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ミレニアム生まれのあの子はプライスレス

 バイトで疲れて家に帰ると、部屋の片隅で二千円が三角座りしていた。今日も何か嫌なことがあったのだろう。
 無視して晩飯の用意をしていたら、くいくいとシャツが後ろに引っ張られた。振り返ってみると、いつのまにか背後に忍び寄っていたらしい二千円が、俺のことを見上げている。
「なんだよ?」
「……テレビでね、ミレニアム生まれの子供が十歳になったって、みんなでお祝いしてた」
 それはお目出度い話だと思ったが、どうも二千円としては許せないニュースだったらしい。この世の全てを呪うかのような暗い目つきで、ぼそりと呟いた。
「二千円もミレニアム生まれ」
 それだけ言い残し、二千円は四畳半の片隅にふらふらと戻ると、お決まりのポーズである三角座りを再開した。どんよりとした重い空気が、二千円を中心に狭い部屋に渦巻いていく。
「誰もお祝いしてくれない。二千円は要らない子……」
 見た目は十歳の女の子なのに、二千円の表情はリストラされた中年男性のような悲哀に満ちている。
 

 俺が二千円と出会ったのは今年の春、大学に進学して上京した俺が、新たな住居である古アパートの一室に入居した日にさかのぼる。
 その日も二千円は、部屋の片隅で三角座りをしていて、もちろん表情だって暗かった。しかも紫色の着物姿という古めかしい格好だったから、俺はてっきり成仏できないお化けの女の子かと勘違いしたものだ。
 まあ、お化けの女の子って考えも、あながち間違いじゃなかったんだけど。
 なにせ二千円の正体は、一枚の二千円札なのだ。押入れの奥に忘れ去られた二千円札が、どういうわけか人の姿になっちまったらしい。
 かくして俺と二千円の同居生活は始まることになる。

 
「何年たっても二千円の時代は来ない、絶対に……」
 二千円の湿っぽい愚痴を耳にしながら、俺は晩飯の準備に専念していた。二千円のネガティブ具合はダテじゃない。安易に励ましたところで効果はないし、逆に恨めしそうな顔で睨まれちまう。
「しょせん二千円だから。世の中はいつだって一万円が求められるから……」
 愚痴を聞き続けるのは愉快じゃないが、そうかといって落ち込んでいる二千円を残して出て行くと、これまた根を持たれちまう。
 結局、俺にできることは二千円の見えるところで、あいつの愚痴を黙って聞いてやることだけ――いや、もうひとつあるな、俺にもできることが。
「よっしゃ、オムライスの完成だ!」
 俺は重苦しい空気をぶち割るかのように、わざとらしいくらい明るい声を上げた。今日の晩飯は二千円の大好物、とろとろ玉子のオムライスだ。
 二千円の方に目をやってみると、相変わらず三角座りのままながら、わずかに視線をこちらに向けている。これはかなり喜んでいるサインだ。
 俺がちゃぶ台に二人分のオムライスを並べると、二千円がずるずると這うようにして近寄ってきて、探るような目つきで見上げてきた。
「いただきます、していいか?」
 二千円としてはテンションが上がっているのだろう。いつもは飼い主にぶん殴られた子犬のような顔をしているが、今は飼い主に捨てられた子犬のような顔にまで元気を取り戻している。
 このまま食わせてやりたい気もしたが、まだオムライスの仕上げが残っていた。
「ちょっと待てよ」
 すでにスプーンを右手にスタンバイしている二千円が、信じられないという様子で目を丸くした。効果音はガビーンだ。
「……この仕打ち。ちゃんとお掃除やお洗濯もしたのに、それなのにこの仕打ち」
 スプーンを握り締めたまま、二千円はその場で三角座りをはじめる。言われたとおり待つあたりは素直でカワイイのだが、いかんせん待ち方に負のオーラが溢れすぎている。なんだか飯が不味くなりそうだ。
 だから俺は、素早く冷蔵庫からケチャップを取り出し、二千円のオムライスに赤い文字を描いていく。
 それはあっという間に完成した。
『おめでとう』
 柔らかな黄色のキャンバスに、きらめく赤い文字はよく映えた。我ながらいい出来だ。
「二千円もミレニアム生まれなんだろ? だったら俺がお祝いしてやるよ。おめでとうな」
 俺の言葉が聞こえていないのか、ぱちぱちと瞬きをしながら、二千円はじっとオムライスを見つめている。放っておくと延々と固まっていそうだ。
「早く食べないと冷めちまうぞ」
 ようやく二千円が反応した。のろのろとスプーンをオムライスの上にまで移動させ、そこでまた惜しむようにオムライスを見つめる。
「なんだよ、要らないのか?」
 二千円はぶんぶんと首を横に振り、ようやくスプーンをオムライスに差し込んだ。半熟玉子とチキンライスを、小さな口にゆっくりと運ぶ。
「……美味しい」
 そう言った二千円の顔は、拾われた子犬みたいに幸せそうで、見てるとこっちまでまで嬉しくなる。
 きっとこの気持ちは、一億円あっても手に入りやしない。二千円だけが俺にくれる、大切な宝物だ。
●作者コメント
 イボヂーと名乗らせて頂きます。

 実体験をもとに書きました。
 すいません嘘です。

 些細な感想でも泣いて喜びます。


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●感想
影影丸さんの意見 +20点
 拝読いたしました、影影丸と申します。

 正直言って、泣けてしまいました。
 可哀そうすぎるよ、二千円札。
 ノリで作られたばかりに、熱が冷めたらいらない子扱い(涙)。
 首里城が描かれているだけに沖縄では二千円札推進が叫ばれているそうですが……
 二千円の容姿などは、紫式部をイメージしたのでしょうか。

 二千円が掃除や洗濯などをしてくれているようですが、それを示す描写が他にもあればもっと良かったと思います。
 では。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 影影丸さま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 二千円札は本当に可哀想な子だと思います。いったい何のために作られたのか、無学な私にはさっぱり分かりません。誰からも必要とされず、それどころか忘れ去られた二千円札。その不憫さが私の心を引き付けて止みません。だって不憫な子を愛おしく思ってしまうのは、これはもう生物としての本能ではないでしょうか。

 沖縄が二千円札推進を行っているというのは、拙作を書く際にちょっと二千円札のことを調べて知りました。そのときの私はとても温かな気持ちになりました。応援してくれている人がいるなんて、二千円札もまだまだ捨てたもんじゃないですね。少なくとも、誰からも応援されていない私よりは……。

 二千円の容姿につきましては、ご推察のとおり紫式部さんのイメージを拝借しております。紫色の着物ってところですね。個人的にはもっともっと二千円の愛らしさをねっとりと描写したかったのですが、文字制限に敗れました。一生懸命にお掃除や洗濯をしてくれてる二千円の日常を、これでもかと描きたかったのですが、私では無理だったのです。無念です。

 最後に改めまして、とても参考になるご意見をありがとうございました。


音葉くらげさんの意見 +20点
 急激な気温の変化のせいか今日はトイレにこもりきり、お尻が痛いのですよイボヂーさん。
 初めまして、音葉くらげというものです。

 どうせ、着物着せるなら口調は丁寧語が良かったなあと思うくらげです。がっちがちのでなくゆるい感じで。
>「いただきます、していいか?」
 これが想像していた二千円像と違ったんですよね。勝手な妄想。

 最後の逡巡がかわいすぎる。何この反則技。主人公気づけよ。このいじらしさに。
 通して二千円がかわいかったです、以上。お札に萌える日がくるとは思わなかった。
 
 では、駄文でおじゃましました。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 音葉くらげさま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 くらげさまはお尻が痛いとのこと。奇遇ですね。私もかなり追い詰められています。気温の変化関係なしに、私のお知りはギリギリです。というかアウトです。脱肛しているせいか、なんか出ちゃいけない液体がもれてきます。痛いし、不快だし、困ったものです。

 丁寧語がよいとのご意見、なるほどと頷かせて頂きます。確かに丁寧語の女の子は可愛いです。普通の女の子でも可愛いのに、そこに丁寧語が加われば鬼に金棒です。

>「いただきます、していいか?

 この一文なんか、拙作の中で最も悩んだ箇所といっても過言ではありません。愛すべき二千円、その台詞回しをいかにするか、私は悩み苦しみました。二千円からのおねだり、これは個人的には最も重要なシーンだったのです。
 くらげさまの言われるように、敬語的なおねだりも考えました。しかし、結果的に私はお子様的な片言めいたおねだりを採用しました。果たしてそれはなぜか? 
 正直なところ、私にも分かりません。なんだかビビっときたんです。その当時の私は、当時といっても一週間も経たないのですが、なんだか片言にビビっときたのです。でも今はですね、

>「いただきます、してもいい?」

 という甘えるようなおねだり(当然上目遣い)にビビっときています。でもやっぱり片言も好きですし、もちろん敬語も趣深いですし、本当におねだりってやつは奥が深いです。いったいどうすればいいんでしょうか……。

 お尻の件もそおうですが、最後の二千円の逡巡を気に入ってくれているあたり、くらげさまとは何かと気が合いますね。私もあそこはお気に入りです。想像すると悶えます。うひひと笑います。自画自賛ですいません。

 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございまいした。


工事中さんの意見 +30点
 イボヂーさま、失礼いたします。工事中と申します。
 今回の作品、拝読させて頂きました。

 では早速ですが、今作の感想を書かせて頂きます。

 まず何よりも、面白かったです。楽しませて頂きました。ありがとうございます。

 いやいやいや、楽しかったですよ~。

 二千円、描写があまり無いけどかわいい~。とにかくキャラがかわいくて好かったです。
 そして彼女に関わる語り部くんも好いです。オムレツに文字を書いてあげた部分では、「好しっ!」と握り拳を作っちゃいました。
 いや~、好い。

 今作は、不条理シュール系ほのぼのコメディ、のようなノリですので、好みは分かれるかもしれませんが、私は好きでしたし面白かったです。

 以上を持ちまして、感想を終わらせて頂きます。
 好き勝手に書かせて頂き、失礼致しました。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 工事中さま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 二千円のキャラを気に入ってくれたようで、私としては何より嬉しく思います。二千円という不憫な存在のもつイメージに乗っからせてもらいました。不憫な女の子が可愛いのは、全人類に共通する真理かと思います。

 主人公もよかったと評価していただけ、私の喜びが止まりません。彼はただ二千円をお祝いするためだけに存在する男なのです。不憫な二千円には彼みたいな男がひとりは必要なんです。

 不条理シュール系ほのぼのコメディ、我ながら拙作はいったいどういうジャンルの作品なのか、よく理解できていませんでしたが、工事中さまのおかげで分かりました。そうなんですね、不条理シュール系ほのぼのコメディだったんですね。二千円のことしか考えていませんでしたから、全く気付いておりませんでした。勉強になりました。ありがとうございます。


 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございました。


かずらさんの意見 +10点
 十歳の幼女、いえ、幼女と言うには年を取り過ぎてますね。

 しかし、ネーミングセンスのない主人公です。
 二千円札だから二千円。
 まるで柴犬に柴と名付けているようなもんですね。

>いつもは飼い主にぶん殴られた子犬のような顔をしているが(以下略)

 これはどっちの方がマシなのでしょう。
 段階として、ぶん殴られる<捨てられる<拾われる、ですよね。
 なんかイメージがわきません。
 同じ犬を関連付けるなら、この段階もしっかり踏んで欲しかったです。
 でも、二千円のテンションの低さがよく出てると思います。

>効果音はガビーンだ。
 ここは犬じゃないんですね。残念です。

 一億と二千円だったら、私はきっと一億を選ぶことでしょう。
 ええ、どうせ穢れてますよ、ふんっだ。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 かずらさま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 誰でもいいから同居したい。ひとりは寂しいです。寂しすぎます。

 ネーミングセンスがないのは主人公ではなく私です。ごめんなさい、すいません、許してください。
 二千円の名前は難しい問題ですね。彼女に相応しいラブリーキュートなお名前が私には思いつかず、そのまま二千円でいったほうが冒頭のインパクトもあるかなと、ついそのまんまのネーミングで強行しちゃいました。

 子犬関連の描写は、完全に思いつきで書きました。私のセンスを発揮してしまいました。そして失敗しました。お恥ずかしい限りです。失敗しちゃった、てへっ、ってやつにございます。

 一億円と二千円だったら、私はガチで二千円を選ぶかもしれません。お金より誰かの温もりがほしい、できれば女の子の温もりがほしい。そう切実に感じる私は、追い詰められているのかもしれません。

 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございました。


うろちさんの意見 +30点
 こんにちわ、うろちと申します。
 「ミレニアム生まれのあの子はプライスレス」、拝読させて頂きました。

 とりあえず、二千円が可愛かったです。二千円に着目した作者様のセンスがすばらしいなぁと感じました。私も、自分の作品でこんな可愛い子を書いてみたいものです。
 正直、個人的には悪い点は見当たりません。役に立つようなアドバイスができず、すいません(汗) しつこいようですが、二千円があまりにも可愛かったのでこんな中身のない感想を書いてしまいました。申し訳ないです。
 それでは、こんなところで失礼します。
 良い作品をありがとうございました。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 うろちさま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 二千円が可愛かったと評価していただけ、感動の涙が止まりません。拙作は二千円のためだけに存在します。二千円の二千円による二千円のための作品です。なので二千円をダメだと言われたらそれで終わりなので、うろちさまの温かいお言葉に本当に救われます。
 中身のない感想だなんてとんでもない。うろちさまのお言葉で私のテンションは鰻上りにございます。

 それでは最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございまいした。


タダノスケさんの意見 +40点
 拝読させていただきました。

 とても面白かったです。そして、LL作品としての完成度が非常に高いと感じました。
 その点では完全に脱帽です。ケチのつけ所が全く見当たりませんでした。LLに投稿すれば御作が受賞する可能性はかなり高いと思います。

 掌編小説として単純に判断すれば、オチが若干物足りないかなといった感じでした。
 ミレニアムと二千円札を結びつける発想をここまで昇華するとはさずがにカバディ風味な方だけはあります。二千円の少女キャラクター的魅力も上手く表現できていて唸らされました。

 LL作品として、ほぼ完璧な出来だと思いましたので点数はこれで。

 それでは失礼いたします。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 タダノスケさま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 タダノスケさまは、いったい私をどうしようというのですか? そんなに褒められると有頂天になってしまうじゃないです。調子にのって投稿しちゃいますよ。そしてダメで乙女のように傷ついてしまいますよ。私の心は思春期の少年少女より繊細なのです。

 オチが若干物足りないとのご指摘、うむむと唸らされました。拙作のオチは確かに鮮やかさに欠けます。というかそもそも私は鮮やかなオチを描けたことがありません。今後はオチにも挑戦したく思います。

 ミレニアムと二千円を結ぶ発想ですが、最初はもっとカバディ的な構想でした。二千円が一万円に勝負を挑み、あとはカバディ的にとりあえず熱くさせようと思っていました。
 でも失敗しました。てんで失敗しました。我ながら物凄い出来になってしまいました。
 こりゃダメかなと思っていたんですが、そのとき私は不意に気付いたんです。二千円の愛おしさに。それはまるで、家族のような存在に幼馴染の女の子に異性を感じたような、そんな劇的な変化でした。そうです。私は二千円に恋していたんです。
 後はあっという間でした。恋の情熱に導かれるがまま、私は拙作を書き上げたのです。二千円のキャラが魅力的になっていたのだとしたら、それはきっと恋の力でしょうね。

 それでは最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございました。


冬野まゆさんの意見 +20点
 導入の引きはかなりぐいぐい来ました。
 三角座りする二千円ってなんだ? と思わせて引き込む文章にできていると思います。

 わたしも二千円好物です。
 擬人化されたお札の心境や、ラノベライクな性格も萌えました。

 具体的に言うと、三角座りはかなり萌えポイント高いです。
 あと、いうなれば現代風の服装をさせてあげても良かったかもしれません。

 着せかえって萌えますよね?
 それではこの辺で。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 冬野まゆさま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 頭部の引き込みを評価していただけ、私のニヤニヤ笑いが止まりません。二千円なら三角座り。私は三角座りして落ち込んでいる女の子を応援します。

 現代風の服装については、まったくもって納得です。二千円には可愛い洋服を着せてあげたいと、私もそう思います。ならなぜ着物かというと、自分のお洋服センスに自信がなかったからです。なのでつい、紫式部先生のイメージを拝借し、逃げちゃいました。無難な選択肢にすがってしまいました。お恥ずかしい限り。
 冬野さまの言われるように、着せ替えは最高です。二千円に服を買ってあげる話を妄想すると、私が救われます。ありがとうございます。

 それでは最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございました。


茶渡詠爾さんの意見 +30点
 なんだこれは!この世でもっともアイディアの勝利なるものの片鱗を垣間見た気がするぜ……ッ!

 どうも、玖乃で……まちがえた、改名して茶渡詠爾です。さどえいじと呼んでください。お久しぶりです!
 御作を箇条書きで語ります。

・二千円かわいい。
・完成度高い。
・アイディアの勝利。
・お題に合ってる。

 では、続けて御作を過剰書きで語ります。

・二千円パネェ!!
・完成度パネェ!!
・アイディアパネェ!
・お題パ(ry

 二千円の擬人化ですが、たしかにあいつもミレニアムベビーです。僕の部屋にも一枚眠っていますので、そろそろ凝り固まって九十九神になるんじゃなかろうか。十年生きた猫が妖怪になるみたく。
 それにしては十年ぽっちで着物とはなかなか奥ゆかしい……紫式部からのオマージュだというのだと思いますが人間の少女でよかったです。奇をてらって首里城部屋のスミに建立とかじゃなくてよかったです。いや、それも興味はありますが……w

 完成度は非常に高く、二千円超かわいいのはゴチです。オムライスを食べるだけの話だと思われるかもしれませんが、ミレニアムの憂うつ(起)→ミレニアムをなだめる(承)→オムライス・おあずけ(転)→やっぴー(結)とたいへんおさまりのよい作品構成で掌編として申し分ありません。むしろあまりストーリーを懲りすぎるとかえってサラリとした読感をそこなうかもしれません。イボヂーさんのバランス感覚のよさが現れた結果ではないでしょうか。
 電撃LL期待しております!

 以上ですw
 ほんのりとした作品をありがとうございました。では!


イボヂーさんの返信(作者レス)
 茶渡詠爾さま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 玖乃さまはお名前を変えられたのですね。心境の変化というやつでしょうか。私も血まみれイボヂーに名前を変えようかなと思っています。出血って本当にテンション下がりますね。

 アイディアの勝利、拙作はそれに尽きると思います。私が想像していた以上に拙作が評価されているのは、これはまさしく二千円のおかげだと思います。アイディア、そして二千円への愛情で拙作は構成されております。

 茶渡さまは二千円札をお持ちなんですか。それはとても幸運なことです。きっと女の子になってくれるはずです。私は二千円札を持っておりませんが。それでも目をつむれば女の子になった二千円が見えます。もしかすると病気かもしれません。
 首里城のアイディアは素晴らしいと思います。二千円は落ち込みすぎると首里城になっちゃうの、ときたら中々面白そうな気がします。今後、二千円に挑戦することがあれば、何の気兼ねもなく首里城チェンジを使わせてもらいます。

 拙作は二千円がオムライスを食べるだけの話です。というか二千円が出てくるだけの話で、ストーリーに意味とか全くありません。そもそも私がストーリーにあんまり興味ありません。興味があるのは二千円だけです。二千円のことしか見ていませんから、もしストーリー構成が上手くっていたとしたら、それは二千円への恋の力が成し遂げた奇跡です。やったね!

 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございました。


馬やんさんの意見 +30点
 はじめまして、通りすがりの馬やんと申します。

 今朝読ませていただいたのですが、2000字でこの完成度はねェだろ……!と思わず我が目を疑ってしまいました。
 殊に、つい最近「2000文字で面白さを求めるのは酷か」と言ったようなことを考えたり悩んだりしていたところなので、この面白さには本当にびっくりしています。

 最初は「二千円って……二千円札だよな、ミレニアムだし」と読んでいて、お札が三角座り=お札が三角に折られた状態を想像していたのですが、途中からどうも女の子っぽい描写がなされていてどういうことなの……と混乱しかけたところに、おや付喪神(笑)かと。上手かったですねw

 他愛のないお話に思えるのですが、掌はこれで十分でしょう(笑)
 読後はほんわかしていい気分になれました。
 もし電撃LLに出されるのだとしたら、御作には私も是非優勝してほしいと願わずにはいられません(笑)

 特にこうだというところもないので感想は書こうかどうしようか迷ったのですが、まあ、完成されているものを無理に貶めることもなかろうと思いますし、面白いの一言で作者がどれだけ頑張れるかは書いている身としてもよくわかりますので、素直に点数だけ放り込ませていただきますね。

 あ、ひとつだけ提案なのですが、タイトルが少し語呂が悪い気がしたので、「ミレニアム生まれのあの子、プライスレス」にしてみてはどうかと思いました。
 これならみなさん耳に馴染んだテンポですから、語呂の悪さも解消できると思います。

 以上、面白かったです。それでは^^


イボヂーさんの返信(作者レス)
 馬やんさま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 困りました。馬やんさまに褒められて、パソコン画面に映る私の顔がとても気持ち悪い仕上がりになっています。ニヤニヤ笑いが止まりません。
 完成度が高いと評価していただけ恐縮の極みにございます。私が拙作に求めていたのは二千円のことだけなので、作品全体が上手くいっていたとすれば、それは二千円のおかげです。ありがとう二千円、愛しているよ二千円。

 二千円の三角座りにつきましては、文章だけの小説だからこそ出てくる面白さかと思います。問題はこの面白さが計算で出たのではなく、二千円に対する妄想から生まれた偶然の産物ということですね。それで上手いこといっているのは、やはり二千円のおかげなのでしょう。

 我ながら拙作は本当に他愛のない話です。あるのは二千円への愛だけです。愛の情熱だけで書き上げました。
 そんな愛情だけの作品に、面白いとの温かな感想をいただけ、本当に励みになります。おかげでこれからもガンガン妄想に努めていく決心がつきました。ありがとうございます。

 果たして拙作を投稿して、実際に評価されるか否か、それは私には分かりません。でも皆さんに褒められたので、調子にのって投稿してみようかと思います。そのときは、まるで最初からそうであったかのように「ミレニアム生まれのあの子、プライスレス」で勝負しようと思いますので、よろしくお願いします。

 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございまいした。


無為身さんの意見 +20点
 無為身と申します

 まずは一言、金に困って使ってごめんなさい(いや、使って良かったんだっけ?)
 見事な発想です、既に人物が描かれているものの人化とは、想像の埒外でした。
 人化した理由が少し気になるところではありますが、掌編でそこまでを求めるのはいささか無茶ですね、自重します。
 最後に、容姿がまんま紫式部だと、正直可愛いとかな……
 すいません、はっちゃけすぎました。

 面白かったです。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 無為身さま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。
 
 なんと、二千円を使ってしまわれたと? それはよいことをされましたね、二千円も喜んでいることでしょう。
 どうでもいいことかもしれませんが、使うって響き、なんだかムラムラきませんか。「あのね、私って使われるの初めてだから、やさしくして……」とか言ってくれる二千円を、ひとりで妄想して悦に入る私がいます。

 二千円が人になった理由ですが、そんなものはありません。理由なんてどうでもいいんです、そこに二千円がいること、大事なのはそれだけではないでしょうか。だから人になった理由は気にしないでください。お願いします。

 二千円の容姿につきましては、幸の薄そうな、いつも無表情だけど、でも笑顔が飛び切り可愛い女の子です。抽象的ですいません。たぶん、あんまり紫式部先生には似ていないのかもしれません。

 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございまいした。


ななななさんの意見 +20点
 拝読したので感想を書かせていただきます。

 起。家に二千円。
 承。二千円との生活。
 転。『おめでとう』
 結。この気持ちはプライスレス。
 こんな感じでしょうか?

【シナリオ・展開】
 シナリオ自体は、根幹を抜き出せばホームドラマの王道を踏襲した感じでしょうか。雨降って地固まる、的な。
 出だしが無駄に(褒めてます)衝撃的です。部屋の片隅で三角座りする二千円。シュールすぎる。個人的にはこのまま女の子と明示せずに結末まで突き進んでほしかったです。冒頭の時点ではお札に紐みたいな手足がついた姿(設定上は女の子)を想像していたので、シャツを引っ張るだけでも笑いがこみあげてきました。現在の萌えの隆盛を思えば、女の子と描写しといたほうが多くの読者に好まれそうですけど。
 全体に漂うシュールとほのぼのの割合が素敵です。

【人物】
 俺。大学生。今年から一人暮らしをはじめたらしい。
 二千円。女の子。付喪神的な何か。紫色の着物姿で、見た目は十歳児。ネガティブ一直線。

 主人公はまあ、どうでもいいとして。
 二千円札の絵柄が守礼門なので、沖縄っぽい容姿が良いかなと思ったのですがそういや裏面は紫式部でしたね。そっちか。存在さえ忘れていた二千円が題材になっている時点で、その発想力に脱帽いたしました。よく思いつくなー。

【設定】
 えーと……。二千円の誕生日って七月十九日らしいですよ。
 特に言えることがありません……。

 あ!

>「……この仕打ち。ちゃんとお掃除やお洗濯もしたのに、それなのにこの仕打ち」

 もとは紙ですけど、いいんでしょうか……。いや、ツッコミどころがないので思いついたことを言ってるだけですけど。まったく致命的ではないです。むしろシュールさが助長されてます。面白いです。

【文体】
 二千円についての比喩を子犬シリーズで固めているのですが、同じ系統で固めるなら金銭関係・お札関係が良いかも、と思いました。「財布を落としたことに気付いたような顔」とか「雨の日に道路にへばりつくお札のように打ちひしがれて」とか。いや思いつきですけど。そしてお札シリーズはボロさ以外に表現できそうにないですね。

 以下、細かい指摘です。適当にスルーしてください。

>これまた根を持たれちまう。

「根を」→「根に」が正しいみたいです。

>それはあっという間に完成した。

 個人的な意見になりますが(そりゃ全体的にそうなんですが)、ここは削ったほうが良いかなと思いました。この後の流れは割と読めるので、早く先に進めろよ、という気分になるからです。これの前の長めに二千円を描写する部分は良いのですが、それは二千円が可愛いからであって、オムライスに文字を書く主人公は別に可愛くないです。

 以上です。
 紫式部相手に光源氏計画なわけですね。わかります。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 なななさま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 拙作のシナリオですが、本当に単純明快極まりないです。これは私がそもそもシナリオ力に欠けるのと、力の全てを二千円に注いでいたことが原因かと思います。二千円のことしか考えていませんでした。お恥ずかしい限り。

 出だしについては、我ながら上手い具合にいったかなと思っておりましたので、評価していただけ嬉しく思います。あと二千円がリアルに女の子になるのは、私の趣味です。女の子との度居を妄想しないと、生きていくのがつらいんです。許してください。

 二千円の容姿ですが、紫式部先生のイメージを拝借するのが無難だし、説明が簡単かなと思ってそうしました。
 しかし、ななななさまの意見を見て考えが変わりました。沖縄っぽい容姿、大いにありですね。あの沖縄の華やかな民族衣装を、暗い表情で着こなしている二千円を妄想すると、私がどうにかなってしまいそうです。

 二千円についての比喩を金銭関係で固めてはとのアイディア、非常に面白そうだと思います。私の琴線に触れましたよ。問題があるとすれば、私が比喩を思いつかないということですね。精進したく思います。

 根を持たれる、については普通に知りませんでした。勉強になりました。ありがとうございます。

 それはあっという間に完成した、という一文につきましては、なんというのでしょうか、非常に感覚的なのですが、私のセンスが挿入を促したのです。そして失敗したのです。やっちゃったぜ!

 ちなみにですが、私は光源氏計画には賛成できません。紫式部先生のセンスは素晴らしいと思うのですが、幼女を自分好みに育てようなんて、そんなの傲慢というものです。幼女に育てられてこその男子ではないでしょうか?
 しかし、しかしですよ。幼女が自分の胸の小さいことを悩んで、「やっぱり男の人は胸が大きいほうが好きなのかなぁ」とか涙目になって、私のことを上目遣いに見ながら「お兄ちゃんも大きい胸の方が好きですか?」とか聞いてきて、本当は全然そんなことないんだけど、悪戯心で大きいのが好きだよと答えたら、幼女が「揉んだら大きくなるんだよね? お兄ちゃん好みの大きさに育てて……」とか言ってきたとしたら、私は……!


 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございまいした。


03さんの意見 +40点
 拝読させていただきました。

 高得点評価に惹かれて読んでみましたが、完成度高すぎです。
 2000円札擬人化なんて反則です。独創的過ぎです。嫁にしたいです。

 しかし、1点だけ個人的に気になる表現がありました。

>このまま食わせてやりたい気もしたが、まだオムライスの仕上げが残っていた。
「ちょっと待てよ」
 すでにスプーンを右手にスタンバイしている二千円が、信じられないという様子で目を丸くした。効果音はガビーンだ。


 なんとなくこの部分が読みづらく、テンポよく読んでいたのに止まってしまいました。
 「効果音はガビーンだ」という表現が何かつっかかるような気がします。

 とはいえ、個人的には殿堂入りすべき作品だと思いますので、協力させていただきます。

 以上、失礼いたしました。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 03さま、拙作に目を通したばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 二千円のことを気に入ってくださったそうで、恐縮の極みにございます。ただまことに申し訳ないのですが、二千円を嫁にやることは出来ません。

 効果音はガビーンだ、につきましては私のセンスが空回りしたものです。センスがなくてすいません。やっちゃいましたでございます。お恥ずかしい限りです。

 殿堂入りすべきとの身に余る評価に、うぬぼれてしまいそうな私がおります。しかしながら、ガビーンとかしてしまうセンスのない私ですから、まだまだ未熟なのは自明のことにございます。今回の幸運に慢心することなく、更なる上達を志して精進したく思います。

 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございまいした。


あさんの意見 +30点
 二千円のロリですか。
 家に帰って知らない幼女がいるって座敷わらしみたいで面白くて怖くて可愛らしかったです。
 丁度ドラえもんが本当に自分の部屋にいたらホラーだよね。
 みたいなのほほんとしていてちょっと恐怖の谷的な自然な不気味さと言いますか、なんとも言えない奇妙さと可愛らしさと不気味さがあり大変おもしろかったです 。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 あさま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 家に帰ったら知らない幼女がいる。それが私の夢です。いつか叶えば嬉しいんですけどね。

 奇妙さと可愛いらしさと不気味さですか。なるほど。私が拙作にこめたのは二千円への愛だけだったのですが、それが結果的によくわからん化学変化を起こして、奇妙さと可愛らしさと不気味さを発生させたのかもしれませんね。とするとつまり、愛は作品を救うということですよね。やっぱり愛が最高です。

 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございまいした。


ジレルさんの意見 +30点
 二千円札がいいキャラです。
 無理にオチをつけずに
 掌編で自然によくまとまっていると思います。
 面白かったです。


イボヂーさんの返信(作者レス)
 ジレルさま、拙作に目を通してくれたばかりか感想まで残してくださったこと、まことに感謝します。

 二千円のことを評価していただけ、感激の涙が止まりません。これで明日も生きていけそうです。

 正直なところ二千円のことしか考えておりませんでしたので、オチとかほとんど意識していませんでした。この自然体がなぜか上手くいったのだと思います。だから拙作が面白かったのだとしたら、それは私の実力ではなく、全て二千円のおかげです。ありがとう二千円。

 最後に改めて、とても参考になるご意見をありがとうございまいした。


ラさんの意見 +40点
 初めまして!
 今更ですけど、読ませてもらったので、感想残しときますね。

 2千円に萌えました。
 
 以上です。
 特に気になったこともないので、素直に称賛だけしておきます。

 殿堂入りおめでとー!
 そーれ、わしょい、こらしょい、どっこらしょい!!

 では、失礼します。ノシ

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