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英雄の条件

「総攻撃を仕掛けるには、明日の昼間が一番効果的かと」
 主要人物が集まる軍議で、軍師が報告する。剣や槍を持った屈強な軍人が集まる中、堂々と発言する姿には自信が感じられる。
「平日の昼間か。なるほど、確かにそれは道理だな」
 英雄と呼ばれる男であり、俺の親友でもあるズールが同意する。しかし、明日の昼間だと?
「まて、明日に総攻撃を仕掛けるのはかまわないが……お前は出撃するな」
 そういうと、ズールは俺を正面に見据えはっきり言った。
「いや、俺が行かねば。軍の士気にも関わる。それに、俺がいればある程度の戦、乗り切ってみせる」
「だがな、明日は……」
「いいんだ。俺は、この国の英雄だ」
「全てを失うかもしれないんだぞ。英雄と自分自身、どっちを選ぶんだ」
 ズールはしばらくの無言の後、語りだす。
「英雄ってのはな、強いものがなれるんじゃない。一つの為に他の全てを捨てることのできる、そんな大馬鹿が英雄って呼ばれるんだ」
 その自信たっぷりな様子に、俺はもう何を言っても無駄だと悟った。
「……本当にお前は馬鹿だよ。ああ、大馬鹿だ」
 結局、今日の軍議でズールを先頭にした隊により敵陣地を叩く作戦が決定された。

 そして、翌日。作戦決行の時間になるのを、俺は教室の時計で確認した。今頃、ズールは敵陣地で奮闘しているのだろう。
 オンランゲーム界の英雄ズール――もとい、池本は今学期で最も重要なテストをサボったのだった。


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●感想
一言コメント
 ・オチが良かったw
 ・さすがとしか言いようがないです。
 ・同士だから……かな? 
 ・意外なオチに吹き出してしまいました。池本最高。
 ・落ちが素晴らしい。レトリックの妙を垣間見たきがします。
 ・学生時代によく読んでいた星新一のショートショートを読み返したくなりました。
 ・面白かったです。冒頭の導入が良く、友人の主人公が英雄を制止し何故かと思い引き込まれ、最後のオチで笑わせて貰いました。
 ・SSらしいオチでした、教室あたりでもしや、最後にぐわっとなりました。
 ・「平日の昼間」→なにか仮想世界だな、と予感させますが、まさかテストの日とは。オチがきいていて思わず笑ってしまいました。
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