ドラコンさん一押し!
「みんなに國鉄からプレゼント~。豪華温泉つき九州横断列車の旅~」
「絶対に何か裏がありますよね?」
「さすが班長代理、実はね…」
えっ! 高千穂線にお化けが出る? 警四の任務は幽霊退治! ?なんで東京駅勤務の俺たちが、と言いつつも國鉄で「最も長い距離を最も長い時間で走る列車」に乗れる!と俺、高山直人は浮かれていた。
この旅でとんでもない「決断」を迫られるとは夢にも思わずに…。
國鉄が分割民営化されなかったもう一つの日本を舞台に、夢の鉄道パラダイス・エンタテインメント第五弾。
今回は、旅情モノです。今までよりは地味なのですが、主人公たちの日常が垣間見れます。
寝台急行「高千穂」の描写がリアルです。掲載されている同列車の時刻表は、乗車駅・降車駅のみならず、全停車駅の時刻が明示されています。
それほど手間がかからぬ編成表ならともかく、架空の列車の詳細な時刻表を用意するとは、実に芸が細かいです。
九州新幹線が全通していながら、九州発着の寝台列車が多数運転され、名車・珍車の旧型車両が数多く登場します。
「國鉄」らしさがパワーアップしました。
刊行の間隔が短いので、ストレスが少ないです。1年間で、5巻出ています。
お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
武闘派ヒロイン・桜井あおいが、頭脳で魅せました。
この作品の欠点、残念なところはどこですか?
「5巻目にして、ようやく誤字が消えたか」と、感心しつつ本文を読んでいました。しかし、とんでもない誤字が1カ所ありました。刊行間隔が短いせいか、校正が不十分など、脇が甘い面があります。
掲載されている急行「高千穂」の編成表では、1号車~5号車が「東京~西鹿児島(作中では新幹線が鹿児島中央、在来線が西鹿児島)」、6号車~10号車が「東京~下関」となっていました。
ですが、本文では「六号車から十号車までは大分行となっております」(車掌のアナウンス)と明記されています。それに、9号車~10号車は、「ゴロンとシート」(寝台特急「あけぼの」に連結。寝具・浴衣が省略される代わりに、B寝台車ながら寝台料金不要、指定席特急料金・運賃のみで乗車可)を模した、「ふらぁ~と席」です。人が寝ているのに、朝の 4時18分に着く下関で、この車両を切り離すのは、いくらなんでも不自然でしょう。
編成表・時刻表をかいたのは絵師のようです。著者との打ち合わせがうまくいったのでしょうか。
著者が、元電車運転ゲームの宣伝プロデューサーですから、運転や車両についてはこだわっているようです。しかし、切符の値段・通用条件には「どんぶり勘定」との印象が強いですね。不正確な記述に違和感を持ちました。
著者も、国鉄を引き継いだJRの営業制度を知らぬことはないでしょう。現に、今巻の著者プロフィールには、「大都市近郊区間の運賃計算特例」を使ったと書いてありました。
鉄道公安隊の組織で、4巻までと今巻とでは相違する記述がありました。著者は前に書いたことを覚えているのでしょうか。組織名称が変更されたと書いてあれば別だったのですが。
舞台の高千穂線・高森線について、「あとがき」でもう少し補足説明できなったのでしょうか。全く説明しないのならまだ理解できます。ですが、説明が中途半端になっています。
「あとがき」で、「国鉄時代高千穂線と高森線としてつながる予定がありました。しかし、高森トンネルでの異常出水により工事が中止になってしまいました」とあります。なお、作中では高千穂線と高森線がつながったとの設定です。
国鉄高千穂線は、分割民営化でJR九州が一旦引き継ぎ、その後第三セクター化され、豪雨災害で鉄橋が流され復旧を断念し、廃線になってしまったことには、触れていません。また高森線が、現在の南阿蘇鉄道であることは書かれているものの、もう少し丁寧な記述があっても良かったのではないでしょうか。
これでは、鉄道に疎い読者が置いてきぼりになってしまうのではないかとも感じます。
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