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不全世界の創造手
地球人類の夢見る究極のシステム―― それは自分で自分を次々と複製するフォン・ノイマン・マシーン。 その実用化に成功した日本人がいた。 ある日、その少年の前に、秘書を伴い、札束を手にした赤毛の少女が現れた。 そして手を組んだ二人を、おのれの「秩序」を守るために、 ある国際組織と血に飢えた輩が追い詰める。 真に豊かな地球を創るのは誰か。 リアルSFの旗手が送る、新感覚近未来青春物語登場。
現代の世界を変える物語を綴った、ハードSF(※)です。 ※ハードSFとは、現実の科学技術をもとにリアルに構築された世界を舞台とするSFのことです。 「なんだSFか・・・、ちょっと苦手だな」と思った方、待ってください。 これはそういう人にこそすすめたい小説です。 本書のすごいところはSF要素を前述の『U-マシン』の1点に絞っているところです。 あとは南太平洋の孤島ナウルとリン鉱石の枯渇、ウズベキスタンのアラル海の干上がり、 バングラディッシュと土地不足、ソマリアと内戦など、現実の世界の途上国を舞台に、 実際の問題を登場させ、そこに金融や政治なんかを絡めてストーリーを展開しています。 限りなくリアルで現実的だが、一方で日本人に馴染みのない途上国の内容はすごく新鮮です。 SFかと問われればSFなのですが、内容はすごくわかりやすく一般読者に優しい話で、 「SF読んでみたいけど、なんか難しそう…」と思っている人に、 一方でSFファンにもおすすめできる一冊です。 おそらく、これは創刊したばかりのレーベルに新規読者を獲得するために行われた作戦なのでしょう。 そういう作者や編集の意図も感じさせます。 さらに、キャラの設定も基本に忠実でひねったところもないし、 そういう教科書的な部分も参考になります。
キャラクターの配置が良くも悪くも教科書的で、独創性には欠けます。 付け加えるなら、イラストの絵柄とストーリーがあまりマッチしないこと、 それとマイナーなレーベルの出版であることも欠点かもしれません。
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