃん。でも世の中にはトゲが無いバラがあるって知ってる?」
 頭の中の探索と同時に、バケツの中に入ったバラを見渡す。
「そうなのか? んー、見たこと無いな」
「野生のバラなんだけど、突然変異でトゲが無くなったのがあるんだ。でも、トゲ無しは劣勢遺伝子だから受けホモなんだよ。変異が無いガチホモのバラと交配しちゃうと、その特徴が現れないんだ」
「俺相手にそのホモ表現はいらないぞ?! ってか店員さん変な目でこっち見てるし! 作業してる手が止まってる!」
 俺のつっこみに店員さんはハッとしてから苦笑いを浮かべて、作業に戻った。俺の慌てっぷりを見て、京子はいたずらな笑顔を見せてから話を続ける。
「私としてはそれで良かったと思ってるんだ。トゲの無いバラが一般的になったら、トゲのあるバラは売られなくなりそうだもん。綺麗な花にはトゲがある。のトゲが無くなったら後は綺麗な花でしかないからね。危なくない綺麗な方を選んじゃうよ」
「栽培管理やら収穫の度にトゲが刺さってたら、農家もやってられないだろうしな」
「流通でも他の花に傷をつけて価値を下げたりね。だから、トゲが無くなったらトゲがあるバラは無くなっちゃう気がしたんだよ。需要側も供給側もトゲの無い方が管理も楽だからWin-Winだもん」
 本当にこいつは色んな事を知っていて、考えているんだな。親と良くこんな会話をしているんだろう。こいつについていける自分がちょっと誇らしい。
「まぁ、でも世の中には物好きもいるからな。種なしブドウよりも種ありブドウが好きって奴もいるかもしれないし。甘いトマトより酸っぱいトマトの方が好きっていう奴もいるんだしさ。トゲのあるバラもなんだかんだで残ると思うぞ。トゲの無いバラなんてバラじゃない! とか言ってさ」
「ニッチな市場を目指す訳だね」
「今度は随分と経済学的な発想だな。まぁ、あれも社会科学か」
 父親だけでなく、母親の知識もバッチリな訳だ。そう言えばこいつ文系科目も割と得意だ。
「科学だね」
「でも随分と感傷的だな。ちょっと珍しい」
 珍しく、一つの物に肩入れしている。人々の利益のために使われるのが科学と言われる中、ちょっと不便な物を推すなんて。普通そういう形質は切り捨てられるはずだ。苦くて酸っぱい果物が、そういう不味さを捨てられ、段々甘く大きくなっていったように。
「ん、そう? 多様性が失われるのは科学的にあまり好ましくないかなってさ」
 仮説と検証。もしかすると、ちょっと良いタイミングなのかもしれない。俺の気持ちがばれない程度に、ちょっとした意地悪さを混ぜてごまかしながら実験をしてみよう。
「京子は自分がトゲのある方だと思うか?」
 俺の質問に京子は目をそらして、左手で髪の毛をクルクルといじり始めた。どうやら、正解らしい。いや、一つのデータで結論を言うのは早計か。再現性の確認をとらないと信頼出来るデータにはならない。だっけか。
「えっと、もしかして図星?」
「うー……意地悪だなぁ……」
 京子がちょっと上目遣いで、しかも涙目でこちらを見つめてきた。やばい。あれ? もしかして地雷踏んだ?! 気持ちがばれるばれない所の問題じゃなく、嫌われたか?!
 視線が店中にぐるぐる動く。動揺が止まらない。じゃない収まらない。
 そんな中、店員さんが包装し終えたことを告げてくる。助けられたのか、とどめを刺されたのか分からない。何てことだ。実験に失敗というか、実験器具をぶち壊したあげくの失敗といったレベルだ。
「ありがとうございます」
 だが、俺の焦りとは裏腹に、店員に対して、京子の声は普通にいつも通りの声だった。いや、むしろいつもより機嫌が良いように聞こえた。
 花束を受け取って返ってきた京子の顔は、討論に勝った時と同じようにちょっと勝ち誇った顔をしていた。
「タケシは上目遣いに弱いっと」
 そう言った京子はにししと笑って花屋の扉を開き、外に出て行った。
 こっちが実験対象にされていたってのか?! ってことは何だ? また俺の負けかよもう!
「ちょっ! 京子待てってば!」
 続けて俺も駆け足で店を出る。こんなんばっかりだから、やっぱり京子にはまだ追いつけそうにない。俺と京子の間の相対速度はいくつなんだろう? あいつの方がやっぱり速いのかな。

 第四章

「いつの間にか日が沈んでるね。今日は満月だ」
 外で立っていた京子に追いつくと、彼女は暗くなった空を見上げていた。俺も京子に続いて頭をあげると、丸い月がビルとビルの間から見えていた。
 建物から蛍光灯の光が漏れ出し、外はそこまで暗くない。
「ねぇ、夜になって窓を見ると自分の姿が映るよね。外からは丸見えなのにさ」
「ん? 言われてみればそうだな」
「理由は分かる?」
 大体の予想はつくけど、正解している保証は無い。でも、この聞き方だと、答えを知っているはずだ。間違っていたら格好悪いので予防線をはっておこう。
「仮説だが、透明に見えるガラスも鏡みたいに反射する能力がある。そう考えれば、部屋の内側と外側の明るさで説明がつくな」
「お、何だ。ちゃんと原理は知ってるじゃん。ちゃんと勉強してるねー。で、どう説明が出来るのかな?」
「外からガラスを通過して中に入ってくる光の量より、内側で反射して目に届く光の方が強いからじゃないか? 昼間は外側の方が明るくて、部屋内からの反射が小さいから外がはっきり見える」
「おー、偉い。良く出来ました」
 答えを言い切ると、京子が花束片手に背伸びをして俺の頭を撫でてきた。あまりにも突然だったのでメチャクチャびっくりしたけど、何とか動きには出していない。さっきからかわれたばかりだったから、ちょっと耐性がついたのだ。
「きょ……京子さん、今度は何の実験かな?」
「あら。頭撫でるのはあまり面白いリアクションが返ってこないか。ちょっと残念なデータだなぁ」
 いや、メチャクチャ嬉しいですよ? むしろ何度も反復して再現性を確認してくれないかな? 三回同じ結果が出れば良いって言われるけど、五回とかやってくれても良いんですよ?
「実験は再現性を確認しないとな。一回限りのデータは嫌われるぞ」
「んじゃ、また今度ね。サンプル条件が違っても恒常的に同じ結果だったら仕方ないね」
 次はちゃんと照れておこうかな……。そうすれば、反復実験が増える。ってそうじゃないだろ?!
「今度はどういう処理条件にするつもりだよ?」
「その時のお楽しみで。大丈夫。痛くは無いはずだよ」
「お手柔らかにお願いします……」
 冗談だとは分かっているが、実験に危険はつきものだ。用心しておいて損は無い。液体窒素がこぼれたり、気化したアルコールに引火したり、水酸化ナトリウムで指が溶けたり。
 気をつけておかないと何が起きるか分からないのが実験だ。びっくりしたあまり、表に出していないよう心がけている本心がポロっと出てしまうかもしれない。
「ここから帰る方角は別だね。今日はつきあってくれてありがとう」
「どういたしまして。時間も時間だし送っていこうか?」
「五分くらいだから良いよー」
 残念。もうちょっと一緒にいたかったんだけど、ここで食らいついても仕方ないか。今日は大人しく諦めよう。それにしても、何故だろう? 今日はいつも以上に絡んできたような気がする。花屋あたりからいつもと様子が違っていたような?
「そうか。んじゃまた学校で」
「うん。また学校で」
 京子と別れた後、少し歩いてから来た道を振り返る。視界に彼女がいないことを確認した俺は進行方向を反転させ、先ほどの花屋に戻ることにした。
「行動力と触媒ね……検証してみますか」

 第五章

 何事も無く週末が終わり、またいつものように月曜から学校が始まる。予定通りの時間割で、何の変化も無い決まった授業の時間が終わる。今日はそんな授業がいつもより長く感じられた。理由は簡単。今の俺の興味は座学よりも実験の結果だけにしかないからだ。
 帰りのHR前に実験室に忍び込み、既に仕掛けはセット済みだ。後は京子の反応データを採取するだけ。
「ちょっと、ドキドキするな」
 いつもよりちょっとだけ遅れて、実験室に向かう。こっそり入って京子の反応を見るためだ。正直その瞬間の反応を見るのが怖いからという情けない理由もある。
「実験に失敗はつきもの……行くぞ」
 意を決して、実験室の扉を開けると京子が試験管に俺が置いた花束をいけていた。
「誕生日は昨日だったんだけどなぁ」
 俺に気付いた京子はこちらに振り向いて、苦笑いを浮かべている。困った。最初に得られたデータは『呆れ』だぞこれ。だが、実験はまだ終わっていない。失敗したら改善して再度実験だ!
「直接言いたいからな。誕生日おめでとう」
 さて、これでちょっとは照れてくれる様子を見せてくれないと、仮説を証明するためのデータが得られないぞ。
「ありがと。早速実験に使って良いかな?」
 照れ無し。笑顔は一瞬。何か実験がやりたくて仕方が無いのか、手がウズウズしているように見える。
「やっぱそうなるよなぁ……どうぞ」
「何がっかりしてるの?」
「いや、早速すりつぶされるのかと思って……」
 選んだ花の種類を考えてみろよ? 京子なら分かると思って選んできたのに、この反応って……。がっかりもするさ。
「今回はそんなことしないよ。花持ち試験をやろうかなーって思ってるんだ。どういう処理をすれば花が長く持つか調べるんだ」
「へ? そうなの?」
「長く花を楽しめるために、みんな色んな事やってるんだよ? ほら、包装紙の所に小袋ついてるでしょ」
「ん? あぁ、これか?」
 指で指された小さな包みを手に取る。銀色のフィルムに花持ち剤と書かれていて、触った感じ中身は液体のようだ。
「それはカビを防ぐのと、切り花の栄養が入ってるんだよ。ちなみに家庭では砂糖水に漂白剤とか入れると代用になったりする」
「へぇー。なるほど。あぁ、切り花がしおれるのはカビとかの細菌が茎に詰まってとかいう話は聞くな」
「そうそう。道管とか詰まっちゃって水が吸い上げられなくなるから、防カビ剤を入れて、こまめに水を替えることも大事だねー。この子達は、どれだけ長持ちするかな?」
 試験管の方を見ると、シールでラベルされており、水処理区、花持ち剤処理区、手作り花持ち剤処理区とかかれていた。それぞれに最低一本は俺が買った花がささっている。
 赤いバラと白いバラのつぼみ。ホワイトレース。リナニア。つぼみのバラは告白を、ホワイトレースは感謝を、リナニアには気付けというメッセージを込めたんだけど、残念ながら完全スルー……。思わずため息をついてしまう。
「ため息ばっかついてると幸せが逃げるらしいよ?」
 誰のせいだ誰の……。ったく、楽しそうに薬品混ぜやがってからに。
「あ、でもそのため息に幸せが混ざってるなら、私が回収すれば良いのか」
「へ?」
 落ち込んでいる中、訳の分からないことを言われて、素でおかしな声が出た。何を変なことを言っているんだこいつは。
「ため息から幸せ成分だけを分離するには、どうすれば良いと思う?」
「混合気体を分離するには、膜を介した膜交換っていう手法があったような。しっかり縛った風船でも徐々にしぼんで行くみたいな物で、分子によって膜の透過効率が違うとか。その速度差を利用して速く外に出て行く気体を回収するんだよな」
 ようは出やすい物はすぐ風船から抜けて、出にくい物は風船の中に残りやすい。っていう性質を利用するだけなんだけど。
「ってことは、何かでため息を閉じ込めるところから始めないといけない訳だね」
「本気でやるつもりかよ?」
「ため息から幸せを分離しました! なんて言ったらイグノーベル賞は貰えるよ?」
「何かとっても残念! あれって貰って素直に嬉しい賞じゃないだろ? この前の化学賞とか経済学賞なんて皮肉以外の何でもないじゃないか」
「えー、粘菌が地下鉄と同じ路線を描いたとか面白いと思うけどなぁ」
 確かにびっくりしたけどさ。目も神経も無いカビみたいなのが、人間が築き上げた交通網を真似るとかさ。他にもバウリンガルとかも笑ったよ。犬の気持ちが分かるってすごい。でも俺はお前の気持ちが分からない。
「面白いのは同意するが、これは前提がまずいだろ。幸せは実態を持つ物質じゃない」
「その通り。かの有名なエジソンも実態が無い幽霊を電気的に捕まえようとかしてたけど、それと同じレベルの話なんだよね。結果は言わずもがななんだけど」
「さすが発明王。何でもやろうとするんだな」
 ちょっと呆れるレベルですごいと思う。
「だからさ、残念だけど幸せを分離しました。って言っても当の本人しか分からないんだよねー」
「それは残念だったな。イグノーベル賞を取るチャンスが無くなって」
「でも、他人から見えないからこそ面白いんだと思うよ? 色々考えたり出来てさ。もし、自分の幸せが他人に丸見えになってたらって思うと、ちょっと恥ずかしくない?」
 クラスのみんな所じゃなく、家族にも京子と一緒にいるのが幸せだと見られるのか。怖すぎるわ! そんなの絶対無理だ。
「よし、人類のためにも幸せ分離器は発明しないでくれ」
 ただの冗談で言っている話題に、恐ろしく真面目な顔をして真剣に頼んだせいか京子は頭をかきながら苦笑いをしていた。
「出来ちゃったらごめんね」
「その時は授賞式にでも呼んでくれ」
「まぁ、色々言ってはみたものの、ひとまとめにすると、誕生日プレゼントをありがとう」
 京子は両手を身体の前にそろえて、ちょっとだけ頬を紅くしながら、可愛い笑顔でお辞儀をしてくれた。その一連の動作に目が完全に奪われ、俺の頭はフリーズしている。
 えっと、口の動かし方はどうすれば良いんだっけ? 開口筋を収縮させて下あごを動かして、声帯をしぼって声の高さを調整して……。
「おーい、どうしたの?」
「え? あれ? 俺どうしてた?」
「お礼言ったのに固まられたら、さすがの私も傷つくよ? これでも女の子なんだから」
 女の子だからこうなったんだよ! いや、そんな自己弁明をする暇があったら、さっさと謝らないと。
「え、あ、うん。ごめん。どういたしまして。ありがとう。ごちそうさまでした」
「何か色々混じってるよ?」
 心臓の鼓動が通常の三割増しになっている俺に対し、京子は別に動じている様子が全くない。なんだこの差は? とりあえず、深呼吸で落ち着こう。
「いや、その。か、かわ……」
「かわ?」
「変わらずにお付き合いください」
 可愛いかったからと言いそうになったのを必死に誤魔化したら、告白もどきになった。変わらずにって言わなければ良かった。いや、言わなかったらそこで誤魔化しきれずにゲームオーバーじゃないか。俺のエネルギーがゼロになるぞ。
「私についてこられるのはタケシだけだからねー。しっかりついてきてよ」
「お前の速度に追いつくのって、すっげー大変そうなんだけど」
「大丈夫大丈夫。加速度はタケシの方が上がるから、いつか今の私以上になるよ」
「今の?」
「その時の私はもっと前にいる!」
 自信満々に腕を組みながらふんぞり返った京子を見て思わず吹き出してしまった。全く、こいつは本当に俺を退屈させる気が無いらしい。でも、その前向きな所も好きなんだ。だから精一杯追いかけてやる。
「油断してると俺がお前の前に行くぞ?」
「それだったら全力で追いかける」
「科学でか?」
「科学だね」
 今度は二人で笑い出す。二人だけの実験室に、二人だけの笑い声が響く。ここにいる二人だけが共有しているこの時間は確かに幸せだった。
 俺のはき出したため息の幸せ成分がしっかり拡散されて良かったよ。
 残念ながら告白には気がついてくれなかったけど、楽しい大事な思い出は作れた。今回の実験結果は、目的は失敗したけど、別の物が出来たってことで良しにしよう。
 ノーベル賞や輝かしい功績なんてものは失敗から生まれてくる事もあるんだからさ。失敗もまた科学だ。

 ○

「よーっし。これで良しっと」
 話が終わった後は、机の上に乗せていた花の入った試験管に、二人で分担して薬品を入れていた。それがどうやら全部済んだらしい。
「処理完了?」
「処理完了。後は結果が出るのをノンビリ待つだけ。水はしっかりこまめに変えるけどね」
「大体何日くらい持つんだ?」
「温度によるなぁ。暑ければ暑いほど早くしおれちゃうよ」
 真夏だと水温もかなり上がるから、そういうのが原因なのだろう。生存適温が二十度ほどの植物なら、吸い上げる水温はそれより低いはずなのに、三十度とか来たらたまったもんじゃない。
「人間でいうなら三十六度が平熱のやつが、四十六度にまで体温が上がるようなもんか?」
「ちょっと大げさな気もするけど、そうだね。植物はほ乳類や鳥類と違って体温を一定に調整出来ないから、周りの環境の温度を受けやすいし」
「今は秋でそれなりに涼しくはなったから、そこそこ持つってところか」
「ってことでさ。ちゃんと面倒見といてよ。そうだな。今週の土日もしっかり水の交換頼める? ちょっと用事があって来られないからさ」
 京子の依頼とあらば、引き受けるのはやぶさかではないけど。珍しいな。土日をはさむ実験は俺に任せると、申し訳ないからって理由で滅多にしないのに。
「別に構わないぞ」
「お願いね。あ、それまでの水交換はちゃんと私がやっとくから、やらないでね」
「え? 交代制じゃ無くて良いのか?」
「土日で来る分大変でしょ? だから、平日は私がやっとくから。勝手なことしないでよ?」
 そこまで言われたら仕方ない。それに京子の実験だ。自分で出来る限りやりたいんだろう。ここは大人しく従おう。
「はいはい。んじゃま土日は任せといてくれ」
「忘れないでね。んじゃ、今日はもう帰ろうか」
 
 第六章

「ここ数日やたら残暑が厳しかったけど、あの切り花大丈夫かな?」
 土曜日に水交換をするため、俺は一人学校に向かう。京子が来てないとは事前に分かっていることなのだが、やっぱりちょっと残念な気がする。一方通行な片思いの時点で残念だとは思うが、それは出来る限り忘れておきたい残念さだ。
 実験室のカギを開けて、切り花を置いていた準備室に入る。閉めきられていたせいか、ちょっと空気がこもっていて暑い。
「うーん……水だけの処理区はちょっときついなこりゃ……」
 ちょっとしおれている。他の薬剤入りはまだかろうじてしおれていないのが救いだ。せっかくのプレゼントだし、京子が喜んでくれた花なのだ。数日で廃棄される運命だと分かってはいるものの、捨てられるのはやはり心苦しい。
「まぁ、感傷に浸ってもしょうがないよな。水交換、水交換っと」
 水交換をしようと試験管を持ち上げると、試験管立ての下から紙切れが一枚落ちてきた。
「なんだこれ?」
 誰かのメモだろうか? 元素の特徴らしき物が記されている。字は見覚えがあるのだが、ハッキリとは分からない。
 ・オスミウム:青灰色の金属。万年筆のペン先や指紋検出に使われるレアメタル。
 ・酸素:気体。反応性が高く、多くの物質と反応する。
 ・ヨウ素:ハロゲン。十七族。昇華性あり。黒紫色。消毒薬として利用されている。
 ・バリウム:アルカリ土類金属。銀白色。化合物は花火で緑色を出すのに使う。外に放置すると燃えるから注意。
 ・カルシウム:アルカリ土類金属。銀色。骨はカルシウムで出来ているとは言うが、厳密には炭酸カルシウム。単体での金属カルシウムは水に入れると爆発する。
「随分マニアックな元素までメモってあるもんだな」
 とても授業では出ないような元素まである。オスミウムとか絶対見たこと無いよ。というか元素記号なんだったかすら覚えてない。
「京子なら分かるんだろうなぁ……いれば聞けるんだけど、後で帰ったら調べるか」
 紙を試験管立ての上に戻し、水の入れ替え作業を開始する。しおれはじめた花も一本一本水を取り換えていく。
「次はどういう実験をしてみようかなぁ……」
 京子の気持ちを測るような実験。俺達二人が両思いであることを検証するためのデータ。そんなものは一言想いを伝えれば、簡単に手に入ることは分かっている。でも、そんなこと出来る訳が無い。
 宇宙人がいると証明するなら宇宙人を目の前に連れてこいと言っているようなものだ。あくまで、その存在を強く示唆する物。つまり、京子が俺に好意を寄せていると確信を持たせるレベルの何かが欲しい。
 実験というのは様々な前提条件を考慮しておこなう。サンプルの条件、処理の方法、そして実験手法。欲しいデータが得られて、簡便に出来て、自分に危害が無い手法。それが望ましい。
「暗号文みたいのを仕込んでも気付かれそうに無いしなぁ……」
 そう言えば、昔テレビでやっていたな。相手をドキッとさせる方法。不意打ちだったら効くかも知れない。
 俺は携帯を取り出し、京子にあててメールを打つ。字面はたったの三文字。それだけで出来るちょっとしたドッキリだ。
「犬好き」
 さらっと見ると『大好き』に見えてビックリするらしい。だまし絵とは違うけど、視覚のトリックを利用した手法だ。
「まぁ、多分普通に『可愛いよね』程度で帰ってくるんだろうけどなぁ……」
 ため息をついて机にもたれると、携帯のバイブレーションが伝わってきた。返信がとても早くて驚いた。しかし、それ以上に京子の反応を見るのが怖くて、手が震えている。
《私も犬好き》
 一瞬、二秒ほど、大好きに見えた。圧縮された血液が全身に送られる感覚なのか、身体全体がふわっとした。手や足の先まで電流が走って、身体の中心、胸あたりから不思議な衝撃が身体に伝わる。
 だが、それは一瞬で終わる。喜びに満ちていた俺は、もう一度メールを見て幸せをかみしめようとしてしまったのだ。
「見間違えた……」
 自分で仕掛けたドッキリに自分で引っかかった。すごく格好がつかない。京子が目の前にいなくて本当に良かった。浮かれた心が一気に反転した。実験机に上半身を投げ出し、肺の中身を全てはき出す程の勢いで、長く深いため息をつく。
「今日は帰るか」
 独り言がちょっと涙声になっていると、自分でも分かるくらいに俺は落ち込んだ。
 家に帰るまでのことは正直良く覚えていない。いつも通りの道を、ぼんやりした頭で歩いていたことぐらいしか分からない。酔っ払った父さんが記憶をなくしたと言いながらも、家に帰ってくるのと同じ感じなのだろうか?
「やってらんねぇ……」
 吐き捨てるように呟いて、自室のベッドに倒れ込みまぶたを閉じる。
 真っ暗な視界の中で、学校で見つけたメモの事を思い出す。
 そう言えば、あの字は京子の字に似ていた気がする。
 京子が書いたとすれば、あのマニアックな元素が出てくるのも納得だ。オスミウムの元素記号は何だったか? O何とかだとは思うんだけど。
 つむっていた目を開き、ベッドの横に置いてあった鞄に手を伸ばす。間違えて取り出された数学や英語の教科書を放り出す。五冊目にして化学の教科書を取り出すことに成功し、周期表を開いた。
「オスミウムはOsか」
 オスミウムはOs、酸素はO2、ヨウ素はI、バリウムはBa、カルシウムはCa。
「ん……?」
 元素記号が頭に浮かんだ瞬間、あることに気がついた。アルファベットを繋げたら『OSOIBAKA』。つまり「遅いバカ」。
「何が遅いって? ……バカ? 俺のことかこれ?」
 自分の発想に自分がついていっていない。落ち着いて整理しよう。
 京子が俺に遅いと言った。平日に花の世話を俺にさせなかったことを考えると、この紙はあいつが居ない時に見て欲しい物だったと推測される。つまり、俺への暗号が非常に高い。
 なら、遅いとは何だ? 最近の俺の行動についてならば、彼女に告白もどきをしたことだが、それのことか? いや、そんなバカな……。あいつは喜んで実験材料に使っている。とても、俺の意図が伝わっている気配が無かった。
 水やりが遅いはあり得ない。学校に来て水やりする俺に遅いはメッセージとして意味がなさ過ぎる。
「何が遅いってんだよ? ……まさか?!」
 思いついてはいけない考察をしてしまい、ベッドから跳ね起きる。頭は高速で回転しているが空回り、身体は激しく動いたが血の気がひいている。頭を振りながら、一旦思考をリセットして、思いついた最悪の答えを口にする。
「もう誰かと付き合ってる……とか?!」
 つまり、俺の告白の意図には気がついていたが、遠回しに実験材料にしたり、今回のメッセージでお断りをされたということか?!
 今からでも真偽を確認したいところだが、何て聞けば良いのかが思いつかない。
 こうなったらもどきじゃなくて、本当に告白をした方が良いのか?
 一回限りの一発勝負。失敗の許されない実験。
「やるしかないのか……?」
 頭の中で、告白をするシーンが流れ始める。
 この数秒の言葉で俺は大切な物を失うかもしれない。
 でも、既に失われている物がまだあると信じているバカなのかもしれない。
 長年の付き合いだが、未だに京子が俺のことをどう思っているか分からない。
 数年間に渡るコミュニケーションの結果では、俺達は良好な関係を築けている。だが、一方で遅いバカといわれている。
 好きでいてもらえる要素と好きでいられない要素が混在している。全ては目に見えない京子の気持ち一つで、俺の実験の結果は大きく揺らぐ。
「科学だね。か」
 彼女の口癖を呟いてみた。そして、最近彼女が口にした科学の見方を思い出す。
『きっと間違っていても、突っ走ることが大事なんだよ。ひっくり返るかそのまま正解かなんて、ずっと後になんなきゃ分からないんだからさ』
「なら、俺はお前が俺を好きだという仮説を信じてみよう」
 覚悟を決めると、さっきまで全く力が入らなかった身体に活力が満ちてきた。
「最後の検証実験といきますか」

 最終章

 月曜日授業が終わり、いの一番に実験室に向かう。京子より早くついて、あの紙切れについて何のことか聞いてみるつもりだったのだが。
「あ、来た来た。手伝ってよ」
 既に彼女は実験室内にて作業をおこなっていた。いきなり出鼻をくじかれたせいで、彼女のペースだ。緊張して胸の鼓動が収まる気配が無いが、表面上は何とか冷静に対応する。
「何してるんだ?」
 質問をしながら、彼女の隣の席まで歩いて行く。
「綺麗にもってくれた花を固定中」
「固定中? そのままの状態で保存するってことは、ホルマリン漬けでも作る気か?」
「ホルマリン漬けとはちょっと違うね。プリザーブドフラワーを作ってるんだよ」
 乾燥させて保存するんじゃなくて、細胞の中にある水を別の何かに取り換えて、長期間保存できる花だっけか。
 隣に座ると処理されている花がようやく見えた。どれもこれも見覚えがある。
「その花は俺が持ってきた奴か?」
「そうだよ」
 真剣に処理に打ち込む彼女の横顔が視界に入り、鼓動が更に早まる。落ち着け。まずは紙切れのことから聞くんだ。
「な、なぁ、京子。花の水を交換してた時にこんなメモを拾ったんだけど、お前の?」
 恐る恐る鞄から日曜日に回収した紙を取り出す。手が震えていたので、すぐに机に置いた。
「うん。それ私が書いたやつ」
 特に気にする素振りは無い。完全に処理に集中しているように見える。いつもならここで引き下がるけど、今日は頑張るって決めたんだ。
 一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。そして、意を決して聞いてみた。
「遅いバカ。って俺のこと?」
 勇気を振り絞って発した俺の声は少し震えていた。その俺の疑問に京子は小さく頷いた。
 そうか。なら、次は一体何に対してかだ。
「この遅いっていうのは、俺が持ってきた花言葉に対してで良いのかな?」
 やっぱり声を出さず彼女は小さく頷く。そうか、俺の気持ちは伝わっていたのか。なら、もう後は最後の確認をするしかない。
「なら、俺は実験結果についての考察を述べるとしよう」
 口の中からいろいろな物をはき出したくなるほど、緊張している。そう言えばカエルは胃袋を口から出して洗うんだっけ。俺人間だけど、今なら出来そう……。
「俺は京子が好きだ。で、お前が俺を好きかどうか実験をしてきた。あの遅いバカは告白が遅い。という解釈だ」
 言ってしまった。というかもっとシンプルに言えば良かった。何だこのくどい告白は!
 二人きりの実験室に沈黙が訪れる。とても気まずい。
「私も今、実験結果が出た」
 その沈黙を破ったのは京子だった。実験結果の続きが聞きたくて、怖くて聞きたくなくて、頭がどうにかなりそうだ。
「やっぱりタケシは私の遠回しな言い方に気付いてくれる人。そんなタケシと私はこれからも一緒に居たい」
「ってことは?」
 彼女は実験台から身体をこちらに向けて、真っ直ぐと俺の顔を見つめてくる。
「私も好きです。これからもよろしく」
 体中から何かが抜けた。空気が抜けた風船のようにヘナヘナと床に座り込んでしまう。
「ハハ……良かった」
「ってことでさ、二人でこの作業はしたいな」
 頬を赤くしながら、京子は実験台に指を指している。
「タケシの告白を忘れたくないから、こうしてプリザーブドフラワーで保存しようとしてるんだから」
「なら、何で買った日にやらずに、わざわざ日持ち試験なんか? ちょっとショックを受けたぞ」
 京子は顔を更に赤くして、ボソボソと小声でその理由を教えてくれた。
「出来るだけ……キミの気持ちが長持ちして欲しかったから……」
 あぁ、俺の気持ちが長持ちするように、長持ちした花を使いたかったのか! なんだそれ?! じゃぁ、むしろ喜ぶべきことだったのか。
 彼女の意図を知って、恥ずかしくて頭をかいてしまう。
「やっぱり、触媒とエネルギーは大事だね。こうやってちゃんと反応出来た」
「もしかして、あれってこうなることを誘導しようとしてやった?」
「うまくいって良かったよ。でも、気付くのやっぱり遅いよ?」
 京子は楽しそうな、それでいて呆れているような笑みを浮かべている。
「俺もお前もさ」
「うん?」
「やっぱり黄色だったな」
「でしょ? 私には素直に出せない物って、いっぱいあるんだから」
「これから出せるように俺は頑張るさ」
 もうちょっと素直になろう。もう隠す必要も無いんだから。
「プリザーブドフラワーって後染めなんだよ。知ってた?」
「え? うん。一回脱色するんだよな?」
「タケシのせいで私も色が変わるかも知れないなってさ」
 今のままでも良いんだけどなぁ。でも、どう変化するかは楽しみでもある。結果が予想出来ない実験というのも悪くない。というか新しいことに挑戦する時に結果が予測通りの方が珍しい。
「俺はもう既に、お前に染め上げられてるような気もするけどな。俺に対して、反応性が高過ぎるんだよお前は」
 呆れ気味に俺が言うと、京子はあの台詞を言うときのキメ顔になっていた。
 こっちも笑顔でそれに応対しよう。
「科学だね」
「科学だな」
 高野山高校現代科学研究会。このお話はちょっと捻くれた科学者の卵の恋話。

 終わり

2012年05月15日(火)00時21分 黒縁眼鏡  作者レス
燕小太郎さん

感想ありがとうございます。

>ただ、個人的に、化学式とかそういう話、ダメなんです(笑)。苦手というか、その辺りはななめ読みにしてしまいました。ごめんなさい

そんな中で楽しんで頂けたようで、私としては感無量です。

>やや理科系科目に苦手ある身としては、序盤の理系トークをどうにかしてほしい衝動にかられますが、それも今作の長所ですから、変えてしまうとかえってマイナスになってしまいそうですし

序盤は私の専門分野だったので、つい調子にのってやりすぎましたw
序盤のとっつきにくさを減らせば良かったなぁと反省です。
作品の尖りを維持しつつ、とっつきやすく出来れば良いなぁ。


2012年05月15日(火)00時14分 黒縁眼鏡  作者レス
庵さん

感想ありがとうございます。企画おつかれさまです。

>専門用語が飛び交っていますが、そこを例え話でカバーしてくれていたり、ちょっとロマンティックな解釈をしてみたりと理系知識に疎い私でも楽しめるものでした。

これは嬉しい感想をありがとうございます。
どうやったら読者に伝わるか頭を悩ませたのでw

>それから、京子ちゃんの遠回しな「遅いバカ」。これはお見事でしたね。いかにも彼女らしいと言いますか。この演出の真意が解った時、思わず良い意味で鳥肌が立ったほどです。この演出があったからこそ、この点数を付けさせて頂いた次第です。

互いにメンドクサイくらいに遠回しですからねw
読者がタケシの鈍くささに気付いてる中で、遅いバカと言わせる狙いがうまくいって良かったです。 
2012年05月14日(月)23時57分 黒縁眼鏡  作者レス
つとむューさん

感想ありがとうございます。

>この作品は、ほとんどが会話劇です。
そして、その内容のほとんどが専門的で、個人的にはあまり楽しめませんでした。
私の腕不足ですね。まだかみ砕きれていなかったようです。

>いろいろと書いてしまいましたが、お題を化学で表現するアイディアは面白かったです
そう言って頂けると大変嬉しいです。アイディア一本勝負だったのでw 
2012年05月14日(月)23時44分 黒縁眼鏡  作者レス
三水 未さん

感想ありがとうございます。それとおすすめ掲示板での紹介ありがとうございます。

>章タイトルで何かセンスあるものを
言われてハッと気付きました。そう言えば書いてなかったとw
そうですね。何かあると話の流れがより見やすかったかもしれないです。

>掛け合いが軽いというか読みやすいんですよね。正直知識はもちろん真似出来ませんし、この堅苦しさを軽く書く感じ
これは狙ってやれたみたいで本当に良かったです。
いかにこのメンドクサイ専門用語をかみ砕くが悩んだのでw

>やっぱり若干取っつきにくいところあったかな
書き出しでいきなりエンジン全開ですからね。もうちょっとスタートは大人しくしとけば良かったと反省です。

2012年05月14日(月)23時32分 黒縁眼鏡  作者レス
水守中也さん

感想ありがとうございます。
それとおすすめ掲示板にて「ベストカップルで賞」ありがとうございます。

>私は文系で科学的知識はさっぱりですし、後半の暗号も読み取れませんでしたが、御作は楽しんで拝読することができました。
>そのほか、小ネタも良かったですし、科学知識も少しくらいは自分の頭の中にインプットされて勉強になりました。

ありがとうございます。そう言って頂けると大変嬉しいです。
がんばって書いたかいがありました。

>二刀流が彼女の魅力を引き立てていたと感じました。……細かいツッコミを入れるとタイトル詐欺ですがw

良い意味でタイトル詐欺が出来たみたいで良かったですw
色んな考え方が出来るってやっぱり強いと思うんですよね。
私はよく先生にもっと視野を広く持てと怒られてますw

>残念だったのは、ライバルもお邪魔虫もなく、ほとんど二人の会話だけで進んだため、場面変換や物語の山場が少なくて、ちょいと単調だったところでした。

ここは実に最後まで頭を悩ませました。
次回は動きがつけられるように活かします。 
2012年05月14日(月)23時01分 黒縁眼鏡  作者レス
タカテンさん

感想ありがとうございます。

>それらとは違う、理系ならではの魅力で骨抜きにして欲しかったところです。
理系ならでは。っていうのもありなんですけど、理系女子だからこそ、普通の可愛さがあっても良いかなと。
ギャップ萌えを狙ってみたのですが、あまり上手くいかなかったようですね。

科学ネタを使った掛け合いを目指したので、文系主人公にしちゃうと軸がぶれるかなーと思って、今回は両方とも理系で行ってしまいました。
話についていけなかったのは私の腕不足ですね。
もうちょっとかみ砕いた感じな掛け合いが出来れば良かったです。 
2012年05月14日(月)22時24分 黒縁眼鏡  作者レス
まつげぱちおさん

感想ありがとうございます。

>読みやすかったです。というのは私が少なからず理系だからでしょうか。文系の方々の意見ではないので一概には言えません。かなり難しいワードを用いていますが、かなり噛み砕いて説明していますし、どちらかというとギャグに使っているので、まったく苦なく読めました。
>もう教科書にしちゃいなよ、みたいな読み心地です。これを教科書にしたら理科離れとかなくなるんじゃないですか。少なくとも私は化学っておもしろいなと思いました。というか、化学ですよね。分野的には。あと生物かな? すいません。なんちゃって理系なもので。

実にホッと出来る感想です。いちいち分かり辛い単語が多い理系用語をいかに分かりやすく使うかに結構悩んだので。
専門は生物系です。
だからこそ生物系の序盤が冗長にw

ギャップ萌え気に入って貰えたようで何よりです。 
2012年05月14日(月)22時14分 黒縁眼鏡  作者レス
目前さん

感想ありがとうございます。

>あと、“恋話(こいばな)”の表現では、割りとヘロッときました。
理系で理知的な人格なんですから、言葉の読みは大切にしましょうよ(笑)。

ここはナレーターのような物で付け加えたのですが、
一人称から続くのでおかしくなったかもですね。

>人物としては、「理系の人物」というより「科学知識に詳しい人物」に見えます。
話はタケシに対する京子の薀蓄語りに終始しているので、理系かどうか判断できませんでした。
タケシへの恋愛感情についても、彼女からのアプローチがないので(なくていいと思っている? 本人はしているつもり?)、最後まで「タケシ→好き→京子」「タケシ←薀蓄←京子」のような印象です。

うんちくを使って、非常に回りくどくタケシに気持ちの確認をさせています。
京子は素直に気持ちを伝えられないので、持ってる科学の知識を使って何とか気付いて欲しいと空回りをしています。
黄色の表現も、素直になれないことの代弁。
化学反応のくだりも、タケシに告白して欲しいという代返です。
それも、もし反応しあわない物だとしても、合金という一緒にいれれば良いという思いも込めてます。
トゲについても、他に素敵な子が居たときにタケシが離れてしまうんじゃないかと思ったことへの代返です。

気持ちの伝え方が非常に回りくどいですね・・・(´・ω・`) 
2012年05月14日(月)22時02分 黒縁眼鏡  作者レス
ひながたはずみさん

感想ありがとうございました。

>タケシが気付いていないことのギャップが気になりました。これが、気付かせて「そうじゃないんだよ」ということを楽しませる意図であったのならまんまとはまりました

見事にはまってもらえましたw
そうです。互いの事を思いながらも、めんどくさく回りくどく、
互いの腹の中を探り合ってもらいました。

序盤をもうちょっとどうにかすれば良かったな―と反省です。 
2012年05月14日(月)21時53分 黒縁眼鏡  作者レス
紅島さん

感想ありがとうございます。
冒頭に関しては掴むために、普通は聞き慣れない事から始めようと試してみました。
専門用語で釣るという
いわゆる理系ホイホイのような冒頭にしたかったんですが、
ちょっとマニアック過ぎましたね。

話としてはお互いに惚れているのですが、今一歩踏み出せないでいる状態です。
主人公は自分が好きな分野で、ヒロインが打ち込んでいる姿に惚れ込み。
ヒロインは変わり者の自分についてきてくれる主人公に惚れています。
それを互いに確認しあうために、めんどくさくて回りくどく、お互いの持つ科学知識で探り合う。
そんなお話でした。 
2012年05月14日(月)21時40分 黒縁眼鏡  作者レス
へろりんさん

感想ありがとうございます。
今更ながらタイトルは理系女子に恋したら。の方が誤解が無かったかもですね。

細かいツッコミありがとうございます。推敲不足が見事に露呈しましたw
今後の訂正の参考にさせて頂きます。

最初の部分は自分の専門分野というのもあって書きすぎましたねー。
反省です(´・ω・`) 
2012年05月13日(日)23時41分 黒縁眼鏡  作者レス
もどきモドキさん

感想ありがとうございます。

>さて……しょっぱなから難しいですセンセー。
 科学苦手ですセンセー。
 半分以上科学な会話の中身が理解できませんが

もうちょっと分かりやすく書けたら良かったですね。私の実力不足です。

>ヒロインの少し変化球気味のあれこれが、もうかわいくてかわいくて。
こう言ってくれると本当に嬉しいです。ありがとうございます。

もっとぐっと盛り上げれば良かったなー。次回またがんばってみます。 
2012年05月13日(日)23時35分 黒縁眼鏡  作者レス
たちばなさん
>隠す意図がないのなら、ちゃんとそれなりに反応している京子に気付かない鈍感なタケシと、空回りして苦労している様をもう少し強調してそこで笑いを取る方向に特化するとより楽しめるかなと思いました。

なるほど。そういう演出の仕方もありますね。ありがとうございます。

>タイトルの件
タイトルはおっしゃる通りタイトル詐欺ですねw
目をひくのはどっちかなーと投稿する時まで悩みましたw

数々のツッコミありがとうございます。ニヤニヤさせて頂きましたw

おっしゃる通り大学で生物系を専攻しております。
今回はそのネタを好きなように使ってみたので、楽しかったですw 
2012年05月13日(日)23時25分 黒縁眼鏡  作者レス
tanisiさん

理系好き集まれーな作品に違いないです。
なので、きっと評価が割れるだろうなー。と予測していました。

進研ゼミの隅っこの表現には笑わせていただきましたw
なるほど。確かにそうだなーとw
科学を身近に簡単に分かりやすく伝えるってのもやってみたかったので。

演出や構成を見直すとまた雰囲気が変えられるかなと。
tanisiさんの好みに合わなかったのは単純に私の力不足ですね。

感想ありがとうございました。 
2012年05月13日(日)23時09分 黒縁眼鏡  作者レス
イシバシセンパイさん
ハラハラが少ないのはそうですね。
ひたすら探り合いでしたから、もうちょっと動きをつければ良かったと反省です。

>京子にとってタケシだけが自分でいられるのかな。
ですね。自分の好きな分野の話を、自分の好きなようにお喋り出来る相手って
すごく貴重だと思うんですよね。

>自分は文系志望ですが、案外理系も面白いな……。
こう言って頂けると本当に良かったです。
理系も悪くないですよw

感想ありがとうございました。 
2012年05月13日(日)22時45分 黒縁眼鏡  作者レス
くりーとさん
>化学自体ロマンとは対極に位置するものじゃ、なんて考えてしまう程度には文系脳なのですが、化学の素晴らしさの一端を垣間見れた気がします。専門用語同士での掛け合いには目を奪われました。上手いです。
会話分が多めでテンポがよく、さらっと読みきることができました。

ありがとうございます。そう言って頂けると大変嬉しいです。

ストーリーの長さに関しては冗長さとの兼ね合いが……OTL
もうちょっと動きのある構成に出来れば良かったのですが。

最後のは伏線でもなんでもないですw
タケシが自分の言葉によってどんな反応を得られるか、必死に観察してる様子を描写したいなぁと。
いろいろな意味で心の準備をするなら、必死にそれくらいなるかなと。

つっかからないという感想が頂けて本当に良かった。
ありがとうございました。 
2012年05月13日(日)22時29分 黒縁眼鏡  作者レス
Hiroさん

感想ありがとうございます。
冗長さを感じさせない長さに削るか、流れを変えるかすれば良かったのですが。
残念私の力が足りなかったOTL

理系雑学自体は気に入ってくれたようで何よりです。 
2012年05月13日(日)22時16分 黒縁眼鏡  作者レス
シンズーさん
読みやすいと言って頂けて良かったです。
専門用語だらけで、読めるのかこれ?と心配していたので。

下限との戦いでした。
下限と戦ってイベントを追加したら更に冗長にという悪循環にw

もうちょっとだれないようにする工夫が出来れば良かったなー。と反省です。 
2012年05月13日(日)21時57分 黒縁眼鏡  作者レス
夜月さん
冒頭の冗長さは自分の専門分野だったせいですね。
ちょっと書きすぎましたね。

キャラが薄く感じてしまいましたか。
ひとえに私の演出力不足ですね。

改稿と次作の課題といたします。 
2012年05月13日(日)21時41分 黒縁眼鏡  作者レス
こうこうさん
感想ありがとうございます。
理系用語でのつっこみもボケも伝えられたようで良かったです。

最後の所についてはそうですね。
クールなキャラで行って貰おうと思っていたんですが、
手や肩を震わせるくらいしとけば良かったですね。

ギャップ萌え気に入ってくれて何よりですw 
2012年05月13日(日)21時29分 黒縁眼鏡  作者レス
立山十折さん
理系ネタがドンピシャ当たったようで大変嬉しいです。
有機化学のHOMOは初めて知りました。それはまたホモホモしているのでしょうw
はい、すいません。

理系の人が見て気に入るキャラってどんなのだろう?
と考えたときに、その分野に打ち込み、時折見せる楽しそうな様子とかかなーと。
ギャップ萌えですねw
同じ理系の人に気に入って貰えて本望です。

最後の告白シーンは悩みました。
メチャクチャ喜ばすか、クールに対処させるか……。
クールにしてもせめて手をワナワナさせるくらいしとけば良かったですね。

感想ありがとうございました。 
2012年05月13日(日)18時44分 黒縁眼鏡  作者レス
まずは庵様、企画の運営ありがとうございました。

**********************************************

感想部門でまさかの一位を頂いて、大変驚いております。
多くの方に読んで頂いて、感想まで頂けてありがとうございます。

一人一人丁寧に作者レスをしたい所なのですが、
皆様が共通でつっこんでくれた所をまずはまとめてレスします。
一人一人のところはまた後ほど

***********************************************
>出だしのとっつきにくさ
いきなり理系用語全開で書いたのは、この作品は雑学トークがキモです。
というアピールを狙った物だったのですが、皆様のご指摘を見ると
ちょっとやり過ぎたかも。


>ストーリーの冗長さ、単調さ
雑学トークをメインに展開させようとし続けたのが原因ですね。
これは私の演出・構成力不足という悪い癖が見事に炸裂しましたw
告白で終わらせるつもりだったので、そこに至るまでのイベントをもう少し練れば良かったですね。
後は、自分の専門分野だとやりすぎたせいもあるかもですね。

>キャラクター
今作の全てを決めると言っても過言では無い二人の登場人物ですが、
見事に評価が真っ二つになってますね。
この二人で点数が決まるっ……!
ってレベルで重要な要素です。

主人公もヒロインも理系雑学をドカドカと使うので、
合わない人は絶対に合わないだろうなぁ……と思っていました。
ここは実にタイトル詐欺だったと思います。
「理系男女が恋したら」が正解なのかもしれませんw

気に入ってくれた方は本当にありがとうございます。
理系ネタを気に入ってくれて本当に嬉しいです。

>作者は理系の人か?
理系です。実験とかしてます。
もうちょっと上手く活用できたらなぁ 
2012年05月12日(土)22時49分 燕小太郎  +30点
 執筆お疲れ様です、燕小太郎と申します。
 拝読いたしましたので、感想を残したいと思います。

・読みながら思ったこと
 化学式に恋の方程式をあてはめたような、そんな作品でしょうか。理系に詳しい方ならきっと泣いて喜ぶお話ではないかと思います。
 理科系のお話を、素人でもわかりやすく解説していきつつも、二人のやりとりで楽しませる、上手い作品であると思います。その一方でホモとかそういう話題というか、パロネタ(なのかな?)なネタもあったりして、楽しむこともができました。終始一貫したテーマも、筆力を感じさせて素晴らしいなと思います。
 ただ、個人的に、化学式とかそういう話、ダメなんです(笑)。苦手というか、その辺りはななめ読みにしてしまいました。ごめんなさい。
 花言葉の告白と化学記号の返事というのは、ふむふむなるほど面白いやり方であると思います。おそらく、というか間違いなく恋愛企画で今作のみのオリジナリティでしょう。

・こうすればもっと良くなるのでは? という提案
 やー、思い浮かばないですね。キャラクターたった二人でここまで作り上げてしまわれると、もう何も言うことがないという感じです。
 やや理科系科目に苦手ある身としては、序盤の理系トークをどうにかしてほしい衝動にかられますが、それも今作の長所ですから、変えてしまうとかえってマイナスになってしまいそうですし。

 キャラクター・ストーリー・設定・文章どれ一つとっても、非の打ちどころのない傑作だと思います。困ったことに、粗を付ける隙がどこにもありませんでした。

 拙い感想ですが、少しでも参考になる部分があれば幸いです。それでは、また。 
2012年05月12日(土)22時47分 庵(いおり)  +30点
 作者様、こんにちは。この度は本企画に作品を投稿して下さり、まことにありがとうございます。
 御作を拝読しましたので、感想を残していきますね。

 それでは以下、拙い感想ですがお付き合い下さい。


 まずは率直な感想から。
 科学とロマンティックさの素晴らしき化学反応、素敵なニヤニヤタイムをありがとうございました!

 文系の私ですが、本作を面白いと感じました。
 何がいいって、ヒロインの京子ちゃんが可愛すぎます。天才少女系のヒロインは変人キャラとして描かれる事が多いですが、本作の京子ちゃんは知的でありながら女の子らしい可愛らしさを兼ね備えていましたね。自分の気持ちを伝えるのが少々回りくどいですが、それすらも個性として昇華されていたと思います。
 またタケシ君のどぎまぎする様も、読んでいて楽しかったです。賢いのにどこか不器用、そんなギャップが良かったです。
 物語の展開には起伏が少なく、大きな変化もありませんが、京子ちゃんとタケシ君の掛け合いが軽妙だったので、読んでいて飽きる事がありませんでした。作者様は会話のセンスに溢れていますねw
 内容については、終始ニヤニヤしっぱなしでした。専門用語が飛び交っていますが、そこを例え話でカバーしてくれていたり、ちょっとロマンティックな解釈をしてみたりと理系知識に疎い私でも楽しめるものでした。
 それから、京子ちゃんの遠回しな「遅いバカ」。これはお見事でしたね。いかにも彼女らしいと言いますか。この演出の真意が解った時、思わず良い意味で鳥肌が立ったほどです。この演出があったからこそ、この点数を付けさせて頂いた次第です。


 指摘点はありません。


 はい、というわけで。
 全く役に立たない感想ですね……すみません。この感想が作者様のモチベーションアップに繋がれば幸いです。これからも素敵な作品を創り続けていって下さい、応援しています!


 以上、拙い感想でした。
  
2012年05月12日(土)22時21分 つとむュー  +10点
GW企画お疲れ様です。作品を拝読いたしましたので感想を記したいと思います。

タイトルを見たとき、文系の男子が理系の女子に恋した、という話ではないかと思ってしまいました
開けてみると、理系男子と理系女子との間で、専門用語が飛び交う会話劇でした。

バラや化学物質の色でお題を表現するアイディアは秀逸でした。

特に、
・オスミウム:青灰色の金属。
・ヨウ素:黒紫色。
・バリウム:銀白色。化合物は花火で緑色を出すのに使う。
・カルシウム:銀色。
の部分が良かったです。
暗号にもなっていましたし、これだけでお題の六色を使っています。

この暗号を思いついたので、この作品ができたのではないかと思ってしまうくらいお見事です。
そして、この暗号を解くとなると、男子も理系になってしまうと思います。
それで、理系男子と理系女子の話なのかな? と勝手に解釈して納得しておりました。

>「ため息から幸せを分離しました! なんて言ったらイグノーベル賞は貰えるよ?」

この部分は良かったと思います。

この作品は、ほとんどが会話劇です。
そして、その内容のほとんどが専門的で、個人的にはあまり楽しめませんでした。
ということで、大変申し訳ありませんが、これくらいの点でよろしくお願いいたします。


細かい点について。

>オスミウムはOs、酸素はO2、ヨウ素はI、バリウムはBa、カルシウムはCa。

酸素は「O」だけでいいんじゃないでしょうか。暗号的に(笑)

>元素記号が頭に浮かんだ瞬間、あることに気がついた。アルファベットを繋げたら『OSOIBAKA』。つまり「遅いバカ」。

元素通りに繋げたら『OSOIBACA』ですよね。細かくて恐縮ですが。


いろいろと書いてしまいましたが、お題を化学で表現するアイディアは面白かったです。
拙い感想で申し訳ありません。今後のご活躍を期待しています。

2012年05月12日(土)17時18分 三水 未  +30点
 こんにちは。三水 未(さみず まだ)といいます。「理系女子と恋したら」読ませていただきました。
 基本的に僕の好みでの感想にしかなりませんので、参考にならないと思われたらスルーしてやってください。

 読み始めて少しして、少し震えました。これ、まさかこのまま何も起こらずに最後まで会話だけで行くのか、と。正直一日の話だけで終わるのかと思ったので、日替わったところでちょっとほっとしましたが、最後まで二人の会話だけで(地の文もありますが)貫き通したのは、素直に感服しました。凄い。

 その会話なんですけど、話している事自体は滅茶苦茶堅苦しいですし、ぶっちゃけ半分も理解できなかったんですけど、掛け合いが軽いというか読みやすいんですよね。正直知識はもちろん真似出来ませんし、この堅苦しさを軽く書く感じは絶対に真似できないと、思いました。

 キャラクターもまたいい。京子もちょいちょい可愛いところがあって。
>「うー……意地悪だなぁ……」
 の辺りとかもう凄い可愛いですし、ラストの告白シーンとか、もう堪らんですよね。そこで京子の平静とした返しもまた堪らない。よかったと思います。

 しいて、気になったというかここがもう一つよくなれば、と思ったのは、章タイトルで何かセンスあるものを見せてくれたらよかったかと。多分、この作者さんならいいセンスの賞タイトル付けられたと、思うんですよね。何か化学用語を使うなり何なり。多分、これは先に「気まぐれモイライの赤い糸」を読んだ影響だとは思うんですが……。タイトルのセンスって、これは結構もう才能みたいなところもあるとは思うんですが、多分これだけの作品を書ける作者さんなら絶対センスいいタイトルが思い付けたんじゃないかなぁ、と思うんです。これは、多分贅沢を言っているのだと思うんですが、それは、作者さんがそれだけの贅沢を言っても構わないだけのレベルがあると思ってるからなんです。そこまで完璧だったら、もう文句付けられないですよ。

 それと、これはもう因縁を付けてるようなものですが、やっぱり若干取っつきにくいところあったかな、というのも。作品的に難しいとは思うんですが、読者が読みたい、と思う書き出しが一つあれば、きっともっと魅力も出ていたかと。繰り返しですが、すごく難しいことだとは思うんですけどね。

 大体そんな感じでしょうか。気になったところも少し書きましたが、完成度の高さでは今企画でも群を抜いていると思いました。作者さんの実力に、脱帽です。

 最後になりましたが、執筆お疲れ様でした。それでは生意気な感想失礼しました。 
2012年05月11日(金)21時39分 水守中也 WqqU5hdvk2 +30点
こんばんは。水守中也と申します。
作品拝読しましたので感想を残します。個人的な趣向が影響したものになっていますので、適当に取捨選択していただければ幸いです。

私は文系で科学的知識はさっぱりですし、後半の暗号も読み取れませんでしたが、御作は楽しんで拝読することができました。

>父は理系の生物学系、母は文系の経済系と専門が違うせいで、お互いの仕事を語り合うと一切合切かみ合わないらしい。そんな二人の橋渡しをするのが京子の役目だ。
その理由の一つが、京子のこの特性のおかげだと思います。
純粋な理系女子ではなく、この二刀流が彼女の魅力を引き立てていたと感じました。……細かいツッコミを入れるとタイトル詐欺ですがw


>「それにここなら通訳じゃなくて私の言葉でお喋りが出来るし、楽しいよ」
それともう一つの理由がこれですね。
どうしてヒロインが主人公に惚れたのか、別に変りの人間でもいいんじゃないか、と思う作品が多い中、京子がタケシと一緒にいたい理由が明確だったところです。
「幼なじみ」や「命の恩人」は他の人物に入れ替わっても話が成立しそうですが、京子についていけそうな人間はそう居ないでしょう。
ですので私にとっては、二人の会話がちんぷんかんぷんで理解できなくてもいいのです。二人の世界に入っているところを外からニヤニヤ見ているだけで満足なのです。
少数派でしょうけど、こういった楽しみ方も恋愛物の一つだと思っています。

そのほか、小ネタも良かったですし、科学知識も少しくらいは自分の頭の中にインプットされて勉強になりました。

>おかげでそこだけは、みんなの点数が良かったそうだ。恐るべし言葉の力。言葉自体にインパクトがあると語呂合わせ以上の破壊力を秘めている。
実際授業で盛り上がったところって、なぜか覚えるんですよね~

>「ため息から幸せを分離しました! なんて言ったらイグノーベル賞は貰えるよ?」
いいですね。こういう会話をしてみたいです。

>犬好き
自分も一瞬読み間違えて、ドキッとしました。


残念だったのは、ライバルもお邪魔虫もなく、ほとんど二人の会話だけで進んだため、場面変換や物語の山場が少なくて、ちょいと単調だったところでした。
とはいえ、この二人の間に割って入ってくる無粋な人間など居そうにもないですけどね。

それでは。執筆お疲れ様でした。 
2012年05月11日(金)17時55分 タカテン ZNLlZe1lFk +10点
タカテンと申します。
拝読いたしましたので、感想を送らせていただきます。

この手の作品って、ちょっと変わったヒロインの魅力を、その変わった特徴によっていかに読者に伝えるかがポイントだと思います。
が、残念ながら御作はあまりヒロインの理系な所に魅力を感じられませんでした。
涙浮かべて上目使いとか、頭なでなでとか、それらを実験と称してみたりとかは可愛かったです。でも、それらって理系の子じゃなくても普通にしますよね。実験とは呼ばないけれど、そうやって相手の様子を伺ったり、可愛らしさをアピールするのはよくあると思います。
それらとは違う、理系ならではの魅力で骨抜きにして欲しかったところです。

ただ、話そのものがつまらなかったわけではありません。理系な知識は好奇心を擽られました。
しかし、それが助長気味だったり、「面白い!」と夢中になるような掛け合いになっていなかったように感じます。
作者様の目指したところとは違うとは思いますが、個人的には主人公は文系、もしくはそれほど科学に明るくないキャラにして欲しかった。そちらの方がよりヒロインの理系キャラを際立たせたと思います(御作はなんと言うか友人が自分の知らない話で盛り上がっていて、自分は話に入り込めないような雰囲気があります。主人公を通じてヒロインと会話するような楽しさはありませんでした)

自分の実力を棚に上げての酷評となりました。申し訳ありません。題材そのものは良かったと思うだけに、残念だなと思う気持ちが強く出てしまった事をお詫び申し上げます。
執筆お疲れ様でございました。 
2012年05月08日(火)21時48分 まつげぱちお  +30点
 こんばんわ。ぱちおです。
 読ませていただきましたので感想を。
 ・ネタばれあります。
 ・自らの実力は度外視しております。
【文章】
 読みやすかったです。というのは私が少なからず理系だからでしょうか。文系の方々の意見ではないので一概には言えません。かなり難しいワードを用いていますが、かなり噛み砕いて説明していますし、どちらかというとギャグに使っているので、まったく苦なく読めました。

【構成】
 ひたすら化学と恋の話を繰り返していくこの構成は嫌いではありませんが、やはりいささか単調さを感じました。とはいうものの、80枚ならばこういう構成もありなのでしょうか。恩田陸とか長編でやってますよね。うーん。
 あと告白の暗号は、もっと早めに出してもらえるとおもしろかったのでは。それから作品中のワードを集めていくと最終章で暗号が解けるとか、ありきたりですが、そういう構成もありだったかなと思います。これは私の好みですので、スル―で。
 ただ最後のもう一回「ギャップ萌え」を聞きたかった! いえ、何でもないです。


【キャラ】
タケシ:けなげに京子と話をしにいく男の子。もう好きだろ。絶対。思考の中はかなり理系なところがある。

>俺と京子の間の相対速度はいくつなんだろう?

こんなこと地の文で考えている高校生はおそろしい。むしろそういうのは京子の領分で彼はけっこうノーマルでよかったのではないかとも思う。というか京子の影響なのか。

京子:理系女子が萌えるんですね……。しかもハカセとか、ドクターとかいう理論をぶっちした某連中とは違い、ガチ理系の、ただ聞いている分には「え? 何? この子どんだけ化学に絡めるの? キモ!」な女の子なのに、めちゃくちゃかわいかったです。

>「うー……意地悪だなぁ……」
>京子がちょっと上目遣いで、しかも涙目でこちらを見つめてきた。

ありですね!

【全体】
 もう教科書にしちゃいなよ、みたいな読み心地です。これを教科書にしたら理科離れとかなくなるんじゃないですか。少なくとも私は化学っておもしろいなと思いました。というか、化学ですよね。分野的には。あと生物かな? すいません。なんちゃって理系なもので。
 あと、ところどころのフレーズが好きです。

>「ため息から幸せを分離しました! なんて言ったらイグノーベル賞は貰えるよ?」

 個人的にかなり好きなフレーズです。こういう粋な発想が私もほしい!


 あまりうまくまとめられずに、散文的になってしまい、すいません。つらつらと知ったようなことを書いてしまいましたが、適当に読み流していただければ幸いです。


2012年05月08日(火)20時02分 目前  +10点
「理系女子と恋したら」、拝読致しました。
以下、感想を述べさせて頂きます。

○ ○ ガールとか○ ○ 系女子とか、流行ってますね。
理屈でせめてくる人は大好きです。


■文章
会話調による科学知識の説明は、どれも分かりやすかったです。
逆に、心理描写じゃ状況描写で分かりにくかったところがありました。例として、二点あげます。

1. タケシはどうして京子を好きになった?
>  やれやれ、本当に真面目だ。俺が勝てなくなる訳だよ。勉強が楽しいと言って勉強している奴に、勝てる訳が無かったか。
>  ただ、俺はそんなこいつが好きなのだ。やたら理屈っぽいと思えば、ロマンを口にすることもある。むっつりしてるように見えたら、突然目を奪われるような笑顔を見せる。
>  そんなこいつを追い越そうと努力していたら、こいつに夢中になっていたんだ。

抜粋したのは、タケシが京子を好く発端が書かれた部分ですが、この二行目と三行目、理屈がこんがらがってますよね。
大事なところなので分解して解釈しましたが……。
「勉強が楽しいと言って勉強している奴」だけど「こいつが好き」。
何故なら「追い越そうと努力していた」ら、「やたら理屈っぽいと思えば、ロマンを口にすることもある。むっつりしてるように見えたら、突然目を奪われるような笑顔を見せる」点に気付いた。
だから「夢中になっていた」のですよね?
表現したいニュアンスは伝わっていると思うのですけど、文章的には分かりませんでした。

2. 次に会えるのは?
>  願ったり叶ったりだ。この買い物が終われば、また学校でなんだからさ。クラスは別だし、放課後の部活の時間にしか会えない。そして、何よりも残念なこと。京子の誕生日は日曜日。つまり、学校では会えないのだ。だから、せめてちょっとでも長く一緒にいたい。

まず、「この買い物が終われば、また学校でなんだからさ」という文章で一時停止しました。“また学校でなんだから”ってどういう意味だろうと。
次の「クラスは別だし、放課後の部活の時間にしか会えない」を読んで、「この買い物が終われば、次に京子と会えるのは明日の放課後、学校で」と分かったのですが……。
続く「そして、何よりも残念なこと。京子の誕生日は日曜日。つまり、学校では会えないのだ。」で、頭がショートしました。
学校で会えるの? 会えないの? 今は何曜日で明日は何曜日? というか誕生日って何? という感覚です。
他の方も指摘していますが、「京子の誕生日は日曜日」が唐突ですし、そもそも一章~四章が何曜日なのか描写されていませんよね(五章開始前に週末を挟むので、金か土か)。

なので、予め現在の曜日を提示しつつ、
「願ったり叶ったりだ」。京子とは「クラスは別だし、放課後の部活の時間にしか会えない」。「この買い物が終われば、また」来週月曜日の部活「でなんだからさ」。「せめてちょっとでも長く一緒にいたい」
のような順番で情報が入ってこないと、私の脳は死んでしまいます……。
また、最終的な結論である「ちょっとでも長く一緒にいたい」と、「誕生日は日曜日」って、話題としては別物ですよね。
誕生日の情報が唐突である以前に、そこが切り分けられていないのも、混乱の原因になっています。

上記二点、誰も指摘していない箇所で申し訳ありませんが、読解力とメモリの弱い人間にとってはこの程度のことで数秒フリーズしてしまうので、お恥ずかしながら指摘させて頂きます……。

あと、“恋話(こいばな)”の表現では、割りとヘロッときました。
理系で理知的な人格なんですから、言葉の読みは大切にしましょうよ(笑)。


■タケシ
京子が語る知識をタケシが知っており、その解釈を巡らせるのが会話のベースなので、理系じゃない私は感情移入が難しかったです。
また、客観的に見て二人が既に“できている”状態なので、検証と行動を行う彼を見る目線は生暖かいものになりがちでした。
というか、ぶっちゃけ全編イチャイチャに見えました。リア充め……。

タケシの能力については不明のままだったのは、ちょっと残念ですね。
会話では拮抗しているように見えますが、単体の能力が見てみたかったです(暗号は簡単すぎです)。


■京子
“理系女子”から想像できる人物像をいい意味で裏切られたわけですが、裏切るなら最初に描写して欲しかったところです。
というのも、外見描写がないので、口調から勝手に「背が高くて黒髪ロングで目は切れ長、ハスキーボイスのクールキャラ」を想定したのですが……。
「タケシは分かったじゃん。残念ながらテストじゃ私に勝てないけど、そういう頭の使い方なら私と良い勝負してるよー」でフリーズしました。
今までの口調に、“じゃん”と“してるよー”が噛み合わず、どのようなテンションで台詞を読めばいいのか分からなくなったからです。
最終的に、「身長一五〇センチ強で髪は黒か濃い涅色のおかっぱ、無愛想を装っているが声は高くて可愛いお嬢様キャラ」に落ち着きましたが、出鼻を挫かれた感覚はぬぐえませんでした。
なお、その後も「恋は化学反応!」と叫んだり、「うー……意地悪だなぁ……」と照れたり、エキセントリックな人格だったので、最後まで上記の印象は変えていません。
(“背が低い”という予想は、「背伸びをして俺の頭を撫でてきた」で正しかったですし)

人物としては、「理系の人物」というより「科学知識に詳しい人物」に見えます。
話はタケシに対する京子の薀蓄語りに終始しているので、理系かどうか判断できませんでした。
タケシへの恋愛感情についても、彼女からのアプローチがないので(なくていいと思っている? 本人はしているつもり?)、最後まで「タケシ→好き→京子」「タケシ←薀蓄←京子」のような印象です。
理系分野と恋愛を結びつける作品は、数学ガール以降ぽつぽつ読んできましたが、そのヒロインたちと比べると、理系成分でも魅力でも物足りなさを感じました。


■物語
中盤までは、情報開示と最後の章で使う伏線のためだけにあるようなもので、薀蓄を排除した時に残る物語は正直面白くなかったです。
前述のように、私の読解能力のせいで読むのが辛かったというのもあります(一度中断しました)。
ただ、“行動力と触媒”として誕生日に花を贈る、という部分から、元素記号の暗号を使ったやり取りを経て告白に至るまでは、一気に読めました。
ですが暗号については、分かりやすすぎ&使い道が瞬発的すぎで、ちょっと物足りなかったです。


■まとめ
理系風恋愛小説だった、というのが感想です。
理系知識や理系的思考のほとんどが、エッセンスではなく添加物のような状態で、色々な理系要素はあるのに物語に関わってこず、終盤以外は薄い印象でした。
多分、私が数学ガールを読んでいて、そのようなものを求めていたが故の落胆だと思います。


■雑記・改善案
ここに書くことは、どれも得点に影響しない個人的な印象です。

タケシに対して理系人間という感じがしませんでした。
恐らくは、“前提条件を疑い、真と確定した条件だけを元に理論を組み立てる”という部分が見えなかったからだと思います。
使っている単語は理系ですが、行動そのものは最終的に“当たって砕けろ”でしたからね。
まあこの作品の“謎”は京子の気持ちだったので、それを求めてもしょうがないとは思ってもいます。
(“理系人間”の定義については諸説あるので、得点には影響しません)

改善案としては、正直理系ではない自分には思いつかないのですが……。
現状の材料でいくならば、タケシには解けない暗号を序盤で提示して、それを京子が日々語る薀蓄を元に解読していく、という展開ですかね。
それなら薀蓄の情報がその場その場で消化されつつ、今のような終盤への伏線にもなるので、読み応えが出るんじゃないかと思います。
タケシが一人になる時間も増えるので、タケシ単体の能力がどのくらいなのかが分かり、展開にもメリハリもつくと思いますし。
本当に、理系でも何でもない自分の提案で恐縮ですが……。

ところで、一行目だけを読んで想定した京子の声と外見は、ジャイアンの母親でした。
結局のところ、京子はどのような外見なんでしょう。割りと気になっています。


以上、非常に長くなってしまって申し訳ありません。
つたない感想ですが、参考にできる部分があれば幸いです。 
2012年05月06日(日)18時36分 ひながたはずみ  +20点
 こんにちは。ひながたはずみと申します。拝読させていただきました。折角ですので感想など残させていただければと思います。

 奥手な理系少女と鈍感な理系少年の不器用なラブコメでした。

『文章』
 読みやすくお上手でした。私だけかもしれませんが、読み手が京子の想いに気付いているのに、タケシが気付いていないことのギャップが気になりました。これが、気付かせて「そうじゃないんだよ」ということを楽しませる意図であったのならまんまとはまりました。中盤の結婚記念日あたりは完全にカマかけでしたもんね。

『設定』
 理系じゃないので詳しいことはわかりません。
 ですが、一つだけ気になった点が。
>赤いバラと白いバラのつぼみ。ホワイトレース。リナニア。つぼみのバラは告白を、ホワイトレースは感謝を、リナニアには気付けというメッセージを込めたんだけど、残念ながら完全スルー……。思わずため息をついてしまう。
 ・バラは蕾ですよね? 一週間あれば花開いたと思います。なのに、京子さんは最後その説明をしていない。「想いが開くのを待ってたんだよ」とかピクピク身悶えするような台詞を待っていた者としてはちょっと残念でした。

『構成』
 二人だけにわかる科学という共感覚。それがわかりやすく描かれていて良かったです。序盤の科学的な部分がちょっと冗長に感じたことと、先述の読者とキャラのギャップを楽しめない方が読まれた場合は、中盤あたりまで退屈に感じられるかもしれませんね。

『キャラ』
タケシ にぶいっ! 理系男子はこうもにぶいのかっ! どうしてすぐにプレゼントを買いに行かないのだ。どうして日曜日にふらっと家にでも行ってプレゼントを届けないのだ。へたれでした。
京子 ギャップ萌え、科学に適用しないでくらはい……魅力的に描かれていました。惚れた男の視点で書かれて魅力的に映ってなければどーしようもないんですけどね。
 でも、もうちょっと心理、動作共に描写していただきたかったですね。

 楽しませていただきました。執筆お疲れ様でした。

2012年05月06日(日)15時49分 紅島 t1pBdWX50o 0点

 にんにちは、はじめましての方ははじめまして、紅島です。拙い感想ですが頑張っていこうかと思います。自分は理系知識がほとんど皆無なので雑学的にも色々と学ばせてもらえそうです。

>>高野山高校現代科学研究会。このお話はちょっと捻くれた科学者の卵の恋話(こいばな)。
 さて、第一章のしめですが、こういう書き方するなら、お互いに話しあっている場面は冒頭にしてさくっとまとめるのは無理だったのでしょうか。いや、化学知識などしっかりしていて雑学的に大変ありがたく、よろしいとは思うのですが、長い長い冒頭を読ませられている気分になりました。
 しかも、この第一章、冒頭じゃないのです。ちょっと読んでてグダり具合がやばいです。読ませるには知識だけじゃなくて物語の起をまず見せて欲しいのに、これはいきなり承から入ってるようなものなので、物語に起伏が生まれるか大変不安でした。
特に
>>「ねぇ、タケシ。赤いバラって何で赤いか知ってる?」
 というつかみをしているだけに、冒頭なしで一気に承を読ませられている気分にさせられたのは勿体無かったなぁとおもいます。そこには化学の雑学的お話の羅列でイベント・エピソードが起きているように感じられないことが原因だと思いました。

 読み終わって、私はこの物語にあまり起伏を感じられませんでした。回りくどいことしてんなぁ、ぽけーっとなって目が文字の迷路で遊びそうなところを必死でこらえました。
 例えば、
>>「恋は化学反応!」
 ここから先の恋の化学反応での会話シーンですが、すごく長く感じる
>>結局こいつはどのパターンが望みな~~~~俺が苦労しそうなことだけだ。
 この独白部分に至るまで、長い科学知識会話なのですよ。で、ぽっと出にやっとお互いの意思疎通につながる会話になってこの独白です。
 前座状態になっていた長々とした科学知識の会話は何のために必要だったんでしょう。主人公と読者を煙にまくためでしょうか。
 作品内に生かせているようには思えませんでしたので、私には科学知識の会話の多くの必要性が理解できなかったです。
 最後になるまで全編この調子なので、読んでて混乱してきました。(たくさんの科学知識の会話と噛み合ってない恋愛会話ちょっとという組み合わせです) 大事なのは、恋愛会話じゃないんですか? それならもっと上手く溶かしこんでくれればなと思います。

 さらに中盤から主人公が何度も何度も「両思いの実験」とか「観察」とか言い続けてるのですが、なんで主人公がヒロインに惚れてるのが伝わって来ません。
 何故でしょう?
 ひとえに、ヒロインの魅力を全然描けてないからだと思いました。主人公は一目惚れをしたので、ヒロインにドキドキしています。
 だのに、ヒロインとの会話は科学知識をくっちゃべってるだけにしか見えません。主人公のためにこの子は何をしてるんでしょう? 主人公はヒロインに付いて行ってます。でも、このヒロインは親からの話や科学の話ばっかりで、全然主人公へ言葉を向けているように思えません。
>>京子が花束片手に背伸びをして俺の頭を撫でてきた。
 とか、上目遣いだとかあって主人公は心臓を高鳴らせていますが、私はそこに至るまでのぐだぐだして長々とした科学知識披露会話で、もうノックアウトです。
 全然盛り上がりも感じられません。科学の知識だけでしか会話がなりたってない会話とか、キャラの掘り下げが足りないと思いました。

>>俺と京子の間の相対速度はいくつなんだろう? あいつの方がやっぱり速いのかな。
 こんな表現してありますが、それ以前の問題です。これは一体全体何を言いたいのでしょうか。
>>こっちが実験対象にされていたってのか?! ってことは何だ? また俺の負けかよもう!
 →主人公は一体何をしたいんですか? 恋愛の実験ですか? 恋愛の観察ですか? 恋愛の方程式の追求ですか? もちろん、違いますよね。
 ヒロインに振り向いて欲しいんじゃないんですか?
 なんで、実験されて負けなんて表現なのですか。
 私にはもうこの主人公のキャラが分からない。だって、この主人公はヒロインのために必死で科学知識吸収してるはずですよね?


>>「俺はもう既に、お前に染め上げられてるような気もするけどな。俺に対して、反応性が高過ぎるんだよお前は」
 こんなセリフが終わり直前であります。
 が、最初からこの主人公はヒロインに一から十まであわせています。反発したことなどありません。反応性が高いとか、染まってるとかじゃなく、この主人公は一度も自分を見せていません。てか、この主人公に人間さなぞ存在していません。科学知識会話をするための装置でしかないように感じました。

 さて、散発的なエピソードに、回りくどくも掛け合いのテンポは多分良い会話だけど、言葉遊びが無く文章自体に読ませる力が足りないので、途中で会話を投げ捨てたい気持ちになるのが1章から最終章まで続きます。全体的にストーリーの練りがたりなく、それを科学知識を披露することでごまかそうとしているように見えてしましました。
 この主人公とヒロインの二人以外の人間関係はどんな感じなのでしょうか? 第六章で遅い馬鹿とか言われて不安がるほどに、ヒロインはいろんな所に顔が聞いて色んな男と出会ったりしてるのでしょうか。私は教えて欲しいです。

 さらに、こんなに章分けで書くが全く必要なかったような気がします。場面転換ごとに章が変わってて読みにくさアップ。だって、花屋からの帰り道ってひとつづきですよね? なんで章が分かれてるんでしょうか。しかも第3章はまるで花屋関連の会話は終了みたいな締めなんですよ? なんだか、作者さんがどのような意図をもってこのような書き方をされたのかちょっと心配です。

 結局、個人的に主人公がなんでこのヒロインに惚れたのかも共感出来ないし、ヒロインが主人公に惚れてくれたのも共感できないし、という結果になってしまいました。いつヒロインは主人公に対して好意を持ってくれたんでしょうか。私には判断が付きません。
 どっちも化学馬鹿(いい意味で?)のようなので波長は合っているのだと思いますが。
 でも、よくよく振り返ってみると、主人公はヒロインにあわせているだけのように思えてしまいました。それならヒロインは、自分にとって都合の良いお人形さん(主人公)を愛でるマッドサイエンティストだったのかもしれませんね。それなら好意を向けてくれたのもちょっとは納得できるかもしれません。
 科学の知識を入れるのにちょっと疲れた主人公は将来どうなるんでしょうね。破綻の未来がまっさきに見える恋愛を久々に見ました。恐ろしいです。

 キャラをもう少し練ってもらいたかったなと思います。主人公はヒロインに惚れてもらいたいのですか? それとも、すでに惚れてるかもしれないぜって思って実験・観察をしているのですか? どっちでしたか? 地の文の主人公の発言に私はどっちなのか判断はつけられませんでした。なんだか、作者さんの都合のいい動きをしているなという感じです。

 会話を中心に仕立てたいのでしたら、文章の練が欲しかったなぁと思いました。表現に妙が感じられないので、文章を楽しむことも出来ないので、本当にストーリーの起伏が感じられないと辛いのです。
 科学知識はそこそこ作品内に入っていましたので、それは努力されたなと思います。次はもっと溶かし込まれればなぁと。

 以上です。
 それでは失礼致します。次回作も頑張ってください。 

2012年05月06日(日)13時46分 へろりん  +20点
へろりんと申します。

企画参加作品、執筆お疲れ様でした。
御作を拝読しましたので、感想を書かせていただきます。

楽しく拝読させていただきました。
科学(主に化学が多かったように思いますが)の知識や用語をうまく会話に取り入れて、とても洒落ていたと思います。
作者様の知識と応用力に感服しました。

タイトルは、おおっと目を引くタイトルでうまいなと思いました。
一行コピーを見ると、なるほど、理系の女の子の話のようです。
ですが、内容は恋する女の子の視点ではなく、彼女に恋する男の子の視点でした。
あれれ?

前半はちょっと進みが悪いような印象を受けました。
会話自体は洒落てて面白いのですが、ちょっと食傷気味でした。
後半からラストにかけては、加速度がついて感情移入できました。
元素記号の暗号とか、大好物です。

以下、気に入ったところです。

> 実験というのは様々な前提条件を考慮しておこなう。サンプルの条件、処理の方法、そして実験手法。欲しいデータが得られて、簡便に出来て、自分に危害が無い手法。それが望ましい。

ああ、なんてヘタレなんでしょう。

> 《私も犬好き》
> 一瞬、二秒ほど、大好きに見えた。圧縮された血液が全身に送られる感覚なのか、身体全体がふわっとした。手や足の先まで電流が走って、身体の中心、胸あたりから不思議な衝撃が身体に伝わる。

ミイラ取りがミイラに!
余談ですが『犬』の字を『太』に変えると、なんだかエッチな意味が……ゴメンナサイ。

>「なら、俺はお前が俺を好きだという仮説を信じてみよう」
> 覚悟を決めると、さっきまで全く力が入らなかった身体に活力が満ちてきた。
>「最後の検証実験といきますか」

がんがれ! ちょーがんがれ!

>「俺もお前もさ」
>「うん?」
>「やっぱり黄色だったな」
>「でしょ? 私には素直に出せない物って、いっぱいあるんだから」

ここは、前半部分での振りもあり、ちょー洒落た会話でしたね。犬好き、いや、大好きな部分です。


以上は、良かった部分ですが、誤字レベルを含めて以下ちょっと気になった部分です。

○ 理系天才美少女。

> 理系天才美少女。高校教師顔負けの頭の良さを持つ彼女のロマンが気になり……

京子の美少女っぷりの表現が、この前もこれ以降も全くありません。
髪は長いのでしょうか? 短いのでしょうか? 目は大きい? 切れ長? 口は? 残念です。

○ 情熱と不可能を乗り越える力

> 黄色のバラはさ。情熱と不可能を乗り越える力は無いけど、やりくり上手だよね。

情熱⇒赤いバラのこと
不可能を乗り越える力⇒青いバラのこと

以上を前提とすると、
 情熱も不可能を乗り越える力も~
または、
 情熱や不可能を乗り越える力は~
かなーと。

○ 飛ぶからだ

> てっきり、分子や原子の話に飛ぶからだと思ったのに。
⇒ てっきり、分子や原子の話に飛ぶと思ったのに。

○ 向き直し

> そう言って、京子は実験台に向き直し作業を始める。
⇒ そう言って、京子は実験台に向き直り作業を始める。

○ 卵

> 「バラには材料があっても加工する道具が無いんだよな。卵があるけどフライパンしかないから、卵焼きや目玉焼きは作れるのに、茶碗蒸しが作れない。みたいな感じだな」

『科学者の卵』は『卵』でよいと思いますが、食べ物としてのたまごは『卵』より『玉子』かなと。
『卵焼き』ってなんだかグロイ料理に思えてしまう……。

○ 思わず

> 背中越しに投げられた言葉に思わず照れてしまい、思わず視線を本の上に戻してしまった。

ひとつの文に『思わず』が二回も出てきて、リズムが悪くなってます。

○ 応援してて

> そんな中、京子が一歩ひいた見方をしているのは知っていたが、何かを応援してているような口調だった。
⇒ そんな中、京子が一歩ひいた見方をしているのは知っていたが、何かを応援しているような口調だった。

○ 頭を

> 思わず右手で頭を書いていると、京子が人差し指を唇に当てて『うーん』と唸り始めた。
⇒ 思わず右手で頭を掻いていると、京子が人差し指を唇に当てて『うーん』と唸り始めた。

誤変換ですね。

○ 唐突に出てくる話題

話の流れで自然に出てきたのではなく、作品の都合上唐突に出てきた感のある部分がありました。

> そして、何よりも残念なこと。京子の誕生日は日曜日。つまり、学校では会えないのだ。だから、せめてちょっとでも長く一緒にいたい。

これまでの流れだと、花屋に来たのは京子の両親の結婚記念日のプレゼントを買うためでした。
前振りもなく、唐突に『京子の誕生日は日曜日』とここで出てきます。
ストーリーの都合上出しました感がありました。

> 「今は秋でそれなりに涼しくはなったから、そこそこ持つってところか」

秋だったのですね。
描写が全くないので、いきなり秋と言われてビックリです。


先にも書きましたが、前半はちょっととっつきにくく入り込めなかったのですが、後半はスピードアップして感情移入できました。
全体的には、とても楽しめました。

自分の拙い感想が、作者様のこれからの創作の一助になれば幸いです。
失礼しました。

2012年05月06日(日)08時41分 もどきモドキ  +20点
 こんにちは、こんばんは。
 春もがんばる何かです。

 さて……しょっぱなから難しいですセンセー。
 科学苦手ですセンセー。
 半分以上科学な会話の中身が理解できませんが、面白いのでよし、と。
 とりあえず上目遣いは萌えだと思います、はい。
 犬好きと花のあれこれで撃沈。

 さて、読み終わりまして。
 いいですねぇ、初々しいですねぇ……大好物ですごちそうさま。
 ヒロインの少し変化球気味のあれこれが、もうかわいくてかわいくて。
 ただ、そこをもーっとこう、ぐっと、こう、盛り上げてくれたらなぁ、と。
 他の方も書いてましたが、引っ掻き回し要員がいると、さらにうまみが増しそうだなぁ、と。

 全体的にすごく面白い話でした。
 序盤で心が折れそうになったのを、必死に耐えてよかった。
 それではー。 
2012年05月06日(日)04時30分 たちばな rUrcFSwbSs +30点
 こんばんは、たちばなです。
 「理系女子と恋したら」を読ませて頂きましたので感想を残します。

 いやー、回りくどいですね。
 だがそこがいいw
 たぶん、この感想が作者さんの狙いだと思います。
 何とも面倒くさい理系の方々の恋バナを笑いながら読める作品でした。
 タケシのぼやきも面白かったです。
 色の使い方も魅力的でした。薔薇を擬人化し色そのものを言葉でうまく説明しています。そして最後は色で締める。恋バナともうまく絡ませています。花と科学を使った勝利でしょうね。
 この見事さは企画としての加点の対象になりますね。

 気になった点はあまり無いのですが、こうしたらもっと良かったかなと思える点がありましたので書かせてもらいます。

 まず、タイトルです。
 理系の女子との恋ではなくて、理系男子のタケシだからこそこのやりとりになるのではないかと思います。このタイトルでは、理系の京子に対して恋愛感情を持ち四苦八苦する非理系の人物の話に感じます。二人ともタイトルに入れてしまった方がしっくり来ますね。「理系の方々が恋したら」みたいな。
 二人とも理系だからこそ、こんなに楽しく回りくどい会話になると思うんですね。
 作者さんは、京子がタケシのことを好きということは最後まで伏せたかったのでしょうか? 読んでいて隠すつもりはないように感じましたが。
 もし隠す意図がないのなら、ちゃんとそれなりに反応している京子に気付かない鈍感なタケシと、空回りして苦労している様をもう少し強調してそこで笑いを取る方向に特化するとより楽しめるかなと思いました。

 それから、タケシの一か八かの告白の場面。
 ここを彼的にもう少し盛り上げるとメリハリが効いて良いかなと思います。仕掛けのシーンを書きタケシのドキドキ感をもっと見せるとか。まあ、京子サイドで盛り上げることはできませんのでw
 ここが盛り上がると、なんだかんだと安全幕を張ってから着地しようとしているタケシの決意のしどころが引き立つと思うので。


【以下、読みながらの勝手な突っ込みです】

> 黄色だと、カロテノイド系だな。
◆アントシアニンは目によいアレですかね。カロテノイドはきっとカロテンと関係しているのでしょう。
 と色々想像しながら読むのが楽しいですw。

> 呆れてため息をつこうとしたが、とても楽しそうな笑顔の京子が目の前にあったせいか息が一瞬止まる。
◆気持ちが分かります。好きな女の子のきらきらした笑顔なんて心臓に悪いですものね。

> 「便利な言葉だなって思うよ? ギャップは簡単に人間に魅力を与えるからね。困ったときのGM(遺伝子組み
> 換え)ってレベルで便利な言葉」
> 「遺伝子組み換えと同レベルなのそれ?!」
◆これ、笑えました。
 ここでは同レベルに並べる意味が分からなかったですが、この後を読むとなるほどと思わせるものがありますね。

> 「優性ホモをガチホモ。劣性ホモを受けホモ。って何かが間違ってるよな……」
◆血液型で言えばAA型とOO型みたいなものですね。業界用語ではそう言うんですかww 勉強になりました。

> 静まれ俺の交感神経! 動け俺の副交感神経!
◆いかにもの台詞で大受けでしたw

> 一体何がカギ刺激だったというんだ……? と真剣に悩み出して、お母さんは一体何の間違いで需給が一致し
> たんだろう? って悩み出すし。
◆本当にありそうで怖いw。

> 「あ、でもそのため息に幸せが混ざってるなら、私が回収すれば良いのか」
◆キスをするのかと……←考えすぎ

>  えっと、口の動かし方はどうすれば良いんだっけ? 開口筋を収縮させて下あごを動かして、声帯をしぼ
> って声の高さを調整して……。
◆理系www

> 「その時の私はもっと前にいる!」
◆この台詞いいですね。

> 返信がとても早くて驚いた。
◆携帯の前でタケシの反応を待ちかまえていたからですね。わかります。

>  特に気にする素振りは無い。
◆じゃなくてーっ!と読者に突っ込ませる部分ですねw
 ここは、作者さんの想定内なのでしょう。うまく作っています。
 取りあえず京子かわいいよ京子と望み通り言っておきましょうw


 感想が褒め言葉より、気付いた点の方が多くなってしまいましたが、上記の突っ込みを見て頂けたら楽しんで読ませてもらったことがお分かりになると思います。
 大学で化学か生物を専攻された作者さんなのでしょうか? 説明部分がとてもうまく作られていたと感じました。
 私のような科学オンチでも二人の会話が何となく理解できて楽しかったです。
 三人称で徹底的にタケシをバカにしながらの記述でも楽しかったと思いますが、これはこれでタケシの苦悩が良く表現できていて面白かったです。

 それでは、企画作品の執筆お疲れさまでした。
 乱文失礼しました。 
2012年05月05日(土)19時28分 tanisi  -10点
 こんにちは、tanisiです。拝読したので感想を失礼します。

 んー、作品の内容とチャットでの発言から、あの方じゃないかなーと推測します。
 失礼ながら全然合わなかったのですが、感想書きます。
  
 ◆キャラ
 正直に言うと、メインの二人が全く好きではないです。
 京子がドヤ顔で知識を披露しまくり、主人公がすごいすごいを連発する冒頭でかなりため息が出ました。
 黙ってれば「このキャラ頭いいな」ですんなりいくのに、主人公がこれでもかと「天才」を連呼するので、発言がイヤミに聞こえました。
 作者様及び主人公の京子に対する愛情が伝わってくる反面……初っ端から辟易していました。
 
 ◆文章
 概ね読みやすかったです。状況がイメージしにくいので、外側の描写を詳しくして欲しかったところですが。
 こちらの好みですが、独白が多くてしんどかったかもです。

 ◆設定・舞台
「理系好きなやつ集まれ」という感じに見えました。ホラーなどでも言えますが、読者層の特定に繋がっているのでツボにはまる人にははまるんだな、と思います。
 理系に興味ないので、ちっともツボにはまらなかったわけですが……。
 ストレートなタイトルがお上手です。

 ◆ストーリー・構成
 ひたすらウンチクを語ってるだけに見えました。そのウンチク自体に面白さはちらほらあったのですが、前述の通りキャラの魅力に繋がらなかったため、プラス要素には成り得ませんでした。進研○ ミかなんかの教材でページの隅で喋ってる感じ……。
 楽しい雑学を引用する手法はいいのですが、多すぎるとただ寄せ集めに感じます。
 最後の暗号も会話とリンクしている点ではいいのですが「いや、それ別に上手くないから」と突っ込んでしまいました。

 多分チャットでお世話になっている方なのに酷評になってしまって申し訳ないです。面白さが雑学任せで、文章にもキャラの見せ方にもちっとも上手さを感じなかったのが正直なところです。
 今の時点でこれだけ多くの方に支持されていて、さらに伸び代が十分にあるということだと思うので、えーと、頑張ってください。 

 では、長々と駄文を失礼しました。読み違い、勘違いはご容赦ください。 
2012年05月05日(土)14時55分 イシバシセンパイ 8dwx/vJdj. +30点
イシバシセンパイです。
今回は一身上の都合により読み専となりました。
「折角読み専になったんだ」という訳で、感想の書き方を一新しました。自分は、ただ思ったことを徒然なるままに記した感想の書き方をしていましたが、これからは項目に分けて評価していきたいと思います。

【タイトル】

>理系女子と恋したら

「……と……」ですから、ああ成就するのかな、と思いました。
一風変わっていましたが、とても面白かったですね。科学が恋愛モノを創り上げるとは。

【文章・文体】

タケシの一人称で、タケシが京子に惚れてるのはすぐわかり、逆がわかりにくかったのが良かったです。タケシと共にドキドキしました。

【世界観・設定】

>「俺のホモ個体を見てくれ。こいつをどう思う?」

>「すごく……ヘテロです……」

>某漫画の台詞を改変したこのやりとりが教室の各場所で繰り広げられたのだ。

どんな学校ですか。なんで「くそみそテクニック」を皆が知っているんですか。……笑いましたよ。よくぶちこみました。グッジョブです。

>「優性ホモをガチホモ。劣性ホモを受けホモ。って何かが間違ってるよな……」

ええ間違ってます。「優性ホモを阿部高和。劣性ホモを道下正樹……」が正解です。
ただこれがあるので、実はガチホモ、受けホモで正解です。

>「野生のバラなんだけど、突然変異でトゲが無くなったのがあるんだ。でも、トゲ無しは劣勢遺伝子だから受けホモなんだよ。変異が無いガチホモのバラと交配しちゃうと、その特徴が現れないんだ」

>「俺相手にそのホモ表現はいらないぞ?! ってか店員さん変な目でこっち見てるし! 作業してる手が止まってる!」

世界観じゃないですね。ごめんなさい。
京子とタケシの関係が、軽い共依存で中々面白い。京子にとってタケシだけが自分でいられるのかな。ヤバいです、タケシになりたいや。

【キャラクター】

京子が科学萌えという新たなフェチ……じゃなくてジャンルを切り開いてくれました。

>「ギャップ萌え」

>アルファベットを繋げたら『OSOIBAKA』。つまり「遅いバカ」。

いやぁ可愛いです。特に後者は「科学だね」。作品の色が出ていました。元素記号でツンデレるとは。

主要キャラがタケシと京子だけなので、ちょっと寂しいかな。タケシの親友か、タケシのライバルを用意しても面白いかも。
ただ今のままでも、二人の歯がゆい関係が楽しめるのでね……十分です。

【構成・内容】

>「でさ、くっつく物質によって必要な熱量は変わるじゃん。例えば、塩酸と亜鉛。入れた瞬間に反応して、銀色の亜鉛は溶けてるけど白い塩化亜鉛に早変わり」

>「熱をむしろ放出する反応だな。なるほど、いわゆる一目惚れでくっついた後、熱々な感じという訳だ」

>「そうそう。んで、鉄ってのは長い間放っておいても、酸素とくっついて酸化鉄。いわゆる茶色のサビになるよね」

>「反応がゆっくりな訳だ。つまり、それは長い間ずっと一緒にいればくっつきやすいってことだな。友達同士がいつの間にかっていうタイプか」

>だからこそ、俺はこうしてお前と一緒にいるし、一緒にいたいと思う。お前と反応出来る物質かどうかは分からないけどさ。

>「さすがタケシ。鉄は長い間放っておけば反応するけど、熱を与えるとそれがすぐ起きるよね」

>「すぐに黒く酸化するな。なるほど。くっつくべく二人が行動力を示せば、あっという間にペアになるって訳だ」

>「で、そこにプレゼントとかが触媒になるんだよ。花束とかアクセサリーとか、ドキッとする物が触媒」

>「二つの物質を近づけて、反応をしやすくする物が触媒だから、なるほど。互いがくっつくために乗り越える山が小さくなる訳だ」

>「うんうん。一緒に持ってるものとか、二人を繋げやすいよね」

唸らされました。恋愛を上手く科学で表現してました。
自分は文系志望ですが、案外理系も面白いな……。

もうちょっと京子とタケシをぶつけても良いのでは? ハラハラが少ない気がします。告白のタイミングを探る、そのシーンはドキドキしましたけど。自分も告白すると決心するまで小一時間程悩みましたから。

終始「科学だね」でした。中々乙ですなぁ。

【総括】

タイトル:よろし
文章:よろし
文体:よろし
世界観:よし
設定:よし
キャラクター:よろし
構成:よろし
内容:よし

ふぅ……感想を書くのにかなりの時間がかかりました。しかし今までと違い、深く考えて書けたので自分のタメにもなったかなと思います。
それでは。

2012年05月04日(金)23時03分 くりーと  +20点
どうもこんばんは、生まれ変わったら理系女子になりたいくりーとと申します。
読ませていただいたので感想の方残しますねー。他の方のは読んでいないので、被ったりなどしていたらごめんなさい。


化学自体ロマンとは対極に位置するものじゃ、なんて考えてしまう程度には文系脳なのですが、化学の素晴らしさの一端を垣間見れた気がします。専門用語同士での掛け合いには目を奪われました。上手いです。
会話分が多めでテンポがよく、さらっと読みきることができました。

ストーリーも王道的とは言えよかったと思います。二人の未来が気になりますね。
ですが、もう一ひねりあってもよかったかなとも思います。枚数的にも余裕ありますし。
すんなりくっついてしまったので、もっと修羅場ってみたりですね、まあ自分の好みなんですがw

キャラ、登場人物が少ない分上手く書けていました。
特にラスト付近の京子はやばかったです。
>「出来るだけ……キミの気持ちが長持ちして欲しかったから……」
なんですかこの破壊力! PCの前で悶絶しました。萌え死にさせる気ですか!?
タケシも、うじうじしてましたが共感を持ててよかったです。

えっと気になった点がいくつか。
> 動きに特に変化は無し。迷い無く手を動かして、液体を移して行っている。どうやら嘘では無いようだ。
ここですが、てっきり嘘をつくときにくせがあったりするのかと思いました。その複線かと。よくある心理学的な何かですね。
ラストは文系分野で締めるのかな、なんて勝手に思っていたのですが……。これ回収されましたでしょうか?
伏線でもなんでもないのならごめんなさい。見落としてたのならもっとごめんなさい。

>京子の誕生日は日曜日。
そんな話してましたっけ?
唐突に出てきて焦りました。

指摘できるのは以上です。少なくてすいません。


非常に楽しんで読めました。地の文、会話共に安定していて、つっかかることがなかったです。絶妙でした。
点数は迷いましたが、これで。
企画執筆お疲れ様でした。お互い楽しんでいきましょう! 
2012年05月03日(木)09時32分 Hiro 4lz1iNsdUQ +20点
こんばんは、メモをみたら暗号だと思うHiroです。
もし暗号でなかった場合は、どうやったら暗号にできるか考えます(爆
それはともかく、拝読しましたので、簡単にではありますが感想を残していこうと思います。

面白かったです。
理系雑学主体の二人の会話はとても好みでした。
ラノベとして個性的とはいえないまでも、恋愛と色の両方のお題をしっかり押さえた、良い作品だと思いました。
ただ、面白いネタだったとはいえ、読者的に展開の読めている二人が常時同じノリを続けているのはやはりマイナスでしょう。

点数はナイショですが、いくつか章を削って、話のかき混ぜ役を投入すれば、もっと面白くなったのではないかと思います。

ほか、特にツッコムようなところはないです。
では、失礼します。 
2012年05月01日(火)14時45分 シンズー  +20点
執筆お疲れ様です! 拝読いたしましたので感想を書かせていただこうと思います。

○ 文章について
こなれた文章で読みやすかったと思います。ただ、全体的に台詞が多いので、場面の状況を把握しづらかったとも少しだけ感じました。

○ キャラクターについて
理系女子というのが良い着想だと思いました。理論でフル武装している感じが個性的で良かったです。個人的な好みを言わせていただくと、京子のほうはもうちょっとクールに、タケシのほうはもっと熱い感じにすると互いのキャラが強調されて今以上に魅力的になるのではないかと感じました。

○ ストーリーと構成について
ストーリーについては、化学や物理に喩えての相手の想いの探り合いがよく書かれていて面白かったです。ただ個人的には構成が少し気になりました。全体的に冗長だったという印象です。中でも特に前半でしょうか。冒頭は目を引くもので良かったと思うのですが、この段階でストーリーと繋がりがあるのかないのかわからない理系トークをびっしり出されると、ちょっと読み手としてはげんなりしてしまいます。雰囲気が出ていて良かったとは思うのですが、正直ちょっとくどく感じてしまいました。

○ 全体的なことについて
文章も読みやすく、着想も面白いものだったと思います。タイトルも目を引きますね。それだけに、冗長な構成がどうしても気になってしまいました。理系女子というアイデアの一発勝負的な側面のある作品だと自分は感じたので、もっと不要な部分を削って尺を短くしてしまったほうが読みやすくなるのではないかと思いました。現状ですと、どうしても途中でお腹いっぱいになってしまうと言いますか、読んでいてダレてきてしまう感じがします。二人の特徴や関係の雰囲気などを崩さず、且つ30枚~40枚、多くても50枚以下ぐらいにまとめることができると、さっぱりして今以上に素晴らしい作品になるのではないかと感じました。

○ 最後に
なにやら知ったふうなことを色々書いてしまった気がしますが、素人意見ですのでご気分を害されない範囲で参考にしていただければ幸いです。こんな感想ではありますが、作者様の糧になれればと勝手ながら書かせていただいた次第です。
それでは失礼します。 
2012年05月01日(火)02時06分 夜月  +10点
こんばんは、夜月と申します。拝読しましたので、コメントさせていただきます。

タイトルからしてキャラクター小説だと判断し、期待を込めて読ませていただきましたが、正直な所、空回りでした。

まずはキャラ紹介をかねた冒頭についてですが、正直言って冗長です。ただ化学や科学のネタを並べているだけのように見え、それらがキャラクター性やリーダビリティにつながっていようには思えませんでした。

続く第二章や第三章、第四章、第五章についても同様です。冒頭と変わらず起伏の乏しい展開が続き、また重ねて申しますが、理系ネタとキャラクター性が効果的に結びついていないためにどこか薄い印象を受け、ストーリーもキャラにもさほど魅力を覚えませんでした。

そして第六章と最終章ですが、仕掛け自体は非常に優れていると思います。今までとは違い、これに関しては理系ネタと展開が抜群にマッチしていたと思いますし、展開にも動きがあって楽しめました。

ただそれまでの過程でキャラの心理描写が希薄であったこと、また御作のキャラが表面的で薄っぺらに思えたこと、展開に起伏が乏しいこと、御作の大部分を占める理系ネタを使ったキャラ同士の絡みに魅力を感じなかったこと、それらが大いに足を引っ張り、せっかくの仕掛けも素直に楽しめませんでした。

感想は以上です。駄文極まりませんが、少しでも参考になれば幸いです。

2012年04月30日(月)18時12分 こうこう  +30点
読んでいるうちに思いついたふたつの言葉。
恋の化学反応。色彩は解かっても恋色は解からない。
正直これはなかなか。一人称が故に、スラスラと読めれば、主人公のじれったさが伝わってきます。進むに進めず、つい躊躇してしまうもいざとなっては踏み出す恋愛作品の王道展開。つっこみもなかなかで、科学のうんちくが希薄な自分でありますが、説明もあるのでありがたい。
大抵、恋愛作品登場のヒロインは文型が多いのですが、理系もなかなかいけると思わせられてしまいます。
ただ、強いてあげるとすれば、ヒロインが告白をOKしたシーンで、もう少しヒロインの感情を盛り上げて欲しければと……既に指摘している方がいらっしゃいましたが、敢えて記させてもらいました。
最後に、ギャップ萌え、いいね……。
では、祭りです楽しみましょう。 
2012年04月29日(日)22時04分 立山十折  +40点
 とりあえず京子さんを嫁に下さい。え、ダメ? なら今から役所に行ってタケシに改名してきます。え、ダメ? うおぉ、ならばこの湧き上がる萌えの衝動をどうしてくれよう……。

 ……はい、バカなことを書きやがりました、立山十折です。
 読了しましたので感想をば。
 いやもう面白かったの一言に尽きますよ! 内容はただ幼馴染の男女が科学と恋愛を語っているだけなのに、その内容がツボ過ぎました。誰でも知っている塩酸と亜鉛の反応から始まり、有機色素の話までを徹底的に恋愛に絡めた作者様の手腕には脱帽です。特に良かったのは思春期男子の揺れる恋心を化学反応になぞらえていたところですね。例えばこんなの。

(長い付き合いを経ても進展しない二人の関係を思って)
「もともと反応しない物質だったらお手上げだけどなぁ……」

(京子に頭を撫でられて)
むしろ何度も反復して再現性を確認してくれないかな? 三回同じ結果が出れば良いって言われるけど、五回とかやってくれても良いんですよ?

 もう笑うしかない。特に理系出身である私は実験の再現性だとか毎日付き合わされており、他人事とは思えません。ちなみに有機化学の分野では反応機構解釈の一つとして軌道理論というものがあり、最高占有分子軌道のことを「HOMO」(ホモ)と呼びます。さらに遺伝学的解析によく用いられるショウジョウバエの交尾前の雌固体のことを「処女」と呼んだりします。学会ではそういう単語が飛び交っております。何が言いたいかというと、科学者もつまり人間だということです。
 話が逸れました。それはさておき、何よりヒロインの京子さんですよ。何だろう、この言い知れぬ萌え。解析不能の、この気持ち。「ギャップ萌え」とか口にする彼女が可愛くてしょうがない。実験と称して涙目で上目遣いとか元素記号で「遅いバカ」とかうおぉぉ、どうしたらいいのだ俺は……、まあ何が言いたいかというとヒロインが可愛かったということです。それと、ドン引かないで下さい。
 ……熱暴走はこれくらいにして少しだけ希望を述べさせていただくと、ラストの告白シーン、もうちょっと京子さんの反応の描写があっても良かったかなぁ、なんて思ったりします。いつからかは分かりませんが、彼女もそれなりに長い間主人公に片思いしていたと思うので、告白されて嬉しい気持ちをもっと表現してほしかったというか。
 あと冒頭。最初のアントシアニンとかカロテノイドとかの話は、人によってはとっつきにくいと感じる人もいる……かも? 重箱の隅とも思うのでここは聞き流してもらってもいいです。

 あまり整理されていない感想で申し訳ないのですが、この辺で。
 良い結果が出ることを期待しております。執筆お疲れ様でした! 
合計 21人 430点

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