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謎のメッセージ「ヒトリムシ」とは? そして『カゲヌシ』に取り憑かれた孤独な少女・葉の運命は!?

シャドウテイカー


 ○読者投票結果
 最高です!一押し。 11
 おもしろいです! 9
 なかなか良いです 3
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 おもしろくないです。 0
 買うと損します。 1

ジャンル現代ファンタジー
著者三上 延
出版社:電撃文庫(メディアワークス)
発行年月:2004年06月
本体価格:570円 (税込 598 円)

紅炎さん(男性・14歳) 蒼光さん(男性・18歳)一押し!

■ 解説                               

 人の影に潜み、人の心を、欲望を、やがて肉体までをも喰らいつくすという怪物『カゲヌシ』の噂――
 新たな都市伝説に呼応するかのように、奇妙な事件が続発してゆく。
 高校生の裕生は、連続焼死事件の現場で「黒い虫」の死骸を見つける。
 時を同じくして、裕生の幼馴染みの少女・葉の身に、恐るべき変化が…。
 謎のメッセージ「ヒトリムシ」とは? そして『カゲヌシ』に取り憑かれた孤独な少女・葉の運命は!?
 異次元の生物に寄生された少年、少女達の闘いを描く、三上延新ホラーシリーズ、ここに開幕。


■ 紅炎さんの書評                        

 なんと言っても、この小説の醍醐味は構成の上手いストーリーと、
 それを引き立てる三上さんの描写力です。
 
 このストーリーで最も重要な「恐怖」を、細かな描写一つ一つがそれを引き立てています。
 そして「カゲヌシ」同志の戦闘は、非常にドキドキさせられます。


 三上さんお得意の、人間が圧倒的に不利な状況のストーリーです。
 そしてその話の一つ一つに、感動や悲しみなど、たくさんの要素が詰め込まれています。
 そしてそれにすごく引き込まれます。

 その上、第四巻までにたくさんの伏線を配していて、
 最終巻の第五巻では、全ての謎が明かされて、見事大団円を迎えます。
 読後感も良く、綺麗なこの幕引きには思わず感動してしまいます。

 そしてこのストーリーのもう一つの魅力は、ヒロインの雛咲葉の存在です。

 彼女に襲い掛かる運命がとても悲しすぎて、そんな彼女には思わず感情移入してしまいそうです。
 切ないとしか、言いようがありません。
 そして最終巻では主人公・裕生が格好良すぎます。
 葉のために頑張る彼を見ていると、思わず涙が出てしまいそうになります。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 ヒロインの雛咲葉が一番のお気に入りです。
 幼なじみで先輩という立場の主人公・裕生を思う彼女の気持ちは、
 見えたり隠れたりしていて、内気な性格のため、それがなかなか裕生に届きません。
 その光景を想像すると、葉が可愛いと思えて仕方がありません。
 
 彼女の健気な思いは裕生になかなか届きませんが、
 それでもストーリーの合間合間に、恥ずかしいくらい仲の良い場面があります。
 それを想像すると読んでいる方も、和やかなその雰囲気に癒されます。
 
 この小説の魅力は、そういう点も兼ねていると思います。
 
 そしてもう一人上げるなら、やっぱり裕生の兄・雄一です。
 昔は荒れていた、となっていますが、本編ではそう言った部分はほぼ無く、
 ただ兄弟思いの良い兄貴です。少し馬鹿っぽい面もありますけどね。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 ネタばれになってしまいますので、以下の文にご注意を。

 別にこれといって上げる点はありませんが、あえて上げるとするなら、
 葉のカゲヌシ・「黒の彼方」と裕生が全く分かち合う事がなくて、残念でした。
 確かに裕生にとって一番の敵でもありますが、何度も命を救われた場面があるため、
 少しくらい「黒の彼方」を信用してやっても良いんじゃないか、と思いました。
 でもまぁ、おそらく「黒の彼方」が裕生を救う理由は、契約があるからだけでしょうが。



■ 蒼光さんの書評                        

 ごく普通の日常の裏に、「都市伝説」という形で侵食していく恐怖を描いた作品です。

 主な面子は主人公と同じ学校の生徒達と、彼らを取り巻く人々。
 そして、人間に取り憑いた『カゲヌシ』なる異形の存在同士がバトルしたりします。

 はっきり言って地味ですし、設定に目新しさは無いでしょう。
 ところが、それだけにとても堅実な作りとなっています。


 特に4巻までで様々な伏線を配しており、「あと1巻で終わるの?」と思わせておきながら、
 最後の5巻では実に見事な大団円で終わっています。
 とても『綺麗』な幕引きで、これはまさに見事としか言い様がありません!

 また、ヒロインである葉を蝕んでいく運命が、とても切なくて……
 思わず情が移らずにはいられません。

  
 この点も注目ですね。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 ヒロイン役である、雛咲 葉ですね。
 幼馴染であり先輩でもある主人公・裕生に対する想いが、そこかしこに見え隠れしているのですが、
 内気なために中々積極的になることができません。
 そんな、ついもじもじしてしまう彼女の姿が実に可愛らしいと思います。

 ……というか、この物語の魅力の4割は彼女の健気さと、
 それに付随する「もじもじ」とも言えるのではないでしょうか。それくらい可愛いんです。
 でも露骨に萌えを狙っているわけではありません。
 元々、作者の三上さんはそういった描写が得意ではないっぽいですし。

 次点では主人公・裕生の兄である雄一を。
 昔は荒れていたようですが、作中では最高に弟思いで馬鹿で熱い兄貴です(笑)


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 2巻以降、極端にホラー分が薄れてしまったことでしょうか。
 シリーズとはいえ、本当の意味でホラーと言えるのは、1巻でしょうね。



■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)     

最高です!一押し。
おもしろいです!オススメします。
なかなか良いと思います。
ふつうです。
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「黒い心臓」を授けられた少年の運命が回り始める!

シュバルツ・ヘルツ―黒い心臓


ジャンル現代ファンタジー
著者桑原 水菜
出版社:コバルト文庫(集英社)
発行年月:2006年04月
本体価格 476円 (税込 500 円)

MIDOさん(女性)一押し!

■ 解説                               

 中学生の嘉手納奏は心臓の移植手術を受けるためドイツを訪れたが行方不明に。
 記憶を失い湖岬の病院に運ばれた奏を迎えにきたのは、アイザックと名乗る若い男だった。
 日本に戻った奏の家に同居することになったアイザックだが、
 学校には謎めいた転校生神楽崎が現れる。
 やがて奏の廻りで不穏な動きが…。
 「黒い心臓」を授けられた少年の運命が回り始める!新境地サスペンス・ファンタジー。


■ この作品について、熱く語ってください!            

 ファンタジー、ミステリー、SF、ギャグ、シリアス、なんでもありの最強ノベル!!
 謎が謎を呼ぶ本格ローファンタジーといえばこの作品でしょう!


 桑原水菜と聞けば、アニメ化した『炎の蜃気楼』シリーズを思い浮かべるかもしれませんが、
 現在執筆中のこの作品もそれに負けず劣らずの良作です。


 以下はちょっとしたネタバレです。

 主人公の中学生・嘉手納奏は、移植手術が必要なほど重い心臓病を患い、
 ドイツの病院に入院していました。
 移植するはずの心臓が届く際、ヘリが爆発するというトラブルがあったのですが、
 無事に心臓は届き、手術は成功します。

 しかし、ここから奏に本当の意味での試練が立ちふさがります。
 なんと、移植された心臓は、予定されていたドナーからのものではなかったのです。
 心臓の元の持ち主の名はアドルフ。
 アースガルスという、現在の地図には記されていない『閉ざされた国』の国王でした。
 しかもその心臓は普通の心臓ではなく、『黒い心臓』と言われる特殊な心臓だったのです!

 その心臓を移植した日から、奏はアドルフを殺したアースガルスの騎士たちに命を狙われることになり、
 様々な試練と向き合うことになります。


 心臓移植という、現代だからこそ取り扱うことのできる題材を、
 上手くファンタジー要素として絡めている点が、なにより秀逸なところです。


 また、『黒い心臓』にまつわる謎、超騎士と呼ばれるアースガルスの騎士たちの共闘、
 奏の友人たちの奮闘などが折々にバランスよくちりばめられ、
 常にハラハラどきどき、ときには目を瞠るようなバトルシーンまで、
 あますことなく丁寧な筆致で描かれているところに注目です。

 また『シュバルツ・ヘルツ・ゲスタァン』という、奏ではなく、
 アドルフの弟アイザックを主人公としたアースガルス絡みの過去の話が、
 短編集として出ているのも注目したいところです。
 それと合わせて読むことで、キャラクターの心情や行動がより深みを増すことになり、
 シリーズをよりいっそう楽しむことができるようになります。

 ミステリーもの、ファンタジーもの、そして男の固い絆が、
 (BLではなく、友情や師弟関係の範疇です)お好きな方、ぜひ一度手に取ってみてください。



■ お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?  

 アースガルスの超騎士のひとり、ケヴァンです。
 最初は奏の心臓を狙う敵として登場しますが、奏の心にふれ、
 また己の過去を見直すことにより、今では奏を護る正真正銘の騎士となっております。
 
 彼の過去については謎が多く、作中でもはっきりとは記されていません。
 ただ気に入っているだけではなく、
 今後の展開が進む上で一番注目していたいキャラクターでもあります。


■ この作品の欠点、残念なところはどこですか?          

 伏線が多いことと、登場人物がいささか多すぎるところです。

 普段からミステリーや推理ものを読み慣れているひとならばともかく、
 そういうのに耐性のない方は、なにげなしに読んでいると、
 いざ解決に向かうシーンで首を捻ることになります。

 キャラクターに関しても同様のことが言えます。
 このキャラはどこに属するひとなのか、どのような性格のひとなのか、を把握していないと、
 読んでいる最中で誰が誰だかわからなくなります。


■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)     

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