ライトノベル作法研究所
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  4. 野望円舞曲公開日:2014/05/28

野望円舞曲

ジャンル:SF
著者:田中 芳樹
出版社:徳間デュアル文庫
発行年月:2000年08月

TFAさん一押し!(男性)

■ 解説

 波打つ黒髪、陶器のような頬。はかなげな姿のエレオノーラ・ファルネーゼの胸のうちには、燃える想いが秘められていた。商業国家オルヴィエートの元首である父―母を殺した男への反撥。異母兄への憤り。
 いつか自分を縛りつける運命の鎖を断ち切りたいと思っていた彼女に、突然の好機がおとずれた。前触れもなく、領域に侵攻してきた他国の軍勢。安寧にひたっていたオルヴィエートに波乱の風が吹きこんできた。国家間の陰謀、渦まく人々の思惑。敵と味方が交錯する、波瀾万丈なスペースオペラ新シリーズ開幕。

■ TFAさんの書評2014/05/28

 田中芳樹と荻野目悠樹がタッグを組んだ、壮大なスペースオペラ作品(最も田中氏はアイデアを出しているだけのようですが)歴史に多少なりとも造詣のある人なら設定がオスマン・トルコとイタリアの都市国家(多分ベネツィア)の対立のオマージュということがお判りになると思います。(地名や人名で)

 領土拡張にしのぎを削る大国ボスポラスと経済力のみを力とするオルヴィエート。主人公エレオノーラは母を殺した(と思い込んでいる)父を倒す為、唯一の親友であり、同志でもあるベアトリーチェと肉親で唯一人、信頼を寄せていた兄ジェラルドを失いながらも目的を達成するが、充実感とは程遠く空虚な喪失感があるのみであった。そこへ内紛に乗じたボスポラスが侵攻し、物語は佳境を迎えます。
 キーワードは「禁断の技術」双方の国家にとって、又エレオノーラ自身の岐路を左右する重要な存在となって行きます。果たして結末は如何に。

お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?

 主人公のエレオノーラと親友にして同志でもあるベアトリーチェ、この二人は銀河英雄伝説のラインハルトとキルヒアイスを彷彿させる存在で田中ワールドの面目躍如といったところでしょう。展開も酷似しています。

 それからエレオノーラが密かな慕情を抱く異母兄ジェラルド。軍事的な素養を持ち寛大で優しく、部下からの信頼も絶大だが、根っからの女好き(これもどこかで読んだような設定ですが)そしてボスポラスの情報部員で何故か敵であるエレオノーラを助けることになるナギブとコンラッド、この二人はトリックスター的な存在ですが、要所要所で姿を現わし、物語の進行に一役買っています。(この二人を主役にした外伝も出ています)

 最後に、ボスポラスの大宰相であるケマル・エヴチ”ミク、彼は単純な征服欲旺盛な侵略者ではなく、その裏には壮大な企図が秘められているようです。

この作品の欠点、残念なところはどこですか?

 他の田中作品を読んでいる人にはキャラクターが似通っているのが物足りないかも。(このキャラあの作品の××にそっくり等の感想を抱くかも知れません)

 又、新聞などでおなじみの経済用語(デリバディブ、為替相場等)が頻繁に出て来るので知識のない人は混乱するかも(一応素人にも判るようかなり噛み砕いて説明されているが)これは荻野目氏が商学部出身ということが影響しているのかも。ただ、これらの部分は読み飛ばしてもストーリーにはさほど影響がないのでご安心を。

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