高得点作品掲載所     ななななさん 著作  | トップへ戻る | 


君のためのミステリー

 0.

 文芸部の部室でひとりの少女が殺された。夏休みを目前に控えた七月のことだ。
 犯人はすぐに捕まった。

 ……。
 やあ、来たね。
 降霊なんて久々に挑戦したのでね。成功して良かった。
 うん? 目的?
 君はこの事件について勘違いしているようだったのでね、真実を教えてあげようと思って。
 ま、ちょっとしたお節介さ。
 私かね?
 ん? 探偵? ハッハッハッ! 探偵か! おかしなことを言うね。私のどこが探偵なんかに見えるって言うんだ?
 いかにも、私は魔女さ。
 この事件の真実をつまびらかにするのは、探偵の倫理ではなく、魔女の幻想なのだよ。

 1.

 私――御堂ハルカ――は、階段の踊り場で足を止めた。ここの壁には大きな姿見が掛かっている。
 周りに生徒がいないのを確認してから、姿見の中の自分と目を合わせる。
 服のしわを直し、スカートを意味もなくぱたぱたさせる。手櫛で梳いても思い通りにならない癖っ毛が、今ばかりは恨めしい。内心の苛立ちがそのまま表情に出てしまって、私は両手でほっぺたを揉んだ。
 そこで、はっと気付いた。袖のボタンが取れている。
「あ……」
 どこで取れたのだろう? ちっとも気付かなかった。けれど、これは今さらどうしようもない。見咎められないようにすれば大丈夫だろう。
 まあ、よし。
 と自分に合格点を出して、私は再び歩き出す。
 向かう先は部室棟にある文芸部だ。
 我が文芸部はあまり活発ではない。活動日が明確に決まっておらず、放課後に三々五々集まってはそれぞれ本のページを繰るのが活動という有様だ。
 毎日部室を訪れるのは一握りの部員だけで――先輩もそのひとりだった。
 烏丸先輩は二年生で、背が高く中性的な容貌の持ち主だ。女の人だけれどそこらの男どもよりずっと格好良い。ボーイッシュな風貌や仕草は女生徒の視線を釘付けにしていたけれど、いつも飄々としている。私の憧れの人だ。
 私が文芸部に日参しているのは、ひとえに先輩に会いたいがためである。

 2.

 先輩と最初に会ったのは、入学してすぐの頃。
 ちょうど部活勧誘の時期で、先輩は文芸部のチラシをつまらなそうな顔で配っていた。普通に立っているだけなのに、目が離せなくなった。柔らかく笑いかけてチラシを手渡してくれたときには、恥ずかしくて逃げ出してしまったくらいだ。
 一週間に渡る逡巡を経て文芸部を訪れると、先輩は温かく迎え入れてくれた。
 やる気のない部員ばかりで集まりは悪かったけれど、先輩と二人きりになることが多くて嬉しかった。
 先輩に近付きたくて、同じ本を読んだ。私には難解すぎて何度も投げ出しそうになったけれど、頑張って、最後まで読んだ。
 私が問いかけると、「僕はね……」と先輩は落ち着いた声で本の感想を語ってくれた。本当は感想なんかよりも、ただ先輩の声を聞いていたかった。暗くなるまでそうしていて、心配だからと駅まで送ってもらえることを密かに楽しみにしていた。
 気付いたら好きになっていた。
 苦く想う。甘く希う。どうか私に振り向いてください、と。
 私は先輩のことが好きだ。
 ずっと、今でも。

 3.

 部室棟は校舎の北側にある。
 渡り廊下でつながっていて、屋根がついているので雨の日でも安心だ。私は夕日に目を細めながら、弾む足取りで駆けていく。
 手には先輩に勧められた『嵐が丘』。私が本の感想を話すのを、先輩が微笑みながら聞いてくれる。その時間が好きだ。何日も夜更かしして、昨日ようやく読み終わったところだった。今日の感想会を思って、自然と頬が緩んでしまう。
 もうすぐ先輩の顔が見られる――
 と。
 私は足を止める。
 先輩の声が聞こえた。私が先輩の声を聞き間違えるはずがない。上履きのまま地面に降りて、声のするほうへ近寄っていく。
 咲き誇る牡丹の向こうで、先輩と男の人が向かい合っていた。
 相手は同じ文芸部の三年生だ。名前は覚えていないけれど、時々先輩と親しげに話している。私も何度か言葉を交わしたことがあった。
 真剣な様子だ。
 何を話しているんだろう?
 風向きが変わったのか、二人の話し声が鮮明に聞こえてくる。
 私は聞き耳を立てたことを後悔した。

 4.

 部室には誰もいなかった。
 私はいつも使っている一番奥のスツールに腰掛けて、膝に顔を埋めた。
 電気を消しても残照が満ちて室内は明るい。くっきりと落ちる黒い影とオレンジ色の日差しは、昭和の写真のようなセピアの場景を作り出していた。
 どうして部室に顔を出してしまったんだろうと思う。今は誰と会っても気分が沈むばかりなのに。それでも訪れてしまうのは、先輩との思い出の多くがここに残っているからかもしれない。
 何気なくスカートのポケットに入れた指先に、硬質な手触りがあった。
 思わず、びくりと震える。
 美術の木工で使った折り畳みナイフ。
 そのとき、ドアが開いて誰かが入ってきた。腰から下からしか見えないので誰だかわからないけれど、スカートを履いている。彼女がドアを閉めた拍子に、手に持った『緋文字』が見えて確信した。
 ポケットの中で、ぎゅっ、と手を握り締める。
「……先輩」
 気配がわずかに震えた。
 どうして、部室に顔を出してしまったんだろうと思う。
「烏丸先輩?」

 5.

「……もう二人きりで会うのは、やめにしよう」
 私は息を呑んだ。
「なんでですか……」
「……」
「どうして、そんなことを言うんですか」
「その……、好きな人が出来たんだ。誤解されたくない」
「あいつですか? あ、あいつが先輩をっ、誑かしたんですか! せっ、先輩は、きっと騙されているんです。あいつは本当は――」
「違うよ、そうじゃない。僕が勝手に好きになったんだ」
「……。うそ……」
「ごめん」
「そんな……だって、私ならもっと、先輩になんでもしてあげるのに。あんな……あんな奴……!」
 私は持っていた『嵐が丘』を取り落とした。
 開いたページにはたはたと涙がしみを作る。俯いていて見えないのに、なぜか先輩がこちらを見たことがわかった。
「……ハルカ」

 6.

 呼びかけられ、顔を上げる。
 咄嗟にナイフを突き出していた。
 どうして自分がそんなことをしたのか、その瞬間、私自身も理解できていなかった。けれど肉を貫く感触が指先から伝わってきたとき、私は歓喜したように思う。
 倒れた細い身体にのしかかる。『緋文字』を投げつけてきたが、容易く弾き飛ばした。
 ナイフを振り上げる。
 何度も刺した。刺しては抜いた。血が噴き出して、私の制服を濡らした。構わなかった。刺して、刺して、刺して、刺し続けて。
 悲鳴が徐々に弱々しくなり、気付けば、目の前には布をまとった肉のかたまりが転がっていた。
 半袖から伸びる腕が、スカートから伸びる足が、溢れる鮮血に合わせてがくがくと動いている。けれど、それはただの痙攣に過ぎず、情動も思考もありえなかった。瞳は憧憬の輝きを失い、最早ビー玉と変わらない。
「ああ――」
 満ち足りた。
 そう思う。
 もう奪われることはない。私のものだ。すべて、ぜんぶ、何もかも。
 大丈夫。きっと全部うまくいく。
 そう思うのに、なぜか涙が溢れて止まらなかった。

 7.

 それは違う。
 何度言ったらわかるのだ? 殺したのは君じゃない。君が死んだのは、後を追って自殺したからでもない。
 逆だ。
 殺されたのは君だ、御堂ハルカ君。
 憧れの先輩に、君は殺されたのだよ。
 信じない? ふむ。
 まったく、君は一途だなあ。憧れていた人が自分を殺すはずがないって? 真実というのは残酷なものと相場が決まっているじゃないか。
 ……いやはや、その頑迷さこそ魔術的だ。まさかテレパシーまで身につけるとは思わなかった。私なんかよりよほど魔女に向いているよ。こんなことなら生きているうちに唾つけときゃ良かった。いや、死んでこその力なのかな? 彼女の心を知ってまで、肩入れすることもないと思うが――
 ま、よろしい。
 私は君が気に入っている。もう少しだけ付き合ってやろう。
 パズルのピースは揃っているのだ。自分の行いをよぅく見直してみるといい。
 まずは奇数だな。1、3、5だ。頭を空っぽにして、注意深く読み進めなさい。わかるかね? 1、3、5だ! 間違えるなよ。
 その後、偶数だけを読むといい。
 真実は最後に現れる。
作者コメント
 できたあああああ!
 ……失礼。取り乱しました。ずいぶん長いこと温めていたネタなのですが、念願叶って完成させることが出来て、大変嬉しく思います。これもひとえにライトノベル研究所、及び利用者の方々のおかげです。ありがとうございます。

 ……何この最終回的なノリ。違いますよ? まだ投稿しますよ?

 酷評に身をゆだねる所存。
 たぶん意味わからんという方も多いはず。そういう方はすみません。
この作品の感想をお寄せください。


この作品が気に入っていただけましたら『高得点作品掲載所・人気投票』にて、投票と一言感想をお願いします。
こちらのメールフォームから、作品の批評も募集しております。

鍵入さんの意見
 「ミステリー」という文字が目に入った瞬間に読み始めていました。初めまして、鍵入と申します。

 内容ですが……うーん、やられました。
 実は、これと全く同じ仕掛けの短編を読んだことがあります。あるのですが、またしても引っ掛かって素直に楽しみました、はい。
 仕掛けの利用方法がやや単純すぎるきらいと、視点入れ替えに若干とまどう部分もありますが、総じて見れば中々だと思います。あまり違和感が無いのも、この仕掛けをやる上での前提条件とはいえ、大いにプラスです。

 僕自身も文章レベルで仕掛けを入れる話を書いたことがあるのですが、あの難しさときたら……そういうわけで、苦労は察します。お疲れ様でした。


解説は温井コタツでお送りいたしますさんの意見
(注意。かなり的外れなことを書いてしまうかもしれないので、取捨選択をお願いします。また、なるべく他の方の感想を読まずに書いているので、重複はご容赦を)

 ま た ミ ス リ ー ド か

>たぶん意味わからんという方も多いはず。そういう方はすみません。

 そんなことは俺がさせない……!実況は温井コタツでお送り致します!

 と、いうわけで実況は他の方に任せて、解説でもー。(期待はしてませんが)

【荒筋ー。】
起・魔女と霊の会話
起(奇数・御堂視点)・部室棟に向かう途中。
起(偶数・男子視点)・烏丸と最初に会ったこと時の話。

承(奇数・御堂視点)・男子生徒と烏丸の縁切り現場に出くわす。
承(偶数・烏丸視点)・縁切り後。文芸部室にて、落ち込み中。

転(奇数・御堂視点)・縁切りの内容を立ち聞き。
転(偶数・烏丸視点)・黒化。御堂を殺す。

結・種明かし。奇数と偶数で読んでみろ。

【登場人物ー。】
・魔女
交霊ができる。あまり事件とは関わりが無い。

・御堂 ハルカ
 レズっぽい死人。殺されても自分が烏丸を殺したと勘違いをしている。文芸部員で、部活にいくのは烏丸と会うため。告白現場を偶然見てしまう。現在読んでいる本は、「嵐が丘」

・烏丸
 レズもイケル口の方(?)。黒化する。難解な本を好んで読む、真面目な文芸部員。男子生徒と度々二人きりで会っているが、御堂が好きで、勘違いをされたくないため、縁を切る。

・男子生徒
 烏丸と度々二人きりで会っていたが、縁を切られる。


【文章とか技巧面などー。】
 すっげえ……神懸かった構成でした。こりゃもう五十点しか……!

 ちょっと自分が引っかかった文章とかー。

>ちょうど部活勧誘の時期で、先輩は文芸部のチラシをつまらなそうな顔で配っていた。普通に立っているだけなのに、目が離せなくなった。柔らかく笑いかけてチラシを手渡してくれたときには、恥ずかしくて逃げ出してしまったくらいだ。

 ……あれ?つまらなそうに配ってたんですよね?だったら、どうして笑ったのでしょうか。(スルー推奨。気分を害されたらすみません)


>何度も刺した。刺しては抜いた。血が噴き出して、私の制服を濡らした。構わなかった。刺して、刺して、刺して、刺し続けて。

 ……自己満・改変発★動……!(特にスルー推奨。気分を害したらホントもうすみませんorz)
 ここは、「刺して、抜いて、刺して抜いて刺して刺し続けて」にしたら、もっと雰囲気が出るのでは?


【設定みたいなー。】
 霊との交信ができる世界。

【オチの予想とかー。】
 殺されてたのは御堂ハルカだった。

(間違ってたらスミマセン!)

 こんな感じでー。最後に、
 一途な思い、恐るべし
 とか考えてみたり。
 それではノシ

P.S.(誤字ったので改変の際に追伸とかー。)
 個人的には、「本当は感想なんかよりも〜」のくだりは、そのままでよろしいかと。一文にしちゃうと、淡々となって感動とかも薄れますからね(あくまで自分の持論みたいなものですが)。


城戸姶良さんの意見
 こんばんは、城戸姶良です。
 拝読させて頂きましたので感想を。

 これはもう、素晴らしいの一言に尽きますね。(あくまで私観です)
 取り乱すのも仕方ないでしょう。

 普通に読めば、御堂ハルカが烏丸先輩に彼氏が居るのを見てしまい、ナイフで殺す。
 指示通り読めば、烏丸先輩が彼氏にふられるのを、御堂ハルカに見られ、ナイフで殺す。
 こんな解釈であってますか?

 読み方によって一人の話から、二人の話へ。
 この文章力、もう凄いとしか言えません。(あくまで私観です)

 ですが、気になる点が一つ。

>何度言ったらわかるのだ? 殺したのは君じゃない。君が死んだのは、後を追って自殺したからでもない。


 これは、一読目では確かに有効な文章ですが、
 二度目を読んだ後になるとどうしても気になってしまいますね。
 殺された当事者なんだから、分からないわけないだろう、と。
 そんな事を言ってしまえば元も子もないのですが。

 しかし、面白かったですよ。
 次回作も期待してます!
 以上です。


奴隷さんの意見
 こんばんは奴隷と言います。
 拝読させて頂きましたので早速感想を。

 一回目は何だか要領を得ない独白やなぁとか上から目線で調子に乗っていたのですが・・・・・・

 二回目で本当にビックリしました!
 橙子さんじゃなくて魔女さんの指摘を受けて読み直すと偶数と奇数の視点が違うなんて全然気付きませんでした!
 確かにそう考えて読むと話が全く違うなんてこんな手法は初めて知りましたので衝撃も相当な物でした。

 個人的にはこれが高得点作品に行かんでどうすると言う気持ちで付けさせて頂きました。
 もうキャラとか作品の雰囲気とかどストライク!バッターアウト!ゲームセット!って感じでした。

 ちょっと取り乱しましたがそのくらい楽しく拝読させて頂きました。
 本当に執筆お疲れ様でしたm(__)m
 これで最終回とかではないですよね(笑)
 次回作楽しみにしてます。


佐藤 博さんの意見
 すごいの一言につきます。
 よくこんな話が作れましたね。
 文章・ストーリー共に申し分なくて、もうこれはさっさと高得点掲載所いっちまえって感じです。

 ただ気になったのは、『私』や『先輩』などの代名詞をあまりにも使いすぎてて、逆にミスリードだと読めてしまいました。
 それと文芸部の三年生が出た辺りで完全に烏丸とハルカの一人称を交えてるんだなと確信出来てしまいました。
 同じ文芸部の三年生と説明するのは流石にヒントあげすぎなんじゃね? とか思ったり。
 それでもこの複雑な構成はお見事です。僕が今まで読んだラノ研の作品でもベスト5に入るぐらいです。
 次回作も頑張ってください。
 では。


フォルティッシモさんの意見
 こんばんは。拝読したので感想を。

 素晴らしい構成力ですね。理解するまでに四回ほど読み直しましたが、分かったときには感動しました。初読では多少の違和感はあったものの、烏丸先輩はボーイッシュであるというミスリードや先輩という曖昧な代名詞に騙されて順番どおり読んでしまいました。
 恋(もしくは憧憬)は盲目というのがこの話の結論でしょうか。ハルカが烏丸先輩を見誤ったのか烏丸先輩が変わってしまったのかは分かりませんが。

 必死に矛盾点を探したのですが見つかりませんでした。希うって誤字じゃないか?とか思ってググッてみたら自分の無知を恥じることになりましたし。
 強いて言うなら烏丸先輩があまり飄々としていないとか、どうして三年生の方の先輩はハルカに会えるのに部室にあまり来ないのかとか……すいません、揚げ足取りですね。
 ただ、最後に烏丸先輩はなぜ全てうまく行くと思ったのかは少し疑問でした。恋敵を殺せて気分が晴れるのは分かるんですが。まさか先輩も殺すつもりだったりするのでしょうか。恋は恐ろしいですね……

 ただし、少しヒントが露骨過ぎるかなと思いました。せっかくミステリーなのだからもっと悩ませてもいいと思います。例えばハルカの場面の一人称を「わたし」、烏丸先輩の場面の一人称を「私」にして、魔女のシーンはカットするとか。その場合事件後に神視点ではない第三者(警察など)がハルカの死体を発見し、烏丸先輩(あるいは三年生の先輩も)は行方不明になったとかいう後日談が必要になってくるかと思いますが。
 まあ、それでは私のような者は気付かない可能性も大なのでどちらがいいとは言えないのですが、個人的にはそういった展開の方が面白いかなと。それでしたらハルカが自分が殺されたのを知らないわけないだろ、という突っ込みも入らないでしょうしね。

 ともあれ今回も非常に楽しませてもらいました。次回作も期待しています!

追記
 他の方の感想を見て不安になったのですが、烏丸先輩は最初からハルカを殺すつもりだったんですよね? だからナイフを持っていたのだと解釈したのですが。気になったので教えていただけると嬉しいです。


プアーデントさんの意見
 プアーデントです。
 拝読しましたので、感想を述べさせてもらいます。

 といっても、ごめんなさい。始めに謝っておきます。
 私はこの作品がどういったものなのか理解できませんでした。というかまぁ、理解する気も起きなかったというのが正しいのですが……本当に申し訳ない。。

 冒頭はそれなりに独特の色があったんですが、それ以降は淡々とありがちな恋が展開していって、なんだかいきなり殺して終わっちゃった。
 そんな印象です。
 特に引き込まれる展開もなく終わったので、結末で魔女さんが得意げに「この話の秘密はねぇ〜」とか言ってても「はぁ」としか思えず……まぁこの点数ということになりました。
 ご容赦ください。
 端的に言えば、つまらなかったです。

 冒頭のハルカや先輩の描写って必要あるんでしょうか。
 ありがちな展開でありがちな描写を淡々としているだけで、もうその時点で退屈に感じてしまったので。
 私が眠いからかも知れません、ですが少なくとも楽しいとは思えませんでした。
 トリックがいくら秀逸でも、話自体がつまらなかったらなんの意味もないです。
 感情の描写が少々うざったく感じましたね、もっとテンポよくしてみたらどうでしょう。

 例としてこの部分
 【本当は感想なんかよりも、ただ先輩の声を聞いていたかった。暗くなるまでそうしていて、心配だからと駅まで送ってもらえることを密かに楽しみにしていた。
 気付いたら好きになっていた。
 苦く想う。甘く希う。どうか私に振り向いてください、と。
 私は先輩のことが好きだ。
 ずっと、今でも。】
 
 これは極端にまとめれば「私は先輩が好き」の一言で終わりですよね。それをこれ以外でも全体的にダラダラやっていて、ずいぶんと冗長なリズムが拭えなかったです。
 読んでいて余計に眠くなりました。一回言えば分かるよってな感じに。
 どうせ掌編なので、殺すまでの感情変化なんて書けないですから、変に長編ぶった描写をするのでなくショートショートのテンションで行った方が個人的にはよかったと思います。
 もしくはもっと変化のある展開にするなど。

 ちなみに他の方の感想を読むと、どうやらミスリードとかしたみたいですが、そもそもリードされた覚えすらなかったです。
 もう本当に申し訳ない。とても読み返す気にはなれませんでした。

 それと、流しながらも疑問に思った点を――――

・美術で使ったナイフがなんで都合よくポケットに入っているのかなと。
・なんで失恋?したぐらいで簡単に殺しちゃうのかなと。

 流しながらなんですが、この二つの要素ってミステリーではかなり重要な位置づけにあるんで、そういう意味でやはりご都合主義以外のなにものでもないと思います。
 といっても、よく読めば違っていたら申し訳ない。流しながら思った次第ですので。


 私の感想は以上です。
 少しも参考にならないでしょうが、とりあえずお目を通し頂ければ幸甚の至りです。では。


mi-coさんの意見
 mi-coです。

 面白かったです。何でこんなに場面展開するんだろうと思っていたんですけど、視点切り替えのトリックだったんですね。おもわず何度も読み返しちゃいました。

 偶数の2は烏丸先輩の視点ですよね。烏丸先輩が三年生の先輩と会話しているんでしょう。ていうのも、少し疑問だったんです。
『僕はね……』
 この台詞。一人称は全て『私』だから、これは御堂ハルカでも烏丸先輩でもない。つまり、烏丸先輩が好きな、三年生の先輩の台詞なんですよね。
 まあ、改めて言うことでもないとは思ったんですけど、一応書いておこうと思いまして。

 一番疑問だったのが、烏丸先輩が御堂ハルカを殺す動機です。おそらくですけど、御堂ハルカに対する嫉妬でしょうか。三年生の先輩が好きな人っていうのは、台詞にもありましたけど、御堂ハルカですよね。
烏丸先輩が振られて落ち込んでいた所に、先輩が好きだと告白した御堂ハルカがのこのこやって来たもんだから、思わず彼女を刺してしまった――てな具合でしょうか。
 衝動的な殺人だと思うんですけど、心理描写もきちんと描かれていて、彼女の内面の動きがさらっと描けていたと思います。
 満ち足りた――、というのはいいですね。憎い恋敵を殺せて満足したんでしょう。その後に、彼女は利己的な思考で何とか自己の行動を正当化しようと試みますけど、最後には涙を流すんですよね。そこがよかったです。
 御堂ハルカよりも、烏丸先輩のほうが感情が豊かですね。最後まで読み終わった後、御堂ハルカの印象が薄くなったんですよね。そこがちょっと残念かな、と思いました。お話の構成上、仕方がないとは思いましたけど。

 後、最初にあった鏡のシーンには何か意味があったんでしょうか?
 もしかして、袖のボタンが取れたのに覚えていないっていうのは、魔女に回想シーンを見せられているから、なのでしょうか。
 彼女は鏡を見て、自分が御堂ハルカだと確認する。ボタンの件は、そもそもそのことを覚えていなかったから――みたいな感じ。まあ、適当ですけどね。

 以上です。
 では、失礼しますね。


tanisiさんの意見
 はじめまして、tanisiといいます。
 拝読いたしましたので、感想書かせていただきます。解釈がいろいろとあるようで、皆さんの感想を見て、さらに混乱しました。(笑

 シンプルにまとめると、
・ハルカは鳥丸先輩を尊敬(レズ?)している。
・鳥丸先輩は男の先輩を好きだ。
・男の先輩はハルカが好きだ。
・鳥丸先輩は嫉妬でハルカを殺す
 という感じでしょうか?

 物語そのものも、しっかりしていてすごいと思います。
 テレパシーと緋文字を理解できなかったので、解釈を間違えたかもしれません。(汗

 ななななさんの作品は見つけるたびに拝読させていただいてますが、ギャグだけでなく、トリックのほうもすごいですね。
 感想は、他の方がたくさん書きこまれているので、残してませんが…(すいません)

 最終回じゃなくてよかったです、次回作も期待しています!


小野月 楓さんの意見
 こんにちはかこんばんはか微妙な時間帯です。こんにちばんは、小野月 楓です。すごいですこれ。

 感想、と言っても、すごいとしか出てきません。他になんて言えと……。いや、ほんとになんて言えばいいんでしょう。えーっと……明日がテストだと忘れるくらいに引き込まれました。自分が受験生だと忘れるほどに読み返しました。それくらいの吸引力が文章にあり、それくらいの魅力がストーリーにありました。

 私は最初、ハルカちゃんが烏丸先輩のことを好きで、烏丸先輩が名もなき先輩(男)を好きで、名もな(略)がハルカちゃんのことを好きで、1・3・5がハルカちゃん視点、2・4・6が烏丸先輩視点、ついでに5は、地の分はハルカちゃんの一人称だけど会話は名も(略)と烏丸先輩の修羅場だと見たのですが、他の方の感想を見るとどうにも様々な解釈があり、一体なにが真相なんだーと頭を抱えました。
 でも、それがミステリーの醍醐味なんですよね。門外漢なのでよく分かりませんが。
 んー……?『嵐が丘』を持っていたのがハルカちゃんで、『緋文字』を持っていたのが烏丸先輩?それともどちらもハルカちゃんなのかな? 修羅場を目撃したときに本落としてますしね。いや、でも――。
 そんな感じで、どんどん想像が膨らんでいきました。私、真相にたどり着いた頃には頭が良くなっていると思います。まさかの脳トレ機能付き。

 気になったところについて。
>ちょうど部活勧誘の時期で、先輩は文芸部のチラシをつまらなそうな顔で配っていた。
 チラシを配っていたのは名も(略)先輩ですよね?多分そうだと思います。ここで、先輩(男)はつまらなそうな顔でチラシを配っていたはずなのですが、烏丸先輩に渡すときだけ笑顔になっているのがなんでかな、と思いました。顔が良いからか、そうなのか先輩(男)よ。

 文章で気になったのはそのくらいです。
 うーむ……。私は低スペックな上に、作品がこれだけ素晴らしいとあまり役に立つことが言えません。強いて言うなら頭の悪い私にも、作品の謎が分かりやすいように書いて欲しかったというか、いや、ミステリーに分かりやすさを求めてどうする、ということで。

 それでは、この辺で失礼します。素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました!これからも頑張ってください!


kinoさんの意見
 掌編でミステリー…。
 私もやろうと思って考えていたのですが、先を越されてしまいましたね。
 影響されそうなので時間を置いてから挑戦したいですね。
 はい、んなこたどうでもいいですね。
 kinoです。感想でも。

 視点移動については少し違和感を抱いてはいたのですが(負け惜しみ)、それでも最後にはひっくり返されました。
 トリックも非常に練られていたものになっていたと思います。
 ありがちな矛盾や綻びも見当たりませんでした。
 素晴らしいですね。作品に賭ける意気込みが段違いです。

 褒めるだけ褒めて終わっても良いのですが、私から褒められても何の意味もありませんね。
 私の意見を残させていただきます。
 例のごとくスルー推奨で。

>美術の木工で使った折り畳みナイフ。
 烏丸さんがナイフを持っているのが少し唐突に思えました。
 ハルカさんが、美術の時間を最後に受けた事にしておくと、よりミスリードっぽくなったのかな、と思います。
制服のボタンがはずれたのもその時に…みたいな。
 ん?そもそもボタンは何かのトリック…?

>倒れた細い身体にのしかかる。『緋文字』を投げつけてきたが、容易く弾き飛ばした。

 ん…?嵐が丘では…?
 いや、これもトリック?
 自分の読解力が心配になってきました…。

>何度言ったらわかるのだ? 殺したのは君じゃない。君が死んだのは、後を追って自殺したからでもない。

 ハルカさんはテレパシーを使え、先輩の視点込みでこの事件を振り返っている(私の見解です。違ったらあなたの脳内で土下座している私を思い浮かべてください)のですが、ハルカさんはそこ分からないといけませんよね…?
 ななななさんの言いたい事、訴えかける事は十分理解は出来るのですが、自殺した、と勘違いするなにかが必要だと思います。

 そんぐらいですかね…。
 魔女の部分は斬新でこれ自体は素晴らしいアイデアだとは思うのですが、そこはミステリーの種明かし部分なのでもうちょっと具体的に書いた方がよろしいのかな、と思います。
 頭のよろしくない私やプアーデントさん等の様な方には少し厳しいモノがあります…。

 以上ですか…。
 では、駄文失礼しました…。


TNDBさんの意見
 TNDBです。

 とりあえず私は、斬新とか独特だとか、そういうものは評価基準に入れないことにしております。
 しかし、特殊で難しいスタイルで見事完走されているということで、気持ち+40点です。
 段落1〜6の文章は、完璧だと思います。
 特にボーイッシュだと記した後での「僕はね……」が秀逸でした。
 一瞬違和感を感じたものの、「ボーイッシュ」だということで納得してしまいましたよ、くそう。


●50点満点ではないのは、なぜ……?

・「魔女」の正体は誰?
 私の読解力不足かもしれませんが、何度読んでも解りませんでした。申し訳ない。
 これがズバッと出てきて、ニヤリとできるものだったら完璧でした。

・題名の意味が最初からわかっている
 私の読み違いだったら申し訳ないのですが、
 「君」とは読者とハルカの事だと解しました。
 これが、謎が解けた後にもう一度題名を見て「ああ、なるほどね」と思えたら完璧でした。

・物語としてだけ読むと、あまり面白くない
 これは枚数の制限や構成上の縛りがあるので難しいですが……ううむ。


 ともかく、この形式を掌編で完成させた文章力と根気に脱帽です。
 次回作も期待させていただきます。


綾龍さんの意見
 こんにちは! 拝読しましたので、感想などを残していきます。

 文書の塊を入れ替えるアナグラムみたいなものですね。
 これほどまでに完成した形で構築するのは、相当難しかったと思います。

 御堂さん(または烏丸先輩)のストーリー自体は、そんなに新鮮さは感じませんでしたが、この奇数・偶数のトリックはとても面白かったです。すごいとしか思えませんでした。
 文章が入れ替わっても、ちゃんとその時の登場人物に即した感情表現がなされているし、同じ言葉なのに違うニュアンスを持たせているだなんて……、まったくとんでもない事をしますね(^^;

 あとは、ちょっと個人的な趣味の話として書きますけど、答えはもっと曖昧でもいいと思いました。
 この作品の場合、読者に謎解きをさせる種類のものだと思うので、魔女が全部答えを教えてしまうのは、少しもったいないような気がします。
 ヒントだけ与えて、あとは自力で頑張れよって感じでもいいように思います。

 他に気になった点としては、
>ドアが開いて誰かが入ってきた。腰から下からしか見えないので誰だかわからないけれど、
 この部分の情景。
 どうして腰から下しか見えなかったのか、想像しにくかったです。
 前髪で隠れて見えなかった、ということでしょうか?

 あと袖のボタンは読者をかく乱させるためのフェイクですよね?(ですよね???)
 そういった細かい道具の使い方も、楽しく読ませていただきました。

 読み返して読む必要のある作品で、とても面白かったです。
 また素晴らしい作品ができましたら、よろしくお願いします。
 それでは!


中行くんさんの意見
 こんにちは。
 拝読したので感想を書きます。
 本当は昨日読んだのですが、解説が入ってから感想を書こうと思い、今に至ります。

 実は違う人でした、という叙述トリックというのは良くある話ではありますが、交互に行って同一人物に見せる、というのはよくあるものではなかったと思います。
 視点変更の多さから叙述トリックは疑ったのですが、それでも楽しめたと思います。

 僕はヴァン・ダインがどうこういうつもりはないですが、ミステリーはフェアであって欲しいと思う方です。ミスリードであっても片方の見方には矛盾を作り、一読で気づく可能性を残して欲しいです。

 僕は3と4で本が変わっていることから別の日なのかなとわかりました。しかし牡丹だとか袖だとかには気づかなかったため、それほど大きな開きがあることにはきづけませんでした。
 
 そう考えると4での顔を合わせたくなかったような感じと、5での「……もう二人きりで会うのは、やめにしよう」といういかにもずっと会っていたと言うようなセリフは矛盾するため、季節の開きさえ気づけば一読でたどり着くことができたのかなぁなんて思います。

 以上から、長袖は土地柄がわからないから何とも言えないだとか、牡丹の知識なんてねーよという難癖はともかく、フェアっちゃフェアなんだなー、いや、うーん。正直に言えばもっと季節のわかりやすい花にして欲しかったとは思いますが。7月だと考えれば、「ずっと、今でも。」はそこまで矛盾はないですし。

 ということで、この話は季節の開きを見つけなければ矛盾はない話だったと思うのですが、その手がかりがはっきり言って読者の知識に完全に頼ってしまう牡丹では、やっぱりフェアではない気がします。大切な手がかりはもっとはっきりと提示して欲しいです。

 この話では魔女の話があるので必然的に答えにはたどり着きます。しかし描写が淡白なぶん、楽しむのはパズル的要素だと思います。その大切なピースをわかりにくい知識の中に忍び込ませるのはやっぱりフェアじゃない気がします。

 ということで、釈然としなかったという少数派の意見でした。なんか僕の中でもまとまらないまま書いた上に、書いていて新たに思うことがあったので、ひどく読みにくい感想であることをご容赦ください。あと、解説も含めちゃんと読んだつもりですが、なお読み落としがあれば申し訳ございません

 点数はつけませんが、別にマイナスにするとかいう気はございませんのでおきになさらず。

 では、次回作も期待しています!


解説、温井コタツに代わりましてピエールが(ryさんの意見
 どもー、お久しぶりです、ピエールですよ?
 なんだか温井コタツとやらが色々と粗相をしでかしたようなので、不肖ピエール(スライムナイト的に)ベホイミとか唱えながら解説を。……温井コタツ?はぁ?誰ですかな、それは。

 さあ、日頃のお礼と、高得点祝いの時間だ!


※普通に読んだのを「一般式」、魔女の提言に従ったのを「魔女式」、共通で読める物を「共通」と呼称するとします。


【物語の荒筋を解説(※《》でくくられた部分は登場人物です)】
 〜一般式〜

0・魔女と霊の会話《魔女、霊》
1・部室に向かう途中《御堂》
2・烏丸と御堂が会った時の話《御堂、烏丸》
3・部室に向かう途中、告白(?)の現場に出くわす《御堂、烏丸、男子生徒》
4・その後、文芸部室にて、落ち込む御堂。部室に入ってくる烏丸《御堂、烏丸》
5・男子生徒が好きだという、烏丸の衝撃の告白。縁を切られる。《御堂、烏丸》
6・御堂、逆上し、烏丸を刺殺。《御堂、烏丸》
7・魔女と霊(御堂)との会話。種明かし。《魔女、霊(御堂)》



 〜魔女式〜
0・魔女と霊の会話《魔女、霊》

○ 御堂視点
1・部室に向かう途中《御堂》
3・部室に向かう途中、烏丸と男子生徒の縁切りの現場に出くわす《御堂、烏丸、男子生徒》
5・御堂が好きだと言う男子生徒。喚く烏丸。それを見て、ショックを受ける御堂。《御堂、烏丸、男子生徒》 (詳細は後述)

○ 烏丸視点(御堂視点の、その後)
2・烏丸と男子生徒の会った話《烏丸、男子生徒》
4・部室にて、縁を切られたショックで文芸部室で落ち込む烏丸。そこに、御堂が来る。《御堂、烏丸》
6・烏丸、御堂を刺殺。《烏丸、御堂》

7・魔女と霊(御堂)の会話《魔女、御堂の霊》



【登場人物】
・魔女
 一般式:交霊ができる。あまり事件とは関わりが無い。


・御堂 ハルカ
 一般式:文芸部員で、部活にいくのは烏丸と会うため。烏丸には尊敬以上の念を抱いている。黒化し、烏丸を殺害。現在読んでいる本は、「嵐が丘」。

 魔女式:レズっぽい死人。実際に殺したのは烏丸のほうなのだが、自分が烏丸を殺したと思い込んでいる。或意味一番の被害者。作者情報によると、一年生。


・烏丸
 一般式:ボーイッシュな、ハルカの先輩。ハルカに尊敬以上の念を抱かれている。難解な本を好んで読む、真面目な文芸部員。男子生徒と度々二人きりで会っていて、男子生徒が好き。

 魔女式:男子生徒が好き。男子生徒に、ハルカが好きだから、と縁を切られる。そして、黒化し、ハルカをナイフで刺殺する。作者情報によると、二年生。


・男子生徒
 一般式:烏丸が好きな相手。

 魔女式:ハルカが好きで、烏丸と縁を切る。作者情報によると、三年生。
     (検証・「相手は同じ文芸部の三年生だ。名前は覚えていないけれど、時々先輩と親しげに話している。私も何度か言葉を交わしたことがあった。」――3場面より)



【場面別で会話を分析】(0と1、2、3、7は割愛)
 〜一般式〜

・4場面

御堂「……先輩」
御堂「烏丸先輩?」

・5場面

烏丸「……もう二人きりで会うのは、やめにしよう」
御堂「なんでですか……」
烏丸「……」
御堂「どうして、そんなことを言うんですか」
烏丸「その……、好きな人が出来たんだ。誤解されたくない」 (注・好きな人→男子生徒)
御堂「あいつですか? あ、あいつが先輩をっ、誑かしたんですか! せっ、先輩は、きっと騙されているんです。あいつは本当は――」
烏丸「違うよ、そうじゃない。僕が勝手に好きになったんだ」
御堂「……。うそ……」
烏丸「ごめん」
御堂「そんな……だって、私ならもっと、先輩になんでもしてあげるのに。あんな……あんな奴……!」
烏丸「……ハルカ」


・6場面

御堂「ああ――」



 〜魔女式〜

・4場面

烏丸「……先輩」
御堂「烏丸先輩?」


・5場面

男子「……もう二人きりで会うのは、やめにしよう」
烏丸「なんでですか……」
男子「……」
烏丸「どうして、そんなことを言うんですか」
男子「その……、好きな人が出来たんだ。誤解されたくない」 (好きな人→御堂)
烏丸「あいつですか? あ、あいつが先輩をっ、誑かしたんですか! せっ、先輩は、きっと騙されているんです。あいつは本当は――」
男子「違うよ、そうじゃない。僕が勝手に好きになったんだ」
烏丸「……。うそ……」
男子「ごめん」
烏丸「そんな……だって、私ならもっと、先輩になんでもしてあげるのに。あんな……あんな奴……!」
烏丸or男子「……ハルカ」 (ここはどちらでも良いので、個人の解釈に任せます)


・6場面

烏丸「ああ――」



 ――以上。こんな感じか。まだ分からないところや、加筆して欲しいところがあったら遠慮なくどうぞー。また、間違いがあったら、お手数ですが、ななななさんにご指摘願います。


 あなたのファンより


無限煎じさんの意見
 初めまして……かどうか記憶が曖昧です。すいません、無限煎じです。蜜に誘われる甲虫の如きスタンスで王冠に釣られてやって参りました。
 テスト勉強の合間を縫って拝読させて頂きましたので、幾つか気になったところも含めて感想をば。

 まず第一印象にこれは巧い……と思いました。このような小説の形態の名称を詳しくは知りませんが、個人的に相当好きな部類です。
 しかし、だからこそ以前執筆経験があり、たまたまの偶然なんですが似た様な話(と言っても、大体はコメディで構成されてましたが)を未完のままですが書いたことがあり、漠然とですがオチが読めてしまいました。
しかし、ろくに仕上げられなかった自分の駄文に対して本作の巧妙なるトリックと作者様の文章力は圧巻の一言。
 ただ、面白かったかどうかと言うと勝手ながら初めて読んだ感じがしなかったので、決して低い評価と言う訳ではないですが、点数はあえてつけないでおきます。ご了承ください。

 それでは幾つか気になったところをポツポツと。

【ストーリー】
 文句のつけようがないのは確かなのですが、他の方の感想からも伺えるとおり皆様オチの解釈の仕方が違うようですね。自分も漠然と納得はしたのですが、話の時系列の整理がまだ脳内で上手く纏まってなかったりします。まぁ、逆に言えばそれがミステリー小説の醍醐味とも思います。
 ただ、ミスリードでオチるなら皆様が共通であぁ、なるほどと思うことが望ましいかと思います。そのためには10枚に拘らず、もう少し描写を増やしてもいいんじゃないかと思います。

【キャラクター】
 まず魔女ですが、彼女は必要だったのか?と思いました。まぁ、彼女がいないと最後のオチが成立しないわけですが、エピソードの順番を変えて読者に読ませるだけなら他に方法があったんじゃないかと思います。それに、この世界観で魔女は信憑性に欠けるかなぁと。せめて神様とかお迎えに来た天使あたりなら個人的には納得がいきます。

 後の登場人物は全部ひっくるめてしまいますが、特に思うことはありませんでした。ストーリーに合った可もなく不可もなくな血の通ったキャラクターでした。
 ただ、ちょっと思ったのは、名前はなくてもいいんじゃないかと思いました。例えば名前もミスリードに一役かうならまだしも本作はそうではない様なので、何か違うあだ名みたいなものならミステリアスな雰囲気をより一層引き立てられてんじゃないかなと思いました。
 少し余談ですが、上記にて仄めかした自分が以前書いた話は一人称が「私」の男の子と一人称が「ボク」の女の子が登場します。更に彼らは名前もそれぞれ性別を惑わすような男女どっちつかずな名前にしており、彼ら二人の性別は終盤まで明確に描写せず、最後で一気にネタバラしするような構成だったりします。本作にこんな感じに絡めていくのも良かったんじゃないかと思いました。

【文章】
 基本一人称で二人の主人公(?)の巧みに視点を移動しながらの進行は変わらずに文句のつけようもありません。
 ただ、先ほども書いたのですが、描写を増やしても良いかと思います。
 心情は良いとしてもう少し状況の描写を丁寧にするとより一層綺麗にオチると思います。それこそ自分は時系列がいまいち把握できなかったので。
 それと刺殺シーンですが、自分の頭のネジは緩んでんのかもっとエグくても良かったと思ってしまいました(汗)。
 以下は良かったら参考程度に。

>半袖から伸びる腕が、スカートから伸びる足が、溢れる鮮血に合わせてがくがくと動いている。

 半袖から伸びる腕が、スカートから伸びる足が、溢れる鮮血に合わせてがくがくと動いている。更にその動きに合わせるように血溜まりには円心状の波紋が走り、その波間に時折覗く私の顔は狂喜に歪み、我ながら皮肉なものだと思った。

 なんて文章が読みながら不意に頭をよぎりました。衝動的なものでしかないので、もしかしたら忘れてもらったほうが後で頭を抱えて布団の中でジタバタする事もないのかもしれません。


 グダグダと長ったらしい駄文を失敬。感想ですら最近衝動的に書いてしまうことが多い自分なので、ほとんどの事は忘れてもらったほうが個人的に幸せかもしれませぬ。
 それでは今回はこの辺で、次回作も楽しく読ませていただきます。
高得点作品掲載所 作品一覧へ
 戻る       次へ