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武官弁護士エル・ウィン
「ほらぁ!命の惜しい人は机の上にお金を出して両手を上げなさい!」 はぁ〜、私ってば何やってんだろ? 私はミア・ラルカイル、十六歳の可憐な美少女(きゃ)。 しかも、元はある王国の王女様だというのに……それが、こんな強盗みたいなことを……って、 そこのあんた! のんきに新聞読んでるんじゃない! この剣が目に入らないの? すると、その青年は赤い瞳で平然と私を見つめ、 「君、早く逃げたほうがいいと思うよ」なんて言ってくる。 あんた、いったい何者なの? 「僕は弁護士です」しかし、彼はただの弁護士ではなかったのだ―― 第十二回ファンタジア長編小説大賞準入選作。 新世紀をリードするロマンティック・ハリケーン・ファンタジー。
不当に裁かれる人や魔獣を時に武力を駆使しつつ弁護するエル・ウィンの活躍を、 ヒロインであるミア・ラルカイルの視点から描く物語。 完全にミア視点で固定されているにも関わらず、 巧みに他のキャラの心情が文章に表現されていてクライマックスでは涙が滲むシーンも多いです。 また、かなり独特の世界観ですが要所要所で巧みに説明が入り違和感なく世界に入り込めます。 悪役にも悪役なりの理由が存在し勧善懲悪にはならない。 何処かすっきりしない解決と少しの謎を残して毎回終わる物語。 そして、第一部最終巻の「私が望んだ私の世界」では、 今までの謎を一気に消化し一つの結末を迎えます。 巻が進むごとに重さが増し、ダークな展開になっていきます。 しかし、ダークな展開が大丈夫ならば是非読むべきです。 良い意味で期待を裏切り、続きを渇望させる作品に仕上がっています。 ここから先はネタバレですが、 第一部最終巻の「私が望んだ私の世界」には救いが一切ありません。 巻が進むごとに重さが増しギャグよりもシリアスに比重が移っていく物語ですが、 この巻は悲惨です。沢山の人間が犠牲になりようやくエル・ウィンとの再開を果たすミア。 しかし、その再開もつかの間で終わり、 エル・ウィンは死に世界はミアの意思により終わりを迎えます。 そして、再び世界はゼロから再出発し同じ歴史を繰り返す。 その繰り返す歴史の中でただ一筋の光となる世界が再生する前のミアが残した仕掛け。 此処まで来てこんなところで終わるのか! と叫びたくなりますがとにかく今は続きを心待ちにしています。
エル・ウィンのあらゆる意味で強いのに時たま見せる弱さが人間らしくて逆に格好良い。 そして、重い過去を持ちながらもそれを見せずに、 ウィンに精一杯のアタックをかけながらも気付いて貰えないミア。 この二人がセットでお気に入りです。 特に、「私が望んだ私の世界」でのウィンとミアの会話は切なすぎて涙が止まりませんでした。
まあ、結局は武官の名に恥じず武力で解決というパターンなので……。
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復活の地
王紀440年、惑星統一を果たしたレンカ帝国は今まさに星間列強諸国に対峙しようとしていた。 だが帝都トレンカを襲った大災厄は、一瞬にして国家中枢機能を破壊、市民数十万の生命を奪った。 植民地総督府の官僚であったセイオは、亡き上司の遺志に従って緊急対策に奔走するが、 帝都庁との軋轢、陸軍部隊の不気味な動向のなか、強力な復興組織の必要性を痛感する…… 崩壊した国家の再生を描く壮大なる群像劇、全3巻開幕。
先人未踏のジャンルに近いのではなかろうか。 息もつかせぬ展開、読後感のよさにとても前向きな気分になります。 夢中で最後まで一気に読んでしまう作品です。 この作者さんの作品は、いつも現場の人間のリアルさが凄い迫力です。 プ○ジェクトXの曲が頭からちらついて離れないのも特徴のひとつかもしれません。 兎も角爽やかな作品だと思います。
この有能で真面目で不器用で貧乏くじな官僚が可愛くて仕方ありません。 この人そのうち40代で過労死するんじゃないかと変な心配をしてしまうほどです。 しかし、その手腕と行動力には天晴れ。
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フーバニア国異聞
父に命じられ、隣国フーバニアに赴く博物画家志望の青年エラード、人呼んで“役立たずの男”。 唯一の資料、百年前に書かれた地誌を頼りに出発するも、旅は苦難続き。 巨大生物に襲われ、不思議な森で迷い、底なし沼にはまって死にそうになり…… しかもエラードの窮地を救ったのは“人食い人種”で“邪悪な魔法を使う”と言われるフーバニア人だった。 期待の新鋭、登場。
主人公はヘタレだし、ヒロインは何十ページにもわたって出てこなかったりします。 昨今のライトノベル業界の需要は満たしていないことは認めましょう。 だが、しかしです。 この物語の際だった部分は、展開される世界感にあります。 (以下軽くネタばれ) 巨大な蜻蛉が出てきたり、巨大キノコの森に迷い込んだり、 ……あるだけファンタジー要素を詰めこんだ空間を 19世紀時代(とは本文には書いていません)の常識と隣り合わせにある様を、 時には政治的(いや、現実的な冷静な表現と言った方が的を射ているか)に、 時には神秘的に描写しているため、文学的に見えるし何しろ独創的であります。 特に魅力的なのはその「神秘的」な部分に毒を含ませた結末であります。 主人公は「神秘的」な空間に魅了され恩恵も受けるますが、 物語の終末でその「神秘性」が人々に牙を剥き、少なからずホラーへと暗転する。 温かいムードが一気に冷たいものに変わる感じは一見の価値があります。 ただ、逆に不快に感じる方もいらっしゃるかもしれない。。。
縁の下の力持ちな彼の活躍はかわいさ百倍。主人公のへたれさも相殺される勢いです。
この本からこれでもかと言うくらいに放出されるファンタジー臭に惹かれて買うであろうから、 とたんになんの変哲もない19世紀が描かれ、 しかも主人公がへたれなのでちょっと物語がたるんでしまう感じはあります。
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