ライトノベル作法研究所
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  4. 冴えない彼女の育てかた公開日:2013/10/03

冴えない彼女の育てかた

ジャンル:恋愛
著者:丸戸 史明
出版社:富士見ファンタジア文庫
発行年月:2012年07月

あざらしさん一押し!(男性)

■ 解説

 これは俺、安芸倫也が、ひとりの目立たない少女をヒロインにふさわしいキャラとしてプロデュースしつつ、彼女をモデルにしたギャルゲームを製作するまでを描く感動の物がた…
「は?なんの取り柄もないくせにいきなりゲーム作ろうとか世間なめてんの?」
「俺にはこのたぎる情熱がある!…あ、握り潰すな!せっかく一晩かけて書き上げた企画書なのに」
「表紙しかない企画書書くのにどうして一晩かかるのよ」
「11時間寝れば必然的に残った時間はわずかに決まってんだろ」
「もうどこから突っ込めばいいのよ…このっ、このぉっ!」
 …ってことで、メインヒロイン育成コメディはじまります。

■ あざらしさんの書評2013/10/01

 本来作品についてのみ書くべきだと思うのですが、著者の経歴を避けて語れる方ではありませんので少々。
 ご存じの方には今さらの話ですが、著者である丸戸史明氏は、テキスト式18歳以上向けADVゲーム、所謂エロゲで数々の名作を生み出したベテランシナリオライターさんです。
 過去、このパターンで多くのライターさんがラノベデビューを果たし現在も活躍されていますが、それ故に『シナリオライターからの転向』というのは、ある種ラノベ作家さんの職歴構成として一分野を成している感すらあります。
 そういった意味で、「まだラノベデビューしないのか?」というぐらいの大物だったのが、著者である丸戸史明氏です。

 レビューを書かせて頂いている時点で、4巻まで出ていますが、続きが楽しみで待ち望んでいます。
 ラノベとシナリオゲームの共通項として、配役に女性陣が多いという”あざとさ”が付きものですが、これを作中で自然に見せる手腕は、お見事のひと言です。
 短文あらすじは『主人公が美少女同人ゲームを造る物語』
 つまり商業・同人の違いはあれど、著者である丸戸史明氏のホームグラウンドです。

【以下、ネタバレが入ります】
 とはいえ、主人公・安芸君の立場は著者さんとは全く違います。彼は絵も描けなければシナリオも書けず、ゲームを彩る音楽も造れません。
 プロデューサー兼ディレクター、ざっくばらんに言うとまとめ役で、持っているのはゲームを造る情熱です。

 ヒーローもので例えるなら、「必殺技どころか戦闘すら出来ない。けれど正義を守りたい」
 しかも志だけで、未だ発展途上です。
 こういった立ち位置は漫画でいえば、おおよそ少年誌よりは青年誌でしょうし、ラノベとしてもかなり難しい主人公だと思うのですが、これらを絶妙な展開で見せてくれます。

 もちろん、ラノベっぽくクリエイターサイドは全員女の子です。
 ところが、この女性陣が丸戸氏の書くヒロインだけに、我が強く一筋縄ではいきません。
 内向的・外交的の違いはあれど、皆が適度にめんどくさく反抗的で、主人公の意志に唯々諾々と従うような女の子は登場しません。
 メインヒロインである加藤恵も、協力的である、というより自分に反抗意志が無ければ受け入れる性格なのですが、それでも一線があり、またブレません。(同時に、これがブレてくる気配がまた楽しいのですが)

 主人公は、こういったクセのある女性陣をプロデューサーとして集め、ディレクターとしてまとめていきます。
 バラバラだったヒロイン達が、徐々に制作チームとして機能していく(気配・予感)は読んでいて思わず頬が緩みます。

 結果、フィクションであるラノベの、しかも劇中作である未完のゲームをやってみたく感じさせてくれました。
 劇中作にすら興味が湧く、これを最大の賛辞として本作をお勧めいたします。

お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?

 全員好きですが、あえて挙げるなら主人公である安芸倫也でしょうか。
 自分の志と夢に真摯で、なにより誠実です。
 ヒロイン勢が好感を持つのも納得ですし、ただの鈍感野郎ではないところも良いです。

この作品の欠点、残念なところはどこですか?

 ADVゲームですが、小説とは異なり「絵やSEが存在するものは書かない」のが文章の特徴です。
 二重情報ですので、これはもう「書かない」というよりは、「書いてはいけない」の禁止事項の部類だと思います。

 つまり、ADVゲームで『書いてはいけない』ことが、小説では『書かないといけない』ということで、どうもこの辺りが(特に一巻)かなりあやふやになっています。

 「状況描写の一行が足りない」という感覚がついてまわり、これが読み進めることを邪魔します。

 ただ流石にベテランのプロ。
 小説に慣れたというのは失礼な言い方ですが、巻が進むごとに、こういった欠点は無くなり、3巻以降では解消されています。

 残念なのは、ひょっとすると一巻の時点で放棄する方がいそうな部分でしょうか。
 もしこれから読まれるならば、2巻まで読んでから判断されることをお勧めします。

 あと、ひょっとすると『人を選ばず中高生向き』とは言い切れないかも知れません。
 私はあまり感じないのですが、一巻のあとがきにもあるように著者さんは『18禁ならぬ、30禁ライター』なる二つ名をお持ちです。
 ある程度の、酸いも甘いも噛み分けた人生経験があった方がより楽しめるのかも知れません。

■ 一言感想コメント

・この人の書く作品は本当に地味なんですが、ぐいぐい引き込まれますね。キャラ描写がリアルで存在感があります。流石。
2014/05/31

■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)

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おもしろいです!オススメします。
なかなか良いと思います。
ふつうです。
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