ライトノベル作法研究所
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  4. ビブリア古書堂の事件手帖公開日:2012/08/13

ビブリア古書堂の事件手帖

ジャンル:ミステリー
著者:三上 延
出版社:メディアワークス文庫
発行年月:2011年03月

スポポニウムさん一押し!(21歳)

■ 解説

 鎌倉の片隅でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」。そこの店主は古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性だ。残念なのは、初対面の人間とは口もきけない人見知り。接客業を営む者として心配になる女性だった。だが、古書の知識は並大低ではない。人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも、彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていく。これは“古書と秘密”の物語。

■ スポポニウムさんの書評2012/07/26

 本という存在を、あらためて愛おしく思える本である。

 舞台は2010年台の神奈川県鎌倉市。就職するはずだった会社が倒産したことで、日々を無為に生きていた青年、五浦大輔。
 幼い頃のとある事件がきっかけで極度の活字恐怖症を患っていた彼は、亡くなった祖母の遺産である古書を整理する途中、美貌の古書店主、篠川栞子と出会う。
 極度の人見知りで、他人とまともに会話することすらできない栞子は、五浦が持参した本を見るなり、人が変わったようにその本について語り出した――。

 この本を読んだ後、私は私の蔵書に対して強い愛着を覚えた
 この本にまるでアテられてしまったかのように、私は夢中になって本棚の本を引っ張り出して、そしてひと通り読んでしまった並の労苦ではなかったが、そうしなければならないと思ったのである。この本が持つ魔力というのは、つまりそういうことなのだ。

 この本から学ぶべきところはズバリ、そういう「本が持つ物語」について、である。

 主人公、というか探偵役の篠川栞子は、古本屋である。極度の人見知りで、平時は面と向かって人とまともに口も聞けないくせに、本のこととなると猛然と喋り出し、その聡明な頭脳の片鱗を覗かせ、快刀乱麻を断つような推理を披露してみせる。古本屋の探偵といえば、言わずと知れた京極夏彦の『百鬼夜行シリーズ』の登場人物、京極堂こと中禅寺秋彦を彷彿とさせるが、京極堂が本から得た知識で物事を推理するのとは異なり、篠川栞子はより古本屋らしく、本そのものにまつわるトリビア・エピソードから事件を解体してゆくのだ。

 まぁでも、そんなことはどうでもいい。ようは彼女の本への愛情が、結果的に事件を解決しているだけなのだ。
 彼女の切れすぎる頭脳などはオマケである。彼女は名探偵ではなく、憑き物落としでもなく、最初から最後まで、ちゃんとただの古本屋なのだ。

 「古い本には、人の秘密が詰まっています」と、彼女――篠川栞子はいう。

 全くその通りだった。本には、その本を手に取る者にしか知れない物語がある。人には、誰しも人生を狂わせた物語と邂逅した瞬間がある。この本は、そういう誰にも訪れる瞬間を、まるで宝石を見つけた瞬間のように、鮮やかに、そして大切に書き起こしていく。
 自分自身の過去をくすぐられるような、切なくて、そして懐かしい一瞬を、我々はこの作品から何度も追体験することができるのである。

お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?

 篠川栞子。

 極度の人見知りで、書痴で、巨乳で、美人で、思ったより頑固で、意外に疑り深くて、そのくせ人より何倍も聡明で、抜きん出て能弁である彼女。
 どうだろう、彼女ぐらい、本という媒体が持つ二面性、多義性を表現したキャラはおるまい。『ビブリア堂古書店の事件手帖』は、まさしく彼女がビブリア堂という古本屋の主であったからこそ繋がってゆく作品なのである。

 これだけ、ある作品の主人公として完成度が高いキャラクターが他にいただろうか

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