高得点作品掲載所     イボヂーさん 著作  | トップへ戻る | 


とあるバレンタインデーの裏話

 いつもと同じ帰り道だった。
 高校から家まで歩くだけの退屈な時間。コートのポケットに両手をつっこみながら、俺は黙々と歩く。
退屈と寒さを紛らわせてくれるのは、イヤホンから流れる明るい音楽だけ。
 半年前までは、幼馴染の舞子と一緒に歩いていて、あいつのアイドルになりたいという夢を聞いたりし
て、それなりに楽しい時間だった。
「……マジで叶えちまうんだもんな」
 けど舞子は本当に夢を叶えて、アイドルグループの一員として半年前にデビューして、俺たちは幼馴染
からアイドルとそのファンになった。
 寂しいけど仕方ない。それに今日はバレンタインデーで、舞子の所属するグループのライブがある。俺
もそのチケットを手に入れていた。半年ぶりに舞子の顔を直に見られそうだし、さっさと家に帰って出か
ける準備をしよう。
 そう思って歩いていたら、俺は信じられない光景を見た。
 歩く先に舞子がいる。お洒落な白色のコートを羽織った舞子が、当たり前のように立っている。
 すぐに舞子も俺のことに気づいたようで、パッと輝くような笑みを浮かべると、こっちに走りよって来
た。
 呆然と立ち尽くす俺の前までやってくると、舞子は俺の耳からイヤホンを奪い取る。
「久しぶり」
「お前、なんで……?」
 うろたえる俺のことを、舞子はさも可笑しそうに見上げてきた。
「喜びなさいよ、アイドルが会いに来てあげたんだから」
 本物だ。背中まで届く黒髪も、気の強そうな切れ長の目も、半年前と変わっていない。
 なんで舞子がここにいるんだ。ここにいていいはずがない。だって今日は――。
「ライブはどうしたんだ?」
 まだ本番までは時間があるけど、予行練習だって必要なはず。
 俺の問いかけに舞子は、バツの悪そうな笑みを浮かべた。
「なんか疲れてさ。もうやめちゃおっかな……」
「やめるってお前、アイドルになるのが夢だったんだろ?」
「そうだよ。だけど疲れたんだ。がんばっても誰も褒めてくれないし」
 舞子は寂しげにうつむく。半年前、夢が叶ったと笑っていた明るい姿は、そこにはない。
「今日だって、ここに来るまで誰も気づかなかったし。ライブにわたしがいなくても、誰も気づかないか
もしれないね」
 冗談めかした言い方だったが、今にも泣きそうな舞子の顔を見ていると、笑える気分になれなかった。
 たしかに舞子の所属するアイドルグループは、数多くの女の子で構成されており、その中で舞子の人気
は決して高くない。
「昔のほうが楽しかったな。二人で一緒にカラオケに行ったよね。わたしの歌を褒めてくれたでしょ? 
すごく嬉しかったんだよ」
 舞子がすっと顔を上げる。彼女の瞳は涙で潤んでいた。
「戻れるかな、昔みたいに。離れてわかったの、わたしずっと……」
 そこで舞子は恥ずかしそうに口をつぐんだ。
 舞子は黙って俺の返事を待っている。心細そうに俺のことを見上げている姿は愛おしくて、抱きしめた
くなる。
 でも俺は――。
「俺は気づくぜ」
 舞子が不思議そうに小首をかしげた。その仕草が可愛らしくて、また俺の心はぐらつくが、だけどもう
決心したんだ。
「舞子がいなくなったら俺が気づく。俺は舞子の大ファンだ。舞子がアイドルをやめるなんて、俺は嫌だ

 俺は知ってる。舞子が本気で歌が好きなことも、小さなときからアイドルに憧れていたことも、全部知
ってる。
 だから、舞子には夢を諦めてほしくない。
「今度のシングルだって最高だった」
 耳から離れたイヤホンからは、舞子たちのグループの新曲が流れている。軽快なテンポの明るいそれは
、がんばる人たちへの応援ソングだ。
 俺はこの歌に元気づけられた。だから今度は、俺が舞子を応援する。
「舞子、俺はお前が大好きだ。すっとお前を応援してる」
 顔から火が出そうになった。でもそれは舞子も同じみたいで、彼女も顔を林檎みたいに真っ赤にしてい
た。
 俺たち二人は顔を赤くしたまま黙りこくる。重苦しいけど、どこか心地いい沈黙だった。
 しばらくして、不意に舞子が微笑んだ。
「……ねえ、キスしたげよっか」
 頭の中が真っ白になる。大人っぽく濡れた舞子の唇に、俺の視線は釘付けになった。
「目をつむって」
 呪文をかけられたように、俺は舞子の言うとおりに目をつむる。
 そして唇に何かが触れた。その感触は唇にしては、やけに冷たく、そして固くて――。
「あれ?」
 思わず目を開けると、舞子が悪戯っぽく笑っていた。彼女は手にした一口大のチョコを、俺の唇に触れ
させている。
「バレンタインチョコだよ。あーんして」
 言われるがまま口を開いてチョコをほお張った。
「……苦いな」
 舞子が柔らかな笑みを浮かべる。
「お子様だね」
 ほろ苦いビターチョコをかみ締めていると、舞子がくるりと回れ右をした。
「今日のライブ来てよね。待ってるから」
 それだけ言い残して、舞子は力強く歩き出す。やっぱり舞子はアイドルだ。きっとバレンタインライブ
は最高のものになるに違いない。
 だから今日の出来事は、俺と舞子の二人だけが知っている、ライブ前の裏話だ。
●作者コメント
 イボヂーと名乗らせて頂きます。

 実体験をもとに書きました。
 すいません嘘です。

 些細な感想でも泣いて喜びます。


この作品が気に入っていただけましたら『高得点作品掲載所・人気投票』にて、投票と一言感想をお願いします。
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●感想
よしおさんの意見 +20点
 うおっ、イボヂー様お久しぶりです! 早速ご作品を読ませていただいたので感想を残したいと思います。
 途中で妄言を吐き連ねるかもしれませんが何卒よろしくお願いします。

 前作に続いて無理のない作品の締め方が好印象ですね。指摘点が見つかりません。
 「ヒロインがアイドル」という設定はどこぞのなんとかアルバムみたいな美少女ゲームを彷彿とさせるものがあって大変とっつきやすかったです。そこからヒントを得たのではないかというレベルですねw
 キスの代用にチョコを使ったヒロインも好印象ですね。私は脳内でしかこういった経験がないものなのでうらやましい限りです、はい。私の歪みきった顔では平手打ちを喰らうのが相場だと再認識できましたw
 もともとアイドルを目指していただけあって、若干凹み気味だったヒロインも主人公と会話することによって最後は行動的な性格を取り戻したんだなぁ、と感じられました。これがイボヂー様の狙い通りだとしたら大変上手いと思います。


 改めて思いますが自分にはこういった恋愛モノは書けませんですね。途中で主人公が羽目を外してしまい18禁に突入しかねません。改めてイボヂー様のクオリティに乾杯しておきましょうw

 突っ込む箇所もなく掌編としては大変安定した作品なので感想のみで締めたいと思います。
 点数はこれ以下は付け難いということで。
 それでは今後とも良い作品を期待しております!


カナイさんの意見 +40点
 初めまして、イボヂーさん。カナイと申します。
 拝読いたしましたので感想を書かせていただきます。


 こちらのサイトでは度々ストーリー性を捨ててこういう作品を書かれる方がいらっしゃいますが、この作品はレベルが違います。そう感じました。
 主人公の心が丁寧に描かれていて思わず感情移入してしまいそうです。
 ヒロインもしぐさが可愛くて、何を考えているんだろうと予想して読む楽しさがありました。

 文の一つひとつが選び抜かれている、という感じがありました。
 かなり面白かったです。

 私ごときには欠点が特に見当たりません。良い作品でした。

 それではこの辺で失礼致します。


水守中也さんの意見 +30点
 作品を拝読いたしましたので、感想を残させていただきます。

 コメントを読まずに先に作品から拝読させていただいたので、
 「実体験にもとに書きました」の文に、マジかっ!? と思ってしまいました(笑)

 いやぁ、見事なお話した。
 これが日常と非日常の融合なのだと思います。違和感なく読めました。見習いたいものです。

>すぐに舞子も俺のことに気づいたようで、パッと輝くような笑みを浮かべると、こっちに走りよって来た。
 呆然と立ち尽くす俺の前までやってくると、舞子は俺の耳からイヤホンを奪い取る。


 この光景が目に浮かぶようでした。とても好きで印象的です。

 一人称で描写された主人公の心の動きがとても丁寧で、作品に惹き込まれました。それだけに、ラストのバレンタインチョコの渡し方も、良い意味で予想を裏切られ、心地よい読後感を味わうことができました。このチョコが手作りなのか市販なのかは、こちらの想像で楽しませていただきます(笑)
 
 細かいことで申し訳ございませんが、一つだけ気になった点を指摘させていただきます。

>半年ぶりに舞子の顔を直に見られそうだし、

 一回ぐらいはライブに行ったのではと思いました。意固地になって見に行っていないわけでもなさそうですし。
 もし初めて見に行くのなら、どうして今日なのか、説明があるとより良かった気がします。


 それでは。
 とても楽しめて勉強にもなりました。
 また作品を楽しみにしております。失礼します。


猫らぼさんの意見 +30点
 うわぁ、本当にお上手で……。
 自己紹介前にすみません。猫らぼです。

 拝読いたしましたので、感想を残していきます。
 つたない感想になりますので、適当に取捨選択をお願いしますm(_ _)m

 無駄な描写がほとんど見当たりません。
 人物の心情を細かく描写することで雰囲気を作り上げていく作品は沢山見ておりますが、ここまでシャープで簡潔な描写にとどめても、こんなにも奇麗で爽快なストーリーが描けるのですね。

 時間の飛びがないので当然かもしれませんが、印象付けるために改行を無暗に使わないところに技量の高さがうかがえました。
 さらに、ダッシュの使いどころが見事で、本来の役割をしっかりと果たしていると思います。

 以下、無理やり探した気になった部分です(汗

●疲れた理由
>「そうだよ。だけど疲れたんだ。がんばっても誰も褒めてくれないし」

 彼女は褒めてもらうためにアイドルになる夢を叶えたのではないと思います。短いストーリーでは、一つ一つのセリフから様々な情報を読み取らせなければならないと考えると、このセリフはどうでしょう。
 褒めてもらうためにアイドルになったの? 疲れた本当の理由ってそこ?
 と思ってしまいました。
 あとのセリフに「褒めてくれてうれしかった」と漏らしている部分がありますが、このための伏線であることはわかります。
 しかし、どちらかというと「楽しいか楽しくないか」の方が彼女にとって本当に重要な理由である気がしました。


●視界
> 俺たち二人は顔を赤くしたまま黙りこくる。重苦しいけど、どこか心地いい沈黙だった。
> しばらくして、不意に舞子が微笑んだ。

 黙りこくっている場面ですが、お互いに顔を見れないような状況だったと想像しました。
 にもかかわらず、舞子が微笑んだことを認識している。ということは、主人公はずっと舞子を見ていたのでしょうか。
 「不意に舞子の口元が緩むのが見えた」のような感じで、直視はしていなかったにせよ視界には捉えていた……くらいにとどめた描写でも良かったように感じます。


 いや、苦しいですね(汗
 気になった部分とはいえ、大変主観的な、しかも読解力のなさを露呈するようなものになってしまい、申し訳ないです><

 非常に読みやすく、完成度にいたっても前作と同等な印象を受けました。
 正直、ネタとしては普通だと思うのですが、なぜこんなにも読後感が違うのでしょう……。
 主人公の舞子に対する想いがストレートに伝わってきますし、地の文で常に心情の波が表わされているので飽きることもありません。

 面白い、とは違うと思いますが、大変涼やかな気分にさせていただきました。


 次回作が投稿された際は、また読ませていただきます!


紀伊風庵さんの意見 +30点
 紀伊風庵と申します。作品、拝読いたしました。
 早速感想を。

 このお題、私にとってはミレニアム以上の難題だと感じていますので、王道的な捌き方を見せて頂いたようで、勝手に感謝しております。
 文章についても特に、仕草というか、行動によって表現される部分がとても魅力的。セリフに頼りがちの私としては羨望を覚えます。

>呆然と立ち尽くす俺の前までやってくると、舞子は俺の耳からイヤホンを奪い取る。

 ここなんか最高です。二人の親密さがイヤホンを奪うというアクションに集約されている。

 ただ……細かい部分で色々、気になる点もありました。

>半年前までは、幼馴染の舞子と一緒に歩いていて、あいつのアイドルになりたいという夢を聞いたりして、それなりに楽しい時間だった。

>けど舞子は本当に夢を叶えて、アイドルグループの一員として半年前にデビューして、俺たちは幼馴染からアイドルとそのファンになった。


 どちらも「半年前」ですね。
 私はアイドルの実態は全く知りませんが、デビューする寸前まで一般高校生として生活していられるものなんでしょうか?
 「デビュー」の意味にもよるかと思いますが、デビュー前に練習だの何だので忙しくなったりはしないんでしょうか。
 普通の生活とデビューとの間にタイムラグがないというのが自然なのかどうなのか、判断に迷うものの、ちょっと引っかかりました。

>「喜びなさいよ、アイドルが会いに来てあげたんだから」

 これ、アイドルやめようとしている人間が言いますかね?
 アイドルである自分に対して否定的な気持ちからは、なかなか出てきづらい言葉じゃないかと思うんですが。
 あるいはその辺り、本人の中の迷いや葛藤を表しているのかも知れず、一概には言えないようにも思いますが、ここも気になった点です。

>「戻れるかな、昔みたいに。離れてわかったの、わたしずっと……」

 これはもう完全に私の趣味なんですが、「舞子、ここまで言っちゃうのか……」と。
 主人公の告白は、できれば舞子に対する返事としてではなく、より積極的なものであってほしいという気持ちが私にはありまして。
 「わたしずっと……」まで先に言われちゃうと、言われたからこっちも言ったみたいで、若干なんというか、価値が下がるような。
 舞子の気持ちは、作品的には最後のチョコのところで十分表現されていますし、言わずもがなじゃないかなあ、と思いました。

>「今度のシングルだって最高だった」

 この評価は微妙。
 グループとしての仕事であって、舞子の成果とは言い切れないものではないでしょうか。歌詞や曲はさらに別人の仕事でしょうし。
 果たしてこれで、おそらくグループ内での存在感や貢献度を気にしているであろう舞子は励まされてくれるのかと。
 むしろ「お前の声はこの中からでも聞き分けられる」とかそういうアピールをしたほうが、ここではより舞子の心に響くんじゃないか? なんて思ったり。

 ええと、なんかえらそうにくどくど述べましたが、私はとても人生経験乏しいので、意見の信憑性には疑問がつきます。話半分に聞いてください。

 ともあれ、ラブ感を楽しめる作品でした。
 今後も頑張ってください!


ななななさんの意見 +20点
 拝読したので感想を書かせていただきます。

 起。帰路ひとり。
 承。舞子登場。
 転。俺は舞子の大ファンだ。
 結。今日のライブ来てよね。
 こんな感じでしょうか? ちなみにコレ、単に私が起承転結での区分に慣れてるから勝手にやってるだけで、「こういう風に作ったでしょ?」的な意図は一切ないです。「こんな風に解釈しましたよ」くらいの意味合いです。

【展開】
 恋愛物と見せかけて、どちらかというと青春物ですね。夢を追っかける幼なじみを応援すべく、自分の恋心を押し込める? みたいな。ビターチョコに似たほろ苦い味わいでございました。嘘です。甘いよ! 充分甘いよ! 結局恋心も押し込めてないし! 「裏話」らしさがきっちり出ていて、裏話って何やねん状態の私としては羨ましい限りです。ってか、バレンタインデーって言われると最早チョコレートが空飛ぶ話しか思いつきません。
 雰囲気もラノベっぽいし、短い中で綺麗にまとまっているし、褒めるとこはいくらでもあるのですが、私は褒め下手なのでその辺は他の人にお任せしようと思います。
 ってことで、重箱の隅つつきを。
 舞子が持ってきたのがビターチョコ、というのが若干気になりました。物語のオチとしては素敵な感じになっているのですが、彼女の心情とはちょっと噛み合わないかなと思うのです。彼女はアイドルの世界に疲れて、おそらくは主人公に甘えに来ているわけですよね。バレンタインチョコを持ってきたのも、彼への恋心に逃避しているのだと思います。反動なわけですから、必要以上に甘々な行動に出てもおかしくないくらいです。「現実ってほろ苦いよね」的なビターチョコというのは、ちょっと変かもしれません。

【人物】
 話者。俺。主人公。名前は出てなかったと思うのですが、見逃したかも。
 舞子。アイドル。夢を叶えたけれど、(多分)想像と現実のギャップに、疲れてしまった。

 こうして見るとキャラクターはそんなに複雑ではないのですが、キャラクターというより、人としての息遣いが感じられました。すげえ。
 主人公は特筆すべきこともないので置いといて。
 舞子さん、歌うのが好きでアイドルになったという割に、相当数いるグループの中のひとりというのはちょっと違うような気がしました。主人公がシングルを買っていても、それでは舞子さんの歌声が判別できないのではないでしょうか。だからこそ舞子さんが「疲れちゃった」のかもしれませんけれど。でも、このまま頑張っていても舞子さんの目指す方向性には行けないような気がして、最後、ちょっと素直に応援できませんでした。

【設定】
 幼なじみが(友人が、でも可)夢を叶えて遠くに行ってしまう、という道具立ては青春物だとすごく効果的だなあということに最近気付きまして、あ、やっぱりコレ青春物なのかと再確認する次第であります。いや、実際のところどちらなのかはわかりませんし、ってか、両方なのでしょうけれど。もうお前ら結婚しちゃえよ。
 ……で、これは何の指摘なんですかね? 道具立て巧いよ! ってことです。きっとそうです。

【文体】
 特に、言うことが、ありません!
 設定の項でも困っているのですが、文体の項でも困るようになってきた今日この頃です。かつての私はどうやっていたんだろう? どうでもいいけど項と頃って似てますね。どうでもいい。
 ラノベ風味の文体がひたすら羨ましいです。なーんか、私の文章は硬いのですよねー。いや違う。自分語りがしたいわけではなくて。えーと、書くことがやっぱりないので諦めます。読みやすかったです。

 以上です。
 これまたどうでもいいのですが、イボヂー様のせいで(主に【ギリエロ】のアレへの感想のせいで)ラ研に対する何かを諦めましたよ。どーしてくれる。


03さんの意見 +30点
 拝読いたしました。

 まず最初に、私が好きなタイプの話なので無条件で+10点です。ですので、純粋な作品としての評価は-10点して見てください。
 文章のテンポが秀逸だと思います。「おおっ、上手いな」と思わせるような表現があるわけではないのですが、シンプルな表現で描写しているのでとても読みやすかったです。
 登場人物の心理描写も見事です。2人の様子が頭に浮かんでくるようでした。

 正直、文句の付けようがあまりないのですが強いてあげればタイトルぐらいですかね。これだけ綺麗な話ですからもっとクサいタイトルでも良いかなと思います。

 以上、失礼いたしました。


影影丸さんの意見 +30点
 こんばんは、影影丸です。
 お久しぶりですイボヂー様。
 早速感想をば。

 恋愛物がそれほど好きでない私でも、楽しく読むことのできる作品でした。
 そしてバレンタインデーの裏話とは……他の方々も仰るように、また難しいテーマですね。
 そんな中で本当に無駄が無く、物足りなさもなく、王道的な展開を楽しめました。

 惜しいのは紀伊風庵様が挙げた、
>「今度のシングルだって最高だった」
 この部分。
 イボヂー様の仰るヒューヒューな展開を是非見たかったです。
 勿論、字数の制約で相当お悩みになったことはお察しします。

 それと同じく紀伊風庵様が仰った、
>「喜びなさいよ、アイドルが会いに来てあげたんだから」
 このセリフですが、自嘲的な感じに言っているようにすれば良くなりそうな気がします。

 いろいろと生意気言いました。
 ではこれにて失礼いたします。


いさおMk2さんの意見 +30点
 こんにちは。お久しぶりです、いさおMk2でございます。
 拝読致しましたので、拙いながらも感想を書かせて頂きます。

 もう、相変らず職人芸的な上手さに嫉妬の言葉も出てきません。
 色んな方が指摘されておりますが、本当に無駄な文章がありませんね。
 この字数で、ここまで臨場感が出せるのは凄いと思います。あれだけの描写で、夕日に包まれて甘酸っぱい青春ファイトに勤しむ二人の姿が瞬時に小生の脳裏に浮かび上がりました。ブラボーでございます。
 小生はついつい不必要な描写や小ネタをねじ込んでしまう悪いクセがありますゆえ、大変参考になります。
 甘い甘ぁいビターチョコで締めるラストも爽やかで、読んだ後にほっこりたした気持ちにさせて頂きました。ごちそうさまです。

 あえて気になる所を上げるとするならば、これも既出の意見ですが
>「喜びなさいよ、アイドルが会いに来てあげたんだから」
 の部分、もう少し陰りを付けてみたら更に良くなるのでは、という所位でしょうか。

 それにしても、この主人公のリア充ぷりと言ったらありませんね。全く持って、酷いものです。
 可愛い幼馴染みが居るというだけでも万死に値するというのに……言うのにっ! あああアイドルにまでなっちゃうだとぉっ!?
 彼は爆死した方が良いと思います。

 なんだか纏まらない感想となてしまいましたね。申し訳ありません。
 でも、やっぱり彼は死んだ方が良いと思います。

 乱文、ご容赦を。
 次回作にも期待しております。


ワタイさんの意見 +30点
 こんばんは、ワタイといいます。
 掌編では読むだけで感想書かないことの多いレアキャラな私が何をしに来たのかといえば、

>「舞子、俺はお前が大好きだ。すっとお前を応援してる」

 決め台詞で誤字って! 誤字って!! 誰かツッコンで! 「すっと」って力抜けるから! ずっこけるから! せっかくいいシーンなのに吹いたじゃないか!
 ……と、いうことが指摘したかっただけですごめんなさい。

 が、それだけ言い置いて逃げるのもあまりにアレなので、感想らしきものも残していきます。が、本題はすでに言い終えてしまったのでスルーして下さっても構いません(何。
 というわけで、改めて。


 拝読させていただきました。

 序盤は、スピーディかつ無理のない情報提示に驚かされました。書き出し自体はありがちな感があるのですが、文章にリズムがあって読みやすいので、ついつい先に読み進めていってしまいました。

>「……マジで叶えちまうんだもんな」

 この一言、情報提示ということだけみれば直後に説明もありますし、必要なわけではないのですが、1.地の文ばかりになってパッと見たときに読者が引いてしまうのを避ける 2.主人公が舞子のことを大事に思っていたこと、今も大事だけれど少し寂しくも感じていることを暗に示す といったプラスの効果があるように思えて、うまいと感じました。

 中盤、舞子に会って。さりげない動作の描写からも、二人の親密さが表れていてよかったです。外見描写も違和感なくさらりと入れていて、うまいなと感じました。旧知の仲である相手の外見描写を一人称で行うとき、どうしても奇妙な感じ、説明のために無理やり用意されているような感じを受けてしまうことが往々にしてあるのですが、御作にはそんなわざとらしさがなかったものですから。
 そして舞子の悩み。この辺りも簡潔にさくさく進んでいくのですが、舞子の甘えには少し「うーん」と思ってしまうところがありました。ええ、もちろん大変な世界でしょうけれども、予行練習も放り出して弱音を聞いてもらいに来るヒロインって……とか、思ってしまったりするわけです。言っていることがあまりに愚痴っぽく、かわいそうと思うより反感を抱いてしまうのです。もうちょっと舞子の台詞をさりげなくして、でもその裏にある意味を主人公が敏感に察知して……とか、そういう展開なら舞子というキャラクターもヒロインとして受け入れやすいのですが。守られるだけの女の子、ってあんまり好きではないので、構図として気になったかな、と。

 終盤、主人公のかっこよさにしびれました。こういうこと言ってくれる男の子っていいなあ。恥ずかしい台詞をまっすぐ言ってくれるのってよいですよね。主人公が音楽を聴いていたのも、舞子のグループの曲を聴いていたのだという伏線として機能していてよかったです。
 ラストの締めもきれいにまとまっていて、余韻があって読後感もよかったです。
 
 この辺からダメだし→
  ・やっぱりヒロイン好きになれないです。
  ・個々のエピソードはありがちかも。「どこからでもお前を見つけてみせる!」的なものは、少女漫画ではいやというほど登場するエピソードですし……いやまあそのたびにちょっとテンションあがったりするので、王道として良いとは思うのですが。チョコレート→苦いな→お子様、もお約束といえばお約束。

 まあそんな風にダメだししたりしますが、実際読んでいて面白かったです。なんかもう誤字の指摘のためだけに来たはずなのに長々と語ってしまってすみません(汗。

 以上です。
 失礼しました。


メディさんの意見 +10点
 こんにちは。
 「とあるバレンタインの裏話」ってよく見るけどなんなんだろうと検索してみたらここが出てきたので読みました。

 面白かったです。むふふでした。

「「……ねえ、キスしたげよっか」」
 はなんとなく違うと思いました。この子のキャラなのかもだけど、アイドルの私がしてやんよ!みたいな印象。いや、そういう意味なのか。

「「戻れるかな、昔みたいに。離れてわかったの、わたしずっと……」(略) 舞子は黙って俺の返事を待っている。」
 そこで言うこと止めて返事を待つというのも、なんとなく。

「数多くの女の子で構成されており、その中で舞子の人気は決して高くない。」
 アイドルグループ、これは某、いいやこんなこと。

 話がありきたりだという批判は目にするけど、王道はほめ言葉になるんですよね。なんというか、格の違いっていうんですか、そういうものを高得点とともに突き付けられているような感じでした。
 でも、面白かったけど、一番面白かったのは作者コメントと返信でした。

 改めて思ったけど、この感想というのも腕前を示すもんなんだよな。
 なんか見るとこ違うなぁみたいな目で他の人の感想を眺めてました(全部読んでないけど)。僕にはこの作品でなんで高得点が取れるんだ、なんていう気持ちすらある。これはきっとあれだろ、斎藤ゆうきのうまさがわかるかわからないかというアレと似たようなもの思うんだ。
 ななななさんの「どーしてくれる。 」が素晴らしくツボ、この仲の良さというのかなんというのか。
(あと誤字、猫らぼさんが書いてるね)

 というか、そんな仲のよかった友達が、アイドルになったとたん連絡も取らなくなるものなのかな、とか思っちゃったり。そんな経験したことないからわからんけど。してみたいわボケェ

 考えてみれば俺イボジーさんの作品読んだことないもんな。
 どうもはじめまして。
 もっと頑張ろうと思えましたとさ。

 あとノーカットバージョンも見てみたい。どんな文削ったのだろうとか気になる。


AQUAさんの意見 +20点
 こんばんは。アホな濁り水です。
 このたびは勇気を持って、ジレジレ放置プレイに止めの一撃を与えに来ましたよ腐腐。
 もうだいぶ他の皆さんの感想で、良いご意見が出ているようなので、自分からはごく簡単に読後の印象を。

 まず主人公&ヒロインのキャラは、自分が思うラノベの『ギリギリレベル』だと思いました。
 もうちょっとリアリティがあったら、ラノベぢゃない。
 自分もそんなキャラ作りを目指してたので、参考になりました。
 イメージ的には、半分の月が~に近いです。(あの話のキャラはあまり好みではありませんが。<ワガママ過ぎて)

 で、ストーリーがやや物足りず。
 イボヂーさんならでは、というオリジナリティを期待してしまったのだと思います。
 しかし、電撃さんに限らず、ラノベとして好まれるのはこんな王道話なのかなーとも……。
 ぜひ次回作では、イボヂーさん流の『エロカッコイイ励まし方』で、舞子ちゃんをキリキリマイさせて欲しいところです。(←スルー推奨

 では、簡単ですが失礼いたします。
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