高得点作品掲載所     夜月さん 著作  | トップへ戻る | 


ニュースを申し上げます。

「では、次のニュースです。――今朝、A市B区に流れるC川の河川で、切断された女性の四肢が発見されました」
 夕刻。某幼稚園で行われたイベントについて女キャスターは明るく報じると、それと対して変わらない口調で次のニュースを続けた。
「遺体を発見したのは近所に住む専業主婦五十歳で、今朝の五時ごろ、飼い犬を散歩中に遺体を発見し、警察に通報したとのことです」
 テレビの画面が変わり、髪が紫色のおばさんがモザイク越しに映る。変声されていたが、彼女が興奮しているのは明らかだった。
「あたしもうホント驚きました。土手でジョセフ(飼い犬)と歩いていたら、あの子、いきなり綱を振り切って川原の方へ走って行っちゃったんです。まあ、すぐに戻って来たのでさほど困りませんでしたが、どういうわけか尻尾を振りながら、口に黒いポリ袋をくわえて帰ってきたんです。
 あたしはすぐにそれをジョセフから奪い取ろうとしました。すると何ともまあ嫌な、まるで生ごみを一ヶ月近く放っておいたような悪臭が鼻を刺したんです。あたしはまゆをひそめながらもそれを奪い取りました。その時、ポリ袋からボロッと落ちてきたんです、ヘンな虫をいっぱいまとって灰色に変色した人間の腕が――!」
 再び画面が変わる。今度ばかりはキャスターも重々しげに口を開いた。
「すぐさま県警が駆けつけ、捜査が行われましたが、現場からは四肢以外発見されず、四肢だけがD大病院に送られ、司法解剖が行われました。しかし身元を含め、詳しいことは今のところわかっておりません。
 今後、県警は殺人の方向で捜査を進めていくそうです。
 また本日は元県警捜査一課警部補で、犯罪評論家をしておられるEさんにお越しいただきました。――Eさん、よろしくお願いします」
 髪の毛が薄い蒼顔の老人にカメラが向けられる。Eはしわがれた声で言った。
「Eです。よろしくお願いします」
「早速ですが、Eさんはこの事件をどのように見られておりますか?」
「とても不可解ですね」
 と口では言うものの、Eの瞳は落ち着き払っていた。
「不可解、とおっしゃいますと?」
「少々語弊がありますが、バラバラ殺人なるものは、殺人を犯した者にとっては至って合理的な思考なんです。――もしあなた、人を殺してしまったらどうします?」
 その問いにキャスターは目を丸くする。彼女は慌てて何か答えようとするが、返事も待たずにEは語り始めた。
「一つは自首。健全というか真っ当と言うか、まあこれがもっとも普遍的な回答でしょう。ですが、全ての人がこうすると思います? 答えは当然ノーです。中には当然、罪から逃れたいと考える人がいます。いなければ警察はますます税金泥棒とそしられます。と言いましても、これでも警察は寝る間を惜しんで――失礼、話が脱線しました」
 Eは咳払いのごとくお茶を口に含んだ。
「罪から逃れるにはどうすればよいか? 答えは簡単、遺体を隠してしまうことです。遺体が見つからなければ警察は動きませんからね。
 とはいえ、遺体を隠し切るのはとても難しい。どこに隠そうと、大抵一週間内にふとしたことで発見されてしまいます。
 そもそもそれ以前に遺体を隠そうとすること自体が困難です。遺体は重たいし大きいし、それにすぐ腐ってしまいますからね。今は夏ですから数時間放置するだけですぐに臭ってしまうでしょう。
 よって、犯人は遺体をバラバラにするのです。トルソーの形に切断すれば各部位を持ち運ぶのはたやすいですし、胴体以外の部位は家庭用の冷蔵庫でもしばらく保存できます」
「だから犯人は四肢を胴体から切り離したのですね」
「はい。普通に考えればそうです。ゆえにこの事件は奇妙なのです」
「……はい?」
「よく考えてご覧なさい。捨てられたのは四肢ですから、当然指紋のある指は残ったままです。それに腕と脚が丸ごとあるので大まかな身長もわかります。失踪届けさえ出ていれば、身元は簡単に割れるでしょう。――だからおかしいのです。すぐに腐ってしまう胴体を捨てるのならまだしも、どうして犯人は四肢だけを捨てたのか? 先にも述べましたが、四肢は長期間保存できます。それに指紋なり身長なりといった情報も詰まっています。対して胴体は手術痕がなければ情報はほぼゼロです。
 それにもかかわらず犯人は四肢だけをあっさりと捨てた。長期間保存できるにもかかわらず、それもポリ袋なんかにぞんざいにつめ、しかも何の工夫もない河原に放置した。犯行を隠す気があるのかないのか、非常に不可解です」
「…………」
 Eの推察に唖然となるキャスターであったが、それでも司会進行の役目を思い出したのか、さらにEに突っかかった。
「では一体、犯人の狙いは何なのでしょうか?」
「さあ? ――案外この犯人には犯行を隠す気なんてさらさらなく、遺体を切って悦ぶ異常者なのかもしれません。もしかしたら自分の事が報道され、テレビの向こうでニヤニヤと微笑んでいるかもしれませんよ?」
 ――と、そこまでテレビを観て、私は思わずテレビの向こうにいる彼らに言ってやった。
「遺体じゃない」


 テレビの話題は次のニュースへ移った。国政に関することだが、正直何の事を伝えているのか私にはよくわからなかった。
 以前から政治に興味なんてまるでなかったが、理由は別にある。身体がとても熱いのだ。それに電流でも走り回っているかのように、痛みが全身を侵している。――気づけば私は喘いでいた。
 私は朦朧とした意識の中、もはや私(たぶん私のことだろう)のニュースを忘れてしまっているだろうキャスターに言ってやった。
「まだ遺体じゃ……ない!」
 タイマーがセットされていたのか、ふいにテレビの電源が落ちる。真っ暗な画面には、芋虫のような姿に変わり果てた私と、私の有様や先のニュースを観てニヤニヤと笑っている男が反射で映っていた。
●作者コメント
 朝日改め、夜月と申します。ホラーに挑戦してみましたが、やっぱりホラーって難しいですね。よろしくお願いします。


この作品が気に入っていただけましたら『高得点作品掲載所・人気投票』にて、投票と一言感想をお願いします。
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●感想
涼木ショウさんの意見 +30点
 拝読させていただきました。


 どう落すどう落すと楽しみにしながら読んでいましたが、まさかそう落したかと感心しました。
 ダルマとか、想像するだけで気持ち悪いです。だけどそれを狙うのがホラーですから、グッドジョブなのですね。

 ホラー自体を書き慣れない事もあり、これについては僕にできる改良点は思いつきませんでした。お見事!

 次回作も期待しております。お互い、がんばっていきましょう


モノクロウさんの意見 +30点
 誰が犯人なのか、と考えながら読んでいたら、
 まさかの遺体じゃなかったという展開。
 そっちを全く予想も考えもしてなかったので衝撃でした。
 テレビという日常的な空間から一気にホラーの空間に
 展開しているのに違和感を感じないのは、
 テレビの内容が非常に良く出来ていたからだと思います。
 またEさんの犯人の思考を理解した怪しさがミスリードとしてよく機能していたと思います。


miyabiさんの意見 +30点
 初めまして。miyabiと申します。拝読しましたので、感想を書いておきます。未熟者ですが、ご容赦を。

 いやぁ、怖かった。私は充分ホラーとして成り立ってると思いますが、これで納得のいかない作者様の向上心に感服です。とても面白かったです。

 特にEの台詞が凝っていて感心しました。非常に説得力があり、巧みな台詞だったと思います。

 瑣末な事ですが、何故Eさんとしたのかあまり解りませんでした。顔がぼかされているなら匿名にするのは頷けますが、顔を映して身元も明かしているのに名前は明かさないのは少々訝しいです。適当な名前で出しても良かったのではないかと思います。

 それと、芋虫になった主人公ですが、普通生きてますかね、これ。相当根性があるのかしぶといのか知りませんが、四肢を切り取られたら出血多量やショックやらで死んじゃうと思うのですが。作品が現実よりしてるだけに、個人的にはこの辺が微妙でしたが、ホラーと割り切ってしまえば特に気にはなりませんでした。これも瑣末な話かもしれませんね。

 以上です。参考になれば幸いです。お互い頑張りましょう。


水波湖々さんの意見 +20点
 初めまして、水波湖々です。

 なんか名前の付け方に共感というか、普段私のやっている手法を他の人もやっているんだなぁと安心しました。

 本題ですね。
 うーむ。ホラーというジャンルはいまいち分かりません。恋愛とか青春とかファンタジーとかは分かりやすいのですが、ホラーに限っては境界線が難しいというかなんというか。
 ホラーって単純に「恐怖」という意味らしいのですが、私がこの作品を読んで感じたのは「驚き」で、ミステリーを読んでいる感覚でした。
 まぁ、ここは個人の感性なのでスルー推奨です。
 
 上記の通りミステリー感覚で読了しました。
>>テレビの画面が変わり、髪が紫色のおばさんがモザイク越しに映る。変声されていたが、彼女が興奮しているのは明らかだった。
>>再び画面が変わる。今度ばかりはキャスターも重々しげに口を開いた。


 ここがお上手でした。最初は三人称の感覚で読んでいたのですが、読み直すと私視点の一人称ですね。
 心情を一切入れずに違和感なく展開運びをして、最後に強烈なオチ。見事でした。
 私が読み間違いをしていなければ、最後の空行はなくした方が驚きがあるような気がします。三人称→一人称の切り替えとしての空行だったら私の感想はすべて的外れなものなのでスルー推奨……なんかスルー推奨するような感想で申し訳ないです。

 短いですが以上で失礼します。
 参考にならないと思ったらスルーしていただいて結構です。取捨選択は任せます。
 それではお互いがんばりましょう!


朝ノ空さんの意見 +20点
 こんにちは、朝ノ空です♪

 読ませていただいたのですが、「四肢が発見されました」の時点でオチが分かってしまいました。
 なのでホラーとしては怖くなかったかな・・・ごめんなさい(汗

 気になったのは、四肢が発見された段階で「殺人事件」として扱われるのか?という部分でした。
 確か昔どっか外国(アメリカではなかったはず)で手足だけ発見されたけど、胴と頭が発見されなくて殺人とは認定できなくてどうのみたいな事件が起こっていたと思うのですが、う~ん思い出せない・・・。フィンランドかどっかの寒い国だった気がするのですが、う~ムズムズする。

 「三人称じゃなくて実は一人称だったんだぜ」の展開としてはとても巧みだと感じました。
 個人的にはもっとホラー分が欲しかった・・・かな。
 初めに手だけ発見されて、そのニュースの後に「それじゃあ次は足だね」みたいな展開・・・とか?

 以上です、たいした感想が書けなくてごめんなさい。


水守中也さんの意見 +20点
 こんばんは。
 拝読しましたので感想を残しておきます。

 皆様もおっしゃっていますが、オチが見事です。
 殺人事件を取り扱いながら、ややコミカル(感じたのは私だけ?)なニュースに突然割り込む「遺体じゃない」の台詞。そして真相。十分ホラーとして成立する作品だと思います。
 オチへの流れは本当に上手いと感心しました。実は一人称だったという仕掛けも完全に騙されました。

 Eさんの話も興味深かったです。遺体において重要なのが胴体ではなく手足というのは勉強になりました。
 もちろん実践するつもりはないですけどねw

 それでは。執筆頑張ってください。


猫目石さんの意見 +30点
 こんばんは、猫目石です。

 オチは秀逸です。完全にはめられました。
 四肢を切り落したと思しき男の正体と動機が、不明のままなのも不気味さの余韻していて良かったです。

 一点、気にかかったところがあります。「さらにEに突っかかった」の表現でしょうか。キャスターは中立的な立場でEに意見を聞いてるはずなので、突っかかるのは、個人的には不自然な気がしました。

 それでは、失礼いたします。


imasanさんの意見 +30点
 初めまして。

 読み手を騙そうという試みを最後まで気づかせないよう、よく工夫された作品でした。最後の展開は予想できず、悔しかったです。

 私も一人称で三人称っぽく書けないかなと思っていたので、良い成功例を見ることができました。


くちばし。さんの意見 +20点
 はじめまして、くちばし。です。
 作品拝読させていただきましたので感想を…

 オチまできれいにまとまっていて面白かったです!
 3→1人称も良かったです!
 手足だけで遺体判定が出るのか、主人公はなぜ生きているのか、は怪しいですね。

 最近ホラーブームが来ている気がするのは私だけ?

 いい作品をありがとうございました。
 次回作も期待しております。

 ではこれにて失礼いたします。


草下むらじさんの意見 +40点
 草下です。拝読しましたので、感想を少し書かせていただきます。
 正直「やられた」という感じでした。
 掌編小説として非常に完成度が高い作品ですね。仕掛け小説としてずば抜けており、展開における改善点が見つかりません。
 まるで筒井康隆のショートショートを読んだように錯覚しました。
 オチの秀逸な魅力とは別に、リアリティを感じるような展開の速さと、登場人物の台詞の分配と密度が非常に適切で素晴らしいものでした。
 淡々としたニュース番組の中で、それぞれの登場人物が「事件の概要」「被害者の状態」「加害者の心理」を流れるように告げる。グロテスクと言うスパイスが巧みに生かされており、舌にピリッとした痛みが走るような読後感でした。
 「殺人事件のニュース」として典型に則していた事が、読みやすく感じた理由だと思います。

>>テレビの画面が変わり、髪が紫色のおばさんがモザイク越しに映る。

 という部分で、「中年の女性」と言った表現じゃなくて「おばさん」とは、どうしてだろう? という疑問が生まれましたが、その疑問もコメント欄を見て納得しました。

>>身体がとても熱いのだ。それに電流でも走り回っているかのように、痛みが全身を侵している。
 という文中の「痛みが全身を侵している」という描写ですが、これはどちらの意味だったのか気になります。
 達磨の状態で残った部分の痛みか、それとも、「そこに手足が残っているように感じる、脳が感じさせている痛み」を含んだ物なのかです。後者は医学用語で言う「幻肢」という状態です。
 もちろん、これとは別に精神的な痛苦も含まれているのかとも思いますが。

 また、都市伝説の達磨について話を聞いた事がありますが、四肢切断は腿の付近まで切った場合、出血量多量で死ぬのではないかと言われておりました。苦痛で意識を手放したり、心臓が弱い人などは簡単にショック死しますので、麻酔や医学的処置なしに達磨を実行する為には色々と苦労するのではないかと思いました。
 この疑問に関しては感想内の補足(男は医者である)を見て納得しました。ただし、現在ではたとえ医者でも、薬剤の管理責任が厳重に問われる時代になりました。よって、たとえ医者であっても多量の薬剤(特に麻酔薬や劇薬の類)を取り扱う事は難しくなっているかと思いますので、犯人は『医者』という設定が容易にサスペンス・ホラーで使えなくなってきました。作家としては実に面倒な話ですが。

 オチに関しては三重に驚きを覚えました。

 一回目の「遺体じゃない」の時は「ニヤニヤしているかもしれない」と言う前置きをしていた為、素直に犯人を示しているのではないかと感じました。
 だから、犯人ではなく被害者の台詞であったこと驚いたのが第一のびっくり。ここでは台詞の繰り返しが効果的ですね。
 そして

>>タイマーがセットされていたのか、ふいにテレビの電源が落ちる。真っ暗な画面には、芋虫のような姿に変わり果てた私と、私の有様や先のニュースを観てニヤニヤと笑っている男が反射で映っていた。

 というラストで、やはり犯人はニヤニヤ笑ってたのだという事に驚愕しました。
 さらに言えば、まさか犯人と被害者が一緒に居るとは思いませんでした。

 数回読み返して、ホラーの難しさが分かりました。
 次いで、ホラーとは一体何なのかという疑問を抱きました。
 以前、フランケンシュタインの原書を読みましたが、あれはホラーではないようですね。
 サスペンスとも言われますが、ヒューマンドラマだとも言われました。
 恐怖感を抱かせることは、その人物の人間性を浮かびあげる装置なのかもしれません。

 以上です。とてもグロテスクで楽しい作品でした。
 次回作を待っています。


はるかぜの世界さんの意見 +40点
 はるかぜの世界です。拝読させて頂きました。

 私は、ホラーを書くのがとても苦手です。
 なので、こんな素晴らしい作品を作ることのできる人がいるんだ! と、尊敬します。
 犯人の、ニヤニヤ笑いを想像すると、怖いです……

 誤字を見つけたので、ご報告を。”作者からのメッセージ”の、
>ホラーに兆戦してみましたが、
 挑戦、でしょうか? Yahooの辞書には無かったので、一応書いておきますね。

 では、失礼します。次回作も楽しみにしています。


カナイさんの意見 0点
 こんにちは。カナイです。
 拝読致しましたので感想を残していきます。

 悪くはありません。
 オチにはかなりインパクトがありました。
 ホラーと言われれば、確かにホラーですね。

 他の方の感想はサラリとしか読んでいないのですが、多分辛口な方に入るかと思います。

・冒頭が分かりにくい
 ちょっと引用させていただきます。

  「では、次のニュースです。――今朝、A市B区に流れるC川の河川で、切断された女性の四肢が発見されました」
  夕刻。某幼稚園で行われたイベントについて女キャスターは明るく報じると、それと対して変わらない口調で次のニュースを続けた。

 まず、「某幼稚園で行われたイベントについて女キャスターは明るく報じると」の部分。
 ここまで読んだ段階だと「切断された女性の四肢が発見された事件」が某幼稚園で行われたイベントのことのように見えます。
 もちろんそんなはずはないと思います。これがイベントだとしたら相当シュールです。
 以降の文章を読んでいくと、既に幼稚園のニュースは終わっていることが分かります。
 書き出しの台詞では、幼稚園のイベントの話をしている訳ではありません。女性の四肢が発見された事件の話をしているですね。

 という訳で、上に書いたことが分かりにくい点の一つ目です。

 次に、「それと対して変わらない口調で次のニュースを続けた」の部分。
 「それ」の指す対象がよく分かりません。
 恐らく「それ」とは「幼稚園で行われたイベントのニュースを報道している時の顔」を指しているのでしょう。
 ここで読者は作中に登場していない「幼稚園で行われたイベントを報じている女キャスター」をイメージすることになります。
 かなりキツいものがあるのではないでしょうか。
 私の個人的な意見になりますが、「幼稚園で行われたイベント」という情報はいらないと思います。

 「では、次のニュースです。――今朝、A市B区に流れるC川の河川で、切断された女性の四肢が発見されました」
   夕刻のニュースで女キャスターが報じている。

 あくまでも私個人の意見ですが、上に直したようにスッキリした冒頭の方がとっつき易いと思います。
 本当にこう直すと以降の文も変えなきゃなりませんが。参考までにどうぞ。

・ニュースにリアリティーが感じられない

>これでも警察は寝る間を惜しんで――失礼、話が脱線しました

 自分が話すのに夢中になって脱線してしまうような人を、テレビ局はコメンテイターに選ぶのでしょうか。

>それでも司会進行の役目を思い出したのか、さらにEに突っかかった。

 「突っかかる」という表現に違和感を覚えました。
 これは討論番組ではないようですから、突っかかることはないかと思います。


 加えて、全体的に老人の話がグロ過ぎると思います。
 これは夕方に放送される内容なんですよね。
 子供も見る可能性があるはずです。
 にも関わらず、胴体よりも四肢の方が保存し易いなどのグロテスクな解説が行われています。
 各所からテレビ局にクレームが来そうな内容ですね。

 という訳で、現実味に欠けていると感じました。


・オチが突然過ぎる

 確かに読者を驚かせるという点では成功しているかもしれません。実際、私も驚きました。
 しかし、読み終えた後で納得できるかというと、できないかと。
 作中の「私」がなぜ四肢を奪われてしまったのかも不明なままです。
 犯人の動機も分かりません。ただの拷問好きなんでしょうか。

 あと、テレビのタイマーがセットされていた理由も分かりませんでした。
 犯人が手動で消したことにした方が突然現われた感じがして、よりホラーっぽくなる気がするんですけどね。


 以上、勝手なことを色々述べてみました。
 この感想をどの程度参考にするかは朝日さんのご判断に任せます。

 では、失礼致します。


ライムペンギンさんの意見
 +10点
 どーも、ライムペンギンです。

 読んでいてまず、とても完成度の高い作品だと思いました。

 しかし、みなの評価が高いようなので、私は若干酷評気味でいきたいと思います。未熟者故、感情で語ることをお許しください。


 正直に言いますと私はこの作品を読んでいて、あまり面白いと思えませんでした。

 この作品は大きく分けると前後半『ニュースパート』と『犯人の独白パート』に分かれると思うのですが、実質、この作品を好きになれるかどうかは後半のオチを好きになれるかどうかが全てだと思います。

 前半部分の解説(?)は後半のオチを引きたてるための前座にしか見えなかったし、実質オチありきの構成ですよね。


 そして肝心の後半部分ですが、たしかにインパクトはあるのですが、犯人の動機――なぜ犯行に及んだのかが、私にはイマイチ納得できませんでした。釈然としない読後感です。

 異常性癖ってのは、ある意味最後の手段だと思います。
 どんな奇行だろうと『異常性癖』って理由をつければ、そう納得するしかないですからね。

 自分の四肢を切断して快感を覚える性癖ってが、非現実的すぎて私にはどうにもダメです。
 逆に、相手を切り刻んで喜ぶ犯罪者なら山ほどいそうですが……。
 犯人は自分の足を切り落とした後、どうやって自宅に戻ったのでしょうか?

 私は普段、細かいツッコミをするのが嫌いで『面白ければそれで良いじゃん』と思う方なんですが、この作品は、前半パートにリアリティがあった分、その点が気になってしまいました。


猫らぼさんの意見
 +10点
 遥か上空、地上35,000フィート付近より感想爆弾5発目を投下いたします。
 初めまして、猫らぼです。

 拝読いたしましたので、感想を残していきます。
 つたない感想になりますので、適当に取捨選択をお願いしますm(_ _)m
 他の方の感想と被っている部分は時速100kmでスルーいただければ幸いです。


 わざわざ、お流れ作品に感想を残していただきありがとうございました!
 最近ホラー作品が多く目につくので、なんだか掌編の間自体に不穏なカーテンが垂れているような気がして気になっていますw
 人称と予測のミスリードはお見事だと思います。掌編を読み慣れていなければ、それはもう価値観を変えるような感動を得られる作品ですね。ただ、私にしては珍しくオチが読めた作品でもあります。そして、そうだとするといくつかの違和感を感じたことも事実です。

 気になった点を挙げてみます。
 第一発見者のおばさんの口調が小説的な気がします。普段の会話で『鼻を刺す』や『まゆをひそめ』なんていう言葉が行き交うことはあまりないのではないでしょうか。地の文では当然のごとく使われる言葉でも、セリフとなれば突如違和感のあるモノへと変化する場合があります。
 四肢の手の部分には指紋は残っていなかったのでしょうか。残っていれば身元は割り出すことができる気がします。と言うことを評論家が喋っていますが、途中の報道で『身元を含め詳しいことはわかっていない』とされています。時間の関係もあるかと思いますが、ちょっと不自然な感じです。
 一番気になったのは、ミスリード目的とはいえ、主人公の口調が冷静すぎる点です。物語と構成の都合上仕方ないことはわかりますが、それは作者のご都合主義とも捉えることができます。痛いなんていう言葉では表しきれないはずですし、普通なら意識があるはずもないです。痛みを緩和する薬物などを使用しているならば、一言でもいいので作中で表して欲しいですし、通常の神経ならば、なぜここまで冷静に語ることができるのか、という点について明確な理由付けが欲しいところです。

 しかし、雰囲気作りは非常にお上手だと思います。冷静なキャスターを描いておいて、それと対比させるような不快感を抱かせる評論家の語り。そして、芋虫のようなと表現された主人公の状態。年齢や性別が判りませんが、それは御作においてはさして重要でもないですし、むしろ読者に想像させるくらいがちょうどいいと考えます。
 ミスリードに思考が流れすぎているために、上記の違和感が薄れている感じがします。それもまた、このアイデアの力なのだと思いました。

 未熟者ゆえ、纏まりのないことを書き連ねてしまっているかもしれません。
 少しでも創作の助けとなることを願っております。

 以上です。次回作も頑張ってください!
 私も感想書きを頑張ります!


中行くんさんの意見
 +20点
 こんにちは。
 拝読したので感想を失礼します。

 生理的嫌悪をとてもうまく使われた作品に感じました。普通(と言っていいのか分かりませんが)、『生きていると見せかけて、実は死んでいた』とミスリードして衝撃を与えるのに対し、御作は『死んでいると見せかけて、実は生きていた』としている。それにも関わらず前者よりも衝撃的なのがお見事。『単純な死』以上の恐怖の素材を見つけるのは簡単なようでとても大変だと思います。素晴らしい。

 一方で、人称誤認?関係に対しては少々疑問も残ります。まず、読み返してみたときに、どうも地の文が冷静すぎてアンフェアかなーという感じが拭いきれません。「一読目は普通の文章だけど、二読目は『実は超焦ってるっぽい』ことがわかる」というような高度な筆運びを、ぜひ書ける作者様ですのでやってもらいたいところです。……私はできませんが、言うは安いんです(え

 文章に関しては、結局実力のある作者様の作品ですから細部に力があるので楽しかったです。トルソーとか、不勉強な私の知らない単語が出てくると思わず「おっ」ってなります。

 簡単ですが、そんな感じでお願いします。
 文章もお上手ですし、嫌悪感の演出もお見事。ただ、ミスリードに関しては、(もちろん私がですが)少々疑問が残ってしまったのが残念です。
 それでは、執筆お疲れ様でした。


ミナコレステロールさんの意見
 +20点
 こんばんはー。
 いつもお世話になってます。
 高得点おめでとうございます!
 読ませていただいたので、感想を落としていきますね。

 タイトルから想像もしなかったほど、グロい話で軽くショックをつけつつ……。

 うまいですねー。
 ホラーなんですけど、叙述トリックみたいな感じで、やられたーって思いました。

 そういえばバラバラって女性が犯人の場合も多いらしいですね。あまり力がなくても運んだり隠したりができるそうなので。

 個人的にはこの話の続きが知りたくなりました!
 実はこれは夜月さんが構想中の長編のプロローグにすぎない!なんてことになればいいのになぁ。

 構成とか文章とかは全然問題ないと思ったんですけど、
 中高年の人らしさ、ニュースらしさみたいな部分がちょっと足りないように思えました。
 
>まゆをひそめながらも
>まとって


 口語ではあまりつかわない表現のような気がしました。
 とくに「専業主婦のおばちゃん」なので。

>四肢
 一般的には使わない気がします。
 特に、テレビのニュースの場合は、両腕両脚、みたいに聴覚だけでも理解しやすい表現を使うんじゃないでしょうか。

>すぐさま県警が駆けつけ、捜査が行われましたが、
 これも時間の限られているニュース番組にしてはちょっと長い感じがします。
 「警察による捜査の結果」なんかのほうがそれっぽいかと。

>失礼、話が脱線しました
 (緊急の事態でないかぎり)台本やカンペや打ち合わせがあるはずなので、脱線するのは考えにくいですし、リアリティを下げてしまっています。
 長編のプロローグでそこの脱線が伏線になってるならいいんですけど。

>どこに隠そうと、大抵一週間内にふとしたことで発見されてしまいます。
 「非実在老人事件」の記憶がまだ新しいので、あまり専門家らしくない発言に思えてしまいます。

>さあ?
 むしろ、全然的はずれな犯人像をドヤ顔で解説してそうなイメージがありますw


 以上です。
 執筆おつかれさまでした。
 次回作もがんばってくださいね。
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