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  4. 魔法・魔術公開日:2014/12/23

魔法・魔術

ジャンル:魔法・ファンタジー関係
著者:山北 篤
出版社: 新紀元社
サイズ: 文庫
ページ数: 377p
発行年月:2013年2月28日
ドラコンさんのオススメ!

■ 解説

 ファンタジーファンやTVゲームユーザー、占いに興味を持つ人たちなどにとって馴染み深い「魔女」「ドルイド」「占星術」「呪術」。これら15の魔法を選び、わかりやすく紹介する魔法・魔術の総合ガイドブック。図版も多数掲載しており、入門書としても最適です。

■ ドラコンさんの書評2014/12/19

 本来であれば、1冊ずつ投稿すべきでしょうが、『魔術師の饗宴』 /『魔法・魔術』の2冊のレビューを投稿します。

 この『魔術師の饗宴』(親本1989年3月、文庫2011年9月)と『魔法・魔術』(親本2000年5月、文庫2013年3月)は、共に新紀元文庫かつ、山北篤氏の著書(『魔術師の饗宴』は怪兵隊との共著)で、内容が重なっています。

 本屋で手に取って、章名を見ると、「書名・表紙が違うだけで、ほとんど同じ本」との印象があります。ですが、実際に買って突き合わせて読んでみると、同じテーマでも差異があります。ですので、その差異を明らかにするため、2冊まとめて紹介します。

 結論から言いますと、内容の重複が多いですが、両方あったほうが便利です。この両作を読むと、ヨーロッパとアジアの主な魔術を知ることができます。

●『魔術師の饗宴』と『魔法・魔術』の両方に記述のあるものの差異
・全体の印象
「こんな魔術がある」「こんな魔術師がいる(外見・性格)」といった書き方が『魔術師の饗宴』。魔術の理論・体系・歴史を知るなら『魔法・魔術』。もちろん、『魔術師の饗宴』でも魔術の理論・体系・歴史も書いてあるし、『魔法・魔術』でも魔術師のエピソードも出てくる。

・魔女
 キリスト教による魔女狩りで処刑されたり、逆に魔術を使いながらも処刑されなかったりした人たちは、「どんな人たちなのか?」なら、『魔術師の饗宴』。キリスト教における魔女の定義、魔女と悪魔との契約、キリスト教以前および現代の魔女、魔女の薬品は、『魔法・魔術』。

・西洋魔術の基礎の秘術「カバラ」
 カバラの理論は、『魔法・魔術』のほうがいくらか詳しいようだが、両作大差なし。『魔術師の饗宴』では、カバラを会得した人物、秘術を伝える秘密結社に触れている。カバラは、「秘術」なので、解説を読んでもよく分からなかった。ただ、暗号作成の参考にはなりそう。

・錬金術
 錬金術の理論・道具・錬金術詐欺は『魔法・魔術』。錬金術師やキリスト教による錬金術迫害は『魔術の饗宴』。

・占星術
 理論は両作大差なし。占星術師のエピソードは『魔術師の饗宴』。

・ゾンビで知られるカリブ海・ハイチのヴードゥー教
 ゾンビと神官は『魔術師の饗宴』。神々・毒物・人身御供は『魔法・魔術』。

・インドのヨーガ
 理論は大差なし。『魔術師の饗宴』ではヨーガを極めると「こういうことができる」にとどまっている。『魔法・魔術』では、それに加え、修行の名称が書かれている。

・神仙道および中国魔術
 仙人の住処・仙薬は、『魔法・魔術』はもちろん、同じ新紀元文庫から出ている『タオ(道教)の神々』『魔術への旅』(共に真野隆也)と比べても、『魔術の饗宴』のほうが若干詳しい。中国魔術・占いの種類・儀式は、『タオの神々』『魔術への旅』を含め、『魔法・魔術』のほうが多少上(ただし、呪文の唱え方は『魔術への旅』)。

 仙人のなり方・修行は、両作共大差なく、『タオの神々』の域を出ず。むしろ『魔術への旅』ほうが、『タオの神々』と大して変わらぬが、1カ所にまとめられているので、分かりやすい。なお、言うまでもないが、仙人のエピソードは『タオの神々』が圧倒的に情報量が多い。

・修験道
 理論・術は大差なし。ただし、修験者の服装・持ち物は『魔法・魔術』のほうが分かりやすい。ちなみに、修験道は忍術にも通じる。

・密教
『魔術師の饗宴』では、修験道のおまけ程度。『魔法・魔術』では、空海のエピソードから、密教の歴史・術まで書かれている。

・陰陽道
『魔術師の饗宴』では安倍清明の名が出てくる程度。『魔法・魔術』では、陰陽師のエピソード・朝廷での地位・術が一通り書かれている。陰陽道に限らず、日本と中国の魔術は関係が深いので、東洋ファンタジーを考えると、両方とも知っておいたほうが良さそう。

●『魔術師の饗宴』のみに書いてあること
 いずれも簡単ではあるが、
植物・昆虫・ヘビ・カエル・フグ・鉱物毒の名称・毒性・薬効・生育地・症状。
魔術のメカニズム分類(術をかけるに要する時間・力の根源・対象・効果)。
『魔術の饗宴』と『魔法・魔術』では印象が薄いが、『魔術への道』では催眠・幻覚作用のある香をたく魔術が出てくる。毒の知識もあったほうが良いのでは。

●『魔法・魔術』のみに書いてあること
 現代によみがえった古代魔術で、霊と交信する「心霊主義」。
 宗教(特にキリスト教)と魔術、科学と魔術、ヨーロッパとアジアとの魔術の受け止め方の違い。

■ この本の欠点、残念なところはどこですか?

 欠点としては、既に指摘した通り、内容の重複が多いことです。買う前の9割ではありませんが、読んでみると5、6割以上は重複しています。現に、ケルト人の魔術師「ドルイド」とゲルマン人の呪術文字「ルーン」は両作共ほぼ同じ内容です。

 先に『魔術師の饗宴』を買ったので、『魔法・魔術』を買おうかどうか、かなり迷いました。後で出た『魔法・魔術』では「まえがき」「あとがき」で、『魔術師の饗宴』との差異を明示できなかったのでしょうか。それがないがため、パッと見には「表紙・タイトルが違うだけで、ほとんど同じ本」との印象があります。

 それに、「広く浅く」です。特定の魔術のみを知ろうとすると、物足りないでしょう。また、魔獣・精霊・妖精・魔術武器の類は取り上げられていません。せいぜい、魔術で武器を強化する程度です。

 地域的にも、ヨーロッパとアジアのみです(例外は、カリブ海・ハイチのヴードゥー教と近代アメリカで生まれた心霊主義)。南北アメリカ、アフリカ、オセアニアは対象外です。

 心霊主義が生まれた日が「一八四八年三月三十一日」とあります。しかしこの時、霊と交信した少女が「一九八八年九月二十四日」の新聞のインタビューに答えています。140年も間があるので、計算が合いません。誤植でしょうか。

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