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哀しみキメラ
エレベーターが止まった。 閉じこめられてしまった矢代純は、乗り合わせた三人の男女、 十文字誠、水藤深矢、早瀬綾佳と共に、狭い箱の中で異形のものに襲われる。 その不可思議な体験以来、純たちの体に変化が起こり始めた。 傷つかない体、突然回復した視力、幽霊が見える目、そして、いくら食べても満たされない飢え。 戸惑う純たちの前に、モノ祓い師であるという七倉和巳が現れる。 そして彼は告げる。エレベーターの中で遭遇したのは、人間を喰って生きる“モノ”であり、 彼ら四人の体は今、その“モノ”と融合してしまっているのだと――。 第12回電撃小説大賞“金賞”受賞。
とりあえず、一巻から四巻まで、全て読んだ上での感想となります。 絵柄で読んでみようと決めたのに、ぐいぐいと引き込まれていきました。 エレベーターにたまたま乗り合わせた四人の男女。 四人は、ただ『同じ時に同じエレベーターに乗った』だけでその一生を大きく変え、 運命を共にする事になります。 <モノ>という異界の生物(?)に喰われかけた四人。 半喰われた四人は、死ぬ事はなかったものの常人が持たないような力を手に入れてしまいます。 視力の回復、素早い治癒能力、異常なまでの身体能力……など。 そして、 「喰わなければ生きられない体」 生き物は何かを食べ、それを栄養として生きます。 ですから当たり前と言えば当たり前なのですが、彼らの「喰う」は別の意味でした。 (その辺は読んでみてください。さすがにこれ以上はネタバレすぎるので^^;) 確かに、賞をとっただけはあると思いました。 特に精神年齢が大人びている彼らの、心理描写がとてもうまいと思います。 人から違うものへ変化していくその設定、そして様子もまたいい感じではあると思います。 お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか? えー、純、綾佳辺りは結構好きです。あと紗也とか、真里とかも。 純は人間らしいから好きですね。 決意してはいるけれど、まだ少し揺れているような、そんな感じが好きです。 綾佳は大人だけど時折可愛らしさを見せるところとか。 紗也はたんなる一般市民(苦笑)なところが好きです。 真里は子供のわりにいろいろ考えてるところとか。 この作品の欠点、残念なところはどこですか? んー。大人の描写はうまいけど、子供の心理描写はそうでもなかったかな。 子供っぽくないんですよ。大人すぎてて、どの子も。 もっと子供っぽくてもいいかなーって思うような子もいましたね。 あとは少し展開が早い部分がある事。でも全体的に見ればそうでもないかな。 まあ10人に7〜8人はおもしろい、と言ってくれるかなあと思います。
自分がこの作品に感じた魅力は、 やはり主人公達を待ち受ける過酷な運命とそれに対する彼らの葛藤などを描いた所です! 矢代純はほんの数分だけを共有するはずだった名も無き他人である、 早瀬綾佳、水藤深矢、十文字誠と共に異形の怪物<モノ>に襲われる。 異形の怪物に襲われるというパターンは王道ですが、 この作品では、その異形の怪物は彼ら四人と四分の一ずつ融合してしまいます! そして彼らは徐々に人間から遠ざかっていき、 モノ祓い師の七倉和巳の元でモノ祓い師として、 <モノ>を喰って飢えを凌がないといけない体になってしまいます。 そんな彼らの残酷な運命とそれでも必死に生きようとする生きざまを描いた作品です。 お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか? 十文字誠です。 ここからはネタバレになります。 十文字は、妹を騙して犯した人間を喰ってしまった水藤を庇い、 四人全員一緒に暮らせるように、人間の側から離れていきます。 そして、彼は自分から意図的に人間を喰い、モノ祓い師達と敵対します。 そして最後は七倉に騙され、死んでしまうのです。 だからと言って七倉を恨む事は出来ないのですが…… それでも最後まで自分の新しい家族のために戦う姿は格好よかったですw この作品の欠点、残念なところはどこですか? 最後の方の展開が凄く速かったことですね。 まぁ大賞応募作品なのでページが限られてるから仕方ないとは思いますが。
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