似非紳士さん一押し!(男性・17歳)
成田良悟が描く“この世でいちばん吸血鬼らしくない吸血鬼”の物語。
「親愛なる日本の紳士淑女諸君!月並な問い事で申し訳ないがー諸君は吸血鬼の存在を信じるかね?」
「-失敬、名乗るのが遅れたようだ我が名はゲルハルト・フォン・バルシュタイン!このグローワース島を預かる、子爵の称号を賜りし吸血鬼!自己紹介代わりに、我が島で起こった一つの騒動について話をしようではないか!…まあ語らせてくれたまえ。暇なのだ」
「君が私の話を信じるも信じぬも、私が人にあらざる存在という事は一目瞭然であろう?何しろ私の身体はー」。
これは、この世で最も「吸血鬼らしくない吸血鬼」の物語。
ドイツ領内に浮かぶ孤島「グローワース島」、その島は観光業によって栄える何処にでもある普通の観光地である。
ただ一点、この島の観光名所である「ヴァルシュタイン城」の地下には、吸血鬼や人狼などの異形たちが暮らすと言う「些細な点」を除けば。
彼らは、伝説として、ときには現実として、島民たちと交わり、独自のコミュニティーによって、世界中の吸血鬼と交流している。
そして、その島の異形たちの頂点には、「喧嘩は弱いが紳士的な」一人の吸血鬼が君臨していた
たぶん、同氏の他作品に比べて一冊の情報量が異常に多いです。
大筋はもはや使い古された感のある吸血鬼ものですが、今までのものとは全く違います!!
まずは「喰鬼人(イーター)」という設定。
これは、人間であっても吸血鬼を喰らう事で、その性質(肉体的強さ)を手に入れることが出来る、というものです。
これが、異常な曲者で、身体能力は吸血鬼並み、でも「弱点を引き継がない」という設定なのです。
そして、それぞれの信条が違う事。
これが、成田さんらしい個性豊かな群像劇を作って居ると思います。
例えば、吸血鬼の少女に一途な恋心を寄せる少年や、
非常に紳士的で「個性的な見た目」のヴァルシュタイン城の主とか、
吸血スイカとかΣ
表の顔は素晴らしい市長だが裏の顔は小悪党の「半人半鬼(ダンピール)」とか…。
あとは、吸血鬼と普通に戦える人間の格闘家とか(笑)
登場人物が個性的で、一筋縄ではいかず、そのキャラクター達を、作者独特の疾走感あふれるテンポの良い文章で活き活きと描いているところが、一番の魅力のように思います。
皆さんもぜひ一度、この「世界一吸血鬼らしくない吸血鬼の物語」をお楽しみください。
お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
ゲルハルト・フォン・ヴァルシュタイン
とても形容しづらい外見の吸血鬼、紳士的。
通称「子爵」、ヴォッドには「伯爵」と呼ばれる。
何といってもせりふ回しに痺れる、憧れる!!
ヴォッド=スタルフ
表向きは島民全てに愛される素晴らしい市長。
裏の顔は、ゲルハルト曰く「偉大なる小悪党」
彼の小悪党ぶりが、でも仲間思いなところが一番好きです。