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幾度のピンチをへてメンバーが見たものは、戦慄の魔導女王が誘う“哀しき夢”だった!?

薔薇のマリア


 ○読者投票結果
 最高です!一押し。 291
 おもしろいです! 43
 なかなか良いです。 13
 ふつうです。 6
 イマイチです。 4
 おもしろくないです。 5
 買うと損します。 6

ジャンル異世界ファンタジー
著者十文字 青
出版社:角川文庫(角川書店)
発行年月:2004年12月
本体価格 552円 (税込 579 円)
飛びウサギさん(女性) 小豆龍さん(男性・19歳) 凜音さん(女性・12歳)
飴穏 沙羅さん(女性) 北野卵さん(男性・18歳)一押し!

■ 解説                               

 九頭竜大骨格と呼ばれる巨大竜の骨が“蓋”となり、異界生物を封じ込めている地下空間に、
 財宝を求め危険を顧みず潜り込む集団がいた。クランZOO。
 美しくも頼りないマリアローズを筆頭に今日も万全(?)の態勢でお宝GE!?
 ……のハズだったのに!!
 分断の危機、思わぬ敵との遭遇と、幾度のピンチをへてメンバーが見たものは、
 戦慄の魔導女王が誘う“哀しき夢”だった!?
 優しき“侵入者”マリアと仲間たちの最高な物語、堂々開始。


■ 飛びウサギさんの書評                     

 この作品で目を引くのは、やはりなんと言っても心理描写。
 短いと数行で終わりますが、凄いとき(特に、キャラクターが不安定な状態にあるとき)は
 数ページにわたってその人物のごちゃごちゃドロドロとした心の葛藤や叫びが綴られています。
 それも、とてもダイレクトに。
 
 実際に自分が体験しているわけではないのに、胸が引き絞られるような感覚を味わいます。

 また、一言で言うと「剣と魔法の世界」が舞台になってるわけですが、
 そこに住んでる人達がまぁ、とても人間臭いのです。
 RPGの世界に、本物の人間を性別国籍思想関係なく、
 無差別にガーッと放り込んだらこうなるんじゃないだろうかと思います。

 主人公やその取り巻きだけでなく、ちょっとした脇役でも一本小説が書けてしまいそうなほど、
 きちんと物語の中で一人ひとりが「生きて」いました。

 それが違和感なくできたのは、細かく複雑に作りこまれた世界観があればこそ、です。

 異世界ファンタジーで何十人という作りこまれた設定の人物を動かすとき、
 その舞台の設定がきちんとしていなければ、
 必ずどこかに歪みというか、違和感のようなものが出てきます。
 実は、著者の十文字さんが賞をとってからデビュー作が出されるまで、
 一年もの歳月がかかった理由がここにあります。

 一巻で編集部の方が書いていたんですが
「あまりにも膨大で複雑な世界観と設定だったため、どの部分から、
 どう物語にしていくかを考えて煮詰めるのに、多大な時間を必要とした」らしいのです。


 ちょこちょこ見え隠れするその設定から、この物語の世界を想像するだけでも、わりと楽しめます。
 巻数が多く、最初は躊躇してしまうかもしれませんが、買って損はありません。
 
 ちなみに、買うときは一巻からではなく、ver0から読むのをお勧めします。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 一番は……誰でしょう。クラニィですかね。ver3と8巻読んで、大好きになりました。
 なんだかんだ言いながら、世話焼きというか、あったかい人でした。
 アジアンの親友兼お父さんなのかな。二人の会話はとても大好きです。
 ちなみに、上で挙げた二冊を読んでから2巻を読むと、本気でSIXに殺意が沸きます(笑

 あとは、何気にピンパーネルも好きです。
 注意して読んでいると、巻数を増すごとに、彼の表情が豊かになり、口数が増えていくのが分かります。
 ピンパーネルが初めてマリアの前で涙を零すシーンでは、私も一緒に泣いてしまいました。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 他の方が書いてくださってますが、結構グロいです。
 
 剣での切り合いもそうですけど、
 なんといっても、度々召喚される「贄の園の住人」の気持ち悪さはもう…。
 映像では絶対見たくないです。

 それと、舞台となるサンランド無統治王国には、その名の通り、法律がありません。
 その首都を中心に話が進むので、非人道的で倫理を無視した行動をするキャラも結構でてきます。
 それも魅力の一つではあるのですが、不快だと思う人は読まない方がいいかもしれません。



■ 小豆龍さんの書評                       

 これでもか、というほどに残酷な描写や展開がありますが、
 それだけに終わらずちゃんと救いもあってハッピーもある。

 とにかく作者、十文字青氏のストーリーの匙加減が絶妙です。

 他の方も言っておられますが、人間模様にとても現実感があります。
 登場するキャラクター誰も彼もがいくつもの面を持っていて、
 どんなにすごい奴にもどんなにクズな奴にもそうなった理由があります。
 
 読み返すたびに、よくこんなに作りこめるものだ、すげぇや、と感心してしまいます。

 それと、これを思っているのは自分だけかも知れませんが、
 十文字青氏は他の作家さんが逆立ちしても書けないような物、
 十文字青氏が書くからこそ意味がある物を書いていると思います。
 今や(2009年10月現在)本編1〜12、Ver0〜5(外伝)とかなりな大所帯になりましたが、
 大人買いする価値、ありです。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 主に外伝で出番のあるレニィとコロナのコンビです。
 主人公のマリアローズ達の生活と比較してみると色々と面白いです。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 基本的にスロースタートであるところと、
 ライトノベルとして売れるには色々と問題があるところです。

 
 前者の場合、好きな人は「スロースタートだからこそ良いんだ!」と言っていただける事請け合いです。
 しかし○○萌え〜、とか、即物的な物を求める人には向かないかもしれません。
 後者に関しては、他のライトノベルとは客層が違うんじゃないかなぁ、と私は思ってます。
 地方の本屋にあまり並んでないんですよね(泣



■ 凜音さんの書評                        

 とにかく設定が壮大です。

 主要キャラクターには全員暗い過去がついてまわり、ただ単純に明るいキャラなんかいないんです。

 特にマリアローズ。一説によると彼にも秘密が隠されています。その外見ゆえの過去も多くありますが。
 これからどう広がっていくか、楽しみです。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 アジアン!
 1に絵に惚れ、2に性格に惚れ、3に仕草に惚れた。
 
 あと、パオロが地味に好きです。
 ネロさんもいい味出してますね。
 レニィくんも。あ、マリアローズも好きですよ。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 ところどころ三人称と一人称が混合しているところですが、好きな人には好きです。

 というか、私にとっては欠点がわからないほどにすばらしい!
 あと、ちょっとグロいところかな。
 2巻ではもう買わないと決心しました。買ってるけど。



■ 飴穏 沙羅さんの書評                     

 角川学園小説大賞「特別賞」受賞作家さんのデビュー作です。

 異界生物が蠢くアンダーグラウンドで、財宝を手に入れるという
 ダンジョンRPG的な設定を持つライトノベル。
 しかも、主人公は所属チーム内で最弱です。

 「一口に登場人物達を語れない」のが魅力だと思います。
 個性豊か過ぎるキャラクター達が沢山います。

 
 心理描写がかなり多いので、「キャラクター=自分」のようなリアルな感覚で読めます。
 なので、感情移入なんかもしやすいですね。

 時折入る漫才めいた会話(動作も入る)が笑いを誘い、
 絶望の淵に落ちたような所、或いは其処からのからの再生が涙を誘ってくれます。


 戦闘シーンにも迫力がありますね。
 兎に角型破りな作品で、かなり読み応えがあると思います。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 アジアンですね。
 いくら拒否されても主人公に愛を捧げちゃってる所とか、
 仲間思いな所が魅力。

 それから、飛燕(フェイヤン)。
 駄々っ子のような所や口調が好きです。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 戦闘小説らしく、やはりグロテスクな表現が多いところですかね。
 それも魅力と言えば魅力なんですが、耐性が無いと読めそうにないと思います。


 あと、若干地の文が多い気がしますね。



■ 北野卵さんの書評                       

 角川学園小説大賞特別賞を受賞した作家さんの作品です。
 何と、特別賞を受賞したのは今まで二人だけで、もう一人はあの滝本竜彦さんです。
 これだけで、なんとなくこの作家が特殊なものを書くんだなと分かります。
 薔薇のマリアはその作家さんのデビュー作です。(受賞作ではありません)

 基本はダンジョンに潜り、敵を倒して金やアイテムを得るというRPG的なものですが、
 それはまあどうでも良いのです。

 この小説の驚くべき所は、ひたすら書かれている心理描写です。
 
 それも直喩や暗喩などを使うのではなく、
 直接に弱い登場人物の心理を勢いよく書きまくっています。
 この小説は三人称で書かれているのですが、心理描写の場面では唐突に一人称になったりと、
 作者の執拗な拘りが見えます。特に四巻は大暴走。
 
 他にも戦いのときの盛り上がりやスラングの使い方、
 特殊な人物造形などもこの作品の魅力です。


 今時珍しく読み応えのあるライトノベルだと思います。


お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
 アジアンです。ギャグをやらせてもシリアスをやらせても輝く奴です。
 主人公への偏執な愛情が凄まじい。
 トマトクン。名前だけでお気に入りです。


この作品の欠点、残念なところはどこですか?
 一巻が他の巻に比べると見劣りすることです。


■ 一言感想コメント                       

・癖になる文体。ドキリとさせられる。内容が濃い。

・ マリアローズは見た目は美少女、でも男であるところがうらやましい。


■ あなたはこの作品についてどう思いますか?(読者投票)     

最高です!一押し。
おもしろいです!オススメします。
なかなか良いと思います。
ふつうです。
イマイチです。
おもしろくないです。
買うと損します。


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