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「杵築」が送る異常で不条理な七日間の物語が始まる…。鬼才が贈る実験作、解禁

絶望系 閉じられた世界


 ○読者投票結果
 最高です!一押し。 17
 おもしろいです! 7
 なかなか良いです 18
 ふつうです 9
 イマイチです 10
 おもしろくないです。 6
 買うと損します。 14

ジャンル現代ファンタジー
著者谷川 流
出版社:電撃文庫(メディアワークス)
発行年月:2005年04月
本体価格 550円 (税込 577 円)

chirsさん一押し!(男性) にら藤真さん一押し!(男性)

■ 解説                               

 この世には、うんざりすることが多すぎる。たとえば、八月なのにやたらに涼しいとか。
 呼んだ覚えのない者たちが突然部屋にやってきたりとか。
 その連中が何を言っても出て行こうとしないこととか。
 あるいは、幼い頃から知っている馴染みの少女が連続殺人犯だったりとか。
 ――そんなわけで、「杵築」が送る異常で不条理な七日間の物語が始まる……
 鬼才が贈る実験作、解禁。


■ chirsさんの書評                       

 この死神はどうやったら家に来てくれますか!!

 ……簡単に内容を説明するととある青年(主人公)の所に天使と悪魔と死神と幽霊が現れて、
 居座ってるから何とかしてくれと友人に電話を入れる所から始まる。
 そして実際に天使と悪魔と死神と幽霊が居るのだが……

 既存の概念を「その幻想をぶっ壊す」とでも言うかのように次々と破壊し、
 取り込まれてしまった読者を漏れなく狂気へと誘う禁書である。
 きっと10万3000冊の中に含まれているに違いない、と別なラノベのネタを交えて評価してみます。

 ただ、「問題の実験作」という触れ込み通りかなり読み手を選ぶ作品。
 故に一概にはお勧めできないが、
 振れた事が無い世界を覗いてみたい人は手にとってみるといいかも。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 幼女がエロい! 幼女のエロさがパねぇ!!
 お気に入り? そりゃあミワ様と死神様ですよ。
 ラノベ界にロリキャラは多々居れどここまで蠱惑的なキャラは見た事が無い。

 と、趣味全開なキャラ賛美はさておき「閉じられた世界」の無機質な世界観と、
 そこに生きる無機質なキャラクターのやり取りが見事な不協和音(誤用に非ず)を奏でている。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 欠点など無い。

 この作品がつまらないと感じるのは、単に読み手の感性と合わないだけで、
 それはどちらにとっても欠点とは言えない。

 
 あえて言うなら終始、抑揚の無い事や場面変更が少なくほぼ動きが無いという点は挙げられるが、
 前者は落とし所を見せずに最後まで読者を裏切り続けるという長所でもあり、
 後者は「閉じられた世界」を表現する為にあえて最小限に留めているのだと思う。

 繰り返すがこの作品は読み手を選ぶ。
 購入する前にできれば頭数ページを読んだ上で決めて欲しい。

 名作でも良作でもない奇作であり過度な期待は厳禁である。




■ にら藤真さんの書評                      

 陰鬱。空虚。そして絶望。
 『涼宮ハルヒの憂鬱』『学校を出よう!』シリーズで有名な谷川流先生の作品です、が。
 明るいお話を期待して読めば間違いなく泣きを見ます。
 天使と悪魔、幽霊と死神、幼馴染みの美少女とその妹。
 ライトノベルらしい魅力的な属性のキャラクターが大量です、が。
 
 そんなファンタジーなキャラたちによる、ラブリーでハッピーな展開を期待して読めば……
 もう一度言いましょう、間違いなく泣きを見ます。


 中盤までは特に黒いということもなく、上で挙げたようなラノベらしいキャラたちとの話が進みます。
 ここまではダーク好きでなくても一応楽しめる内容。
 それがクライマックスで一気に突き落とされます。情け容赦なく突き落とされます。無慈悲です。
 そこにあるのは陰鬱、空虚、そして絶望のみ。
 だが、それがいい!

 ダーク特有の黒いカタルシスがたっぷり味わえることでしょう。

 中盤までの沈んだ雰囲気や巧みな文章、軽快な会話も見所。構成も上手い。
 この辺は谷川先生の実力が窺い知れます。
 地の分が三人称で、語り手二人の視点を適度に切り替えながら進むので、
 『涼宮ハルヒの憂鬱』で「文章が馴染めなかった」という方も、この作品なら大丈夫だと思います。

 メインのキャラクター八人について紹介してみましょう。

・語り手1 杵築(きづき)
 主人公。非常識な連中に振り回される友人や展開される狂気を、一歩引いて眺める傍観者。
 醒めた男子高校生。心にもないことを言って建御や幽霊を慰めたり、同情する振りをする。
 こいつも狂っている。
 『涼宮ハルヒ』のキャラを持ち出すなら(ご存じない方には申し訳ない)、
 キョンの冷静さと傍観者の立場に冷淡さ・無感情を足した感じのキャラ。

・語り手2 建御(たけみ)
 杵築の友人。個人的にはこいつが主人公だと思いたい。視点も杵築と同じくらいの量だし。
 常識・良識人、小市民。要するに普通の少年。
 この作品の中で読者が感情移入できるのは多分建御だけ。
 こちらはハルヒたちに振り回されて四苦八苦するキョン、プラス絶望。

・天使
 建御の部屋に上がりこんだ非日常四人の一人。
 金髪碧眼のグラマラスな美女、だが浴衣姿。
 饒舌で説明好きなところや微笑み仮面が古泉に似ている、というか口調含めまさに古泉。
 腹の底は似ても似つかぬ暗黒っぷりだが……。

・悪魔
 非日常四人の一人。
 全身黒ずくめの中性的な美少年。
 無口・無愛想・無感情。建御の部屋でゲームをしているばかり、セリフも数えるほどしかない。
 だがストーリー上重要な役割を持っている。

・死神
 非日常四人の一人。
 全裸の幼女。あ、引かないで。後から服は着ますから。
 常時ぼーっとして気だるげ、喋り方がやけに古風で淡々としているが、よく喋る。
 あと、建御にやたら迫る――「我を押し倒せ、共に快楽を貪ろうではないか」 
 というようなことをもっと直な単語で言ってくる(汗)。天使との下ネタ論争は面白い。
 一番クセのあるキャラ。最も「萌え」に近いが、下手に感情移入してしまうと終盤がキツいですよ。

・幽霊(事代和紀)
 非日常四人の一人、だが性格はまとも。
 冴えない顔をした少年で、体が透けている。
 死神に追われ、建御の部屋に逃げ込んできた。
 自分が何故死んだのか分からず、いつも暗い表情で陰鬱にうずくまっている。

・烏居ミワ
 中学一年生、杵築の恋人(!)。
 絶世の美少女。人当たりは柔らかいが……

・烏居カミナ
 杵築と建御の幼馴染み。
 ミワの姉。妹同様美少女。
 この姉妹が物語の核に位置する。

 語り手二人の名字は忘れました、というか出ていなかったと思います。
 二人と烏居姉妹、幽霊の名前は日本神話に関係があるらしいですね。

※ややネタバレ
 クライマックスは壮絶。
 バトルもなく誰かが死ぬわけでもないのに、
 会話だけであれほどの絶望を生み出せるのは驚愕です。
 ラストは救いなのか、更なる絶望なのか、蛇足なのか……その判断は皆さんにお任せします。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 みんなお気に入りです。しかしその中で一人、と問われると、やはり主人公の建御ですかねえ。
 異常な奴らばかりの中、唯一といっていいほどまともなのが良い。
 この作品のたった一つの救いではないかと思います。
 
 次点をあえて挙げるならば天使と死神のコンビで。
 いつもいい人ぶってるくせに実は一番腹黒い天使、
 狂った連中の中では比較的思いやりがあると思えなくもない死神。
 どちらもキャラ的に強烈なので好きです。
 こいつらの下ネタ話は本当に笑える。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 欠点の多い作品ですよ(苦笑)

 まず、この作品の魅力であるどうしようもない陰鬱さが、同時に欠点にもなります。
 性描写・暴力描写があるのも読者を選ぶでしょう。
 内容も、やや難解。抽象的な部分があります。

 また、実験作という割にはそれほど突き抜けた感が無く、
 (普通のラノベと比較すると充分に突き抜けた作品ですが)
 かといってきっちりまとまっているわけでもない――

 総じて作品自体の完成度は高くない、というのが一般的な評価だと思われます。

 実際自分もそう思いますし。実験作というより習作という意見すら聞きますね。
 それも含め、あまり気軽にオススメできる作品ではないかもしれません。
 いろんな意味で心に余裕のある人しか楽しめないかも。
 それでも自分はこの作品が大好きです。


■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)     

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