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ブギーポップは笑わない
第4回ゲーム小説大賞「大賞」受賞。 上遠野浩平が書き下ろす、一つの奇径な事件と、五つの奇妙な物語。
本文より 君には夢があるかい? 残念ながら、ぼくにはそんなものはない。 でもこの物語に出てくる少年少女達は、みんなそれなりに願いを持って、 それが叶えられずウジウジしたり、あるいは完全に開き直って目標に突き進んだり、 まだ自分の望みというのがなんなのかわからなかったり、 叶うはずのない願いと知っていたり、 その姿勢の無意識の前向きで知らずに他人に勇気を与えたりしている。 これはバラバラな話だ。かなり不気味で、少し悲しい話だ。 ……え? ぼくかい? ぼくの名は“ブギーポップ”。 不気味な泡こと、ブギーポップは自らを自動的に浮き出る存在と言います。 彼(?)はごくごく普通な女子高生 宮下藤花の中にいる、もう一人の存在です。 つまりは二重人格である彼女の、もう一つの人格…… それが他ならぬ、ブギーポップです。 (世界の敵)が現れた時、ブギーポップは浮き出てきます。しかし…… ブギーポップ自身が正義の味方かと聞かれれば、分かりません。 むしろ、ブギーポップは死神とも呼ばれる存在で、 ブギーポップ自身が(世界の敵)のような気もします…… この作品は「ブギーポップシリーズ」の第一作で、 その章毎に視点を変える手法からなる、 同じ世界観で微妙に時間軸をずらしながら物語を進める作風。 そして、最後の最後に全てがつながると言う手法で、 当時(いや、今でもかな?)のライトノベル界に衝撃を与えた、名作中の名作です。 とにかく一冊読みきった後に来る、無数のパズルのピースが合わさって 一つの絵(物語)が自身の中で完成した時の感動は、言葉では語りつくせません (ですから、皆さんもご自身でこの感覚を味わってください) 第4回 電撃ゲーム大賞 大賞受賞作です。
タイトルにもなっているキャラですが、作品の最初と最後しかでません(汗) 美味しい所取りも、いい所です。 とにかく謎に満ちた存在で、ある意味でブギーポップが一番恐いですね。 ブギーポップはあらゆる意味で強い存在です(純粋な戦闘はもちろん) まさにブギーポップは(最強故に最恐)の存在です。
中には良い物もありますが…… シリーズ全体では一作目が良すぎるがあまり、 同シリーズの他の作品は、期待はずれって感じですね(苦笑)
2012/10/22 ・ブギーポップシリーズはSF要素がほんのりと混ざったミステリーてところが好きです。 視点もコロコロ変わってるのにわかりやすいです。
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プシュケの涙
「こうして言葉にしてみると…すごく陳腐だ。おかしいよね。笑っていいよ」 「笑わないよ。笑っていいことじゃないだろう」 ……あなたがそう言ってくれたから、私はここにいる――あなたのそばは、呼吸がしやすい。 ここにいれば、私は安らかだった。だから私は、あなたのために絵を描こう。 夏休み、一人の少女が校舎の四階から飛び降りて自殺した。 彼女はなぜそんなことをしたのか? その謎を探るため、二人の少年が動き始めた。 一人は、飛び降りるまさにその瞬間を目撃した榎戸川。 うまくいかないことばかりで鬱々としてる受験生。 もう一人は“変人”由良。何を考えているかよく分からない…… そんな二人が導き出した真実は、残酷なまでに切なく、身を滅ぼすほどに愛しい。
一部では、取り柄もなくぱっとしない受験生・榎戸川を主人公として物語が進みます。 夏休みの補修中に、学校でひとりの少女が飛び降り自殺した様子を目撃した榎戸川。 「変人」で有名な飄々とした同級生由良に、その謎を解き明かさないかともちかけられます。 突然の接触、つきまとってくる由良に戸惑いを覚える主人公ですが、 嫌々ながらも由良と共に自殺した少女吉野彼方の謎を探ります。 そして由良が明かした真実。飛び降りの全貌が明らかに。 二部では、生前の吉野彼方を視点としています。 クラスでは孤立し家庭でも居場所を無くした吉野彼方は美術部部員。 ひたすらに絵を描いて現実から逃げていた吉野彼方に興味を持った少年由良は、 彼女に執拗につきまといだします。 吉野彼方が由良に心を開いていく様子。その過去。その感情が浮かびます。 この、吉野彼方の死後と生前を逆にした構成が憎い。 たまらなくせつない。 由良に出会い、家庭環境にもいじめにもめげずに前に進もうと決心した吉野彼方。 由良のために何かしてあげたい。そんな思いが最後の一文に現れています。 しかし、その思いを無惨に断ち切ったのが第一部冒頭での出来事。 読んで損はしない、させない。 最後まで読み終わったら、表紙をもう一度見てみてください。 そして、吉野彼方を想ってください。 きっと涙が出てくるはずです。 そんなせつない物語。 絶対に読んでほしいものです お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか? なんと言っても由良です。 変人といわれ、常に飄々として心を見せない由良が時折見せる弱さ。 それは人間そのものの姿だと思います。 この作品の欠点、残念なところはどこですか? せつない。痛い。 なので、読んだ後に別の意味で後悔する人もいると思います。
この作品は二部構成になっています。 それが本当に心憎いと言いますか……。 読了後、何故そんな見せ方をするんだと思わずにはいられませんでした。 前半だけでも小説として成立しているし、山もあり、いい作品だったと言えました。 ですが、そこからの後半。 この物語の、本当の主人公は一体誰だったのか。 読み進めるたび、それぞれの人物の行動の意味や心情がどのようなものだったのか、 まるで変わって受け止められて、ただ圧倒されるばかりでした。 前半は衝撃の展開に引っ張られ、思わずページをめくる手も早くなり、 事件の真相へとどんどん近づきます。 ミステリー要素もあるものの、難しいトリックなどは皆無に等しく、 また流れも分かりやすい構成なので安心です。 そのせいもあって種明かしの勢いも留まるところを知りません。 後半は前半に比べると緩やかだけれど、その分だけ、人物へより鮮明にスポットが当たっています。 とはいえ、作中でも言及されているくらい、ありがちな話。 だけど、それがまた卑怯なのです。 この本の後半は、ただページを埋めるための補完話ではない。 また前編はただミンテリー風味のダーク話ではないのです。 前編と後編があるからこそ素晴らしいのだと、あって初めてプシュケの涙なのだと思いました。 私は書店で偶然見かけて表紙買いしたのですが、 読み終わった後に表紙を眺めたら泣きそうになりました。 本棚にしまっておいて、何度も読み返したくなる一冊ですね。 ちなみについさっき、タイトルの『プシュケ』の意味をググって、また溜息が漏れました。 お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか? 由良。 根っからの変人で何考えてるのかよくわからないような人ですが、 彼が一体何を想って動いているかを考えると、好きにならざるを得ないと言うか。 あまり深く語るとネタバレなので、是非他の方にも手にとって読んで欲しいです。 この作品の欠点、残念なところはどこですか? ライトノベルかどうかはさておき、少なくともキャラクター小説ではありません。 何故ならこれはひとりの少女が死ぬだけの物語であって、 身近にこのような出来事が起こってもなんら不思議ではないのです。 作中のデータによると、日本では一時間に約三人が自殺しているそうです。 これに似たような実話があっても、むしろないほうがおかしいかもしれません。 そういう意味で、ライトノベル以外の本を何冊も読んでいる方は、 物足りなく感じることがあったりするかもしれません。 逆に、もしかしたら普段ライトノベルを主食にしている 中高生向けの作品なのかもしれないなーと思ったり(私とか)。
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その小説、105円で売られているかも…… |
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